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2016年05月12日

これで動ける!急変時対応

『循環器ナーシング』2015年4月号<フィジカルアセスメントの極意>より抜粋。
急変時対応について解説します。

 

Point

  • 急変時は「いつもと違う,何か変」という異常に気づくことから始まる!
  • いざというときの心肺蘇生法を修得する!
  • 急変時の迅速な対応には,とくに医療チーム内のコミュニケーションと役割分担が重要!
  • 急変時の看護記録の記載のポイントをおさえる!

山崎千草
(東京女子医科大学病院 看護部 救命ICU,急性・重症患者看護専門看護師)

 

〈目次〉

 

はじめに

患者の急変は,急性期の患者だけでなく慢性期の患者であっても起こりえる可能性があります。

一般的に入院中に心肺停止を起こす多くの患者は,その8時間前までに病態増悪を示す徴候が認められるといわれています(1)。このため,ちょっとした変化をキャッチするためのフィジカルアセスメント能力が重要となります。

しかし,いざ患者の急変に遭遇した場合は,不測の事態に見舞われた患者の生命危機からの回避と,患者への安寧・安楽の提供,今以上に悪くさせない応急処置の技術力が求められます。

患者の急変時は,ベテラン看護師であっても大なり小なり動揺しますので,経験年数の少ない看護師はなおさらでしょう。

本コラムでは急変の最重症の状態である心肺停止時に,患者に最善のケアを行うにはどうしたらよいのかを述べていきたいと思います。

 

急変時におけるフィジカルアセスメント 〜「いつもと違う,何か変」に気づく

急変とは,予測される臨床経過から大きく外れる変化であり,とくに大きなバイタルサインの変化を伴う,死に至る可能性のある状況の変化です。

急変時,看護師には生命維持や救命のための迅速な対応と,身体の不可逆的変化を最小限にとどめるための治療およびその介助,患者への安寧・安楽なケアが求められます。

しかし,急変対応は「患者の様子が何かおかしい!」と気づくことから始まります(図1)。

図1急変時の流れ(文献234を参考に作成)

急変時の流れ

 

まずは外観をチェックしましょう(第一印象)

表情・顔貌

顔色が悪い(赤ら顔や青白い顔,土気色など)

 

皮膚状態

皮膚が冷たく湿っていないか,チアノーゼはないか,発疹や発汗の有無など

 

呼吸状態

異常ないびきやいつもと違う寝息,リズムが不整な寝息など

 

体位

けいれんや硬直など不自然な体位はないか

 

ABCの異常を瞬時(15秒ほど)に判断しましょう

気道(airway)

気道が開通しているか(発できるか)を確認する

 

呼吸(breathing)

呼吸数,呼吸の速さ,呼吸の深さ,呼吸パターン,胸郭の動きを確認する

 

循環(circulation)

橈骨動脈の触知ができるか,皮膚の状態(冷たく湿っていないか)を確認する  看護師は患者の右脇に立ち,顔を患者の顔に近づけ,右手を患者の右前胸部へ持っていきます(図2)。

図2ABCのチェック方法

ABCのチェック方法

 

気道が確保されているかどうか,音や息を聴いて,感じて,視線は心窩部に持っていきます。そのとき,胸郭の動きの有無を一緒に観察します。右橈骨動脈の触知の有無を確認しながら,右前腕の皮膚の状態との末梢血管再充満時間(capillary refilling time;CRT,メモ1)を評価するとよりよいでしょう。

 

メモ1CRT(capillary refilling time)とは?

爪床を5秒間圧迫して離し,2秒以内に再充満すると正常と判断します。3秒以上遷延する場合は,何らかの循環障害が起こっている可能性が高いと判断できます。

 

異常を判断したら,「急変の宣言」をしましょう

 急変の宣言とは,声を出すことです。このとき,「○○さん,Aは問題ありませんがBとCに異常があります。救急カートと除細動器を持って来てください」と応援を呼びましょう。

 

心配蘇生法

心肺蘇生法とは

心肺停止状態の患者の呼吸・循環機能を維持する目的で胸骨圧迫および人工呼吸を行うことを心肺蘇生法(cardiopulmonary resuscitation;CPR)といいます。

心肺蘇生法は,一次救命処置(basic life support;BLS)と二次救命処置(advanced cardiovascular life support;ACLS)に分けられますが,それぞれ独立したものではなく,BLSとACLSは救命の連鎖でつながっています。

患者の救命には,バイスタンダー(その場に居合わせた人)によるBLSと,自動体外式除細動器(automated external defibrillator;AED)または除細動器による早期の電気ショックの実施,そしてスムーズなACLSへの連動が重要です。

 

まずはBLS(一次救命処置)とACLS(二次救命処置)をおさえましょう

とくにBLSはすべての医療者が身につけておくことを求められているスキルです。日頃から多くの団体や院内でも講習会が開催されていると思いますので,何度も繰り返し受講し習得しておくことが望ましいでしょう(図3図4)。

 

図3BLSのアルゴリズム(文献5より引用)

 BLSのアルゴリズム

図4ACLSのアルゴリズム(文献5より引用)

ACLSのアルゴリズム

 

最低限求められるスキルをおさえましょう

胸骨圧迫

胸の真ん中,胸骨の下半分を圧迫します。胸壁が少なくとも5cm沈む程度の圧迫を,1分間に少なくとも100回のテンポで繰り返します。胸骨圧迫の間は,胸壁がもとの高さまで戻るよう,圧迫を完全に解除するようにしましょう。

BLSでもACLSでも最も強調されているのは「強く,速く,絶え間ない胸骨圧迫」です。適切なテンポ,深さでの胸骨圧迫ができなくなってしまうと有効な心肺蘇生は行えません。

リズムチェックのタイミングである2分ごとに人員を交代しながら,質の高い胸骨圧迫を絶え間なく実施できるようにしましょう。

 

気道確保

気道確保の方法には,頭部後屈顎先挙上法(図5)と下顎前方引き出し法(図6)がありますが,基本的には,頭部後屈顎先挙上法を行います。

患者の前額部に片方の手を置き頭部を後屈させ,同時にもう一方の手の中指と環指で下顎を挙上します。このとき,指の圧迫が顎のみで,喉を圧迫していないことを確認しましょう。

図5頭部後屈顎先挙上法

頭部後屈顎先挙上法

図6下顎前方引出法

下顎前方引出法

 

頭部後屈顎先挙上法は,舌根部を喉の後壁から離すことにより,確実な気道確保を狙ったものです。口腔内を開け,上気道に異物がないことを確認しましょう。異物を確認した場合は,窒息の原因にもなるため,マギール鉗子を使用して除去します。

 

人工呼吸

人工呼吸は,呼吸停止の患者,あるいは自発呼吸が十分でない患者に対する補助呼吸として行います。手元にある最も適切な手段で気道を確保して換気を行いましょう。病院内であれば,バッグバルブマスク法がよいでしょう。

バッグバルブマスク法は,吸気酸素濃度を上げるため,必ずバッグにリザーバーを装着し,10L/分以上の酸素を投与します。  バッグバルブマスク法は,2人で行うことが推奨されています。

この場合は,1人が下顎挙上の要領で両手を顔面に密着し,マスクをシーリングします。もう1人がバッグを操作します。  

1人で行う場合は,患者の頭側に立ち,マスクを患者の顔に当て,頭部後屈顎先挙上法で気道確保を維持しながら,片方の手でマスクを保持します。このとき,E-C法(図7)により,片手の手でバッグを加圧し換気を行います。

1回換気量は,胸が上がるのがわかる程度とし,1秒かけて加圧します。

 

図7E-C法

E-C法

 

心停止時の対応をおさえましょう

心停止時の大まかな対応は以下の5つがあります。

 

モニター電極の装着およびリズム解析

前胸部にモニター心電図を装着し,波形を確認します。このとき,「3つのド」(リード線が外れていないか,感度が低くないか,誘導を間違えていないか)に注意が必要です。

モニターで波形確認を行う際は,必ず頸動脈を触知し拍動の有無を確認しましょう。

心停止時のモニター波形は①心静止(asystole),②心室細動(ventricular fibrillation;VF),③無脈性心室頻拍(pulseless ventricular tachycardia;pulseless VT),④無脈性電気活動(pulseless electrical activity;PEA)の4種類があり,それにより治療方針が変わるためです。波形確認時に血圧測定は不要です。心拍再開が確認されたときに上腕などで血圧測定を行います。

 

輸液路の確保  

輸液路を確保することで,薬物投与や輸液,採血を行うことができます。輸液路がない場合は,心臓マッサージを中断することなく確保します。輸液路としては,末梢静脈路,骨髄路,中心静脈路がありますが,第一選択は末梢静脈路になります(メモ2)。

 

メモ2気管内投与という選択肢

気管内投与は,静脈投与で用いる投与量の2〜2.5倍を生食10mLで希釈し,気管挿管チューブを通して投与する方法です。投与できる薬剤はアトロピン,アドレナリン,リドカイン,バソプレシンと限りはありますが,急変時に緊急の輸液路の確保が難しい場合は考慮するのもよいでしょう。

 

適切な薬剤の投与

心肺蘇生中,モニター波形により治療方針が変化するとともに,投与する薬剤も変化していくことをおさえておきましょう。心肺蘇生時に使用する薬剤や投与量などは表1を参照してください。

 

表1心肺蘇生時に使用する薬剤

心肺蘇生時に使用する薬剤

 

電気的除細動

電気的除細動は,心室細動や無脈性心室頻拍がみられたときなど,必要な場合に行います。除細動は使用する除細動器の出力波計に応じたエネルギー量を設定します。

二相性の場合は150~200J,単相性の場合は360Jで開始し,2回目以降は初回と同様または高いエネルギー量とします。

 

原因検索のための診察・検査

心停止に至るには,原因となるものがあります。心肺蘇生を行うとともに,その原因に対する治療を行わないかぎり蘇生される可能性は低くなります。心肺停止となる治療可能な原因として「6H6T」が挙げられます(表2)。

 

表2心停止における治療可能な原因:6H6T

心停止における治療可能な原因:6H6T

 

原因検索のためのフィジカルアセスメント観察項目は以下のとおりです。

頸部

頸静脈怒張,気管偏位,皮下気腫の有無

 

胸部

胸郭の動き(左右差の有無),呼吸音(左右差の有無),皮下気腫,心音の位置異常

 

外出血の有無,皮膚乾燥の有無,眼瞼結膜の貧血の有無

 

体温の測定

 

家族,あるいは心肺停止時に目撃者がいれば,既往歴や発症直後の様子などの詳細な現病歴を聴取する(メモ3

 

メモ3現病歴の聴取:SAMPLE

以下の頭文字に沿って病歴を聴取すると,もれなく聴取できるといわれています。

  • S:symptoms(主訴)
  • A:allergy(アレルギー
  • M:medication(内服)
  • P:past medical history & pregnancy(既往歴妊娠
  • L:last oral meal(最終飲食)
  • E:event(状況)

 

原因検索のための検査項目は以下のとおりです。

簡易血糖測定

低血糖高血糖の有無

 

動脈血ガス分析

アシドーシスや電解質異常の有無,酸素化や換気異常の有無

 

血液検査

血算,生化学検査,凝固系検査

 

胸部X線撮影

気胸の有無や縦隔陰影像異常の有無,肺炎像などを確認

 

12誘導心電図

心筋梗塞や肺動脈塞栓症を疑う心電図の変化,致死性不整脈を確認

 

心エコー

心嚢水の有無,心壁運動の有無,循環血液量の評価

 

 

心停止時にみられる波形についておさえましょう

心停止時には以下の4つのモニター波形がみられます(図8)。

 

図8心停止時の波形

心停止時の波形

 

心静止(asystole)

平坦な基線のみで,心臓が静止している状態です。電気的除細動の適応はありません。絶え間ない心臓マッサージを行いながら,輸液路が確保できたら薬剤投与を行います。

 

心室細動(ventricular fibrillation;VF)

心筋が不規則に収縮し,統一した収縮運動がみられない状態です。電気的除細動が第一選択です。

 

無脈性心室頻拍(pulseless ventricular tachycardia;pulseless VT)

P波は認められず,幅広いQRS波が頻拍で出現します。電気的除細動が第一選択です。

 

無脈性電気活動(pulseless electrical activity;PEA)

脈拍は触知できませんが,心電図上何らかの収縮波形がみられる状態です。心静止と同様に電気的除細動の適応はありません。絶え間ない心臓マッサージを行いながら,輸液路が確保できたら薬剤投与を行います。

 

 

急変時の迅速な対応のために必要なコミュニケーションスキル

急変時対応は一刻一秒を争います。このため情報伝達不全は,急変対応の遅れを招く大きな要因ともなります。

米国医療研究品質局(Agency for Healthcare Research and Quality;AHRQ)が提唱する「Team STEPPS」では,チームのパフォーマンスを最大限に活用するための基本原則として,チーム体制,リーダーシップ,状況モニター,相互支援,コミュニケーションが重要なスキルであるとしています。

 

SBAR:エスバー

SBARの構成は「S(状況):situation」「B(背景):background」「A(評価):assessment」「R(提案):recommendations」の4つで,この順に沿って項目を報告すれば,的確に短時間で情報を伝達し,意思を伝えることができます。

以下に例を示します。

S(状況)…起こっている異常な状況は?

「○号室の○○さんですが,呼吸状態と意識レベルが悪いです(結論として懸念している内容)」

 

B(背景)…その状況の臨床的背景は?

「既往に脳梗塞があり,誤嚥性肺炎(疾患名や治療内容)で入院中ですが,5分ほど前から意識レベルJCSⅢ-300,SpO2はリザーバー10Lで90%(異常を裏づける情報)です」

 

A(評価)…S,Bより考える問題は?

「再梗塞か,痰づまりで低酸素を起こしている可能性(自分のアセスメント)があると思います」

 

R(提案)…問題解決への提案は?

「医師へ報告し,救急カートを準備してすぐに来てください(提案,要請したい内容)」  急変時対応では限られた時間内で確実な情報伝達が必要ですから,「SBAR:エスバー」を意識したコミュニケーションが重要です。

 

心肺蘇生時の医療チーム構成

心肺蘇生時の対応は1人では行えません。チームで役割分担を行い,円滑な心肺蘇生が行われなければ患者を救うことができません。以下に,心肺蘇生時の医療チーム構成の例を示します。

夜勤帯などはメンバーも少ないので,1人で二役三役しなければならないこともあるかもしれません。臨機応変にチームメンバー内で役割分担を行うことが重要です(表3図9)。

 

表3心肺蘇生時の医療チーム構成例

心肺蘇生時の医療チーム構成例

 

図9蘇生時の役割分担

蘇生時の役割分担

 

急変時の家族対応

急変場面では,患者への処置や検査,他部門への連絡に追われ,家族への連絡や対応がおざなりになりやすくなります。急変時には,患者の処置や検査と同時に家族への連絡を忘れないようにしましょう。

もちろん,人手が少ないときには患者の急変対応を優先し,一段落して少し手を離せる場面ができてから連絡すればよいでしょう。

急変時は,医療者も焦りや緊張などから動揺を感じています。家族に連絡するときは,情報を整理して「今,何が起こっているのか,今後どのようなことが予測されるか」を伝えられるようにします。その際,声のトーンや口調に注意が必要です。

また,とくに夜間の連絡である場合は,家族が慌てて病院へ駆けつける際に事故を起こしてしまう可能性もありますので,十分に気をつけて来院してもらえるよう言葉かけをしましょう。

家族が来院している場合や来院した場合は,状況を踏まえて医師と相談したうえ,今最大限の治療と看護を行っていることを伝え,どのくらいの時間待ってもらう必要があるのかを伝えましょう。

家族は,大事な家族の1人である患者がこのまま死んでしまうかもしれない,という不安にかられながら自分では何もすることができずに,じっと医療者からの声かけを待っています。

このような家族の心情を理解したうえでかかわることが重要です(図10)。

 

図10急変時の家族対応

急変時の家族対応

 

急変時の看護記録

急変の経過を事実に基づいて記録することは,医療者としての責務でもあります。

しかし,急変対応中は,刻々と変化する患者の状況を把握しながら処置の介助も行わなければならず,記録を同時進行で行うことが必要とはされますが,正式な看護記録が行えないことも多くあります。

そのような場合,メモに残す程度しかできないことが多いのですが,記録を残す習慣をつけ,後でこれらのメモを参考に,正式な記録として記載しましょう。

このときに注意しなければならないポイントは,モニターなど医療機器の時計機能です。正時に修正される機器であれば問題ありませんが,長時間単独で使用されていた機器などは,時刻が数分単位でずれていることがありえます。

例えば,モニターの記録が「21:30 心室細動」でも,看護記録が「21:35 モニターで心室細動を確認…」と記載されていた場合は,仮に医療事故が発生した場合,両者とも証拠不十分となってしまいます。  

このように,看護記録は診療録と同様に重要な証拠となります。証拠は書証と証言に分けられ,看護記録は書証に分類されます。訴訟となった場合に看護記録に不備があると,観察や処置などの必要なケアが行われていないと判断されることがあります。

証言は書証を補うものであるので,仮に裁判などで必要な観察や処置は行っていたと証言しても,記録が残されていないと証拠として認められず,看護師が責任を問われる場合もあります。

そのため,看護記録を記載するときは,事実に基づいた内容で読みやすく,科学的根拠を持った表現を心がけ,内容を簡潔明瞭に順序よく整理して記載する必要があります。

 

急変時の記録の例

〔0時,2時の巡視時〕就寝中,いびきをかいていた。

・急変発見後は経時記録

〔4:10〕4時の巡視時,訪室するといびきが聞こえず。仰臥位でおり,問いかけにも反応せず。痛み刺激にも反応なし。呼吸停止を確認した。橈骨動脈の触知も確認できなかった。

〔発見時に記録すること〕 
・時間・場所・状況(体位や顔色など) 
・バイタルサイン  
・主訴,随伴症状 ・行った対応と処置 
・不整脈があれば波形を印刷

〔4:11〕ナースコールでただちに応援要請を行い,CPRを開始した。

〔4:13〕モニターを装着したところ,心静止の波形。リズムチェックを行ったが,頸動脈の拍動は認めず,再度CPRを再開した。意識レベルJCSⅢ-300,瞳孔径は左右とも5mmでアニソコリアなし。
対光反射は左右ともなし。

・バイタルサインは測定するたびに記録
・報告は誰にしたか,そのときに出された指示があれば明確に記録 

〔4:15〕当直医A医師,B医師が到着。リズムチェックで頸動脈の拍動は認めず。心電図上PEAの波形でありCPRを再開。

〔4:16〕B医師が左上腕に20Gの末梢静脈路を確保し,ソリューゲンF500mLを150mL/時で投与開始,同時にボスミン1mgの静脈内投与を実施した。

〔処置時に記録すること〕  
・時間 
・処置内容  
・処置中の患者の状態 
・チューブ類を留置した場合はサイズと挿入長を記録
・輸液・薬剤を投与した場合は薬剤名・投与量・投与方法を記録

〔4:17〕リズムチェックで頸動脈の拍動は認めず,心電図上PEAの波形でありCPRを再開。B医師により,右大腿動脈にて動脈血ガス採血および血算・生化学・凝固能の採血を実施。

〔4:18〕 A医師により8mmの経口挿管チューブで経口挿管を実施,in24cmで固定を実施した。B医師より妻へ電話連絡。呼吸停止し急変対応中であることを伝え,病院へ向かってもらうよう伝えた。30分ほどで来院の予定。  

・家族への連絡状況も記録

〔4:19〕リズムチェックで頸動脈の拍動は認めず,心電図上PEAの波形でありCPRを再開。ボスミン1mgの静脈内投与を実施した(図11図12)。

 

図11看護師3名での急変時からBLSまでの流れ

看護師3名での急変時からBLSまでの流れ

 

図12看護師3名(A・B・C)と医師2名(X・Y)によるACLS時の位置と役割分担

看護師3名(A・B・C)と医師2名(X・Y)によるACLS時の位置と役割分担

・当直医2名,看護師が夜勤3名の場合,新人・知識技術未熟者は,胸骨圧迫やバッグバルブマスク,物品介助に徹する。
・記録係は全体のタイムキーパーでもあるため,医師とコミュニケーションが取れ,患者の状況を把握しており,点滴や役割交代などを  スムーズにできる能力を持つ看護師のほうがよい。

メモ4 DNAR (do not attempt resuscitation)

患者または家族の希望で心肺蘇生法を行わないことを指します。DNARはもともとDNRdo not resuscitation)という言葉でした。DNRという言葉が,蘇生する可能性が高いのに蘇生しないという印象をもたれやすいという考えから, 『AHAガイドライン2000』で,「attempt(試みなさい)」という言葉が付け加えられ,蘇生に成功することが少ないなかでは蘇生処置をあえて試みない,という意味を込め用いられるようになりました。

 

おわりに

急変患者に遭遇した場合に最も重要なのは,的確に行動できる実践力です。急変は,いつ,どこでも起こりうるものですが,これまでを振り返ってみても,「何もできなかった」「あのとき,もっとこうしていれば」という後悔も多いものです。

しかし,次に起こりうる急変に備え,後悔することなく自信を持って対応できるようになるためには,いつでも即応できるような心構えと実践力を修得し,看護師一人一人が役割意識を持つことが重要になると思います。

 


[引用・参考文献]

  • (1)McLean B et al.: Fundamental Critical Care Support: Course Textbook. Society of Critical Care Medicine, 2007.
  • (2)前川剛志(監修):急変・救急時看護スキル.照林社,p8,2004.
  • (3)勝見 敦ほか(編):エキスパートナースガイド 急変時対応とモニタリング.照林社,2009.
  • (4)石松伸一(編):急変対応のABCD.照林社,2014.
  • (5)日本救急医療財団心肺蘇生法委員会:救急蘇生法の指針 医療従事者用2010.へるす出版,p13/33,2011.
  • (6)中村美鈴(編):わかる!できる!急変時ケア 第3版.学研メディカル秀潤社,2012.
  • (7)藤野智子ほか(編):急変の見方・対応とドクターコール.南江堂,2011.
  • (8)藤田良子ほか:入院患者の病状急変時における看護師の役割―教育プログラムの実施と評価―.看護実践の科学,38:72-81,2013.
  • (9)小池伸亨:場面でおさえる心肺蘇生のコツ.月刊ナーシング,34:19-29,2014.
  • (10)狭間しのぶ:起こった時にあわてずに済む急変時の役割分担.月刊ナーシング,34:16-23,2014.
  • (11)Steven P. Robbins(著)・高木晴夫(訳):組織行動のマネジメント.ダイヤモンド社,2009.

[Profile]
山崎千草
東京女子医科大学病院 看護部 救命ICU,急性・重症患者看護専門看護師
2002年4月 札幌医科大学附属病院へ入職し,一般外科病棟,産科病棟で看護師および助産師として勤務。2005年4月より東京医科大学病院へ入職。2011年3月に東京女子医科大学大学院博士前期課程を修了し,同年 急性・重症患者看護専門看護師の資格を取得。現在は救命救急センターICUで勤務しながら院内ドナーコーディネーターも務めている。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2015 医学出版
[出典]循環器ナーシング 2015年4月号

循環器2015年4月号

P.63~「これで動ける!急変時対応」

著作権について

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今日の看護クイズ 挑戦者3403

過敏性腸症候群のRome Ⅲ診察基準では、「半年以上前から腹痛や腹部不快感を繰り返し、特に最近3カ月は、月のうち3日以上ある」という症状のほか、3つの項目が当てはまることとされています。下記の選択肢のうち、その3つの項目に当てはまらないものはどれでしょうか?

  • 1.腹痛や腹部不快感は、排便すると軽くなる。
  • 2.症状とともに排便の回数が増えたり減ったりする。
  • 3.症状とともに便の形状が以前と変わった(柔らかくなったり硬くなったりする)。
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今日のクイズに挑戦!