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2016年02月26日

心肺停止(CPA)の心電図波形

看護師のための心電図の解説書『モニター心電図なんて恐くない』より。

〈前回の内容〉

心肺停止の患者さんを発見したときの対応

今回は、心肺停止(CPA)の心電図波形について解説します。

 

〈目次〉

 

心肺停止(CPA)の心電図波形

まず、いちばん大切なことを心に刻みましょう。

「モニターを見るな、人を見よ」

たとえ心電図モニターがどんな波形を示そうと、患者さんの息・咳・体動がなくて、脈拍が触れなければ、それは心肺停止ですから、「心肺停止の患者さんを発見したときの対応」の英子の方法で心肺蘇生法を行います。

だから、まず患者さんの状態を把握することが必要です。そのうえで、心電図の解析が必要な理由は、唯一、除細動が必要かどうかを判定するためです。

その点をよーく、キモに銘じておきましょう。

4種類の波形を2種類ずつに分けます。一方は除細動が必要な波形、もう一方は除細動が必要ない波形です。

除細動が必要なのは、心室細動(VF)と無脈性心室頻拍(pulseless VT)。

除細動が不要(逆に有害ともいわれています)なのは、無脈性電気活動(PEA:pulseless electrical activity)と心静止(asystole)です。

 

心室細動(VF:ventricular fibrillation)

図1をご覧ください。

図1心室細動の心電図

心室細動の心電図

 

なんだか、勉強したP波もQRS波もなくて、基線が波打っているだけですね。

これが心室細動です。特徴は不規則な基線のユレが見られるだけという点です。

心室はピクピクとケイレンしているだけで、有効な血液の拍出は行われていません。当然のことながら血圧もなく、脈が触れるわけもありませんよね。

 

無脈性心室頻拍(pulseless VT:pulseless ventricular tachycardia)

図2は、いかがでしょうか?

図2無脈性心室頻拍の心電図

無脈性心室頻拍の心電図

 

幅の広いQRS波が、短い間隔で連続していますね。とりあえずは幅広=心室性、短い間隔で連続=頻拍ですから、心室頻拍と考えましょう。

“無脈性”かどうかは、とにかく患者さんのところに行ってみないとわかりません。

心室頻拍でも、血圧も下がらずほとんど無症状の人もいますから……。

 

コラム歯磨き不整脈

番外編ですが、病棟のモニターでは「歯磨き不整脈」が存在します(図3)。

図3歯磨き不整脈

歯磨き不整脈

 

これは、その歯磨き不整脈ですが、まるで心室細動のようです。看護師があわてて駆けつけると、「なんかあったの?」という顔で黙々と歯磨きをしている患者さんがいました。な~んだ、チャンチャン。

体動などに伴うノイズ(アーチファクトともいう)の混入です。

人騒がせですが、な~んだチャンチャンでも、この“あわてて駆けつける”のが最重要です。

モニター心電図に異変があったら、とにかくベッドサイドへダッシュです。なんともなくてチャンチャンならば幸いです。

もし眼をむいて卒倒していたら……。

まずは意識の確認。

意識がなければ、応援と救急カートと除細動器を頼みます。

この「応援・救急カート・除細動器」は“急変時の三種の神器”ですからセットで頼んでくださいね。

三種の神器が到着するまでは、できる範囲で一次ABCDサーベイを行いましょう。

口対口の人工呼吸は、マスクなどを携帯していなければ感染の問題などもあるので、頭部後屈・あご先挙上による気道確保だけでもかまいません。

三種の神器が到着して、心肺蘇生を行いつつ、心電図を装着して前述の2つのいずれかの波形、すなわち、心室細動か心室頻拍(この場合、心肺停止なので、当然無脈性)なら、速やかな除細動が必要です。

 

心静止(asystole)

図4はご覧のとおり、ただただ1本の横線です。

図4心静止の心電図

心静止の心電図

 

心臓がなんの活動もしていない、すなわち“静止”している状態です。横1本線なので“フラットライン”、あるいは英語の発音が“エイシストール”なので通称“エイシス”とよびます。なんとなくプロっぽいでしょう。心室静止ともいいます。

解説も何もありませんが、ここにも落とし穴があります。

1つは電極はずれ。これはベッドサイド・ダッシュで簡単に判明しますね。

もう1つは、波高の低い心室細動の場合です。モニターの感度を下げていると、心室細動が心静止と誤認されることがあります。誤認してまずい理由は、先述のとおり、心室細動なら除細動が必要、心静止なら不要だからです。

これを防ぐために“フラットライン・プロトコール”を行います。カッチョいいカタカナですが、要は本当に心静止かどうかを確認する手順です。

ベッドサイドで心肺停止を確認して、モニターを付けたら心静止だった。ここでフラットライン・プロトコールだ。

フラットライン・プロトコール
  1. リードを確認  →電極ははがれていないか。リードが心電計につながっているか。
  2. 感度を上げる  →感度の下がりすぎで心室細動を見逃していないか。
  3. 誘導を替える  →誘導を切り替えてみて、心室細動でないことを確認する。

すべて、“ホントに心静止か。VFは隠れとらんか”という疑惑の確認をしているわけです。

リー・カン・ユウドーを確認しますから「3つのを確認!」などとウマイことをいう人もいます。

これで本当に心静止と確認できれば、除細動せずに、次の二次ABCDサーベイに移るわけです。

 

無脈性電気活動(PEA:pulseless electrical activity)

図5の心電図の説明は難しい。なぜなら、「この心電図がPEAです!」という波形はないのです。

図5無脈性電気活動の心電図

無脈性電気活動の心電図

 

この図のように、心電図としては全く正常な波形でも、患者さんが心肺停止状態ならば、それは、無脈性電気活動(PEA)です。

急変患者があったときに、心肺停止を確認してモニターを付けた。そこで出た波形が、心室細動でも心室頻拍でもない。でも、何か出ているから心静止でもない。

そうです、心肺停止患者でVF・VT以外の何かの波形が出ていれば、たとえ正常波形でもすべてPEAです。

どんな波形であろうとも、除細動の必要がなければ、人工呼吸と心臓マッサージを続けて、二次ABCDサーベイに移るのです。

日頃の習性で、とくに医師はモニター波形が正常だと、心臓が正常に活動しているように錯覚し、一息ついてしまいます。

でも目の前の患者さんを見ましょう。呼吸していません、脈も触れません、心肺停止です。

心肺蘇生は続けなければなりませんよ。

ここです、最初にキモに銘じてもらったのは。

もう一度ズバリ言うわよ……「モニターを見るな、人を見よ」

心肺停止の判断はモニター心電図ではなく、患者さんの状態なのです。

 

最後に心肺蘇生について付け加えておきます。

本人、ご家族、医療チームの間で、蘇生をしないことが決定され、文書などで示されている場合は、DNAR(do not attemptresuscitaion、蘇生を行うな)ですから、事前にわかっていれば、心肺蘇生は行いません。

 

〈次回〉

不整脈の判読法

 

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典]『モニター心電図なんて恐くない』(著者)田中喜美夫/2014年3月刊行

モニター心電図なんて恐くない

著作権について

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