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2015年11月27日

フィジカルアセスメントに必要なスキル

『循環器ナーシング』2015年4月号<フィジカルアセスメントの極意>より抜粋。
フィジカルアセスメントに必要なスキルについて解説します。

 

Point

  • 看護師のフィジカルアセスメント能力の向上は,社会から急速に求められている!
  • 言葉の意味を知っておこう:ヘルスアセスメント>フィジカルアセスメント>フィジカルイグザミネーション!
  • 急性期領域のフィジカルアセスメントは,「head to toe」からではなく,焦点化したうえで「生きている証(バイタルサインズなど)」の機能評価から始める!

村田洋章
(The University of Pittsburgh School of Nursing 研究員,国際医療福祉大学 客員准教授)

 

〈目次〉

 

はじめに

本コラムでは,フィジカルアセスメントの重要性を再認識していただいた後に,「ヘルスアセスメント」「フィジカルアセスメント」「フィジカルイグザミネーション」の違いについて概説していきます。その後,フィジカルアセスメントの基本的な流れや,必要とされる知識の概略を述べていきます。

 

身体理解と判断力の重要性

看護師に期待されている役割

保健師助産師看護師法で規定されている,「療養上の世話」ならびに「診療の補助」という看護師の機能を,効果的・効率的にチーム医療のなかで看護師が発揮することが社会から急速に求められています。

このことは,近年の専門看護師教育課程の推移をみても明らかです。そもそも,専門看護師とは日本看護協会専門看護師認定審査に合格し,複雑で解決困難な看護問題を持つ個人,家族および集団に対して,水準の高い看護ケアを効率よく提供するための,特定の専門看護分野の知識および技術を深めた者をいいます。

この専門看護師の教育を受けるためには,日本看護系大学協議会が認定した指定の大学院修士課程・博士前期課程を修了することが前提となりますが,修了するためには授業や実習をクリアする必要があります。

つまり,単位(テストや審査などを受け基準をクリアした際に単位取得となります)を取得し無事卒業しなければなりません。

上記の過程を卒業するためには,今までは26単位(通常は90分/コマ(1.5時間)×15コマの授業を学修した者に対して2単位)でよかったのですが,2020年度から38単位取得しなければならなくなりました。

卒業するために必要とされる知識・技術・能力が,実に12単位分も追加されたわけです。 その追加された内容として,実習時間の増加もさることながら,「フィジカルアセスメント:2単位」「病態生理学:2単位」「臨床薬理学:2単位」がそれぞれ必須科目として新たに加わっています。

以上のことは,何も特別な看護師のみに必要なわけではなく,「看護師は今まで以上にしっかりしたフィジカルアセスメント能力を含めた知識や技術を併せ持つことが必要である」ということを暗に意味しており,より高い能力を併せ持った看護師が社会から要求されていることになります。

 

フィジカルアセスメントのゴールを明確に—診断する?状態判断する?—

私たちがフィジカルアセスメントを行う目的は,「対象患者の状態を判断あるいは把握するため」です。つまり,「患者の状態から緊急性の有無を明確に判断/把握し,必要とされる看護ケアへつなげること」がフィジカルアセスメントの目的(1) といえます。

私たち看護師は,診断あるいは看護診断名をつけるためのみにフィジカルアセスメントを行うわけではないということ,あくまで手段であり,その目的は状態を把握することにあるということを理解することが大切です。そうすれば,おのずとその後の行動(看護ケア)へとつながるのではないでしょうか。

 

ヘルスアセスメントとは何か?

「ヘルスアセスメント」とは,対象の健康状態を把握するための「フィジカルアセスメント(後述)」と,「心理・社会的アセスメント」を統合したアセスメントであるといえます。

つまり,ヘルスアセスメントは,フィジカルアセスメントよりも広い概念なのです(図1)。

図1「フィジカルイグザミネーション」「ヘルスアセスメント」の包含関係

「フィジカルイグザミネーション」「ヘルスアセスメント」の包含関係

 

私たち看護師のヘルスアセスメントは,身体の健康状態の査定を行うのみでなく,患者の日常生活行動レベルを把握(あるいは今後の成り行きを推定)し,適切な日常生活援助を行うためにするものであるといえるでしょう。

この考えは,身体の健康状態/健康レベルの査定と看護ケアのみに偏りがちな集中治療領域(以下,ICU)の看護師にとってとくに重要なことではないでしょうか。例えば,術後せん妄はICU領域において直面したことのある症候群だと思います。

私たち看護師は,まずフィジカルアセスメントを行うでしょう。具体的には,「低酸素状態でないか?」「電解質異常はないか?」「痛みの程度は?」などです。一方で,ICUでせん妄を発症した患者の多くに退院後起こる有害事象には,「基本的QOLの低下」「認知機能の低下」などがあるといわれています。

そこでICU看護師は,退院後にそのような有害事象が起こらないように,あるいは軽減できるように,ICU入室中あるいはICUを退室してから病棟へ出向き「心理・社会的アセスメント」を行い,具体的な看護ケアの1つとして「ICUダイアリー(日記)」などを用いて看護介入していくわけです。

他に簡単な例としては,40歳代の働き盛りの男性が急性心筋梗塞で入院してきたとします。あなたは,循環・呼吸状態をアセスメント(フィジカルアセスメント)しつつも,「お仕事,気になりますよね」とかけをするはずです(図2)。

図2社会的役割の査定と声かけ

社会的役割の査定と声かけ

 

この声かけの前段階として,社会的な役割を自然とアセスメント(査定)していることはいうまでもないでしょう。

一見,複雑で面倒くさそうなことですが,重要な看護ケアといえますし,そのためには意識化してアセスメント(評価/査定)することが重要であり,全人的に査定することをヘルスアセスメントと呼んでいます。

その学びの一助として,学生時代に学んだはずの「ヘンダーソンの14の構成要素」や「ゴードンの11の機能的健康パターン」を用いてアセスメントするのです。

 

フィジカルアセスメントとは何か?

「フィジカルアセスメント」とは,身体診査技術を用いて,身体の形態機能を評価し,「生きている証の機能評価(バイタルサインズ〔呼吸/循環〕など)」と「生きていくための機能評価(運動器/感覚器/認知機能)」(1)をアセスメントすることであるといえます。

ある成書では「爪先から頭までを丁寧に診察すること」と書かれていたりもします。一方で,私たちが病院で出会う患者の多くは,事前に情報があることが多いはずです。

例えば,「弓部人工血管置換術を昨日施行された患者」という情報は,さまざまなリソースを用いることにより容易に手に入る情報です。そのような患者から「右手だけが少し動きづらく,左手に比べ冷たい感じがする」と訴えられた際,「音叉を用いて感覚器をアセスメントしよう」なんて人はいないはずです。

つまり,患者の症状や状況に応じて,そのときに必要とされる身体診査技術を用い患者の状態を評価し,行動へとつなげていくことが私たちが行うべきフィジカルアセスメントであるといえます。

また,フィジカルアセスメント能力は,身体に関する知識に大きく依存することが上述した事例からもおわかりいただけるのではないでしょうか。

 

フィジカルイグザミネーションとは何か?

ヘルスアセスメントやフィジカルアセスメントを概説してきましたが,混同しがちな言葉として「フィジカルイグザミネーション」があります。

フィジカルイグザミネーションとは,一般的に「実際に情報を手に入れる手段(視診・触診・打診・聴診・嗅診など)」を指します。

具体的には,「正しい手技で聴診器を用いて呼吸音を正しく聴取する」「正しい手技で浮腫の状態を視診する」などがこれに当たります。詳細な手技に関しては次章に譲ることとします。

 

フィジカルアセスメントの基本的な流れと,必要なスキルは?

フィジカルアセスメントの基本的な流れ(2),(3)

フィジカルアセスメントは,以下の3ステップの要素で構成されています(図3)。

ステップ1
  • 基本情報を得るインタビュー(患者の訴えの聴取)
  • 一般状態の観察
  • 検査データからのスクリーニング
ステップ2
  • ステップ1で異常がある際,その症状の原因を探る順序立てた(系統的)問診
ステップ3
  • 身体を医療者のスキル(コミュニケーションスキルも含む)によって診査する系統的フィジカルイグザミネーション

図3フィジカルアセスメントの3つのステップ(文献2 より引用)

フィジカルアセスメントの3つのステップ

 

フィジカルアセスメントは,例示でも述べましたが正常と異常を区別するための解剖生理や,疾患および病態の基本的知識が必須となります。

また,症状については,「いつ・どこが(部位)・どの程度・どんなときに」という発症時の状況や現在までの経過をとらえておかなければ,対応後の経過を評価していくことが困難となるため,注意が必要です(3)

つまり,5W1Hを常に意識しておくことが重要なのです(表1)。

表15W1H

5W1H

 

フィジカルアセスメントに必要なスキル

「生きている証の機能(バイタルサインズ〔呼吸/循環〕など)」は,意志によってコントロールできません。不整脈を意図的に出してみたり,心臓を自由自在に止めたりすることは不可能でしょう。

つまり,「生きている証の機能」の評価は,患者が意図的にコントロールできないぶん,私たち看護師の情報を掴み取る技量に左右されてしまいます。

だからこそ,精度の高い検査方法,正しい診査技術を身につけておく必要があるのです。 一方で,「生きていくための機能(運動器/感覚器/認知機能)」は,患者の意志によってコントロールできることが大半を占めます。

例えば,「手を動かす,力を入れる,見る」などがそれに当たるでしょう。つまり,「生きていくための機能」を評価する際は,患者の協力が必要であり,協力を得るには卓越したコミュニケーション力という技能も必要となってくるのです。

以上の能力は,「直観」「経験」に頼ることも大変重要です。例えば,「何かいつもと違う,だからフィジカルアセスメントをしてみよう」という具合です。

ただし,この「何かいつもと違う」という点を,もっと明確にするには,解剖生理学の理解,病態生理や薬理学などの幅広い知識を併せ持っておく必要があります。

そして,データの意味するところを関連づけ,統合できる専門的知識と,洞察力を持って迅速に判断・評価することができれば,「何となく」から始まるより,もっと早期に看護介入に結びつけることができ,「患者が急変する前に対応できる」へつながるのではないでしょうか。  

また,フィジカルアセスメントをしていくうえでは,「循環系」「呼吸系」といった系統の「生きている証の機能評価」が最優先となります。心臓が止まるかもしれないというときに,「腸蠕動を確認」している場合ではないはずです。

「中枢神経系」のアセスメントは,「生きている証の機能」と「生きていくための機能」が混在する部分ではあります。

しかし,術後心房細動(post operative atrial fibrillation;POAF)の発生率は,CABGで30%以上,弁置換術で40%前後であり,POAFは脳梗塞のリスクを3.5倍にするという報告もあるため,循環器疾患,とくに心臓外科術後患者においては,循環・呼吸系に次いで重要なアセスメント項目といえるでしょう。

 

フィジカルアセスメントの結果を他者へ報告するポイント

I-SBAR-C(表2)は,医療現場におけるチームパフォーマンスの向上を目的として開発されたツールです。この報告技法を用いることで,急変時においても端的に情報を報告することができます。

表2I-SBAR-C

I-SBAR-C

 

おわりに

以上,「フィジカルアセスメントとは〜必要なスキル」までを概観してきましたが,「精度の高い検査方法」や「正しい診査技術」「卓越したコミュニケーション力」を身につけるには,学ぶ努力を惜しまないことが大切だと思います。

そして幸運にも,ここに挙げた技能は今日からでもブラッシュアップすることができます。コミュニケーションも技術の1つなのです。

私たちのフィジカルアセスメント能力がもっと向上すれば,「助かる命」ばかりでなく,「患者の長期的なQOLの向上」へも結びつきうることを忘れず日々努力していきたいものです。

 

 


[引用・参考文献]

  • (1)山内豊明:フィジカルアセスメント ガイドブック—目と手と耳でここまでわかる.医学書院,2011.
  • (2)高橋仁美ほか:フィジカルアセスメント徹底ガイド 呼吸.中山書店,2009.
  • (3)山内英樹:新人ナースのための循環器看護早わかりチェックリスト 症状・訴えへの観察・対応・報告ポイントがわかる.第1部 異常が起こった際にはこれだけは行う!フィジカルアセスメント.ハートナーシング,25:310-332,2012.

[Profile]
村田洋章(むらた ひろあき)
The University of Pittsburgh School of Nursing 研究員,国際医療福祉大学 客員准教授
聖路加国際病院で臨床を経験した後,東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科博士前期課程修了。現在,同大学院博士後期課程に在籍中。

 


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2015 医学出版
[出典]循環器ナーシング 2015年4月号 循環器ナーシング 2015年4月号

P.6~「フィジカルアセスメントに必要なスキル」

著作権について

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