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2016年05月04日

心房粗動|P波が見つからない心電図(3)

看護師のための心電図の解説書『モニター心電図なんて恐くない』より。

〈前回の内容〉

心房細動

今回は、心房粗動について解説します。

田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長

 

〈目次〉

 

心房粗動とは

図1の心電図を見てください。

図1心房粗動(AF)の心電図

心房粗動(AF)の心電図

 

変な波形ですね。QRS波は幅も狭く同じ形ですが、RR間隔は一定なところも不定なところもあります。

普段見るP波ではなさそうで、ノコギリの歯のように規則正しくギザギザしていて、直線の部分はありません。これは心房粗動(atrial flutter:AF)という不整脈です。このギザギザ波を大文字のFでF波(flutter波)といいます。

心房粗動を解説する前にリエントリーの説明をします。

10人くらいの人が輪になっている状況を想像してください。1人がボールを持っていて、それを隣の人に渡します。もらった人は、反対の隣の人に渡し、次の人も……。ボールは人の輪を一方向にグルグル回っていますね。このボールの回転が続くためには、条件が必要です。

まず、人の輪が必要です。それから、あまりに速い回転だと受け取る準備ができていないままボールが回ってきますから、そこでボールが止まってしまいます。どこかでゆっくり渡して、受け取る準備が整うのを待つ必要があります。

心筋でいうとボールは電気信号です。人の輪は旋回路で、興奮が伝導するルートです。一度興奮すると不応期に入りますから、どこかでゆっくり興奮が伝導して、不応期が終わったころに興奮が戻ってくればこの興奮の輪は連続します。この興奮の旋回をリエントリーといいます。

心房粗動は、心房のなかを興奮が旋回する不整脈です。具体的には右心房内で三尖弁の周囲でリエントリー回路をつくり、興奮が旋回します。

この興奮の輪を導火線のようにして周囲の心房筋を興奮させるので、常に心房のどこかが興奮していて、フラットな部分はありません。

ノコギリの刃の1つが心房の興奮1周を表しています。右心房の外側を興奮は下に速い速度で伝導して、下大静脈と三尖弁の間を通過して中隔側からゆっくり上に向かって進みます。

つまり下方向に速く、上方向に遅い伝導で旋回しています。

したがって、下方向のⅡ誘導、Ⅲ誘導、aVFでは心電図上、プラス側に立ち上がりが鋭く、逆にゆっくり進む下から上に向かう興奮は、Ⅱ誘導、Ⅲ誘導、aVFではマイナスつまり下向きに、しかもゆっくり進むので、緩やかな下り坂として見られます。Vでは速い伝導が強調されてまるでP波のように見えますので注意しましょう。

ノコギリの刃の1つ、すなわち心房の1周の時間を計測してみましょう

5コマですね。0.04秒×5=0.2秒ですね。0.2秒で興奮が右心房を1周するわけです。人間の心臓では心房1周0.2秒は、どの人もほぼ同じです。これを1分間に換算してみますと、1500÷5=(60÷0.2)=300回/分です。

つまり1分間に300周することになり、1周を心房収縮1回と考えれば、心房心拍数は300回になります。心房筋は心室筋よりも不応期が短く、短時間に出される命令にもよく反応しますから、300回/分の心拍数もありえます。

心房内の興奮1周ごとに房室結節に1回信号が入ります。つまり、0.2秒に1回、1分間では300回の信号が入るわけです。

これをすべて心室に伝導してしまうと心室の心拍数は300回/分になってしまいます。心室はたまったものではありませんね。そもそもそんな頻度で伝導できるほど房室結節は働き者ではありません。

房室結節に入る信号の何回に1回を心室に伝えるかを伝導比といいます。

心房粗動の場合1:1の伝導比なら心室興奮は0.2秒間隔、心拍数300回/分ですが、これは通常ありません。1:1の伝導比では、1回はブロックされますから0.4秒に1回の心室興奮で、心拍数は150回/分、3:1で100回/分、4:1で75回/分になります。

つまり、心拍数は伝導比によって300の約数になります。これを心房粗動の「300の法則」といいます。一般には2:1、4:1の伝導比が多く、心拍数は150、75回/分になります。

 

日本列島新聞ではどうなっているのでしょう。心房北海道内の一部が輪になって配達回路をつくります。この輪のなかで順番に新聞を回覧します。洞結節宗谷岬は、この新聞にリセットされ続けて自分は命令を出せずに沈黙しています。0.2日に1回転の新聞の輪ですから、かなりの頻度です。

この新聞をすべて心室本州に配達する能力は、房室結節ゲートオジさんにはありません。2回に1回ゲートを開くのがやっとです。それでもヒストンネル以下心室本州は0.4日に1回の配達ですから、大変ですね。心室本州の新聞の流通はいつもと同じなので、頻度以外は同じように各家庭に配達が行われます。

*****

発作性、慢性心房粗動があり、対応も心房細動とほぼ同じ扱いです。しかし、心房細動に比較して粗動のまま慢性化することは多くありません。

洞調律復帰には、抗不整脈薬、除細動を行いますが、心房細動よりも少ないエネルギーで治ります。

カテーテルで伝導路を焼いて治療する“アブレーション”を行うこともあります。心房粗動の場合は、心房収縮はあるので血栓は心房細動ほどできやすくありません。

 

心房粗動のまとめ

  • 心房内を興奮がリエントリーする不整脈で、1周0.2秒なので5コマごとに規則的にヤマをつくるF波が見られる。
  • F波はⅡ誘導、Ⅲ誘導、aVFではっきりし、VではP波のように見えることもある。
  • 心房何周に1回心室に伝導するかを伝導比といい、伝導比が固定していれば心室のリズムは規則正しくなる。
  • 伝導比は房室結節の不応期によって決まり、2:1(心拍数150回/分)、4:1が多い。
  • 発作性、慢性心房粗動があり、発作性は、薬剤、除細動、アブレーションで洞調律に回復させる治療を行うこともある。

 

〈次回〉

発作性上室性頻拍

 

⇒〔「モニター心電図なんて恐くない」〕記事一覧を見る


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『新訂版 モニター心電図なんて恐くない』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版

著作権について

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