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2016年01月29日

心室頻拍,トルサード・ド・ポアンツ

『循環器ナーシング』2014年5月号<この波形を見逃すな!循環器病棟の危険な不整脈>より抜粋。
心室頻拍,トルサード・ド・ポアンツ について解説します。

Point

  • 心電図モニターで,洞調律時の波形とは異なった幅広いQRS波が連発した場合は,心室頻拍を疑う!
  • 心室頻拍を認めた場合は,その患者が心筋梗塞や心筋症などの基礎心疾患を合併しているかが重要で,とくに低心機能の場合には頻拍時に血行動態が破たんしやすくなる!
  • 頻拍が持続している場合には,心電図モニターの確認だけでなく,意識レベルや脈の触知を確認することが重要!

飯田剛幸
(東海大学医学部付属八王子病院 循環器内科 助教)

小林義典
(東海大学医学部内科学系 循環器内科学 教授)

〈目次〉

 

はじめに

本コラムでは,心室頻拍(ventricular tachycardia;VT)と,特殊な心室頻拍であるトルサード・ド・ポアンツ(torsades de pointes;TdP)について,それぞれの基礎疾患や病態,注意すべきポイントについて述べます。

とくに持続性心室頻拍は,治療が遅れた場合には心室細動(ventricular fibrillation;VF)へ移行することもあり,早期の発見・治療が必要です。基礎心疾患の有無や心機能の程度,心不全の合併など患者背景によって重症度や治療方針が異なるため,本コラムでそれぞれ説明していきます。

 

心室頻拍の定義と分類

心室頻拍の定義

一般的に,100回/分以上の心拍数で,3発以上連続して心室期外収縮を認めた場合を心室頻拍とします。

 

心室頻拍の分類

持続時間での分類

30秒未満で自然停止するものを非持続性,30秒以上続くものを持続性心室頻拍といいます。また,出現と停止を繰り返し認める場合は反復性心室頻拍(incessant〔インセサント〕型)と呼びます。

 

QRS波形での分類

頻拍中のQRS波形が単一のものを単形性心室頻拍,QRS波形が変化するものを多形性心室頻拍といいます。特殊な多形性心室頻拍として,QRS波形が基線を軸として捻じれるように変化していくものをトルサード・ド・ポアンツと呼びます。

 

心室頻拍の症状と波形

心室頻拍の症状

症状として動悸や眼前暗黒感,失神などがあります。すでに頻拍が停止していたとしても,失神があった場合には血行動態が破たんする頻拍である可能性があるため,注意が必要です。頻拍が持続している場合にはモニターに注意すると同時に,意識レベルや血圧を確認し,除細動器や救急カートを準備しましょう。

 

心室頻拍の波形

心電図上,幅広いQRS波形(0.12秒以上)が3連発以上続くものを心室頻拍と呼びます(図1MEMO1)。

図1心室頻拍の波形

心室頻拍の波形

 

MEMO1心室頻拍時の心電図モニターとSpO2モニター

図1の上の波形は心電図モニターで,下の波形はSpO2モニターになります。心室頻拍中はSpO2モニターで脈が検出できておらず,無脈性の心室頻拍と判断できます。モニターのレビュー画面でも頻拍中の血行動態を予測できます。

 

特殊例として,上室性頻拍でもWPW症候群に伴うものや変行伝導を生じている場合には同様に幅広いQRS波形が連続し,心室頻拍のようにみえることがあります。とくにWPW症候群に心房細動が合併した場合は,不規則な幅広いQRS波形が連発し,偽性心室頻拍と呼ばれます。

 

心室頻拍の発生機序

発生機序から,リエントリー性と非リエントリー性に分類されます。

「リエントリー」とは電気興奮がぐるぐると旋回するもので,器質的心疾患に合併することが多く,持続しやすいという特徴があります。傷害された心筋部分が一方向性のブロックを生じることで,一様に流れていた電気興奮が渦を巻くように回路を形成してしまうことで起こります。

非リエントリー性は,心室筋の一部分から異常電気興奮が生じてしまうことにより発生します(図2)。

図2リエントリー性頻拍と非リエントリー性頻拍

リエントリー性頻拍と非リエントリー性頻拍

 

心室頻拍の基礎疾患

心室頻拍は,虚血性心疾患電解質異常,心不全が主な原因となります。器質的心疾患を合併するものとしないものに大きく分けられます。

器質的心疾患をもつものは,もともとの心機能も低下していることがあり,多くの場合において,頻拍時には血行動態が不良となります。

一方,とくに心疾患をもたないものに認める心室頻拍は,特発性心室頻拍と呼ばれ,血行動態は保たれることが多いです。

 

トルサード・ド・ポアンツ

トルサード・ド・ポアンツの特徴

トルサード・ド・ポアンツ(torsades de pointes)はフランス語で「ねじれ」を意味し,形態的に特徴的な多形性心室頻拍です。頻拍中はQRS波形の振幅と形態が一拍ごとに変化し,基線を軸にねじれているようにみえます(図3)。自然停止することも多いですが,心室細動へ移行する場合もあるため,注意が必要です。

図3トルサード・ド・ポアンツの波形

トルサード・ド・ポアンツの波形

 

トルサード・ド・ポアンツの原因

QT部分は,心筋の再分極(興奮が収まる)過程を反映しています。この部分が延長することがトルサード・ド・ポアンツの原因です。

 

トルサード・ド・ポアンツの分類

心筋のイオンチャネルの異常が原因の先天性QT延長症候群と,主に電解質異常や薬剤などが原因となる二次性QT延長症候群に分類されます(表1)。

表1QT延長症候群の原因となる主な薬剤と病態

QT延長症候群の原因となる主な薬剤と病態

 

二次性では多くの場合において,抗不整脈薬服用中の患者が,腎機能悪化により抗不整脈薬の血中濃度が上昇したり,利尿薬投与による低カリウム血症が生じたりすることでQT延長が起こります。ただし薬剤性の場合は,その他にも抗生剤や向精神病薬などでも生じるため,循環器内科以外の病棟でもトルサード・ド・ポアンツを経験することもあります。

 

QT延長の定義

QT時間は0.45秒以上で延長とされますが,心拍数の影響を受けるため,一般に補正QT(QTC=実測QT〔秒〕/間隔〔秒〕:Bazett〔バゼット〕の式)によって評価します。

補正QTが0.44秒を超える場合にQT延長とします。モニター上で簡単に評価する場合は,T波のおわりが任意のR波と次のR波の中点を超える場合にQT延長が疑われます。その際には12誘導心電図でチェックしましょう。

図4にQT延長前後の12誘導心電図を示します。12誘導心電図で評価すると,誘導によってはQT延長の程度がわかりやすくなります(MEMO2)。

図4QT延長前後の心電図

QT延長前後の心電図

 

QT延長前後の心電図

 

MEMO2QT延長の評価

QT延長の有無は,12誘導心電図の全ての誘導で評価しましょう。この症例においては,四肢誘導では一見すると変化がわかりにくくなっています。しかし胸部誘導で比較すると,とくにV3誘導ではQT延長がわかりやすくなっています。

 

トルサード・ド・ポアンツの治療

先天性の場合には薬剤による発作の予防,二次性の場合にはQT延長を起こしている原因の除去を行います。

先天性では,タイプによりβ遮断薬やメキシレチンの内服が有効ですが,薬剤が有効でない場合やハイリスク例では突然死予防のため,植込型除細動器(ICD)を考慮します。

二次性では,原因除去と並行して,硫酸マグネシウムの投与やペーシング治療にてトルサード・ド・ポアンツの発生を予防します。

 

心室頻拍の治療とケア(表2MEMO3

心電図モニターにて心室頻拍を疑った場合,まず患者の状態をチェックすることが重要です。
すでに心室頻拍が停止している場合には,現在のバイタルサインをチェックするとともに,動悸や眼前暗黒感などの症状がなかったか確認し,医師に報告しましょう。

現在も持続している場合には,早急な処置が必要です。バイタルサインをただちに確認し,医師へ報告するとともに,救急カートおよび除細動器を準備しましょう。一人では応対せずに,人数を集めて役割分担することも重要です。

非持続性心室頻拍の場合は,緊急性は少ないですが,症状が強い場合や繰り返し認める場合には薬剤投与も考慮されます。また,電解質異常や虚血などの隠れた可逆的要因がないかチェックし,必要ならば是正を行います。

持続性心室頻拍では,血行動態が安定している場合は薬剤投与にて停止を試みますが,心室細動へ移行した場合や血行動態が不良な場合には,除細動や心電図同期下でのカルディオバージョンが必要です。

また,心電図モニターがついてない患者が意識消失発作や動悸症状を訴えた場合には,とくに器質的心疾患を合併する例では心室頻拍発生の可能性も考慮し,モニターを装着しましょう。

持続性心室頻拍の再発予防の治療法としては,薬物療法やカテーテルアブレーションがありますが,それだけでは完全に頻拍発作が予防できないこともあり,突然死予防としてICD植込みが考慮されます。

表2持続性心室頻拍の治療とケア

持続性心室頻拍の治療とケア

 

MEMO3薬物治療の注意点

心室頻拍の治療薬であるアミオダロンやニフェカラントはQT延長を引き起こす可能性があります。そのため使用する前には,心室頻拍がQT延長によるものかどうか確認をすることが重要です。

 

おわりに

心室頻拍の治療とケアは,迅速な判断と処置が必要になります。無症状であっても,経過観察中に心室細動へ移行する可能性があります。合併疾患や薬剤治療内容などの背景を確認するとともに,このようなハイリスクな患者の情報をスタッフ間で日々共有することが重要です。

緊急時に落ち着いて対処できるよう,日頃から急変時ケアのシミュレーションを行い,また既往歴や心機能などの情報からハイリスクな患者を同定できるようにしましょう。

 

 


[引用・参考文献]

  • (1)小林義典ほか(編):不整脈レジデントマニュアル.医学書院,2012.
  • (2)日本循環器学会ほか:循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008年度合同研究班報告)不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版).http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf

[Profile]
飯田剛幸(いいだ たかゆき)
東海大学医学部付属八王子病院 循環器内科 助教
2005年 新潟大学医学部医学科卒業。同年 聖路加国際病院内科研修医,2008年 東海大学医学部内科学系循環器内科を経て,2009年より東海大学医学部付属八王子病院循環器内科勤務。日本循環器学会専門医,日本不整脈学会専門医。

小林義典(こばやしよしのり)
東海大学医学部内科学系 循環器内科学 教授
1981年 日本医科大学医学部卒業。同年 日本医科大学第一内科学,1989年 米国Cedars-Sinai Medical Centerに留学,2004年 日本医科大学第一内科助教授,2007年 日本医科大学付属病院内科学准教授,2009年 東海大学医学部内科学系循環器内科教授,東海大学医学部付属八王子病院循環器病センター長,2012年 同院副院長。日本循環器学会専門医,日本不整脈学会専門医。著書に『不整脈診療レジデントマニュアル(小林義典,新田 隆 編)』(医学書院)などがある。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]循環器ナーシング 2014年5月号

循環器ナーシング 2014年6月号

P.38~「心室頻拍,トルサード・ド・ポアンツ 」

著作権について

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