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2015年12月12日

神経のしくみと機能|動作のしくみから理解する(7)

ナースのための解剖生理の解説書『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』より
今回は、動作のしくみから解剖生理を理解するお話の7回目です。

〈前回の内容〉

脳と脊髄は身体の司令塔|動作のしくみから理解する(6)

前回は、末端の神経を伝わり送られてきたさまざまな情報を分析し、筋肉に指令を出す脳と脊髄のしくみについて学びました。

今回は、脳神経や脊髄神経、体性神経、自律神経などの神経のしくみと機能について解説します。

 

増田敦子
了徳寺大学医学教育センター教授

 

〈目次〉

 

脳神経と脊髄神経

末梢神経は、出入りする中枢が脳か脊髄かによって脳神経と脊髄神経に分けることができます(図1)。

図1神経系概観

神経系概観

 

脳に出入りする脳神経は左右12対あり、主に、頭部や顔面、頸部を支配しています。脳神経は頭側から順番に番号が付けられ、多くの場合、その神経が支配する器官の名称で呼ばれます(表1)。

表1脳神経の機能

脳神経の機能

滑車神経:支配する上斜筋が滑車筋と呼ばれていた
三叉神経:眼神経、上顎神経、下顎神経の3つの神経に分かれることに由来する
副神経迷走神経のアクセサリーのような神経ということに由来する

 

脊髄神経は、左右31対からなり、それぞれ対応する脊椎の番号が付けられています。脊髄神経は全長わずか1〜2cmしかありませんが、複数の脊髄神経から神経叢をつくり、その神経叢から分離し、頸部から下のほぼ全身を支配しています。

 

memo脊髄の灰白質

前柱運動性の神経細胞が多数集まり、前根を経て神経線維(遠心性神経)を骨格筋に送る。

後柱:知覚性の神経細胞が多数集まり、皮膚や筋からの神経線維(求心性神経)が後根を経て後柱の細胞に刺激を伝える。

側柱:胸部にあり、主として自律機能に関与する神経細胞が集まっている。

 

体性神経と自律神経

末梢神経のうち、骨格筋を意識的に動かすことを可能にしている神経をまとめて体性神経、内臓の平滑筋や心筋、分泌腺などを自動的あるいは不随意に調節している神経をまとめて自律神経と呼んでいます。

神経の名称はいろいろな因子が交錯していて頭が混乱してしまい、神経系は難しい、と思う人も多いようです。そもそも中枢神経と末梢神経という分類は構造による分類で、中枢は中心部分、末梢は末端部分です。

実際、末梢神経は解剖のとき、身体の中心に位置する脳と脊髄から木の枝のように全身に伸びているのが観察できます。そして、それぞれの枝はある特定の領域に分布しているので、それらを区別するためにそれがどこを通ってどこに分布しているかで解剖学的に固有の名称が付けられています。

たとえば、舌に分布しそれを動かす神経は舌下神経、尺骨の脇を通る神経を尺骨神経と呼んでいます。それらのうち、脳から出ている末梢神経を脳神経、脊髄から出ている末梢神経を脊髄神経、というように解剖学的にまとめています。

一方、末梢神経をまとめる際に、どういうはたらきをするか機能の面から分類し、まとめることもできます。骨格筋に分布し随意的な運動を支配する神経をまとめて体性神経、心筋や平滑筋に分布し不随意的な運動を支配するのをまとめて自律神経といいます。

たとえば、舌を動かす舌下神経は脳から出ているので脳神経(第12脳神経)に分類されると同時に舌を意識的に動かすので体性神経に分類されます。膀胱と内尿道括約筋に分布し排尿を自動的に調節している骨盤神経と下腹神経は自律神経ですが、解剖学的には脊髄の腰仙髄から出ているので脊髄神経に分類されます(図1)。

自律神経は無意識のうちに身体の機能を調節する神経です。たとえば運動すると意識しなくても酸素を多く取り込むために呼吸は速くなり、血液循環をよくするために心拍数が増えます。一方、食物を口に入れると無条件に唾液が分泌されます。前者は交感神経のはたらきで身体を活動に適した状態にし、後者は副交感神経のはたらきで安静時にはたらき身体を休め、次の活動に備え栄養を蓄える身体づくりをしてくれます(表2)。

表2自律神経の主な機能

自律神経の主な機能

 

神経のルートマップ

それでは、神経の流れる電気信号がどのような道筋をたどるか、その伝達の経路をたどってみましょう(図2)。

図2上行(感覚)伝導路と下行(運動)伝導路

上行(感覚)伝導路と下行(運動)伝導路

 

肩に何か触れるとその感覚情報が第1ランナーの感覚神経を介して脊髄に入ります。その情報は脊髄で第2ランナーのニューロンにバトンタッチされ、脊髄の反対側に交差したのち脳に向って上がっていきます。間脳の視床で第3ランナーにバトンタッチされるとそのまま大脳皮質の体性感覚野に入力されます。

入力された体性感覚野の部位により、身体のどの部位からの情報かを判断します。これらのニューロンにより形成されるルートは感覚器からの情報が大脳に向かって上がっていくので、上行(感覚)伝導路といいます。そして、どのように反応するかを判断し、動かす筋肉に大脳の運動野から指令を出します。

運動野の部位によって動かす筋肉が決まっており、その部位のニューロンから運動指令が出ると、途中、延髄の錐体で反対側に交差した後、脊髄の中を下りていきます。これが第1ランナーです。第1ランナーは脊髄にある筋肉を動かす第2ランナーにバトンタッチし、第2ランナーが筋肉を動かし運動を起こします。これらのニューロンにより形成されるルートは大脳からの運動指令が筋肉に向かって下がっていくので、下行(運動)伝導路といいます。

このように、受容器で受け取った感覚情報が大脳で届けられるのには3つのニューロンが必要であり、大脳からの運動指令が筋肉に届くまでには2つのニューロンが必要です。

運動指令を出す第1ランナーは脳から出ると延髄の錐体で反対側に交差するので錐体路あるいは大脳皮質から脊髄まで行くので皮質脊髄路と呼ばれています。

錐体路はあくまでも動かしたい部位を支配している大脳皮質の運動野(図3)から、脊髄にある運動ニューロンに指令を伝えるだけです。でも、私たちが日頃何気なく行っている運動は、この2つの運動ニューロンだけでまかなわれているわけではありません。

図3ペンフィールドの図

ペンフィールドの図

 

たとえば、豆腐を箸で摘んで食べるときを考えてください。柔らかい豆腐をつぶさないよう程度の弱い力でつままないといけません。かといって、弱すぎると箸から落ちてしまいます。ただ筋肉を収縮させればよいというわけではありません。

とりあえず、ある程度、予測した力でつまんでみて、箸で豆腐がどのくらいへこんでいるか、あるいは箸から手に伝わる豆腐からの反発力などから、つぶれそうなときは力を抜き、逆に落ちそうなときは少し力を加えたり、と微妙に力の入れ具合を調節しているのです。これは、図2には描かれていませんが、大脳基底核や小脳(『脳と脊髄は身体の司令塔|動作のしくみから理解する(6)』参照)からのニューロンが脊髄の運動ニューロン、つまり第2ランナーの細胞体に接続しており、第2ランナーの出力を調節しているからできるのです。

この経路は解剖学的には錐体を通らないので錐体外路と呼ばれています。また、この微調整は結構、無意識にやっていることなので、一般に錐体路を随意運動、錐体外路を不随意運動、と単純に機能分けしていますが、両者は常に一緒にはたらいており、それぞれが運動制御の一部分を担っています。

錐体路が障害されると、運動指令が第2ランナーに伝わらないので、全く動けなくなる運動麻痺に、錐体外路が障害されると動けるけれど上手く動けない運動調節障害ということになります。

 

COLUMN反射とは何か

大脳と関係なく無意識に起る反応を反射といいます。熱い物やとがった物に触れたとき手を引っ込める反射は先天的にもっているもので無条件反射といい、梅干を見ると唾液が出るといったものは後天的に獲得するので条件反射といいます。もちろん、梅干を見なくても口に食物を入れると無条件に唾液は出てきます。

反射は身体を守り、生きていくためになくてはならない反応のしくみです。受容器で刺激を受けると感覚神経がその情報を脊髄に入れ、脊髄ではその情報を解釈し、筋肉を動かす運動神経に接続して即座に運動を起こします。脊髄に入った感覚情報は大脳にも送られますが、大脳で入力された情報を解釈して運動指令を出すよりずっと早く反射が起こして身体を守るのです。ですから、無意識に手を引っ込めた後で「熱かったなあ」とか痛かったなあとしみじみ感じるのです(図4)。

図4反射のしくみ

反射のしくみ

 

無意識に身体が反応してしまう例に膝蓋腱反射があります。これは臨床検査でよく行われるので、知っている人も多いでしょう。

膝蓋腱反射のしくみはこうです。まず、ハンマーなどで軽く膝をたたきます。するとたたかれた膝にある膝蓋腱反射が伸び、それに引っ張られている大腿四頭筋の中にある受容器(筋紡錘)も一緒につられて伸びます。筋紡錘は自分が伸ばされることで、筋肉が伸ばされていることを感じ取り、その情報は感覚神経を介して脊髄に後根から入ります。その感覚神経は伸ばされた大腿四頭筋を収縮させる運動神経と直接に接続し、筋肉を収縮させるために脊髄の前根から出ます。筋肉にしてみれば伸ばされたので、元の長さに戻ろうとして反応しただけなのです(図5)。

図5膝蓋腱反射

膝蓋腱反射

 

memoベル・マジャンディーの法則

脊髄の後根は求心性神経線維から成り、前根は遠心性神経線維から成るという法則をベル・マジャンディーの法則といいます。従って、後根の切断は感覚麻痺を、前根の切断は運動麻痺を生じます。

 

〈次回〉

神経とホルモンによる調節|生体を維持する恒常性のはたらき(1)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『身体のしくみとはたらき』 (編著)増田敦子/2015年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

この連載

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