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2016年03月21日

バスキュラーアクセスの種類と特徴|透析ケア

『透析スタッフ』2014年第3号<これだけは知っておきたい。バスキュラーアクセス管理>より抜粋。
バスキュラーアクセスの種類と特徴について解説します。

Point

  • VAの種類は大きく,シャントと非シャントに分けられます。
  • シャントにはAVFとAVGがありますが,AVF作製が第1選択となります。
  • AVGには,早期穿刺可能なPU製グラフトとPEP,早期穿刺不可能なePTFEグラフトがあり,それぞれのグラフトの特徴を考慮した手術,管理が必要です。
  • 非シャントには,動脈表在化法とカテーテル法があります。
  • 非シャントは心負荷がないため,心機能が高度に低下した症例に適しています。

春口洋昭
(飯田橋春口クリニック 院長)

〈目次〉

 

はじめに

効率のよい血液浄化を行うには,人工腎臓に1時間に約200 mL/分の血流を流すことが必要です。

皮下静脈から採血は可能ですが,これほど多くの血液を持続的に引き出すことはできません。上腕動脈や大腿動脈,中心静脈からであれば,必要な血液を得ることができます。実際,現在のようなシャントが考案される前は,直接,動脈や中心静脈にカテーテルを挿入して透析を行っていました。

しかし頻回に使用することは不可能で,慢性腎不全患者の救命は不可能でした。1960年にシアトルワシントン大学のScribnerとQuintonが外シャントを考案して慢性腎不全患者の救命が可能となりました。その後1966年にBresciaとCiminoが内シャントを考案して現在に至っています。

一方そのころ,ロンドンではShaldonがカテーテルを大腿動静脈に留置して透析を開始しています。現在の主なバスキュラーアクセス(VA)は,シャントとカテーテルです。また日本では,動脈を表在化して直接穿刺する方法もあります。このコラムでは,さまざまなVAの種類と特徴について解説します。

 

VAの種類

シャント

VAは大きく,シャントと非シャントに分けられます。

シャントとは,動静脈間に血流を流し,その流れを利用して透析を行うものです。シャントには,外シャントと内シャントがあります。

外シャントはカテーテルで動静脈間をバイパスしてそのカテーテルを体外に留置,透析時に接続をはずして使用するものです。血栓や感染のトラブルが多く,現在ではほとんど使用されていません。

一方,内シャントは,皮下で動静脈をバイパスするものです。さらに内シャントは,直接動静脈吻合を行う自己血管内シャント(arteriovenous fistula;AVF)と,人工血管で両者をバイパスする人工血管内シャント(arteriovenous graft;AVG)に分けることができます(表1)。

表1VAの種類

VAの種類

 

非シャント

非シャントはカテーテル法と動脈表在化法があります。いずれも動静脈間のバイパスがありません。

カテーテルはカフを有さない「非カフ型カテーテル」と,カフを有する「カフ型カテーテル」に分けることができます。非カフ型カテーテルは主に短期使用に,カフ型カテーテルは主に長期使用に適しています。

表在化する動脈は主に上腕動脈と大腿動脈があります。動脈で脱血して,皮下の静脈に返血し透析を行います。大腿動脈の表在化は手術侵襲が大きく,また合併症も多いため現在では行われることが少なくなりました。

非シャントの利点は,シャントで生じる非生理的血流がなく,心負荷がないことです。

 

日本では

2008年の日本透析医学会の統計では,AVFが89.7%,AVGが7.1%であり,透析患者のほとんどが内シャントで透析を受けています。とくにAVFの割合が多いのが日本の特徴で,このことが長期透析を可能にしている一因でもあります。

 

自己動静脈内シャント(AVF)

AVFとは

動脈と皮下静脈を直接吻合して,静脈に多くの血流を流し,静脈に穿刺する方法であり,現在のVAの主流となっています(図1)。

図1前腕のAVF吻合部

前腕のAVF吻合部

橈骨動脈の側面に橈側皮静脈の断端を吻合して,側端吻合でAVFを作製しました。吻合径は約6 mmです。

吻合する部位によって,末梢側から,タバチエールAVF,前腕末梢AVF(橈側,尺側),前腕中央部AVF,肘窩AVF,上腕AVFがありますが,手術の容易さ,合併症の少なさや穿刺部位の広さを考慮して,なるべく末梢から作製することが推奨されています。

 

AVFの特徴

AVFの特徴は,人工物を使用しないため,感染のリスクが少ないことです。また良好に発育すると,30年以上使用し続けることが可能となります。ただ,長期に使用すると,血管の蛇行や瘤形成をきたしやすくなります。また,肘窩で作製すると,過剰血流やスチール症候群の危険因子となります。

 

人工血管内シャント(AVG)

AVGとは

動静脈間を人工血管でバイパスしてシャントを作製するもので,通常人工血管(グラフト)に穿刺して透析を行います。AVFが第1選択となりますが,AVF作製が困難な場合や,作製しても穿刺困難が予想される場合は,AVGを作製します。

先ほど述べたように,日本ではAVGを使用している血液透析患者は全体の7.1%程度で,世界的にみても割合が少ないです。ただ,日本においても長期透析患者が増加しており,AVGは増加傾向にあります。

 

グラフトの種類と特徴

現在主にAVGに使用されているのはexpanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)グラフト,ポリウレタン(PU)製グラフト,polyolefin-elastomer-polyester(PEP)グラフトの3種類です。ePTFEグラフトは2~3週間かけて十分に周囲組織との癒着が完成してから穿刺します。PU製グラフトやPEPグラフトは三層構造を有し,グラフト自体に止血能力があるため,術後24時間で穿刺可能となります。

それぞれのグラフトの特徴について表2にまとめました。

表2人工血管の種類と特徴

人工血管の種類と特徴

 

人工血管のサイズは,直径5 mm,6 mmのストレートグラフトと,動脈側が4 mm,静脈側が6 mmまたは7 mmとなったテーパードグラフトがありますが,患者や血管の状態により選択します。

グラフトはストレートまたはループ状に移植します(図2)。

図2前腕のグラフト移植方法

前腕のグラフト移植方法

ストレートに移植する方法と,ループ状に移植する方法があります。静脈は肘部の深部静脈もしくは,上腕尺側皮静脈を用いることが多いです。

前腕に移植する場合,通常肘の上腕動脈と深部静脈に吻合するため,ループグラフトを選択することが多くなります。上腕では,カーブ型,ループ型に移植します。

グラフトは静脈吻合部に狭窄をきたすことが多く,脱血不良を呈さずに突然閉塞することがあります。静脈圧をモニターすることで,ある程度の狭窄の進行を予測することが可能です。

 

動脈表在化

動脈表在化法は,通常の内シャント作製が困難な場合や,作製可能であってもシャントによる心負荷に耐えられないと予想される症例で選択されます。日本特有のVAの形態であり,欧米ではほとんど行われていません。動脈に直接穿刺するため,狭窄などの合併症を生じると直接末梢循環に影響を与えます。

そのため,高度な狭窄や瘤が出現した場合は,表在化動脈での透析を断念し,他のVAに変更する必要があります。返血側の穿刺は表在静脈への穿刺が必要になりますが,シャント静脈に比較して穿刺による狭窄や閉塞をきたしやすいため,最終的には返血する静脈の問題で使用できなくなることも少なくありません。

表在化する動脈としては,主に上腕動脈と大腿動脈が選択されますが,大腿動脈表在化手術は侵襲が大きく合併症も多いため,現在ではほとんどが上腕動脈表在化法となっています(図3)。

図3上腕動脈表在化手術直後

上腕動脈表在化手術直後

 

肘関節のやや中枢で上腕動脈を約7 cm挙上して皮下に固定,上腕動脈を表在化しました。穿刺しやすいように,創部と表在化動脈の距離を2 cm程度離しています。

 

カフ型カテーテル

1960年代より,中心静脈にカテーテルを留置して透析が行われていました。感染率が高く,3週間程度しか使用することができないため,透析用カテーテルはもっぱら緊急透析で使用されていました。1980年代になると,カフを有し,皮下トンネルを作製することで年単位で使用できるカテーテルが登場し全世界で広く使用されるようになりました。

カフ型カテーテルには,ダブルルーメンタイプのものを1本留置する方法と,シングルルーメンタイプのものを2本留置する方法があります。通常,カテーテルは右内頚静脈から留置します。また,カテーテルの先端は右心房の入り口に浮遊していることが推奨されています。良好な位置に留置されれば,200 mL/分以上の脱血が可能となります。

何らかの原因でカテーテルの位置がずれると,静脈の壁面に当たり脱血不良を呈しますが,その場合は,早急にカテーテルの位置を変更する必要があります。

カテーテル内血栓を生じた場合は,ウロキナーゼ6万単位をカテーテル内に充満させ,30分ほど時間が経過した後に吸引することで,血栓を除去することが可能です。頻回に血栓を形成する場合は,持続的なヘパリン注入やワルファリンの投与が必要となります。

カテーテルの感染には,出口部感染,トンネル感染,カテーテル感染があります。全身感染を呈する場合,多くはカテーテルの抜去が必要となります。

 

おわりに

VAの種類と特徴について解説しました。それぞれのVAはそれぞれ長所・短所がありますので,ぜひその特徴を十分理解したうえで管理にあたってください。1966年にAVFが考案されてから現在まで,AVFがVAの主流となっていて,しばらくの間その状況は変化がないと考えられます。

以上,VAの種類と特徴について解説しました。表3にそれぞれのVAの特徴をまとめました。

表3各VAの特徴

各VAの特徴

 


[Profile]
春口洋昭(はるぐち ひろあき)
飯田春口クリニック 院長
1985 年 鹿児島大学医学部 卒業,同年 東京女子医科大学 第3外科に入局。腎移植,一般外科,腎不全外科,泌尿器科の臨床 と研究を行う。2006 年 飯田橋春口クリニックを開業,バスキュラーアクセス専門の外来診療を行っている。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]透析スタッフ 2014年第3号

透析スタッフ2014年第3号

P.11~「バスキュラーアクセスの種類と特徴」

著作権について

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