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2016年03月10日

脳室ドレーン,脳槽ドレーン,腰椎ドレーン

『BRAIN』2013年第3号<これだけは覚えたい!身につけたい!脳神経外科患者の集中治療ケア>より抜粋。
脳室ドレーン,脳槽ドレーン,腰椎ドレーンについて解説します。

Point

  • 正常な髄液循環,髄液の正常値を知りましょう。
  • ドレーンを管理するうえでの注意点を確認しましょう。

三河茂喜
(岩手県立中央病院脳神経外科,救急医療部次長)

〈目次〉

 

はじめに

脳室ドレーン,脳槽ドレーン,腰椎ドレーンと聞いて,どんな感想を持つでしょうか?

脳神経外科医サイドとしては比較的単純な手技で短時間に終わる手術,という感覚ですが,看護サイドからみると,緊急手術になることが多い,ドレーンの管理が面倒,観察項目が多い,抜かれると大変,長期間の管理になることがある,患者が安静を継続しなければならない,など,ドレーンの入っている患者が1人いるだけでも大変なのではないでしょうか?

 

ここでは,これらのドレーン管理や観察のポイントについて,できるだけわかりやすく解説していきたいと思います。

 

脳脊髄液と髄液循環

脳脊髄液とは

脳脊髄液は脳室内の脈絡叢(みゃくらくそう)(95%は側脳室脈絡叢)から産生されます。1時間に17~21ml(小児では0.35ml/kg/時)産生されており,1日に産生される量は400~500mlほどになります。脳室,脳脊髄腔はあわせて130~150mlほどの容量ですので,1日3,4回は入れ替わっていることになります。

脳脊髄液は側脳室からモンロー孔を経て第三脳室へ,さらに中脳水道を経て第四脳室に到達し,マジャンディー孔とルシュカ孔を通って脳表と脊髄周囲のくも膜下腔を流れ,脳表のくも膜顆粒で吸収されて静脈に流入していきます(図1)。

図1脳脊髄液の循環経路(文献1,文献2を参考に作図)

脳脊髄液の循環経路(<a data-cke-saved-href=

 

脳脊髄液は,正常では水様透明です。出血早期には血性,出血後6時間ほどからキサントクロミー(黄色透明)に変化していきます。混濁がみられた場合には感染を疑います。また,細かい浮遊物が浮かんでいる場合には細胞数が増加していることがあります。

 

髄液の圧,生化学検査,顕微鏡検査(表1

脳脊髄圧,髄液蛋白,ブドウ糖,クロール,細胞数の正常値,異常値について覚えておくと観察に役立ちます。

表1髄液の圧,生化学検査,顕微鏡検査(文献3より引用)

髄液の圧,生化学検査,顕微鏡検査(<a data-cke-saved-href=

 

脳脊髄液と頭蓋内圧亢進

頭蓋内には脳実質,血液,脳脊髄液の3成分が含まれていますが,硬い頭蓋骨で閉鎖空間となっているため,容積は一定に保たれていなければなりません。

3つのうち,いずれかの成分が増加すると,それ以外の成分が減少することで一定の容積を保とうとしますが,そのバランスが崩れると頭蓋内圧亢進が起こってしまいます。

 

頭蓋内圧亢進によって脳機能の維持に必要な脳血流が確保できなくなり数分間血流が停止すると,脳は回復不可能なダメージを負ってしまいます。したがって,頭蓋内圧亢進は緊急事態ですので一刻も早く解除しなければなりません。

出血や腫瘍による脳室の閉塞,くも膜下出血によるくも膜下腔の癒着などにより脳脊髄液が正常に循環しないと水頭症になり頭蓋内圧が亢進してしまいますので,緊急に脳室ドレナージを行って頭蓋内圧亢進を解除します。

 

脳脊髄液ドレナージの適応と禁忌

脳脊髄液ドレナージの適応(表2

表2脳脊髄液ドレナージの適応

脳脊髄液ドレナージの適応

 

急性水頭症の解除

主に脳室ドレナージが行われます。

 

手術前,手術中,手術後の頭蓋内圧のコントロール

脳腫瘍で頭蓋底にアプローチするときなどは,頭蓋内圧亢進がなければ腰椎ドレーンを挿入することがあります。術前にあらかじめ脳脊髄液を排出しておくことで,脳の圧排を減らしながら術野にアプローチできます。また,術後髄液漏があるときにも腰椎ドレナージを行って,漏孔の閉鎖を待つこともあります。

 

くも膜下出血や脳室内血腫を体外に排出

脳血管れん縮予防のため,脳槽ドレナージ,腰椎ドレナージを用いてくも膜下出血を排出します。脳室内血腫は脳室ドレナージで排出可能です。

 

脳脊髄液の性状を観察

頭蓋内圧亢進がなければ腰椎ドレナージが行われます。脳を傷つける必要のある脳室ドレナージは,通常行いません。

 

シャント感染時の一時的な髄液の排出

腰椎ドレナージでは感染を波及させる恐れがあるため,脳室ドレナージを行います。

 

脳脊髄液ドレナージの禁忌

抗凝固療法中,出血性素因

手術により頭蓋内,脊髄腔内出血の危険性が高いためです。

 

ドレナージ部位の皮膚,皮下組織,骨,硬膜外感染

ドレーン感染のリスクが上昇するため,避けたほうがよいでしょう。

 

腰椎ドレナージの場合は腰椎穿刺が禁忌とされる頭蓋内圧亢進の患者(注意!)

さきほど述べた理由によります。脳室ドレナージを選択しましょう。脳室ドレナージでも排液過多とならないよう注意が必要です。

〔注意!〕

  • 出血や脳腫瘍などで頭蓋内圧が亢進しているときに腰椎ドレナージを行うと,脊髄腔の圧が低下し脳実質が下方移動して脳ヘルニアを起こしてしまう可能性があるため,腰椎ドレナージは禁忌です。
  • 挿入に開頭術が必要で髄液排出量がコントロールできない脳槽ドレナージも,行われることはありません。
  • 小脳病変では,脳室ドレナージでも髄液を排出しすぎると脳幹部が大脳側に移動して脳ヘルニアを起こすことがあります。
  • いずれにしても髄液の過剰排出は厳禁です。

 

脳脊髄液ドレナージが行われる疾患(図2図3図4図5

交通性水頭症(脳室とくも膜下腔の間に閉塞がない)

くも膜下出血,髄膜炎

図2くも膜下出血後の交通性水頭症

くも膜下出血後の交通性水頭症

 

非交通性水頭症(脳室とくも膜下腔の間に閉塞がある)

脳腫瘍,脳出血,高度のくも膜下出血など

図3脳室内血腫による非交通性水頭症

脳室内血腫による非交通性水頭症

 

図4小脳出血の頭部CT像

小脳出血の頭部CT像

 

図5左聴神経腫瘍による非交通性水頭症(第四脳室圧迫および髄液蛋白増加による)

左聴神経腫瘍による非交通性水頭症(第四脳室圧迫および髄液蛋白増加による)

 

ドレーン管理上の合併症と対策

 

髄液排出過多,過少

適切な髄液排出量を調節できないと,髄液過剰排液や過少排液が生じて患者に重大な障害を生じることがあります。髄液過剰排液では脳ヘルニアやドレーン閉塞のリスクが高まります。逆に髄液過少排液では治療の目的が達せられません。

〔対策〕

脳室の虚脱やテントヘルニアの予防のため,初期排液圧設定は15~20cmH2Oとし,髄液の喪失は最小限にしたほうがよいでしょう。医師が画像や排液量,性状などをみながら設定を変更していきます。

 

感染

ドレーンシステムが留置されていれば頭蓋内感染の原因となりえます。感染リスクは,システムの交換回数が多いほど,留置期間が長いほど,皮下トンネルが短い場合に増加するとされます。また,穿刺部から髄液が漏出した場合にも感染のリスクが高まります。

〔対策〕

感染予防のため,穿刺部位の清潔(機械を用いて操作),無菌操作,皮下トンネルを長くとる(穿刺部から5cm以上離れた場所に作成)ことが有効とされます。穿刺部位が乾燥しているか確認しましょう。抗生物質の投与によりドレーン感染は減少しますが,抗生物質投与中の感染の多くは耐性菌が原因です。このため予防的抗生物質投与は,行う施設と行わない施設があります。

 

頭蓋内出血

脳室穿刺,硬膜開放により頭蓋内出血を生じることがあります。脳室ドレナージの挿入に伴って41%に出血がみられ,10%は15ml以上の出血だったという報告もあります。

〔対策〕

適切な手技,出血性素因や抗凝固・抗血小板薬使用の確認などを行います。

 

ドレーンシステムの接続や穿刺部位からの髄液の漏出

過剰排液や感染の原因となります。また,回路のフィルターが脳脊髄液で濡れて閉塞してしまうと,圧設定にかかわらず髄液がどんどん排出されてしまいます(サイフォン効果)。過剰排出になり低頭蓋内圧となり頭蓋内出血や意識障害を起こします。

〔対策〕

システムの接続が確実であることを確認します。穿刺部から漏れがないか確認します。患者の移動時,移動後には,とくにドレーンシステムの接続やフィルターの閉塞に注意してください。

 

ドレーン抜去

急性水頭症の治療中に予期しない形でドレーンが抜去してしまうと病状の悪化につながるため避けなければなりません。

〔対策〕

ドレーンの固定をしっかりします。刺入部の固定だけでなく,頭皮にも何ヶ所か糸で固定します。また,頚部にテープで固定することで,より強固に固定できます。意識レベルが清明でない場合にはドレーン自己抜去の可能性が高まるため,ご家族の同意を得たうえで四肢や体幹の抑制を行いましょう。

 

設定圧の基準点

脳室ドレナージや脳槽ドレナージでは,モンロー孔の高さが基準点(0点)です(図6)。通常は脳室内のドレーン先端がモンロー孔の位置にあるためです。レーザーポインタを用いると,より正確に設定できます。

図6脳室ドレナージ経路と設定圧の基準点

脳室ドレナージ経路と設定圧の基準点

 

仰臥位では外孔の高さ,側面では正中線の高さとすることが多いです。設定しやすさを優先して前額の高さとしている施設もあります。 仰臥位では外耳孔はモンロー孔より1~2cm低いため実際の圧よりやや高く(実際の圧は設定圧よりやや低い),前額部はモンロー孔より7~8cm高いため実際の圧よりは低く(実際の圧は設定圧より高い)見積もっていることになります(図7)。

図7脳室ドレーン先端(基準点)と外耳孔・前額部との関係

脳室ドレーン先端(基準点)と外耳孔・前額部との関係

 

腰椎ドレナージでは刺入部が基準点となります(図8)。
基準点を常に一定に保つことが大切です。

図8腰椎穿刺(文献5)より引用改変)

腰椎穿刺(<a data-cke-saved-href=

 

観察ポイント

  1. ドレーンの基準点が定められたとおりになっているか
  2. 髄液の拍動があるか,開通しているか
  3. ドレーン刺入部は乾燥しているか,感染徴候がないか:乾燥していても刺入部のドレープが黄染していれば髄液漏出が疑われます。発赤,腫脹,疼痛,膿汁がみられるときは感染が疑われます。
  4. 排液量と性状の観察:定められたとおりの排液量となっているか,短時間に急速に排液されていないか,色調の変化はないか,浮遊物が浮かんでいないか,混濁していないか,など。とくに急に血性になって排液がどんどん増えているときは頭蓋内出血が疑われます。すぐにDr.コールしてください!
  5. 患者の神経徴候に変化がないか:排液に変化があったときには,意識レベル,瞳孔麻痺などもチェックして情報を伝えましょう。

 

記録内容

  1. 基準点
  2. 髄液拍動の有無
  3. 髄液圧
  4. 刺入部ドレッシング汚染の有無
  5. 排液量

これらに変化があったときには神経徴候を観察!

 

おわりに

脳室ドレーン,脳槽ドレーン,腰椎ドレーンは,脳神経外科の集中治療ケアには欠かせない治療です。たかがドレーン1本ですが,出血,感染,排液トラブル,チューブ抜去など,さまざまなピットフォールが潜んでいます。本コラムがドレーン管理のトラブル軽減に役立ってくれれば幸いです。

 

 


[引用・参考文献]

  • (1)Milhorat TH:Hydrocephalus and the cerebrospinal fluid.Williams and Wilkins, Baltimore,1972.
  • (2)Haines DE(著)山内昭雄(訳):ハインズ神経解剖学アトラス.メディカル・サイエンス・インターナショナル.
  • (3)田崎義昭ほか:ベッドサイドの神経の診かた.南山堂.
  • (4)脳神経外科看護メモ;
    http://www9.plala.or.jp/sophie_f/disease/index.html
    (2013年1月7日閲覧).
  • (5)AOFoundationホームページ;https://www2.aofoundation.org(2013年1月7日閲覧).

[Profile]
三河茂喜(みかわしげき)
岩手県立中央病院脳神経外科,救急医療部次長
1988年弘前大学医学部卒業。東北大学医学部脳神経外科,岩手県立胆沢病院,岩手県立磐井病院,秋田大学医学部脳神経外科,市立秋田総合病院脳神経外科を経て,現在は岩手県立中央病院脳神経外科,救急医療部次長。脳神経外科指導医,救急専門医,脳卒中専門医,頭痛学会指導医,JATEC,PTLSインストラクター,ISLS認定コーディネーターなどを務める。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2013医学出版
[出典]BRAIN2013年第3号

P.220~「脳室ドレーン,脳槽ドレーン,腰椎ドレーン」

著作権について

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