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2015年12月30日

受精のメカニズム|受精のしくみから理解する(3)

ナースのための解剖生理の解説書『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』より
今回は、受精のしくみから解剖生理を理解するお話の3回目です。

〈前回の内容〉

女性の生殖器の構造と受精までの流れ|受精のしくみから理解する(2)

前回は、女性の生殖器の構造と受精までの流れについて学びました。

今回は、受精のメカニズムについて解説します。

 

増田敦子
了徳寺大学医学教育センター教授

 

〈目次〉

 

受精のメカニズム

精子は、卵子が発する化学物質によって誘導されます。精子が進むスピードは毎分3mm程度といわれ、30分から1時間かけて卵管に達し、卵子を探し出します。

群れをなした精子の大群が卵子をみつけると、数百もの精子の先端が破裂し、酵素を放出します。ちょうど酵素が卵子の膜を破壊して通り道ができたところで、幸運な一個の精子が卵子の中へと入ります。この時、卵子の細胞質内に引き込まれるのは核をもった頭部だけで、それ以下は切り離されてしまいます。

精子が入ると卵子は受精卵となり、ほかの精子を受け付けなくなります。受精とは、具体的には精子のもつ遺伝子と卵子のもつ遺伝子が合体して、全く新しい細胞をつくることを指します。

 

memo閉経

閉経は女性にとって更年期の始まりです。この時期、次第に卵巣ホルモン産生が低下し、卵胞成長と卵胞破裂が起こらなくなり、子宮内膜が薄くなります。

 

受精卵から胎児へ

新しい個体の元となる受精卵は、受精後、ただちに分裂を始めます。受精卵が分裂することを卵割といいます。

卵割を始めた受精卵は卵管の蠕動と線毛の動きによって子宮へと運ばれます。この頃、受精卵は幾度も卵割を繰り返し、ちょうど16個の細胞からなる桑の実のような形をしています。そのため、この頃の受精卵を桑実胚とも呼びます。

 

memo卵割

受精卵の細胞分裂は、卵が割れるようにみえることから卵割と呼ばれます。卵割では体細胞分裂と同様にDNAの合成は起こりますが、細胞質の成長がないので、卵割のたびに細胞の数は増えますが、個々の細胞の大きさはしだいに小さくなっていくのが特徴です。

 

子宮にたどり着いた受精卵はしばらく子宮の中を漂い、栄養を補給しながら子宮内膜のベッドが整うのを待ちます。そして、ベッドの準備が整うとベッドに潜り込み、胚葉を形成していきます。胚葉とは、その後分化して個体を形づくるさまざまな器官の基礎になるものです。この胚葉が形成されるまでの時期を妊娠の前胚葉期と呼んでいます。

 

memo妊娠期間

着床前の月経(最終月経)開始日から満280~286日間が正常な妊娠期間といわれています。妊娠月は10に分け、週単位で数える時は40週としています。分娩予定日は、最終月経から数えて280日目をいます。

 

胚葉は、外胚葉、内胚葉、中胚葉の3つに分かれます(図1)。

図1胚葉が分化する組織

胚葉が分化する組織

 

外胚葉は皮膚や神経組織、内胚葉は消化腺や消化管上皮、呼吸上皮、中胚葉は骨格や筋、循環器系や泌尿器系などそのほかの組織へと分化していきます。この器官の分化の始まりを原基といい、この時期の赤ちゃんを胚子と呼びます。

この原基の頃は赤ちゃんにとってはとても大切な時期で、この時期に何らかの障害が起きると奇形を生じることがあります。原基はだいたい妊娠3カ月ぐらいまでに終わり、その頃ちょうど胎盤も完成します。

胎児にとって、胎盤は食事も呼吸もトイレもまかなってくれる大切な器官です。受精卵がしっかりと子宮内膜に着床すると、まず、受精卵は多数の突起を出し、母体の組織と共同で胎盤づくりを始めます(図2)。

図2胎児と胎盤

胎児と胎盤

 

胎盤には臍帯を通って胎児の血液が入ります。一方、母体からの血液は絨毛間腔に入り、胎児は絨毛を介して母親の血液から栄養分を吸収し、呼吸して老廃物を排泄します。

 

memo子宮外妊娠

受精卵は子宮内腔の粘膜に着床するのが正常ですが、それ以外の場所に着床し妊娠が成立したものを異所性妊娠といいます。一般には子宮外妊娠という病名で知られており、98%以上が卵管妊娠です。

原因は、卵管内の炎症などで受精卵の通過が悪くなり、卵管内にとどまってしまうためと考えられます。受精卵は受精後、すぐに卵割を始めるので、着床能を獲得するようになっても、まだ子宮にたどり着けないと卵管で着床してしまうのでしょう。

 

COLUMN胎盤の機能と先天性奇形の危険性

胎盤の機能は、空気呼吸できない胎児の肺になって酸素と二酸化炭素のガス交換を行い、あるいは口から食事の取れない胎児の消化器、そして腎臓となって栄養素を届け、老廃物を運び出すことにあります。また、胎盤を介して母親側から胎児側へ移行する物質があります。母親の抗体が胎児に移行して、胎児は免疫を得る(受動免疫)ことができる伝染病(ジフテリア、天然痘麻疹など)もあります。

しかし、多くの薬物も胎盤を自由に通過できるので、薬物によっては先天性の奇形を起こすことがあります。妊娠中に眠れないために、サリドマイド睡眠薬を服用していた妊婦から四肢奇形を主徴とするサリドマイド症候群という奇形児が出生したという報告はよく知られています。また、免疫のない女性が妊娠初期に風疹にかかると風疹ウイルスが胎盤を介して胎児に感染し、出生児に先天性風疹症候群を引き起こすことがあります。これは心奇形、白内障、聴力障害が主な徴候です。

風疹は過去5年ほどの周期で大流行を繰り返し、1965年に沖縄県で400人以上の赤ちゃんが先天性風疹症候群になったといわれています。流行した1976年には風疹による人口妊娠中絶が全国で2,500件にも上ったようです。そこで、1977年からは中学生の女子を対象に風疹ワクチンの定期接種が始まり、風疹の大流行は1993年を最後に起きていません。

ただ、接種方法が学校などで一斉に行なう集団接種から医療機関での個別接種に変わったので、接種漏れの女性が妊娠すると先天性風疹症候群になる危険が高いので、妊娠前のワクチン接種や抗体価の測定が大切になります。

 

胎児循環のしくみ

胎盤を介し栄養や酸素を取り込むため、胎児の循環は出生後とは大きく異なります。胎児の臍と胎盤を結ぶ臍帯には3本の血管が含まれます。一本の太い臍静脈と2本の細い臍動脈です。

ここでいう動脈、静脈とは、中を通る血液とは関係なく、胎児の心臓を基点にして心臓から出ている血管を動脈、心臓に戻る血管を静脈と呼んでいます。

母体から取り込まれた酸素と栄養素が豊富な血液は胎盤を介し、まずは臍静脈へと流れます。臍静脈の血管は肝臓や静脈管(アランチウス管)を通り、下大静脈から右心房へと入ります。右心房に入った血液の一部は出生後と同じように右心室へと流れますが、その多くは、下大静脈弁により卵円孔という左右の心房をつなぐ穴を通って左心房へと流れていきます。ここは出生後の循環と大きく異なるポイントです。

左心房へと流れた血液は左心室へ入り、そこから大動脈を経てまずは頭部へ、次いで腹部や下肢へと流れます。

一方、胎児の頭部や上半身を流れた酸素の少ない血液は、上大静脈から右心房を通って右心室に流れ込みます。成人の循環ではこの後、右心室から肺動脈を通って肺へと向かいますが、肺が機能していない胎児では、実際には血液のほとんどは肺へ向かわず、動脈管(ボタロー管)を通って大動脈に合流し体循環へと入るので、合流する前の血液より酸素の量は少なくなります。こうして胎児の全身を巡った血液は、大動脈から臍動脈を通って胎盤に戻り、母体の血液から酸素や栄養素を取り込み、再び臍静脈へと流れます(図3)。

図3胎児循環

胎児循環

 

memo動脈血が流れるのは……

胎児循環で動脈血が流れるのは、臍静脈と静脈間の間だけです。それ以外はすべて動脈と静脈が入り混じった血液が流れています。

 

memo胎児のヘモグロビン

胎児(fetus)期のヘモグロビン(HbF)は成人(adult)のヘモグロビン(HbA)より酸素との親和性が高いので、胎盤を介した比較的低い酸素分圧での大量の酸素を運ぶことができます。HbFは寿命が短く、出生後は寿命の長いHbAに置換されます。HbFが壊れ、その際に放出されるビリルビンが新生児黄疸の一因となります。

 

memo下大静脈弁

下大静脈弁を発見したイタリアの解剖学者(Bartolommeo Eustachio)の名からオイスタキオ弁ともいいます。心房への下大静脈の開口部に位置する弁で、胎児では大きく下大静脈の血液を卵円孔に導く役目をしています。出生後には退縮し、その過程で多くの孔が開いて網目状に遺残したのがキアリ網といいます。管にもオイスタキオの名が付いています。

 

このようにして、比較的酸素の少ない血液は胎児の胴体や下肢に流れ、頭部は左室からの酸素がより多い血液を受けることになります。

肺が機能していないため、胎児の血液の酸素濃度は出生後のそれと比べて極端に低くなっています。しかし、こうした胎児循環により、比較的酸素濃度の高い血液は心臓や脳など生命の維持に欠かせない器官に優先的に巡るようなしくみができています。胎児の頭が大きく、手足が小さいのも、こうした血液の流れと関係しています。

胎児に特有の臍動脈や動脈管、静脈管、卵円孔は出生後、閉塞しますが、何らかの原因で卵円孔が閉塞しない場合を卵円孔開存症(心房中隔欠損症)、動脈管が閉塞しない場合を、動脈管開存症(ボタロー管開存症)と呼んでいます。

 

memo胎児循環遺残物
胎児循環の構造物 その胃残物
卵円孔 卵円窩
動脈管 動脈管索
静脈管 静脈管索
臍動脈 臍動脈索
臍静脈 肝円索

 

性周期とホルモンのはたらき

精子・卵子の製造から受精、出産にいたるプロセスは、すべて性ホルモンが関係しています。ホルモンのはたらきは実に巧妙ですが、思春期になるといっせいに性ホルモンがはたらき出すしくみについてはまだよくわかっていません。ここでは、少し、性周期とホルモンの関係について整理してみていきましょう。

精子や卵子を形成するのに関係するホルモンは、男女ともまず、視床下部から分泌されます。この視床下部から分泌されたホルモンは性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)放出ホルモンといい、これは下垂体前葉を刺激し、卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの2種類の性腺刺激ホルモンの分泌を促します。

 

memo性周期とホルモン分泌の流れ

卵胞刺激ホルモンにより卵胞が成熟→成熟卵胞がエストロゲンを分泌→黄体形成ホルモンの分泌→排卵→卵胞が黄体に変化→黄体からプロゲステロンを分泌→卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの分泌を抑制→受精しない場合は黄体がしぼんでエストロゲンとプロゲステロンの分泌が低下し、月経が起こる。

 

男性の場合、卵胞刺激ホルモンは精巣での精子の形成を促します。一方の黄体形成ホルモンは精細管の周りにある間質細胞に作用するので、間質細胞刺激ホルモンとも呼ばれます。この間質細胞刺激ホルモンが出るとテストステロンをはじめとする男性ホルモン(アンドロゲン)が分泌され、ヒゲが濃くなったり声変わりが始まったりといった変化が第二次性徴として起きます。

女性の場合、卵胞刺激ホルモンは卵巣での卵子の形成を促し、エストロゲン(卵胞ホルモン)を分泌させます。エストロゲンは卵を成熟させると同時に、受精卵のために子宮内膜のベッドを整え、着床の準備を助けます。

また、エストロゲンの分泌によって、乳房が発達したり、皮下脂肪が増え、女性らしい身体つきになるなどさまざまな変化も現れます(女性の第二次性徴)。

エストロゲンの血中濃度が高まると、今度はそれが刺激になって黄体形成ホルモンが分泌されます。黄体形成ホルモンは排卵を促し、排卵後の卵胞は一時出血して赤色体になりますが、すぐに黄体となり、この黄体がプロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌します。プロゲステロンは受精卵に栄養を与えるために子宮粘膜からグリコーゲンを含む分泌物を分泌させます。

しかし、黄体がプロゲステロンを分泌する期間はそう長くはありません。一般に黄体は排卵後10〜14日でホルモンの分泌を停止するといわれています。黄体は子宮内膜を子宮にとどめるはたらきがありますが、受精せずベッドが無駄になったとわかると黄体はしぼんでプロゲステロンを出さなくなり、子宮内膜は脱落して月経が始まります。

 

memo黄体と白体

排卵直後の卵胞は一時出血して赤味を帯びていますが、すぐに黄色味を帯びた黄体になります。黄体がしぼむと脂肪分となり白く変化することから、しぼんだ黄体は白体と呼ばれています。

 

このように、女性の生殖器では約28日を1周期として卵巣内の卵胞と子宮粘膜の変化が繰り返されます(図4)。

図4女性の性周期

女性の性周期

 

これを性周期といいます。男性は生殖細胞をつくり、体外に出すだけですが、女性は生殖細胞をつくるだけでなく、精子を受け入れ受精した場合は受精卵を胎児として体外で生活できるまで育てなくてはなりません。その際、卵巣から卵子を放出してから胎児の生活環境である子宮の準備をするのでは間に合いません。したがって、思春期を向かえた女性の卵巣で卵子が成熟を始めると、卵巣での変化と同時進行で子宮でも受精卵を迎え入れる準備を始めます。

プロゲステロンは体温上昇作用があるので、卵胞期から黄体期に入ると基礎体温が上昇する低温期から高温期に移ります。この基礎体温の変化は排卵があるから起こるので、基礎体温を毎日続けて測定することで排卵日を知ることもできます。

一方、受精し受精卵が着床すると、黄体はしばらく子宮にとどまって成長を続け、胎盤の形成を待ちます。胎盤が無事形成されると、今度は胎盤からプロゲステロンが分泌されるため、黄体はプロゲステロンを分泌しなくなります。妊娠初期の流産は主に、この黄体から胎盤へのホルモン分泌の引継ぎがうまくいかないために起こります。

 

分娩から出産へ

約9カ月間もの間、母親の胎内で生活し、すくすくと育った胎児は、いったいいつ、何に促されて体外へと出てくるのでしょう。実はこの出産のメカニズムにもホルモンが重要な役割を果たしています。

妊娠最後の数週間、胎内での発生プロセスがほぼ完了すると、母体は出産の準備を始めます。胎盤からのプロゲステロンの分泌が弱まると、下垂体後葉から今度はオキシトシンと呼ばれる子宮の収縮を促すホルモンが分泌されます。このオキシトシンは胎盤を刺激し、プロスタグランジンが放出され、この2つのホルモンにより子宮の収縮はさらに強まります。

 

memoオキシトシンとは

オキシトシンは、子宮の収縮を促進したり、乳汁が出るのを促したりする作用があるホルモンです。授乳時に乳児が乳頭を吸引すると、オキシトシンの分泌が増加して射乳を起こします。これを射乳反射と呼んでいます。

 

胎児が骨盤内へ深く送り込まれると、そのストレスが子宮頚部を刺激し、下垂体からさらに多くのオキシトシンが分泌されます。すると、規則的に激しい子宮の収縮が起こり、この収縮がさらにオキシトシンの分泌を促すという正のフィードバックによって胎児は産道へと送り出されます。

胎児の頭が産道近くにくると産道は押し広げられ、羊膜が破れて羊水が流出します。これを破水といいます。激しい収縮が始まってから産道の口が充分に広がるまでを開口期といい、通常で6〜12時間も続きます。

開口期を過ぎると、胎児はようやく腟を通過して母体の外へと出てきます。出生後、臍帯は臍帯クリップではさみ切断されます。出生後も子宮の収縮はしばらく続き、胎児に栄養や酸素を与えていた胎盤や羊膜が出てきます。これを後産といいます。

生まれたばかりの赤ちゃんにとって母体の外は未知の世界です。刺激の多い環境に驚き、産声をあげ、肺を使った呼吸が始まります。たった1つの受精卵が胎児となり、この世に生まれ出るまでのプロセスはこれで完了しますが、1人の人間としての人生は、まさにここから始まります。

 

memo子どもを産まないと増える子宮内膜症

妊娠、出産を経験すると、長い場合約2年は月経がストップするので子宮を休ませることがでます。妊娠、出産を経験すると子宮内膜症が軽くなるといわれています。それは子宮内膜症の原因の1つが月経回数の増加だからです。母体の適齢期に子どもを産まず、月経により子宮を使い続け子宮を休ませるヒマがないと子宮内膜症の発症を増加させるといわれています。

 

COLUMN遺伝による男と女

精子や卵子の元になる細胞は成熟する過程で分裂を繰り返し、遺伝子の量を半分にします。これを減数分裂といいます。

遺伝子の情報は通常、常染色体22対と性染色体(男性はXY、女性はXX)からなります。したがって、母に由来する卵子は22+X、父に由来する精子は22+Xもしくは22+Yという遺伝子をもっています。

受精卵が将来、どんな性へと分化していくかは、この遺伝子の組み合わせによります。つまり、卵子(22+X)が精子(22+Y)と結びつけば、遺伝的には男の子が生まれ、卵子(22+X)と精子(22+X)が結びつけば、遺伝的には女の子が生まれます。

では、男女の違いを決定するのは遺伝子だけかというと、実はそうではありません。ここでもまた、ホルモンが重要なはたらきをしています。

6週目ぐらいの胎児では、男女の違いははっきりしていません。この時点では、男女とも皮質と髄質からなる未分化な生殖腺をもっています。男女の性の分化が始まるのはその後、7週目から8週目にかけてです。性の分化に重要な役割を果たすのは、精子(22+Y)がもっている精巣決定因子です。この精巣決定因子が皮質を退化させ、髄質から精巣をつくります。そして、この精巣からテストステロンという男性ホルモンとミュラー管抑制物質が分泌されることで、「男になる」ことができるのです。

これに対し、Y染色体をもたない精子と卵子が結びつくと、これらのホルモンは分泌されず、皮質は卵巣へと発達し、髄質は退化していきます。つまり、発生的に見ると、女性は自然に「女になる」のですが、男性はみな、自分がつくる男性ホルモンによって無理やり「男になる」よう、設計されているというわけです(図5)。

図5遺伝的な性の決定

遺伝的な性の決定

 

memo精子(22+Y)は速い

ヒトのY染色体はX染色体に比べて小さく、Y染色体をもつ精子はX染色体をもつ精子より軽くなります。そこで、Y染色体をもつ精子は、子宮内をより速く泳いで卵子にたどり着ける、という仮説があります。ですから、男子の出生数が多くなるのではないか、というわけです。

 

乳汁の分泌・射乳のしくみ

妊娠中、胎盤からのエストロゲン、プロゲステロンは乳腺を発達させると同時に下垂体前葉からのプロラクチンの分泌を抑えています。分娩後、胎盤が娩出されるとこれらのホルモンは急速に低下し、プロラクチン分泌の抑制がとれ、乳汁分泌が始まります。

新生児の乳首吸引が求心性の刺激となりプロラクチンだけでなく下垂体後葉からはオキシトシンも分泌されます(図6)。

図6乳汁分泌とホルモン

乳汁分泌とホルモン

 

プロラクチンは乳腺の腺房上皮細胞での乳汁生成と乳汁分泌を促します。一方、オキシトシンは乳細管周囲の平滑筋を収縮させ、分泌された乳汁を乳頭から射出させます(射出)。

プロラクチンは視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌を抑制するので、下垂体からの性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の分泌を抑制し、卵巣での卵胞の成熟・排卵が抑制されます。そのため、月経が起こらないので、これを授乳性無月経と呼びます。要するに乳飲み子がいる間は次の卵胞の成熟は抑えるということでしょう。

 

memo乳腺

乳腺の成熟は、女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)によって促されます。女性ホルモンは、乳腺刺激ホルモン(プロラクチン)のはたらきを抑制するので、思春期や妊娠時には乳汁の分泌は起こりません。一方、出産して授乳をすると、乳児の吸引刺激がプロラクチンの分泌を促し乳汁分泌が維持されます。

 

〈次回〉

病原体から身体を守る免疫|身体を守る免疫系のはたらき(1)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『身体のしくみとはたらき』 (編著)増田敦子/2015年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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今日の看護クイズ 挑戦者5390

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  • 1.惨事ストレスは、通常、経験しない急激、かつ衝撃的な問題や脅威に直面した場合に生じる。
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  • 4.現場での救援活動を職務とするレスキュー隊員には惨事ストレスは生じにくい。
今日のクイズに挑戦!