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2016年05月23日

陰圧閉鎖療法と感染管理

『WOCNursing』2015年9月号<創傷と細菌感染を考える~細菌感染を考慮した創傷管理~>より抜粋。
陰圧閉鎖療法と感染管理について解説します。

 

Point

  • 陰圧閉鎖療法の特徴を理解する
  • 陰圧閉鎖療法の適応を理解する
  • 陰圧閉鎖療法開始,中止のタイミングを理解する

大浦紀彦,河内 司,井原 玲,関山琢也
(杏林大学 医学部 形成外科)

 

〈目次〉

 

はじめに

創傷治癒を促進する陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy;NPWT)は,現在,慢性創傷や急性外傷における標準治療法となりました。

陰圧閉鎖療法(NPWT)の適応となる創傷は,褥瘡糖尿病壊疽,手術部位感染(surgical site infection;SSI)などの感染創であるといわれています。しかし明らかな感染を伴った創傷には,禁忌とされています。  

そこで本コラムでは,陰圧閉鎖療法(NPWT)の適応と感染がある場合の陰圧閉鎖療法(NPWT)の対応について概説します。

 

陰圧閉鎖療法(NPWT)とは

陰圧閉鎖療法(NPWT)は,創傷に陰圧を負荷し,湿潤環境を創傷に提供しながら,創傷治癒を促進させる物理療法です。線維芽細胞などに物理的な刺激を加えると遺伝子に刺激情報が伝達され,細胞増殖や細胞形態の変化が起こります。これを治療法として応用したのが陰圧閉鎖療法(NPWT)です。  

1995年にArgentaらが報告して以来,世界的な標準的創傷治療法の1つとなりました。日本では2010年に保険収載されてから5年が経過し,創傷治療法の中核をなす方法として広く認知されています。

陰圧閉鎖療法(NPWT)の機器は,病棟だけで使用できるものと,外来・病棟で使用できるものがあり,現在6種類のタイプが市販されています。これらを創傷によって選択することも重要です。

 

陰圧閉鎖療法(NPWT)の適応

感染創に対する陰圧閉鎖療法(NPWT)開始のタイミング

壊死組織を浸軟させて除去する効果が陰圧閉鎖療法(NPWT)にはありますが,壊死組織が除去されてから陰圧閉鎖療法(NPWT)を開始することが原則です。なぜなら,ドレープリークや血餅などによってドレーンが閉塞し,創傷に陰圧を負荷して滲出液を排除する仕組みが働かなくなったときに,密閉によって感染を起こす可能性が高いからです。

粘稠性の創部膿を認める場合にも閉塞や感染のリスクが高くなるため,排膿がなくなってから陰圧閉鎖療法(NPWT)を開始することがよいとされています。

具体的には,壊死組織の切除と排膿している部位の洗浄を行い,ヨード製剤などの外用抗菌薬を1~2週間使用します。悪臭や発赤,疼痛,排膿がなくなり,肉芽形成を認めたタイミングで陰圧閉鎖療法(NPWT)を開始します。  

また陰圧閉鎖療法(NPWT)を使用する期間が保険上,3週間と限定されているため,感染がある時期から開始すると,最も効果が期待できる時期に陰圧閉鎖療法(NPWT)を使用できなくなってしまいます。そのため,肉芽形成が期待できる創傷に陰圧閉鎖療法(NPWT)を使用するべきです。

また陰圧閉鎖療法(NPWT)は,開始した日から終了までの実日数ではなく,中止した期間も含めた3週間で算定されるため,途中で中止とならないように,陰圧閉鎖療法(NPWT)を始めるタイミングを見きわめることが重要です。

 

陰圧閉鎖療法(NPWT)を中止する条件

①感染

NPWTによって感染が増悪することがあるため,感染徴候が認められた場合,NPWTを中止します(図1)。

図1重症下肢虚血(CLI)に対するNPWT

重症下肢虚血(CLI)に対するNPWT

A:重症下肢虚血に対して,血管内治療術を施行した3週間後
B:中足骨近位端で切断術を施行した。止血を確認後,陰圧閉鎖療法(NPWT)を開始した
C:壊死組織がやや増加して悪臭も認められた。一時陰圧閉鎖療法(NPWT)を中止し,ヨード含有軟膏にて感染制御を行った
D:5週間のヨード軟膏処置とメンテナンスデブリードマンを行い,陰圧閉鎖療法(NPWT)を再開した
E:2回目の陰圧閉鎖療法(NPWT)開始から4週間で陰圧閉鎖療法(NPWT)を終了した。肉芽形成が認められ,植皮術が可能な創床が形成された

 

悪臭や発赤,疼痛,易出血性の浮腫状の肉芽を認めた場合には,陰圧閉鎖療法(NPWT)を中止してヨード含有軟膏などの外用薬と抗生剤の静脈投与を施行し,感染制御を第一に考えます。

さらに,壊死組織を創処置のたびに外科的に切除する,メンテナンスデブリードマンを行います。壊死組織が創処置ごとに減少し,肉芽の面積の増加や硬く締まった肉芽組織が確認できたら,陰圧閉鎖療法(NPWT)を再開します。

 

②虚血

重症下肢虚血(critical limb ischemia;CLI)などの動脈性疾患では,血流が十分にないと創傷が乾燥し,陰圧閉鎖療法(NPWT)を施行しても肉芽形成は得られません(図2)。

図2重症下肢虚血に対して2〜5中足骨切断術を施行した症例

重症下肢虚血に対して2〜5中足骨切断術を施行した症例

重症下肢虚血に対して血行再建術を施行したが,血流が十分に回復していない。創傷が乾燥しており,肉芽形成もほとんど認められない。創傷治療よりも再度血行再建を試みる必要がある

CLIでは,バイパス術や血管内治療などの血行再建術を施行後,創傷に十分な滲出液が認められるようになってから,陰圧閉鎖療法(NPWT)を施行します。血行再建がなされていないCLIに陰圧閉鎖療法(NPWT)を施行すると,大気圧が負荷されて創傷が圧迫されます。それによって創傷の虚血がさらに進行して乾燥気味になり,創傷治癒は遷延します。

また,しばしば感染の増悪を認めることもあります。このような創傷では,陰圧閉鎖療法(NPWT)などの創傷治療よりも再度,血行再建を行う必要があります。また進行した壊死組織は,再度切除する必要があります。

 

③静脈性潰瘍

静脈性潰瘍は,陰圧閉鎖療法(NPWT)のよい適応です。しかし,静脈うっ滞がある状態での局所治療は奏功しません。そのような場合は,表在静脈のストリッピング後や弾性包帯による圧迫治療を行いながら局所治療を行います。

初期には,感染や著しい疼痛を伴うことが少なくないため,外用抗菌薬によって感染と疼痛をコントロールした後に,陰圧閉鎖療法(NPWT)を開始します。

 

創傷の持続洗浄

壁吸引を利用した手作りの持続洗浄(図3

図3吸引を利用した持続洗浄法

壁吸引を利用した持続洗浄法

 

胸骨骨髄炎など,臨床的に創部感染が認められるときに,24時間持続的に灌流しながら陰圧を負荷する方法です。洗浄効果と肉芽形成促進効果の両方が期待できます。

しかし,手作りの陰圧閉鎖療法(NPWT)であるため,ドレープのリークや創傷からの生理食塩水の漏れなどが起こりやすく,リークを予防する工夫が必要です。リークした場合には創部が洗浄されず,感染が増悪する危険性があります。この持続洗浄法を行った場合には,保険算定はできません。

 

SSI予防のための陰圧閉鎖療法(NPWT)

海外では,縫合創に陰圧閉鎖療法(NPWT)を使用し,SSIを予防する試みが行われています(12)。NPWTにより,縫合不全や皮下の滲出液の貯留などの合併症を予防でき,SSIの発生が抑制されると報告されています。日本では,縫合創に対する予防的陰圧閉鎖療法(NPWT)は保険収載されていません。

 

おわりに

陰圧閉鎖療法(NPWT)は,さまざまな創傷に使用して効果を得ることが可能ですが,感染の危険性がある創傷に対しては,創傷を注意深く観察しながら,陰圧閉鎖療法(NPWT)を開始する時期に気をつけて使用する必要があります。

 

 



[参考文献]


Profile]
大浦紀彦(おおうら のりひこ)
杏林大学 医学部 形成外科
1990年 日本大学医学部 卒業。同年 東京大学医学部 麻酔科入局,1993年 東京大学医学部 形成外科 入局,2003年 東京大学大学院 医学系研究科 外科学専攻 博士課程 修了,同年 埼玉医科大学 形成外科 講師,2005年 杏林大学医学部 救急医学 講師/熱傷センター 副センター長,2008年 杏林大学医学部 形成外科 講師,2011年 杏林大学医学部 形成外科 准教授,2013年 杏林大学保健学部 看護学科 病態学/医学部 形成外科 兼担教授。日本下肢救済・足病学会 理事,Act Against Amputation 代表理事。

 

河内 司(かわうち つかさ)
杏林大学 医学部 形成外科

 

井原 玲(いはら れい)
杏林大学 医学部 形成外科

 

関山琢也(せきやま たくや)
杏林大学 医学部 形成外科

 

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2015 医学出版
[出典]WOCNursing2015年9月号

WOC Nursing2015年9月号

P.75~「陰圧閉鎖療法と感染管理

著作権について

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