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2016年10月27日

虚血性心疾患患者の特徴とケア

『循環器ナーシング』2012年4月号<新人循環器ナース必修講座>より抜粋。
虚血性心疾患患者の特徴とケアについて解説します。

 

Point

  • 虚血性心疾患とは,冠動脈の閉塞や狭窄などにより心筋への血流が阻害され,心臓に障害が起こる疾患の総称である。
  • 虚血性心疾患は,安定狭心症と急性冠症候群(不安定狭心症,急性心筋梗塞)に大別され,予後・治療法が異なる。
  • 安定狭心症での看護は,虚血発作誘発を回避し,心筋梗塞へ移行させないことが重要である。
  • 急性冠症候群発症後の看護は,心筋酸素消費量を最小限にして日常生活援助を行うことが重要である。

白鳥一樹
(獨協医科大学越谷病院 心臓血管外科・呼吸器外科・HCU)

浅香えみ子
(獨協医科大学越谷病院 副看護部長/救命救急センター・心臓血管外科・循環器内科・ICU・HCU 師長)

〈目次〉

 

はじめに

心臓の活動維持のために,酸素や栄養補給の役割を担うのが冠動脈です。冠動脈の血流量は心拍出量の5%を占め,心臓の拡張期に血流が大動脈から冠動脈に流入し,心筋に血液を供給します。

虚血性心疾患とは,冠血流の供給と心筋酸素需要バランスが障害された病態を指します。虚血性心疾患の主な原因は,冠動脈硬化による冠動脈の狭窄(閉塞)です(図1)。

図1急性冠症候群への進行

急性冠症候群への進行

 

また,冠動脈攣縮(スパズム:冠動脈が何らかの原因で強く一時的に収縮し,冠血流量を減少させる)も原因として挙げられます。  

虚血の程度,発症様式,虚血の持続時間などによって①安定狭心症,②不安定狭心症(心筋梗塞に移行する危険性が高い),③急性心筋梗塞に分類されます(図2)。

図2虚血性心疾患の分類

虚血性心疾患の分類

 

緊急カテーテル検査ならびに治療の対象となるのは不安定狭心症,急性心筋梗塞です。両者は共通の基盤による病態と考えられており,急性冠症候群(acute coronary syndrome;ACS)と呼ばれています。

 

安定狭心症の病態生理

数分間持続する胸部圧迫感が自覚症状として認められます。胸部圧迫感に加え,左上肢,頸部,左肩甲骨などに放散痛を認めることもあります。  

安定狭心症は発生機序から,冠動脈硬化による器質性狭心症と冠動脈攣縮による冠攣縮性狭心症に分類されます。

器質性狭心症は,動脈硬化性プラークによって徐々に冠動脈が狭窄し,結果的に心筋への血流低下をきたしている状態(一過性の心筋虚血のため,心筋壊死までは至っていない)です。

運動負荷(坂道をのぼる,食事,排尿・排便)などにより心筋酸素需要量が増える際に,冠血流の供給が不十分になり,虚血症状および心電図変化をきたします。これは労作性狭心症とも呼ばれます。

冠攣縮性狭心症は,冠動脈が異常に収縮し,一過性に心筋への血流低下をきたす状態です。夜間から早朝,午前中など一定時間に運動負荷とは無関係に起こりやすく,前胸部痛が特徴であり,異型狭心症とも呼ばれます。

 

急性冠症候群の病態生理

急性冠症候群(acute coronary syndrome;ACS)と安定狭心症の違いを一言でいうと,それは冠動脈の狭窄の原因となっている動脈硬化性プラークが破錠しているかどうかです。

プラークが存在するだけの状態であれば,労作に伴った心筋酸素需要の増大に伴って症状は引き起こされますが,安静にして酸素需要が低下すれば症状は消失します。

ところが,プラークの破錠が起こると血管の内皮細胞が剥がれ,そこに血栓が形成されます。この血栓が持続的かつ完全に血管を閉塞すれば急性心筋梗塞(ST上昇型急性冠症候群)であり,一過性に閉塞すれば非ST上昇型急性冠症候群となります。

また,血栓により閉塞しないまでも非常に強い狭窄が出現すると,安静時にも胸部症状が出現するような不安定狭心症の状態となります。非ST上昇型急性冠症候群と不安定狭心症は病態として移行しうるものであり,明確に区別することは困難です。  

いずれにしても,プラークの破錠から引き起こされる上記のような病態を急性冠症候群と呼び,放置すれば致命的となる病態です。プラークの破錠は労作や精神的ストレスを契機として起こることがあります。これらは,交感神経系を亢進させ,血圧や心収縮力を増加させることで破錠の原因となっています。

 

急性冠症候群の身体所見(図3

図3心筋虚血の症状

心筋虚血の症状

 

急性冠症候群発症による胸痛は「胸部がえぐられるような痛み」「はり裂けそうな痛み」などと表現されることが多く,その範囲は前胸部全体に及びます。

20分以上持続し,通常硝酸薬(ニトログリセリンなど)は無効です。心筋虚血が広範囲に及ぶと,心ポンプ機能の失調から,呼吸困難などの心不全症状や致死性不整脈など心原性ショックの前駆症状を呈します。

そのため,胸痛の有無を確認すると同時に,顔面蒼白や冷たく湿潤した皮膚チアノーゼなどのショック症状を呈していないかを観察します。

心不全症状を呈している場合は,呼吸音や呼吸困難の有無などを観察し,Killip分類に沿って心不全の程度を判断します(表1)。

表1Killip分類

Killip分類

 

循環障害の程度が高度になるとさらに病状は重篤化し,心拍出量の低下から脳循環障害を引き起こし,意識消失に至るケースもあります。そのため,胸痛を訴える患者さんは,循環動態を密に観察できる環境下に収容し,モニター監視を行うことで重篤な状態に陥るのを予防します。  

胸痛の確認で注意しなければならないことは,ときに患者さんが胸痛を胃痛として表現するため,胃潰瘍と間違える可能性があることです。そのため,心筋梗塞の既往を持つ患者さんが胃痛を訴える際は12誘導心電図を施行し,ST変化の有無を確認します。

また,糖尿病脳梗塞の患者さん,超高齢の患者さんでは痛みの閾値が低下しているため,胸痛を自覚しない,もしくは重症であっても軽度にしか感じない場合があります。そのため,自覚症状の程度に左右されることなく心電図検査を施行し,病態の重症度を判定していくことが必要です。

 

虚血性心疾患の検査

虚血性心疾患の診断に不可欠のものとして,心電図検査と血清心筋逸脱酵素活性の測定があり,重症度の判定と治療方針の決定のために,心臓カテーテル検査による循環動態測定を行います。

 

12誘導心電図(図4

図4急性心筋梗塞の経時的心電図変化(文献1

急性心筋梗塞の経時的心電図変化

 

ST上昇は,心筋虚血が心内膜側面から心外膜側面に達し,全層性の虚血に至っていること(貫通性虚血)を示しています。この貫通性虚血の状態が30分以上持続すると心筋細胞は不可逆的な壊死に陥り,異常Q波を示すようになります。

さらに発症から2~3日経過するとSTは基線に戻りますが,増高していたT波はその終末部から陰転化し,左右対称な冠性T波を形成します。

このように心筋梗塞における心電図異常は,ST上昇と異常Q波,冠性T波の3つが継時的にみられるのが特徴です。そして,これらの変化が心電図上のどの部位で確認されるかによって,心筋梗塞が生じている部位をある程度特定することができます。

それに対して,心筋虚血が心内膜下面にとどまっている心内膜下虚血ではST低下を認めます。ST低下を認めた場合には,不安定狭心症を疑います。

診断にあたっては,血清心筋逸脱酵素活性などの他の所見と併せてその重症度を判定します。

 

血液生化学検査(表2

表2心筋障害マーカーの診断精度

心筋障害マーカーの診断精度

 

心筋逸脱酵素とは,心筋が壊死すると心筋細胞から放出される心筋特有の血清酵素や蛋白のことで,クレアチニンキナーゼMB(CK-MB)やトロポニンTなどがあります。トロポニンTは心筋特異性が非常に高いため,その値の上昇は心筋梗塞の診断に有用です。

これらは発症直後には上昇しないため,臨床現場では,発症30分~2時間以内に検出される心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)の簡易キットによる測定が頻用されますが,偽陽性結果が多いのも事実です。  

定期的に心筋逸脱酵素を測定し,変化の程度を確認することで,心筋壊死の発生の有無とその範囲(大きさ)を知ることはできます。心筋障害に対する各種心筋逸脱酵素の精度や特異度は異なり,また,そのピーク値を呈する時期も異なります。

 

経胸壁心臓超音波検査(心エコー)

超音波を使用することで,心臓の大きさや心筋の動き,弁の機能,心臓内腔を流れる血流などを評価します。虚血に陥った心筋細胞は,その収縮能と拡張能が障害されるため,局所壁運動異常を認めます。

また,左心機能および機械的合併症(心破裂,心室中隔穿孔,乳頭筋断裂)などを確認できるほか,急性動脈解離など他の疾患との鑑別ができます。

 

心臓カテーテル検査

冠動脈造影検査により,冠動脈病変の部位,閉塞の程度,側副血行路の把握ができ,治療方針の決定を行うことができます。冠動脈造影後に適応であれば冠動脈形成術を行うことができるので,急性心筋梗塞の急性期検査として重要なものとなっています。  

また,心不全やショックを合併している場合,スワン–ガンツカテーテルを挿入し,肺動脈圧肺動脈楔入圧,右房圧を測定し,心拍出量,心係数を算出します。心係数と肺動脈楔入圧より分類されたForrester分類により重症度を推定することができます。

 

虚血性心疾患の看護~観察のポイント~(図5

図5虚血性心疾患の病態とケアのポイント

虚血性心疾患の病態とケアのポイント

 

心電図モニターの観察

  1. 1)P波が明瞭で,波高ができるだけ大きい部位(梗塞部位を反映する部位)に装着します。
  2. 2)心拍数,不整脈の有無,ST変化を観察します。
  3. 3)心負荷が予想される動作(排便,心臓リハビリテーション,体位変換,面会,病状説明時,食事,ライン交換時)はモニターを注意して観察します。
  4. 4)モニター心電図にST低下・上昇,陰性T波,不整脈が出現した場合はすぐに訪室し,症状の有無を確認します。胸痛発作時は必ず12誘導心電図の記録を行い,発作のないときの心電図と比較し,医師に報告します。モニター心電図は電極を体表面に装着するため,体位によってSTや波形が変化する場合もあるので注意が必要です。

また,以下の点に注意することにより,きれいな心電図をとることができます。

  • 四肢筋肉の緊張によって筋電図が混入することがあるので,検査をする前に説明を行い,不安を軽減します。
  • 電極を貼付する際は,皮膚に脂肪または汚染がないようにアルコール綿で拭きます。
  • 電極貼付部位が毛で覆われている場合は除毛します。
  • 呼吸性の動揺があると波形の基線が揺れることもあるため,記録時は呼吸を止めてもらうこともあります。
  • 電気毛布はハム(交流)が入ることがあるため,一時的にコンセントを抜きます。
  • 微細な変化を記録するため,できるだけフィルターをいれないようにします。

 

バイタルサイン・全身状態の観察

  • 血圧:入院時は両上肢を測定し,左右差があれば以後は高いほうで測定します。医師から指示された目標の血圧に対して上昇あるいは低下がみられたときは,患者さんの自覚症状の有無を観察して医師に報告し,指示を仰ぎます。虚血発作時は血圧上昇を認めることが多く,抗狭心症薬の影響でも変動するため,経時的な観察が必要です。
  • 脈拍:左右の緊張度,脈の速さ・リズム・強さに注意して観察します。不整脈があれば脈拍欠損がみられることもあります。
  • 心音:リズム,異常音(ギャロップ音・摩擦音・心雑音)の観察を行います。
  • 呼吸:呼吸数,呼吸様式などを観察します。虚血発作により心機能が低下し心不全を合併している場合は,肺うっ血によるガス交換障害,胸水貯留により,多呼吸,呼吸困難,喘鳴などが症状として現れます。
  • 体温:心筋壊死による体温の上昇が認められることがありますが,治療や検査による感染の出現の可能性もあるので,しばらく経過を観察します。
  • 皮膚:交感神経が緊張しやすいので,末梢循環不全兆候である皮膚の湿潤,冷汗,四肢末梢冷感,チアノーゼなどの出現に注意します。

 

自覚症状の観察

虚血発作時の症状は胸痛とは限らず,胸部圧迫感,喉の詰まる感じ,胸を締めつける感じ,頭痛,歯痛などの症状を訴える場合もあるため,個別性に合わせた発作時の症状を把握することが必要です。

また,胸痛の有無を聞くような限定した聞き方ではなく,過去に経験した発作の最強のものを10/10として,今回はX/10かを聞く,というように,患者さんが自分の言葉で表現できるようにして痛みの程度を比較していきます。

また,15分以上症状が続く場合は,急性心筋梗塞への移行の可能性が高くなります。逆に一瞬で症状が消失する場合は肋間神経痛や精神的なもの,その他の疾患によるものなどが考えられます。

 

心不全サインの観察

うっ血性心不全を合併していなくても,発症早期はうっ血性心不全の有無を確認する必要があります。患者さんの入院後より,水分出納の計算をします。患者さんの状態によって飲水制限が異なるので,その範囲内で抑えるように患者さんに説明し,点滴,食事,飲水量に対し排尿量がどれだけあるか観察します。

また,目瞼,上肢下肢,腹部の浮腫がみられていないか観察します。

さらに,心筋梗塞のクレアチンホスホキナーゼ(CPK)の平均的な出現時間と最高値に達する時間および正常化するまでの時間を観察し,胸痛出現時にはCPK値の上昇の有無を観察します。

 

薬物療法時の観察

合併症の予防・治療においては多種の薬剤を微量で調節しているため,確実で効果的な輸液・内服を行うことが必要です。

持続点滴は訪室ごとに滴下数と残量を確認します。また点滴のラインにトラブル(三方活栓がオフになっていないか,点滴が漏れていないかなど)がないか確認します。

内服与薬時は配合禁忌の薬剤に注意し,内服が確実に行えているか確認し,医師の指示量と副作用の出現に注意して観察します。

 

出血傾向の観察

冠動脈血栓溶解療法や抗凝固療法などの持続点滴により出血を起こしやすくなります。ライン挿入部,消化管,尿道などからの出血に注意して観察していきます。

 

患者の言動・睡眠状況

突然の入院,疾患に対する不安,閉鎖的環境,濃厚な治療や処置,安静を強いられることなどにより,患者さんは精神的ストレスや不眠を起こしやすくなります。そのため,患者さんの表情や言動を注意深く観察していきます。

 

排便状態の観察

環境の変化,精神的不安,飲水量の制限,安静を強いられていることにより便秘になりやすいため,排便状況を観察していきます。

 

虚血性心疾患患者の日常生活の援助

安定狭心症は,症状がなければ患者さん自身が病気を自覚することは困難です。運動負荷試験を行い,活動範囲を設定して,胸痛発作が誘発されない範囲での生活・活動をするようにします。

また患者さんの虚血発作誘発のリスクファクターを除去し,虚血発作を予防します。  

急性冠症候群などの急性期では,心筋酸素消費量を軽減させるためにも安静を保つことが必要です。状態が落ち着いてきたら医師の指示のもと心臓リハビリテーションを行い,日常生活動作(ADL)の拡大を図っていきます。

心臓リハビリテーションでは,負荷する運動の前後で心電図をとり,変化がみられていないかを確認します。心負荷中に患者さんが胸痛,胸部不快感などを訴えた場合は,どの時点でも中止して心電図をとります。

 

精神的・身体的安静の保持

安定狭心症では,症状がないため連続した動作を行ってしまう可能性があります。

しかし,二重負荷は心臓に負担をかけ虚血発作を起こす危険性を高めます。ひとつの動作ごとに20~30分は休憩するようにします。  

急性期では,心臓に対する負荷の軽減と酸素消費を最小限にするため,十分な安静が必要です。絶対安静や絶食など,患者さんや家族は突然の状況変化に対する不安が大きいため,安静の必要性について繰り返し説明し,患者さん自身が行ってよい行動も明確にします。

訪室時は患者さんが不安になったり苦痛を感じたりしないような話をし,感情を表出しやすい機会を提供します。

 

体位の工夫

心拍出量を最小限にするため,急性冠症候群発症直後は水平仰臥位での絶対安静を保ちます。床上安静の場合は腰痛が出現しやすいため,体位変換や湿布の貼付,マッサージなどにより安楽が保てるようにします。

 

排泄援助

排便時の努責は心負荷となり,合併症および虚血発作を引き起こす誘因となるため,便秘の予防に努めます。

緩下剤の使用や許可された飲水制限内での飲水摂取を勧めます。場合によっては座薬の挿入,摘便も行います。

急性期の排便時は循環動態を確認し,看護師2人で心電図モニターを観察しながら行います。患者さんをセミファーラー位にし,膝を立て,看護師2人で両サイドから腰を持ち上げて便器を差込み,徐々にいきむようにしてもらいます。

 

食事・水分摂取

食事はその行為自体だけでなく,消化にもエネルギーを要し,循環動態に影響を及ぼすため,急性冠症候群発症後1~2日間は絶食となります。  

流動食が許可されたら,臥位のまま少量ずつ食べさせます。水分に関しては少量ずつ摂取できるように,水飲みを使用します。

 

清潔の保持

急性期では,血中心筋逸脱酵素が最高値に達した後に下降線をたどっている場合は危険性が減少していると考え,その時点から陰部洗浄や全身清拭を開始します。

安静度に応じて洗髪,手浴,足浴を行います。患者さんの負担(心臓の仕事量)を増やさないために,はじめは看護師2人で行うようにし,梗塞範囲が広い場合は部分清拭からはじめます。

 

睡眠

環境の変化,治療などさまざまな誘因により睡眠パターンが障害されることが多いため,入眠しやすい環境を整える必要があります。場合によっては医師の指示に従い,睡眠薬を使用します。

 

おわりに

虚血性心疾患は,心不全や不整脈などを併発する場合があり,急激に重篤な状態に陥る可能性があります。

そのため,一連の治療過程では,心電図モニター監視による致死的不整脈の早期発見や心不全兆候の緻密な観察を行っていく必要があります。

また,虚血性心疾患の患者さんのケアでは,食事,排泄,清潔などの日常生活援助の際,バイタルサインの観察とともに,虚血発作の予防と心筋酸素消費量を抑えることができるかがポイントとなります。

 

エッセイ~新人時代の思い出~

私は,就職して2年目の頃ICUに勤務していました。その頃は,やっと心臓血管外科手術直後の患者様を1人で受け持つことができるようになり,四苦八苦していたのを覚えています。

その日は,冠動脈バイパス術を施行しICUに帰室してきた患者様を受け持つこととなりました。その患者様は,術後のバイタルサインが安定されており,出血も少量,覚醒も良好で,帰室して4時間程で抜管となりました。  

抜管もスムーズに施行され,主治医も経過良好だと思っていたときでした。ねぎらいの言葉をかけながら呼吸状態を観察していると,患者様が「なんか,胸が重い…」と言葉を発し,その直後にレッドアラームが鳴りました。

モニターを見ると心電図が心室粗動となっており,もう一度患者様を見るとすでに意識消失をしていました。すぐさま,医師や先輩たちが駆け寄り心肺蘇生を開始され,数時間に及ぶ蘇生が行われました。

自分の受け持つ患者様では,初めて遭遇する急変であり,頭ではわかっていても行動に移せず,ただ見ていることしかできませんでした。

結局,蘇生の甲斐なく患者様は亡くなられました。死因特定のため病理解剖が行われ,その結果,周手術期心筋梗塞であることがわかりました。  

 

私は,そのあまりにも突発的で蘇生困難な様子を見て,冠動脈閉塞の怖さを認識しました。

 

そして,このときの経験は,虚血性心疾患を有する患者様と接する際は,いつでもこのようなことが起こりうるという認識を持ちつつ看護を行っていくことの大切さを私に教えてくれました。

 

(白鳥一樹)

 


[引用・参考文献]

  • (1)井上博(編):心電図を読み解く.文光堂,p44,1997.
  • (2)三浦稚郁子(編):フィジカルアセスメント徹底ガイド 循環.中山 書店,p105,2011.
  • (3)近藤達也ほか(監修):虚血性心疾患.メヂカルフレンド社, pp120-169,2008.
  • (4)ハートナーシング編集部:実践循環器ケアマニュアル.メディカ 出版,pp29-33,2008.
  • (5)中村滋子:急性冠症候群のメカニズムと臨床像の特徴.HEART, 1:273-285,2011.

[Profile]
白鳥一樹(しらとり かずき)
獨協医科大学越谷病院 心臓血管外科・呼吸器外科・HCU
2004年 埼玉医科大学短期大学看護学科卒業。同年 埼玉医科大学病院CICU勤務。2009年より現職。

 

浅香えみ子(あさか えみこ)
獨協医科大学越谷病院 副看護部長/救命救急センター・心臓血管外科・循環器内科・ICU・HCU 師長
1987年 東京医科歯科大学看護学校卒業。法政大学経済学部卒業。東京女子医科大学修士(看護学),青森県立保健大学博士後期課程在学中。日本看護協会看護研修学校出向を経て,2008年より現職。現在,救命救急センター・心臓血管外科・循環器内科・ICU・HCUの師長を兼務する教育担当副看護部長。救急看護認定看護師。所属学会:日本救急看護学会理事,日本臨床救急医学会評議員,同他職種連携委員会委員長,日本医療教授システム学会理事,日本クリティカルケア看護学会評議員,日本救急医学会関東地方会幹事。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2012 医学出版
[出典]循環器ナーシング 2012年4月号

循環器ナーシング2012年4月号

P.339~「虚血性心疾患患者の特徴とケア」

著作権について

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