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2015年12月21日

低体温療法施行患者の看護

『循環器ナーシング』2015年6月号<ICU・CCUのME機器を理解する!>より抜粋。
低体温療法施行患者の看護について解説します。

Point

  • 低体温療法は,心室細動による心停止後に自己心拍が再開した昏睡状態の成人患者にとって有用な治療法である!
  • 低体温療法中の温度管理や全身管理はとても重要で,治療成果にも影響を及ぼす!
  • 低体温療法中は,血液凝固異常,電解質異常,不整脈感染症など合併症が発生しやすいため,その予防と治療が必要になる!

村上香織
(近畿大学医学部附属病院看護部救命救急センター主任,急性・重症患者看護専門看護師)

〈目次〉

 

はじめに

近年,低体温療法は心肺停止蘇生後患者に対して積極的に行われるようになりました。低体温下では生体反応やエネルギー代謝などの変化が生じるため,看護師は治療効果とともにその生体反応を予測し介入する必要があります。

また,治療効果だけでなく,発生しやすい合併症についても理解しておかなくてはなりません。そこで本コラムでは,低体温療法の管理,管理中の生体反応と合併症,低体温療法患者の看護について概説します。

 

低体温療法とは

低体温療法は,心停止による低酸素,外傷,出血などで損傷を受けた脳に対し,脳保護や頭蓋内圧亢進抑制を目的として,早期に一定期間,体温(脳温)を低下させる治療法です。

また,体温を低下させることで,脳組織の代謝を抑制すると同時に基礎代謝も抑制するため,脳内酸素消費量の低下により虚血を防ぎ,また頭蓋内圧低下により脳浮腫を防止し,二次的脳損傷を抑える効果があります。

 

低体温療法の国際コンセンサス(メモ1

国際蘇生連絡委員会(ILCOR)が発表した『心肺蘇生と緊急心血管治療のための科学と治療の推奨に関わる国際コンセンサス(2010CoSTR)』,日本蘇生協議会(JRC)により2010CoSTRに基づき策定された『JRC蘇生ガイドライン2010』,アメリカ心臓協会(AHA)による『心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2010』では,大規模臨床試験の結果から,低体温療法のエビデンスレベルがクラスⅠとなり,低体温療法はより強く推奨されるようになりました。

院外での心室細動(ventricular fibrillation;VF)により心停止し,自己心拍再開(return of spontaneous circulation;ROSC)後に昏睡状態となった成人患者に対しては,低体温療法(12〜24時間,32〜34℃)を「施行すべき(クラスⅠ)」とされ,院内外での無脈性電気活動(pulseless electrical activity;PEA)や心静止(asystole)により心停止後にROSCとなった昏睡状態の成人患者においては「有益かもしれない(クラスⅡb)」と発表されました。

メモ1低体温療法の国際コンセンサス

近年のRCTにより,33℃の低体温療法は36℃台の体温管理群に比べ,心停止後症候群における神経学的予後改善はみられなかったと結論付けられており,低体温療法の温度管理のあり方について検討されてきています(1)。

 

脳虚血による細胞の障害

心停止により脳の血流が途絶すると,嫌気性解糖が起こり乳酸が産生され,細胞内アシドーシスとなります。また,Na/KATPaseとCa2+ATPaseの構造が変化するため,細胞外カリウムイオンと細胞内ナトリウムイオンが上昇して細胞脱分極を起こし,細胞内カルシウムイオンが増加します。

神経細胞は興奮性伝達物質の受容体が多く,とくにグルタミン酸の受容体が豊富ですが,虚血により細胞外腔へのグルタミン酸放出が誘発され,細胞内へ持続的にカルシウムイオンが流入します。細胞内のカルシウムイオン濃度の上昇は過酸化脂質やフリーラジカルの産生を引き起こし,細胞死に至ります。

 

低体温療法による脳保護作用

低体温により酸素消費量が抑制され,脳代謝が低下(体温を1℃下げると脳代謝は6〜7%減少)することで神経細胞が保護されます。また遅発性細胞壊死の原因となるグルタミン酸の放出を抑制することにより,脳保護作用が発揮されます。

低体温療法の目的は,直接脳内に発生する病態と,視床下部−下垂体−副腎系の神経内分泌ホルモンの過剰放出を伴う循環変動や代謝異常,サイトカインの炎症反応によって発生する二次的脳損傷をすばやく止めることです。そのため,体温管理を行いながら,神経細胞の回復を図り,細胞死を防ぐために十分な酸素供給と血糖値管理を行います。

次いで,神経内分泌過剰放出に伴う脳血液関門傷害や,脳の高次機能を司る視床下部ドーパミン神経群の選択的ラジカル傷害を最小限に抑えることが重要となります。

 

低体温療法の適応

低体温療法は,神経学的な予後を改善する唯一の方法であるため,心停止の原因が心室細動で,従命不能のすべての患者に導入が推奨されています。また推奨レベルはやや下がりますが,心室細動以外の不整脈による心停止の患者に対しても低体温療法を考慮するとされています。

他にも院内心停止患者に対する適応や,溺水,無酸素性脳障害,頭部外傷,外傷性心停止,脳卒中新生児低酸素性虚血性脳症,肝性脳症,細菌性髄膜炎心不全,急性呼吸急迫症候群などへの臨床応用が考えられています(表1)。

表1心肺蘇生後患者における低体温療法の適応と除外項目(文献23を参考に作成)

心肺蘇生後患者における低体温療法の適応と除外項目

 

低体温療法に伴う生体反応と合併症

低体温療法に伴う生体反応は,寒冷環境下で発生する偶発性低体温症とはまったく異なった反応を示します。

また,その生体反応の変化から合併症も発症しやすくなるため,重症患者に対する低体温療法では,患者の全身状態とともに低温化に伴う生体反応と生体反応に起因する合併症を理解する必要があります(図1)。

図1低体温療法に伴う生体反応と合併症(文献4より引用改変)

低体温療法に伴う生体反応と合併症

 

心拍出量の低下と不整脈

体温を1℃下げるごとに心拍出量は約6〜7%低下し,とくに34℃以下になると心拍出量の低下や不整脈による循環障害の発生の危険性が高まります。

心拍出量の低下は,抗利尿ホルモンの分泌抑制や,血管外への血液の漏出による循環血液量の低下,心筋収縮能自体の低下,徐脈により起こります。また,低体温により血管が収縮し末梢血管抵抗が増加するため,各臓器が低灌流に陥ります。

低体温中は寒冷利尿や高浸透圧利尿薬の使用により,血管内脱水が存在してもマスクされやすいため,十分な補液を行って脱水を補正し,血管作動性薬剤を投与し,平均血圧(65mmHg以上)や混合血酸素飽和度(SvO270%以上)を維持する必要があります。

心電図では,QT延長とJ波(オズボーン波)がみられることがあり,低体温時の低カリウム血症や血中カテコラミンの上昇により不整脈が発生しやすく,30℃以下では心室細動が出現する危険性が増大します。

また低体温療法の有無にかかわらず,集中治療管理を行う際には,浸透圧利尿や鎮静・鎮痛薬の使用により末梢血管が拡張し,著しい血圧の低下をきたす場合もあります。

 

呼吸器合併症

心停止後には,左心不全による肺うっ血,感染,無気肺誤嚥など,さまざまな呼吸器合併症が起こります。加えて,低体温療法中は鎮静・鎮痛薬,筋弛緩薬などの使用による咳嗽反射の低下と臥床による背側への分泌物貯留から無気肺を,低体温による免疫機能低下と肺血管抵抗上昇による肺血流の低下から肺炎を起こしやすくなります。

また,低体温は酸素解離曲線を左方移動させ,ヘモグロビンの酸素に対する親和性が増すため,細胞レベルで低酸素血症になります。

 

高血糖

低体温中は,カテコラミンの上昇によりインスリンの分泌が低下し,高血糖となります。

酸素存在下での低血糖は神経細胞壊死を引き起こしますが,無酸素状態でのグルコースの存在はさらに悪影響を及ぼします。虚血状態の細胞内の高血糖は嫌気性解糖を惹起し,結果として細胞内がアシドーシスとなり有害な連鎖を引き起こすためと考えられています。

加えて,心肺停止蘇生後の患者は生体侵襲に伴うストレス反応から耐糖能異常をきたすこと,また34~35℃台で温度管理することで代謝が糖代謝から脂質代謝優位に変化し,グルコースの消費が減少することから高血糖をきたしやすくなります。そのため,急性期の血糖管理は重要で,この時期の糖の投与は慎重に行う必要があります。

また,『JRC蘇生ガイドライン2010』では,血糖の厳格なコントロールは推奨されておらず,ROSC後の成人患者では180mg/dLまでは様子観察し,それを超えるようならコントロールを考慮する(クラスⅡb)ことを勧告しています。そのため,厳格すぎる血糖コントロールによる低血糖には注意しなければなりません。

 

凝固能と微量元素への影響

低体温に伴い血小板数血小板機能は低下し,34℃では37℃と比較してPTやAPTTが延長します。低体温に伴い血小板が変形し,肝臓の類洞や脾臓にトラップされることが原因と考えられます。また,低体温に伴う凝固・線溶系障害は,各種酵素の抑制や血小板機能の変化,線溶系変化などが一因として挙げられます。

そして,過大侵襲をきたしている重症患者では,ビタミンや鉄,銅,亜鉛,マグネシウム,リンなどの微量元素も欠乏しやすくなります。微量元素は,免疫機能の増強や活性酸素の還元など重要な役割を果たしており,不整脈出現とも密接に関係しています。

低体温療法中は,肝予備力の著明な低下や耐糖能異常から亜鉛が減少しやすくなり,腸粘膜の浮腫による蛋白の漏出や経腸栄養での吸収障害などから亜鉛の減少が進行することもあります。また,低体温療法中の低蛋白血症は潜在的な低マグネシウム血症を招く要因となり,低マグネシウム血症は不整脈をきたすおそれがあります。

 

免疫防御系の障害

低体温中は多核白血球や単球の遊走能,貪食能が低下し,また細胞性免疫の低下から液性免疫に頼らざるを得ない状況にあります。感染症の発症には,細菌の侵入経路,低体温環境下での抗生剤の活性と病巣部への到達度,生体防御反応と生体侵襲反応の統制能力など,種々の要因が複雑に関与し病態を形成します。

加えて,低体温中は腸蠕動の低下や抗生剤の投与による腸内細菌叢の変化も相まって腸内環境は悪化し,バクテリアルトランスロケーション(bacterial translocation)をきたしやすくなります。

 

低体温療法中のME機器の観察ポイント

低体温療法における冷却方法としては,冷却輸液や血管内冷却装置,人工心肺(percutaneous cardiopulmonary support;PCPS),表面冷却(水循環ゲルパッド,水循環ブランケット)などがあります(表2)。

表2冷却方法

冷却方法

 

図2水循環ブランケット(メディサーム)

水循環ブランケット(メディサーム)

 

図3粘着性熱伝導パッド(ArcticSun)

粘着性熱伝導パッド(ArcticSun)

 

図4咽頭冷却

咽頭冷却

 

急速に冷却でき,臓器特異的に冷却可能で,持ち運びに便利で蘇生中にも使用できる冷却装置が理想的です。水循環ブランケットは入手しやすく操作が容易であるため,多く用いられています。しかし冷却速度は遅く,体温の維持管理には熟練を要します。

冷却には1つの冷却方法を用いる場合もありますが,いくつかの冷却方法を組み合わせて低体温を導入・維持することもあります。日本で多く用いられている水循環ブランケットでは,ブランケットマットの水流が妨げられないようマットの屈曲に注意し,設定温と誤差がないかマットを実際に触って確認するなど,冷却を効果的に行うための管理をしなければなりません。

また,低体温療法を行う場合,冷却方法だけでなく体温モニタリングも重要で,食道温,膀胱温,直腸温,肺動脈温,鼓膜温など,いくつかの部位で体温の連続モニタリングも行われます。このうち膀胱温と直腸温は深部体温を反映するのに時間がかかり,直腸温は便中にプローベが挿入されると通常より値が低めに出てしまい,膀胱温は尿量によって値が大きく変化するため信頼性が高くありません。

また,腋窩温は表面冷却を行う場合は適しておらず,鼓膜温も測定プローベの挿入手技,患者の体位や孔の状況によって温度が変化するため信頼性に欠けます。

一方,多くの心停止患者においてスワン・ガンツカテーテルが血行動態モニターとして必要とされており,肺動脈温は深部体温を反映するためモニタリングとして多く用いられます。医師の指示に準じた指標体温の変化とともに,各部位の温度変化を素早くとらえることも体温管理では重要になります。

 

低体温療法中の看護のポイント(表3

表3合併症と看護ケア

合併症と看護ケア

 

導入・冷却期

迅速な冷却開始と目標体温への到達が患者の予後に影響を与えるため,適応と判断した患者の受け入れが決定した段階で,速やかかつ安全に導入の準備を行うことが重要となります。まず,メディサームなどの冷却装置や各種温度測定モニター,人工呼吸器,点滴スタンドや各種ラインなど,ベッドとその周囲の準備を行います(図5図6)。

図5ベッドサイドの様子

ベッドサイドの様子

 

図6ベッドサイドの準備

ベッドサイドの準備

 

そして,安全かつ慎重に治療やケアを進めていくためには,心電図・血圧モニター(心電図,観血的・非観血的血圧,CVP,PAP,EtCO2,SpO2,膀胱温,鼓膜温など)やスワン・ガンツカテーテル用モニター(肺動脈血液温〔PA温〕,心拍出量〔CO〕,混合静脈血酸素飽和度など),オプティカテーテル用モニター(内頸静脈血酸素飽和度〔SjO2〕,内頸静脈血温〔Sj温〕)など,多くのモニタリングが必要となり,患者の状態に合わせて各種モニターのアラーム設定をし,異常の早期発見に努めなくてはなりません。

導入・冷却期は,カテコールアミンの放出や低体温による生体侵襲反応から,血行動態および脳内環境が不安定な状況にあります。

そのため,各種モニタリングとバイタルサインを経時的に観察し,異常の早期発見と対応に努めると同時に,導入・冷却期に実施しなければならない処置やケアの優先順位を医師とともに決定し,処置の介助やケアの実施にあたらなければなりません(メモ2)。

 

メモ2体温管理

温度変化は,体型,体脂肪量,脳組織代謝,循環動態,脳血流の影響を受けるので,全身管理を行うとともに,温度を目標値でコントロールするために,できるだけ早く患者固有の温度反応性をみつけることが重要になります。また,水温変更に対する温度変化は遅れて現れるため,むやみに水温を変更せず,患者の温度反応性に合わせながら温度変化を待つことも必要です。

 

温度管理

急激な体温低下は代謝や電解質のバランスを崩し,心機能抑制などの生体反応をきたしやすくなります。そのため,36℃までは急速冷却を行いますが,その後は各種モニタリングとバイタルサインの観察を厳重に行いながら1時間に1℃ずつ体温を下げ,発症から3〜6時間以内に目標体温まで冷却できるよう管理をします。

そして,34〜35℃に達したら再度全身状態の評価を行い,心機能低下や血液凝固異常を認めた場合,さらなる冷却は控える必要があります。

また,温度測定部位は,直腸温,膀胱温,咽頭温,内頸静脈血温,肺動脈血温などさまざまですが,指標部位の温度が目標値となるよう水循環ブランケットで体温コントロールを行い,必要時には冷水による洗浄や氷枕によるクーリング,外気温の調節,タオルケットなどを併用し温度管理することもあります。

 

鎮静・鎮痛薬,筋弛緩薬の投与

体温を低下させると生体反応としてシバリングが発生しやすくなります。シバリングによる熱産生が起こると体温低下を遅らせるだけでなく,酸素消費量の増加や代謝亢進を招き,脳内循環環境にも悪影響を及ぼします。シバリングを防ぐ確実な薬剤が必要となるため,鎮静・鎮痛薬や筋弛緩薬が投与されます。

投与後は,自発呼吸や咳嗽反射の有無など,薬剤投与の効果を経時的に評価し,効果が乏しくシバリングや咳嗽反射がみられた場合は,医師に報告し薬剤投与量を検討しなければなりません。

 

維持期

この時期は低体温によるさまざまな生体侵襲反応を最小限に抑えるため,厳密な温度管理により脳内環境を整え,合併症対策を行う必要があります。血圧や脈拍,CO,CI,PAなどの循環動態パラメータとともに,神経学的所見の変化やSjO2,SpO2,EtCO2など全身状態を多角的にとらえて評価し,治療の介助やケアに努めなければなりません。

 

温度管理

目標となる温度に達したら,目標温度を維持させる温度管理を行わなければなりません。目標温度と維持については,心室細動による院外心停止から心拍再開した昏睡状態の成人に対し32〜34℃で12〜24時間冷却する方法が推奨され,体温変動は0.5℃以内にすべきとされています。

体温が安定しない場合,0.5℃程度の体温変化は容易に起こりうるため,各部位の温度変化を素早くとらえ経時的に観察し,その後の温度変化を予測し冷却マットの管理を行う必要があります。

清拭などのケアやCT検査などへの移送時は,一時的に冷却マットを除去するため,温度管理に支障をきたす可能性があります。

検査やケアは,できるだけ体温変動がなく安定した状況下で行うことが望まれます。安定している時期とは,水温を変更した後,血液温が変動しなくなったときをいい,検査の時間が決まっている場合は,その時間を目指して温度コントロールをしておくとよいでしょう。

移送準備では,ブランケットを移送直前まで可能なかぎり外さないようにし,移送後はできるだけ早く温度センサーを接続し,冷却を再開します。検査に長時間を要する場合は,冷却を継続できるよう移送先に冷却装置を移動することも検討します。

 

復温期

復温期は体温上昇に伴うさまざまな生体反応が起こるため,低体温療法の治療のなかでも管理が難しい時期です。

体温上昇により生体反応が賦活化し,フリーラジカルの増加や血液凝固線溶系のアンバランスをきたし,さらに腸管機能や免疫防御機能が低下していることから播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation;DIC)に伴う重症感染症や血管機能の低下をきたし合併症(メモ3)を起こしやすくなります。

そのため,合併症に十分注意し,復温に伴う生体侵襲を最小限に抑えながら体温管理を行い,予測性を持って観察や看護ケアを行う必要があります。

メモ3痙攣の出現

心拍再開後の患者の3〜44%に痙攣がみられます。痙攣発作は脳の酸素需要を増大させるため,抗痙攣薬を使用して速やかに止め,脳障害の軽減を図る必要があります。また,心拍再開後の痙攣は,複数の薬剤に対して抵抗性があることが多く,痙攣薬の予防的投与の有用性は示されていません。

近年,脳モニタリングとして,前額部に貼付したセンサーから脳循環を評価する無侵襲混合血酸素飽和度監視システム(INVOS)や,非痙攣性のてんかん発作の検出に有用な脳波の振幅の変化を圧縮加工して半対数メモリで表示したトレンドグラフ(aEEG)が開発されており,脳神経集中管理に活用されています。

 

温度管理

復温開始のタイミングや復温ペースは,低体温療法を開始してから24時間後に開始する,あるいは0.5〜1.0℃/日のペースで復温するなど,各施設によって異なります。急激な復温は神経学的予後を悪化させる可能性があるため,体温を1時間に0.5℃以上上昇させず,復温は緩徐に行う必要があります(メモ4)。

この時期の温度管理を困難とする要因には,脳代謝の亢進による熱産生や全身の代謝亢進,シバリング,感染症などがあります。シバリングによる熱産生が起こると,体温上昇に拍車がかかり温度管理が困難となるため,早期に対応を行う必要があります。

また,復温に要する期間は各施設において異なりますが,体温が36〜37℃に達すると冷却マットを除去します。ブランケット除去,鎮静薬・筋弛緩薬中止後は,局所クーリングや解熱薬で温度管理を行う必要があります。

メモ4高体温

蘇生後の高体温は,脳の障害からの回復を妨げます。心停止後の高体温は炎症性サイトカインの活性化により発生し,体温37℃以上で0.5℃上昇するごとに細胞障害が加速します。そのため,復温期には厳重な体温モニタリングを行い,高体温を避けなければなりません。

 

おわりに

低体温療法では合併症の回避が患者の予後に大きな影響を与えるため,異常の早期発見や予防ケアが重要であり,看護師はその重要な役割を担っています。

そのため,治療を受ける患者の病態,各期(導入・冷却期,維持期,復温期)における体温管理や各種モニタリングの変化,低体温療法下の生体反応,治療効果と合併症などを理解し,患者の状態に合わせた看護ケアを実践していく必要があります(メモ5)。

メモ5家族ケア

低体温療法を行う際,家族援助も重要になります。低体温下にある患者の手や顔に触れたとき,家族は患者の身体の冷たさに戸惑い,不安は増強します。家族に寄り添い,思いを傾聴しながら心理変化を評価し,低体温下である患者の状態や低体温療法の経過をわかりやすく説明する必要があります。

 

また,現在の心肺蘇生において,重要な目標は脳蘇生であり,低体温療法はその目標を果たすために期待される治療法ですが,体温の至適温度や低体温療法の期間などプロトコルはまだ標準化されていません。低体温療法に携わる私たちは,低体温療法に関する新たな情報を収集する姿勢を常に持っておく必要があります。

 

 


[引用・参考文献]

  • (1)Nielsen N et al.: Targeted temperature management at 33°C versus 36°C after cardiac arrest. N Engl J Med, 69: 2197-2206, 2013.
  • (2)日本蘇生協議会ほか(監修):JRC蘇生ガイドライン2010.へるす出版,pp51-52/pp89-99,2011.
  • (3)内野博之ほか:脳障害のメカニズム.救急・集中治療,17(4):379-381,2005.
  • (4)大橋留美ほか:13.低体温療法の看護.山本保博ほか(監修):低体温療法病態から患者管理まで.へるす出版,1998.
  • (5)林 成之(監修):脳低温療法の治療技術.救急医学,23(6),1999.
  • (6)前川剛志(監修):症例とQ&Aで学ぶ脳低温療法−基本知識と最新のトピックス−.17(4),2005.
  • (7)山本保博ほか(監修):低体温療法病態から患者管理まで.へるす出版,1998.
  • (8)林 成之:脳低温療法の現状と今後の展開脳低温療法の歴史と現状.ICUとCCU,27(8):725-729,2008.
  • (9)浅井康文(監修):脳低温療法の現状と今後の展開.ICUとCCU,27(8),2008.
  • (10)中原孝子:心原性心肺停止患者における軽度低体温療法施行時の合併症予防.HEART nursing,21(4):108-112,2008.
  • (11)日本救急医療財団心肺蘇生法委員会(監修):救急蘇生法の指針2010医療従事者用(改訂4版).へるす出版,pp91-95,2012.

[Profile]
村上香織(むらかみ かおり)
近畿大学医学部附属病院 看護部 救命救急センター 主任,
急性・重症患者看護専門看護師
1996年 大阪府三島救命救急センター勤務。2008年 救急看護認定看護師資格取得。2012年 大阪府立大学大学院看護学研究科修了。同年4月から近畿大学医学部附属病院救命救急センター勤務。同年 急性・重症患者看護専門看護師資格取得,現在に至る。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015 医学出版
[出典]循環器ナーシング 2015年6月号

P.85~「低体温療法施行患者の看護」

著作権について

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