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2016年12月07日

脂肪肝を判断する肝腎コントラスト

画像検査のなかでも、エコー(超音波)検査は、侵襲度が低く、簡便に行える検査です。
外来や病棟で、看護師が目にすることの多いエコー検査について、コツやポイントを消化器内科医が解説します。
今回は、「脂肪肝を判断する肝腎コントラスト」についてのお話です。

 

加藤真吾
(横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学教室)

 

今回は肝臓についての解説ですが、普段から健康には気をつけていますか?

特に意識してしていることはありませんが、健康です!
健康診断もいつもA評価なんですよ♪
そういえば、私の患者さんに脂肪肝の方がいます。

エコーは、脂肪肝の診断にとても役立つんですよ。
検査では、肝腎のコントラストを見るんですが、とても簡単で手軽に行えるので、なくてはならない検査法ですね。

脂肪肝になると、どんな問題があるんですか?

脂肪肝の患者さんの中には、肝炎になってしまう方がいます。
ウイルスやアルコールではなく、単純に脂肪の蓄積が原因で肝炎になることもあります。
健康診断で脂肪肝を疑われた場合は、消化器内科の受診をお勧めします。

 

〈目次〉

 

肝臓と腎臓のコントラストが見える状態

肝腎コントラストとは、肝臓と腎臓のエコー強度に差がある状態です。

通常、エコー検査では、脂肪が蓄積している場所(脂肪化した組織)は高エコーになるため、エコー像は白く映ります。しかし、腎臓にはほとんど脂肪が蓄積しないため、エコー像が白くなることはありません。この仕組みを利用して、肝臓の脂肪の有無を見る検査を行います。つまり、肝臓の色を基準にして、腎臓の色との違いから、肝臓の脂肪の有無を確認していきます。

健康なヒトの肝臓には、脂肪が蓄積していないため、腎臓と同じエコー強度です。しかし、肝臓に脂肪が蓄積していると、肝臓の方が腎臓よりも白く映る現象が起こります(図1)。

図1肝腎コントラストのイメージ

肝腎コントラストのイメージ

A:肝臓と腎臓のコントラストがない状態。
B:肝臓と腎臓のコントラストがあり、肝臓が白く映っている状態。

 

図1Bのように、肝臓と腎臓のエコー像にコントラストがある状態を、「肝腎コントラスト陽性」と表記します。

 

ココが大事!肝腎コントラストは肝臓の脂肪の有無を見る

肝腎コントラスト陰性・・・正常

肝腎コントラスト陽性・・・異常肝臓に脂肪が蓄積している

 

エコー検査を行う必要がある患者

実は、肝腎コントラストは、腹部のスクリーニングを行うエコー検査の中で、ルーチンで見る所見の1つです。そのため、肝腎コントラストを見る目的のためだけに、エコー検査を行うことは通常ありません。健康診断や他の目的で腹部エコー検査を施行した際に、偶発的に、この所見が見つかることがあります。

また、原因がわかっていない肝機能障害の患者さんに対して、肝機能障害の原因の検索を目的として、肝腎コントラストの有無を見ることもあります。

 

ココが大事!肝腎コントラストは偶然見つかる

肝腎コントラスト陽性は、健康診断のエコー検査で偶発的に見つかることがある。

 

肝腎コントラストの原因となる疾患

脂肪性肝炎

肝臓に炎症が起きることを肝炎と言います。肝炎は、軽症の場合は自覚症状が無いことが多く、血液検査で指摘されることがほとんどです。

肝炎の原因はたくさん考えられますが、代表的なものは、アルコールウイルス薬剤などです(図2)。

図2肝炎を引き起こすさまざまな要因

肝炎を引き起こすさまざまな要因

アルコール、ウイルス、薬剤、自己免疫、脂肪などが肝炎を引き起こす要因です。

 

これらの原因とは別に、脂肪が肝臓に蓄積することで肝炎を起こすことがあります。これを、脂肪性肝炎と呼びます。

間違えやすいポイントですが、「脂肪肝=脂肪性肝炎」ではなく、「脂肪肝+肝炎=脂肪性肝炎」ということを注意してください。なお、脂肪肝のみでも炎症が無いことがあります。この場合は、単純性脂肪肝と呼ばれ、脂肪性肝炎とは区別されています。

 

ココが大事!脂肪性肝炎と単純性脂肪肝の違い

脂肪肝+肝炎=脂肪性肝炎

脂肪肝のみ=単純性脂肪肝

 

非アルコール性脂肪性肝疾患と非アルコール性脂肪性肝炎

脂肪性肝炎の診断には、他の肝炎となり得る原因を否定することが必要です。

特に、アルコール性肝炎の患者さんの肝臓は、多くの場合で、脂肪が蓄積しています。そのため、肝炎の原因が、アルコールによるものか、脂肪によるものかわからず、脂肪性肝炎と断定することができません。脂肪性肝炎と診断するためには、普段アルコールを飲んでいないことが条件になります。

アルコールを飲んでいないにもかかわらず、肝臓に脂肪が蓄積し、肝炎となってしまう疾患を、非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis;NASH)と呼びます。

また、脂肪肝だけで、肝臓に炎症が無い単純性脂肪肝も異常な状態のため、NASHに単純性脂肪肝を合わせて、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease;NAFLD)と呼んでいます(図3)。

図3NASHとNAFLDの関係図

NASHとNAFLDの関係図

関係性は、NAFLDのなかにNASHと単純性脂肪肝があります。

 

ココが大事!アルコールの摂取で区別する

NASH(ナッシュ)・・・アルコールを飲んでいない人の脂肪性肝炎

NAFLD(ナフルド)・・・アルコールを飲んでいない人の脂肪性肝炎+単純性脂肪肝

 

脂肪肝の患者さんが入院する理由

エコー検査で脂肪肝が疑われた患者さんは、肝生検を行うために入院することがあります。

生検とは、肝臓に針を刺して組織を採取する検査です。肝生検は、出血などの合併症を引き起こす危険性のある侵襲的な検査ですが、脂肪性肝炎の確定診断には必須の検査です。エコー所見の肝腎コントラスト陽性は、あくまで「脂肪肝の疑い」を示したものですので、脂肪肝の確定診断には肝生検が必須であることは覚えておいて下さい(図4)。

図4肝生検の実施

肝生検の実施

右手(利き手)でプローブを当てながら、左手(非利き手)で生検用の針を刺します。

 

肝生検を行うと、脂肪化の程度や、肝臓が受けている損傷の程度などを知ることができます。脂肪性肝炎の患者さんの中には、他の慢性肝炎の患者さんと同様に、肝硬変や肝臓癌に進行することがあります。肝生検は、確定診断と肝臓の現状を評価するためにも非常に重要です。

 

ナースへのアドバイス

肝臓に慢性的な炎症が起きていると、肝硬変や肝細胞癌の病態へ進行する可能性があります。

肝硬変

肝硬変とは、慢性的な肝臓の炎症の結果、肝臓が硬く変化してしまうことです。硬くなることを線維化と言いますが、肝硬変になると、正常な肝臓の細胞が線維組織に置き換わってしまいます。正常な肝臓の細胞が減ってしまうと、当然、肝臓の機能は低下します。最終的には、正常な肝臓の機能がほぼなくなってしまい、肝不全という状態に進行します。

肝細胞癌

肝細胞癌は、炎症性発癌とも呼ばれます。慢性的な炎症がある臓器では、癌ができる可能性が上昇することが知られています。

 

肝硬変と肝細胞癌の原因疾患としては、ウイルス性肝炎(特にB型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスによるもの)が大部分を占めていました。しかし、近年、これらのウイルスへの対策が徐々に進歩してきたこともあり、この2つのウイルス以外の原因による慢性肝炎を背景とした発癌が占める割合が多くなってきています

また、脂肪性肝炎は、食事の欧米化に伴い、急速に患者数が増えている疾患です。現時点では、有効な治療法も確立されていません。今後も大きな問題として注目されていくと考えられる重要な疾患です。

 

Check Point

  • 脂肪肝の有無は、エコー所見でスクリーニングできます。
  • 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、肝硬変や肝癌に進行する可能性のある疾患です。

 

次回は、実際に肝腎コントラストが見える患者さんのエコー写真を紹介します。

 

〈次回〉

肝腎コントラストのエコー像

 

[関連記事]

  • ⇒『初めてのエコー(超音波)検査』の【総目次】を見る

 


[執筆者]
加藤真吾
横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学教室


Illustration:田中博志


著作権について

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