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2016年01月03日

病原体から身体を守る免疫|身体を守る免疫系のはたらき(1)

ナースのための解剖生理の解説書『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』より
今回は、身体を守る免疫系のはたらきから解剖生理を理解するお話の1回目です。

〈前回の内容〉

受精のメカニズム|受精のしくみから理解する(3)

前回は、受精のメカニズムについて学びました。

今回は、病原体から身体を守る免疫について解説します。

 

増田敦子
了徳寺大学医学教育センター教授

 

〈目次〉

 

もう1つのホメオスタシス

生体には、ホメオスタシスといって体内の環境を一定の状態に保っておくはたらきが備わっていると話しました(『身体の中の社会|生体としての人体(3)』)。たとえば、血圧が何らかの原因で低下したとすると、ただちに血圧調節機構がはたらき、元の正常な状態に戻そうとします。血圧だけでなく、体温、血糖値など多くの生理的機能が、それぞれの調節機構によって正常な状態を維持しています。

実は、こうした「正常な状態を維持しよう」というはたらきは、生体に病原体が侵入してきた時にも同じようにはたらきます。こうした場合、生体はただちに病原体の侵入を物理的・化学的に防いだり、病原体の増殖を止めたり、殺したりして排除しようとします。

そして、病原体に対する生体防御機構で最も重要なのが免疫(immunity)です。免疫とは、一般に「自然治癒力」ともいわれますが、私たちの身体は、この自然治癒力のお陰で病原体が侵入してきたからといって、すぐに病気(感染症)になってしまうことはないのです。

 

「自己」と「非自己」を区別する

免疫、つまり「病をれる」という現象は、経験的に古くから知られていました。古代ローマではペストに感染した後、回復した者だけがペスト患者の看護が許されたといいます。また、梅毒から回復した患者は、梅毒の再感染に対して抵抗性を示すことも知られていました。当初、免疫とは、このように、一度ある感染症にかかると、二度とその病原体による感染症に罹らない(発症しない)現象、つまり「二度なし現象」を指すものとしてとらえられていました。

しかし、免疫現象は病原微生物に対してのみ起こるのではありません。自らの生体以外の異物、時には自らの生きた細胞に対してまでそれを排除しようとはたらくことがあるのです。したがって免疫とは、正確には、自己(self)の構成成分以外の非自己(not self)を生体から排除し、生体の恒常性(ホメオスタシス)を維持する基本的機能の1つであるといえます(図1)。

図1生体をおびやかす外界からのnot-selfと生体内に発生するnot-self

生体をおびやかす外界からのnot-selfと生体内に発生するnot-self

 

自然免疫と獲得免疫

免疫には、自然免疫と獲得免疫の2つの種類があります(表1)。

表13つのバリア

3つのバリア

 

自然免疫とは生まれつき備わっている先天的な防御機構で、あらゆる異物、つまり「非自己」に対してその特異性に関係なく対応できるので、非特異的防御機構とも呼ばれています。

一方、獲得免疫は生後に異物が侵入してきたとき、その特異性を記憶することで獲得できるものなので、後天的防御機構と呼ばれています。言い換えると、この免疫は「非自己」との遭遇で獲得できるということです。また、一度侵入したことがある異物だけに対応するので特異的防御機構とも呼ばれています。

両者のはたらきは、それぞれ別個のものではなく、密接に関係しながら生体を守ってくれています。

まず、体外からの病原体の侵入は、生体表面の機械的なバリアで妨げられます。病原体がこの1番手のバリアを越えて侵入してこなければ病気ならずに済みます。しかし、この1番手のバリアを越えて病原体が侵入すると、2番手のバリアとして白血球の一種である食細胞や抗菌物質が頑張りますが、炎症を起こしたり発熱したりして発病してしまいます。このとき発病しなくても、2番手のバリアで食細胞が活躍すると生体は侵入してきた病原体の特徴を記憶しておきます。そして、その病原体が2度目に侵入してきたとき、今度は発病しないように反応してくれます。これが3番手のバリアで特異的防御機構といい、狭い意味で免疫ともいいます。

ですから、免疫は「病をれる」と書きますが、どんな病気にもかからないというわけではなく、一度かかったことがある病気に限定されることがわかりますね。また、病原体が侵入しても生体がその病原体の特異性を記憶すれば、発病しなくてもその病原体による病気にならなくてもすむこともわかりますね。このように感染が成立していながらも臨床的な症状を示さない感染様式を不顕性感染といいます。これを臨床で応用したのが後述するワクチンです。

過去の失敗を教訓として、同じ失敗を繰り返さないように歴史を学ぶのと同じでははいでしょうか。臨床では、医療事故が起きた場合にアクシデント・レポートを提出して再び同じ事故を起こさないようにしますね。これが一度は病気になってしまう例です。

一方、不顕性感染の場合、症状が表面化しないので、感染源であることに気づかれず病原体を他者に広げてしまうおそれがあります。ですから、患者に傷害を及ぼすことがなかったとしても、日常の診療現場でひやりとしたりはっとした経験に関する報告書、インシデント・レポート(ヒヤリ・ハット報告書ともいいます)を提出し、事例を分析することで、インシデントの再発や医療事故の発生を未然に防ぐことができます。

さて、非特異的防御機構と特異的防御機構を警察官にたとえてみましょう。普段、巡回して町の安全を守ったり、怪しい人を捕まえて尋問したりする警察官が自然免疫の主役で、特に決めた人を捕まえようとしているわけではないので非特異的防御機構になります。一方、ある事件を起こした犯人がまだ捕まっていないとき、その犯人が再び事件を繰り返さないように捕まえる警察官がいます。その事件の目撃者から得た犯人の特徴をもとに、その特定の犯人を捕まえようとしているので特異的防御機構です。

 

memo顆粒球の役割

白血球の約60%を占める顆粒球は、体内に侵入したブドウ球菌のような比較的大きいサイズの「非自己=細菌類」を、まるごと飲み込んで消化・分解します。顆粒球は身体を守るシステムの一部ではありますが、いわゆる免疫を発生するわけではないので、食中毒を起こして治ったからといって二度と食中毒にならないというわけではありません。

とはいうものの、顆粒球は自然治癒力という免疫力に関係するという観点から、免疫に深くかかわる免疫細胞の1つとしてとらえることができ、また免疫を語るうえで欠かすことはできない存在です。

 

〈次回〉

先天的な免疫の防御機能|身体を守る免疫系のはたらき(2)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『身体のしくみとはたらき』 (編著)増田敦子/2015年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

この連載

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今日の看護クイズ 挑戦者1375

酸素飽和度についての説明で、正しいものはどれでしょうか?

  • 1.酸素飽和度とは、静脈内の赤血球中のヘモグロビンが酸素と結合している割合を示したものである。
  • 2.パルスオキシメータを用いて測定した値をSaO2、動脈血ガス分析で測定した値をSpO2という。
  • 3.SpO2が正常であれば、体内の酸素量は十分であると判断できる。
  • 4.健康な人の酸素飽和度は96~99%だが、酸素吸入時はSpO2を90%以上維持すれば通常は十分である。
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