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2016年02月20日

褥瘡(じょくそう)治療に必要なポジショニングの知識・テクニック

『WOC Nursing』2014年9月号<褥瘡が治るしくみ、治らない理由>より抜粋。
褥瘡治療に必要なポジショニングの知識・テクニックについて解説します。

Point

  • 褥瘡の治療が停滞,あるいは悪化する事例には,必ず何らかの問題がある
  • 姿勢を保持するまでの動きの過程や,姿勢(体位)の保持に問題があるケースがある
  • 褥瘡治療に必要なポジショニングは,「姿勢(体位)を管理」するという管理的な視点が重要である

秋田珠実
(北海道大学病院 看護部 副看護師長,皮膚・排泄ケア認定看護師)

〈目次〉

 

はじめに

ポジショニングとは,「運動機能障害を有する者に,クッションなどを活用して身体各部の相対的な位置関係を設定し,目的に適合した姿勢(体位)を安全で快適に保持することをいう」(1)と定義されています。

看護現場では,運動機能障害の有無に関係なく,姿勢(体位)の保持が難しい患者に対してクッションなどを活用して,安全で快適に姿勢(体位)を保持するための援助を行っています。

しかし,褥瘡の治癒が停滞,あるいは悪化する事例のなかには,「姿勢(体位)の保持」に問題があるケースや,目的とする姿勢(体位)を保持するまでの「動きの過程」に問題があるケースもあります。

本コラムでは,このようなポジショニングの問題で褥瘡が悪化する事例を紹介し対応策を検討します。

 

褥瘡の事例紹介(座位)

事例:80歳代,男性

〔現病歴〕

大腸がんによる腸穿孔のため緊急手術を行いましたが,腹膜炎から敗血症と播種性血管内凝固症候群(DIC)を併発し,鎮静下で全身管理治療を行っていました。長期臥床に伴う筋力の低下と関節拘縮があり,自力では体位変換ができない状態でした。そのため,厚みのあるウレタンマットレスを使用して,看護師が体位変換を行っていました。

また,経管栄養に伴う下痢があり,撥水効果のある皮膚皮膜剤を使用してスキンケアを行っていました。全身状態の回復後,床上における可動性の拡大と気分転換を目的に,1日に数回ベッド上での座位を開始しました。開始後,尾骨部に褥瘡が発生し,創傷被覆材を用いて局所治療を行っていました。

しかし,新たに仙骨部にも褥瘡が発生し,悪化する傾向がみられたため,コンサルテーションを受けました。

〔褥瘡状態〕

コンサルテーションを受けたときの皮膚は図1の状態でした。

図1コンサルテーションを受けたときの皮膚

コンサルテーションを受けたときの皮膚

尾骨部に表皮剥離があり,炎症性色素沈着を伴う剥離周囲の表皮は,頭側方向にずれていました。また,仙骨部に持続する発赤と浅いびらん(→)があり,仙骨部から水平面に伸びる一直線状の持続する発赤()も認められました。

 

褥瘡の発生原因をアセスメント

今回の事例においては,褥瘡の状態から,尾骨や仙骨部に外力が働き,臀部が足側方向にずれて褥瘡が発生したと考えられました。発生原因は「座位」と考えられ,悪化要因は,おむつの使用や下痢に伴う「皮膚の湿潤」が外力に影響したためと考えられました。

そこで,褥瘡発生原因である座位時のどこに問題があるのかを確認するため,座位保持までの「動きの過程」と「座位の保持」を評価することにしました。

 

座位保持までの動きの過程

患者をベッド上で座位にするときは,看護師が電動ベッドのボタンを操作して,下肢の挙上を行った後に,頭部の背上げを行い,最後に「背抜き」を行っていました(図2図3図4)。

図2上前腸骨棘とベッドの背上げ屈曲点を確認

上前腸骨棘とベッドの背上げ屈曲点を確認

 

図3下肢の挙上

下肢の挙上

 

図4頭部の背上げ

頭部の背上げ

 

これらの動きの過程には,何ら問題がないように思われます。

しかし「人の動き」と「重さ」の関係からみると,尾骨や仙骨部に外力が集中しやすい方法と考えられました。

人が動くときには,運動器官が必要です。運動器官では,「骨」や「筋肉」が重要な働きをしています。「骨」は体の重さを支持面に伝える役割があり,また「筋肉」には骨を動かす役割があります。人が動くときには,骨や筋肉の役割機能をうまく活用して,体の重さを別な場所に移しながら,姿勢(体位)を変えています。

電動ベッドを使用した起き上がりは,上肢や下肢の役割機能をうまく活用することができないため,上半身の重さは尾骨や仙骨部から支持面に伝わります。そのため,褥瘡悪化の危険性が高いと考えられました。

 

座位保持の評価

「背抜き」後に,座位の保持を行った状態が(図5)です。

図5背抜き後の状態

背抜き後の状態

 

一見すると,この姿勢の保持には何ら問題がないように思われます。

しかし,「ベッドの上に座る」という「目的に適合しているか」,また「安全で快適に座れているか」という視点からみると問題があると考えられました。

人が「座る」という状態は,骨盤の上に胸郭や頭が積み上がり,坐骨部や大腿,下腿骨で重さを支えます。しかし,図5の状態では,骨盤が後傾しており,骨盤の上に胸郭や頭が積み上がっていません。

そのため,「座る」という目的には適合しておらず,姿勢(体位)が崩れて足側にずれる危険性があります。また,上半身の重さは坐骨ではなく尾骨や仙骨部で支えており,大腿や下腿部は,「骨」ではなく「筋肉」が多く支持面に接しています。

そのため,大腿や下腿部の「骨」が上半身の重さを支えることができず,安全で快適に座り続けることができないと考えられました。

このように,本コラムの事例では,座位保持までの「動きの過程」と「座位保持」に問題があることがわかりました。

 

動きの過程を改善し実行

褥瘡の悪化を予防するため,「骨」や「筋肉」などの役割機能がうまく活用できる「自然な起き上がり動作」をベッド上で支援することにしました。

看護師は,電動ベッドを操作する看護師と,患者の起き上がり動作を支援する看護師に役割を分担します。患者の起き上がり動作を支援する看護師は,患者の体を図6のように側臥位にします。

図6患者の体を側臥位にする

患者の体を側臥位にする

 

患者の重さは,荷重部の上肢や腸骨,大腿,下腿骨からベッドの支持面に伝わっています。

電動ベッドを操作する看護師は,患者の側臥位の姿勢が安定した時点で,ゆっくりと背上げを開始します(図7)。

図7ゆっくりと背上げを行う

ゆっくりと背上げを行う

 

起き上がり動作を支援する看護師は,背上げに伴い骨盤の上に患者の胸郭や頭が積み上がるように,大転子部を支点に荷重部の大腿や下腿骨に上半身の重さを移しながら,上半身が正面を向くように回転させます。

最後に,左右の坐骨部に上半身の重さが均等に伝わるように,座位とします(図8)。

図8重さが均等に伝わるようにする

重さが均等に伝わるようにする

 

これらの方法では,尾骨や仙骨部に上半身の重さが集中しないため,褥瘡の悪化が予防できると考えられました。

 

座位保持を改善し実行

自然な起き上がり動作の後に,座位の保持を行ったのが図9です。

図9座位の保持

座位の保持

 

骨盤の上に胸郭や頭が積み上がり,骨盤が後傾しないように上後腸骨棘に柔らかく小さいクッションを入れています。そして,上半身の重さが坐骨や大腿,下腿骨から支持面に伝わるように,両下肢を外転させ,「あぐら」をかくような姿勢(体位)としました。

また,患者自身でも上半身の動きをコントロールしやすいように,両上肢(肘)の下に硬めのクッションを置いています。このような姿勢(体位)を保持することで,骨盤が足側にずれて褥瘡が悪化するのを予防することができると考えました。

 

褥瘡の経過

これまでのポジショニング方法を改善して,新しいポジショニング方法を実行したところ,褥瘡は停滞することなく順調に治癒しました。

図10は新しいポジショニング開始後7日目の状態で,図11は14日目の状態です。

図10新しいポジショニング 開始後7日目

新しいポジショニング 開始後7日目

 

図11新しいポジショニング 開始後14日目

新しいポジショニング 開始後14日目

 

患者は日々ベッド上での可動性が向上し,座位をとる機会が増えましたが,褥瘡の悪化や再発はありませんでした。

 

おわりに

ポジショニングは,「姿勢(体位)を保持する」という行為の視点から,今後は「姿勢(体位)を管理する」という管理の視点が重要と考えられます。

「安全で快適な姿勢(体位)を計画したら,目的とする姿勢(体位)の保持を実行し,姿勢(体位)保持までの動きの過程と目的に合った姿勢(体位)の保持であるかを評価し,問題があれば改善して実行する」というPDCAサイクル(図12)を繰り返していくことが,褥瘡治療に必要なポジショニングと考えられます。

図12姿勢(体位)管理のPDCAサイクル

姿勢(体位)管理のPDCAサイクル

 


[引用・参考文献]

  • (1)日本褥瘡学会用語集検討委員会:日本褥瘡学会で使用する用語の定義・解釈.褥瘡会誌,114:554-556,2009.
  • (2)日本褥瘡学会(編):褥瘡ガイドブック.照林社,2014.
  • (3)田中マキ子:褥瘡予防・管理に活かすポジショニング.褥瘡会誌,7:16-22,2005.
  • (4)田中秀子:ポジショニング.Nursing Today,22:48-52,2007.
  • (5)田中マキ子:ポジショニングと褥瘡ケアのエビデンス.看護学雑誌,68:310-314,2004.

[Profile]
秋田珠実(あきた たまみ)
北海道大学病院 看護部 副看護師長,皮膚・排泄ケア認定看護師
1991年 JA北海道厚生連 旭川厚生病院 就職,2001年 日本看護協会 皮膚・排泄ケア認定看護師 取得,2010年 JA北海道厚生連 旭川厚生病院 退職,2010年 宮城大学大学院 看護学研究科 WOC看護実践分野 博士前期課程 入学,2012年 宮城大学大学院 看護学研究科 WOC看護実践分野 博士前期課程 修了,2012年より国立大学法人 北海道大学病院 勤務。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]WOC Nursing2014年9月号

WOC Nursing2014年9月号

P.43~「褥瘡治療に必要なポジショニングの知識・テクニック」

著作権について

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