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2015年12月03日

情報を伝えるネットワーク・神経のはたらき|動作のしくみから理解する(3)

ナースのための解剖生理の解説書『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』より
今回は、動作のしくみから解剖生理を理解するお話の3回目です。

〈前回の内容〉

骨格筋の構造と筋収縮|動作のしくみから理解する(2)

前回は、骨格筋の微細構造と筋収縮のしくみについて学びました。

今回は、身体に情報と指令を伝える神経の構造としくみについて解説します。

 

〈目次〉

 

末梢神経から中枢神経、そして筋肉へ

筋の収縮を引き起こすのは、運動神経を伝わってくる電気信号です。個々の細胞に酸素や栄養素を運ぶために血管という川が流れているのと同じように、私たち身体体には情報と指令を伝える神経のケーブルも張り巡らされています。そして、そのケーブルにはちょうど、動脈と静脈が分かれているように、身体からの「情報」を脳に伝えるルートと、脳からの「指令」を身体に伝えるルートの2種類があるのです。

冒頭の例を思い出してください。私たちがリンゴを取ろうとするとき、まず、眼という感覚器でその位置を確認します。次に、その情報は脳や脊髄に送られます。脳や脊髄では、送られた情報をもとにどの筋肉をどう動かせばリンゴが取れるのかを考え、決定を下します。決定に基づいて出された指令は筋肉に伝わり、そして私たちは無事リンゴを手にすることができます。

この時、私たちはリンゴを取るために2種類の神経を使っています。1つは脳や脊髄の中枢神経、もう一方は末梢神経です。この末梢神経はさらに、眼や耳などの感覚器と中枢神経をつなぐ感覚神経と、中枢神経と筋肉などの運動器をつなぐ運動神経に分けられます(図1)。

図1神経の分類

神経の分類

 

memo神経の分類と役割

中枢神経(脳・脊髄):司令塔

末梢神経(感覚神経・求心性神経):感覚器からの情報キャッチ

末梢神経(運動神経・遠心性神経):司令塔からの情報を運動器官に伝える

 

もう一度整理しましょう。

光や音、におい、痛みなど、感覚器で受け取った刺激は電気信号に変えられ、まずは感覚神経を伝って中枢へと送られます。中枢では送られた情報を整理・解釈し、過去の経験や現在の状況を見極めながらどのように反応すべきかを決定します。中枢神経はその名のとおり、指令本部のようなはたらきを担うのです。

中枢神経から下された決定は、今度は再び電気信号として末端の運動器官に伝わります。この時、中枢の指令を伝えるのが運動神経の役割です。

中枢神経に向かって情報を伝える末梢神経を求心性神経、中枢神経から出た指令を伝える末梢神経を遠心性神経と呼んで区別することもあります。

 

末梢神経の構造

末梢神経は、神経線維の束で構成されています。神経線維は1本1本が神経内膜で覆われ、それが集まって束をつくっています。さらにその束を神経周膜が覆って、さらに太い神経線維の束をつくっています(図2)。

図2末梢神経の構造

末梢神経の構造

 

そうしてできた神経線維の束は、いくつか集まって中を通る血管とともに、神経上膜でまとめられ、1本のひも状になります。

 

神経細胞の構造と情報が伝わるしくみ

神経細胞(ニューロン)はおおむね、核のある細胞体から細長い一筋の糸が伸びたような形をしています。細長い糸のような部分は軸索と呼ばれ、細胞体が受け取った情報はこの軸索を伝って次の細胞へと送られます。軸索の長さは細胞がある場所によって異なりますが、最も長いものでは1m近くに及ぶといわれています。

 

memo神経組織

神経系を組み立てる神経組織は情報を伝える神経細胞(ニューロン)と神経細胞を支持・絶縁・保護する神経膠細胞(グリア細胞)の2種類の細胞からなる。

 

細胞体の周りには、軸索より太くて短い神経線維の突起がいくつも出ています。これを樹状突起といい、ここでは情報を受け取って細胞体へ送るはたらきをしています(図3)。

図3神経細胞〔ニューロン(矢印は電気信号の流れを示す)〕

神経細胞〔ニューロン(矢印は電気信号の流れを示す)〕

 

memo有髄線維と無髄線維

神経線維には、周囲を髄鞘に囲まれている有髄線維と、髄鞘がない無髄線維とがあります。有髄線維の髄鞘は、一定の間隔で消失している部分があり、これをランビエ絞輪といいます。

 

つまり、神経細胞内を流れる電気信号は、樹状突起→細胞体→軸索という順に流れ、決して逆流することはありません。

神経細胞の場合、細胞と細胞はピッタリ連結しているわけではなく、ごくわずかな隙間を介してつながっています。ですから、情報を次の細胞に伝えるには、どうにかしてこの隙間を飛び越える必要があります。

この隙間を飛び越えるための仕掛けが、バトンの役割をもつ神経伝達物質です。実は、神経細胞はここで電気信号を化学物質に変換し、それを放出することで次の細胞に情報を伝えているのです。

バトンリレーのしくみはこうです(図4)。

図4シナプスでの物質伝達

シナプスでの物質伝達

 

電気信号が軸索の終末までくると、そこにあった小さな袋が開き、次の細胞に向かって神経伝達物質がばらまかれます。ここで放出される神経伝達物質は、はたらきによってアドレナリンセロトニンなどさまざまですが、筋肉を動かす指令にはアセチルコリンが使われます。

 

memo神経情報を伝える電気信号

神経を伝わる情報はすべて、電気信号です。例えば、眼・・舌などの感覚細胞に刺激が与えられると、細胞内外の電圧差に変化が生じ、それに応じて神経細胞に電気信号(インパルス)が発生します。これを活動電位といいます。ただし、神経細胞どうしの接合部では、この電気信号が一時的に化学物質に置き換えられ、細胞から細胞へと伝えられます。

 

放出された神経伝達物質を感知するのが、次の細胞の樹状突起です。ここでは物質によってそれを受け取る受容体が決まっていて、担当する物質が来るとチャネルが開いて細胞の外にあるナトリウムイオン(Na)を取り込み、その流れによって電気信号をつくり出します。

こうしたバトンリレーを行う、細胞と細胞の接合部をシナプスと呼びます。電気信号→化学信号→電気信号という変換にかかる時間は、わずか1,000分の1秒ともいわれます。

 

memo神経伝達物質の種類

神経伝達物質には、アセチルコリンやノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンなどがあります。アセチルコリンは神経筋接合部、自律神経節、副交感神経終末の、ノルアドレナリンは交感神経終末の伝達物質です。

 

〈次回〉

視覚と聴覚・平衡覚のしくみ|動作のしくみから理解する(4)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典]『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』(編著)増田敦子/2015年3月刊行

引用・参考文献 

著作権について

この連載

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