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2015年11月28日

動作を支える骨と筋肉、関節|動作のしくみから理解する(1)

ナースのための解剖生理の解説書『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』より
今回は、動作のしくみから解剖生理を理解するお話の1回目です。

〈前回の内容〉

腎臓の排泄能力|体液の調節から理解する(3)

前回は、腎臓の排泄能力の指標である清掃値(クリアランス)と排尿のしくみについて学びました。

今回は、身体を動かす骨と筋肉、そして関節のはたらきについて解説します。

 

増田敦子
了徳寺大学医学教育センター教授

 

〈目次〉

 

効率よく食物をとるために発達した運動機能

必要な栄養素を身体の内部に取り込んで加工し、代謝によって生じた不必要な物質を身体の外部に排出するという点では、動物も植物も全く同じ活動をしています。しかし、動物は自分にとって必要な栄養素を自ら動いて取りに行かなければならないため、植物にはない骨格や筋肉、感覚器、脳といった複雑なしくみをもつようになりました。これらの機能はすべて、生きていくために必要な栄養素を効率よく手に入れるために発達してきたものです。

たとえば、目の前にリンゴがあったとします。それを取ろうとするとき、私たちはりんごを「取ろう」と意識するかしないかのうちに、正確に取り損ねたりすることなくそのりんごの位置に手を伸ばし、指をたくみに操って握ることができます。

このような毎日当たり前のように行っている動作も、実は、眼→脳→手・指の筋肉という見事な連携プレーがあって初めて成り立っているのです。意識するしないにかかわらず行う人間の動作にはすべて、感覚器(情報を集める諜報機関)、末梢神経(情報と指令を伝えるケーブル)、中枢神経(情報を分析し指令を出すコンピュータ)、運動器(動作の実働部隊)がかかわっているのです。

本コラムでは、こうした日常の動作にかかわる骨や筋肉などの運動器、感覚器の構造としくみ、そしてその両者をつなぐ神経のはたらきについてみていくことにしましょう。

 

骨と筋肉で身体を動かす

動作を支える骨と筋肉

鉄筋コンクリートの建物が鋼鉄の骨組みで支えられているように、私たちにも身体を支える骨格があります。成人の骨格は約200個の骨でできており(図1)、約500個の筋肉がそれらの骨を包み(図2)、外観をつくっています。

図1主な骨格

主な骨格

 

図2体幹の主な筋肉

体幹の主な筋肉

 

骨と骨は互いに結合して骨格を形成しています。その結合(広い意味の関節)の仕方により、運動の範囲と度合いが違ってきます。結合には不動性と可動性の2種類あり、可動性の結合を狭い意味の関節と呼んでいます。動作に関係するのは、可動関節によって動かすことができる骨格のほうです。

また、骨格には脳や内臓を保護したり、脂肪やカルシウム、リンなどを貯蔵したりするはたらきもあります。

 

memo骨の生理的作用
  1. 支持作用(身体を支える)
  2. 保護作用(脳や内臓を保護する)
  3. 運動作用
  4. 造血作用
  5. 電解質の貯蔵作用

 

一方、骨格についていて、動作に関係する筋肉を骨格筋と呼びます。また、内臓にある平滑筋や心臓にある心筋とは違い、自分の意思で動かすことができるため、こうした筋肉を随意筋とも呼びます。

骨格筋中央の膨らんだ赤い部分が筋腹で、左右の細く白い部分が腱です。骨格筋はこの腱によって関節をはさんで位置する2つの骨に付着し、この関節の運動にはたらいています。この付着部のうち相対的に動きの少ない側を起始、大きく動く側を停止といいます(図3)。

図3骨格筋の起始と停止

骨格筋の起始と停止

 

COLUMN骨の構造

骨は関節面を除いて骨膜に包まれ、緻密骨と海綿骨からなる骨質と、髄腔内の骨髄から構成されています。骨膜には血管と神経が走っているため、骨折などの損傷で痛みを感じます。

緻密骨は骨の表層をなす部分で、肉眼にはカルシウムの固まりに見え、顕微鏡では栄養血管などが走るハバース管やこれを連絡するフォルクマン管を多く含んでいるのがみえます。ハバース管の周囲は何層もの骨層板で同心円状に囲まれ、バウムクーヘンのような円柱構造(骨単位)が形成されています。各層板の間には骨小腔と呼ばれる空所が並び、ここの骨細胞が存在しています。骨小腔とハバース管とは骨細管で連絡され、骨細胞はここを通して栄養を受けることができます。海綿骨は骨深部をなす構造で、入り組んだ骨梁から構成されています。

長骨の中央部の骨幹では、骨梁が少なくなって空間を形成しており、これを髄腔と呼ばれます。骨梁と骨梁の間には骨髄組織が詰まっており、ここで造血が行われます(図4)。

図4骨の構造

骨の構造

 

関節の種類とはたらき

一般的に狭い意味で「関節」と呼ばれているのは、肘や膝などの可動関節のことです。結合している骨の連結部分を関節体と呼び、そのうち、突出したほうを関節頭、くぼんでいるほうを関節窩といいます(図5)。

図5関節の構造

関節の構造

 

memo関節炎と捻挫

関節炎の際に関節が腫れるのは、滲出液が増えてたまるからです。関節包の特定部位に丈夫な線維が密集してこれを補強し、関節運動の方向や範囲を規制している構造を靭帯といいます。靱帯が過度に伸展を受けて損傷した状態を捻挫といいます。

 

関節体は関節軟骨に覆われ、結合部は線維膜と滑膜という2層の関節包に包まれています。関節包の中は関節腔といい、骨端同士の摩擦を減らし関節の動きを滑らかにするため、軟骨の栄養にかかわるヒアルロン酸を豊富に含む滑液という粘調な液体で満たされています。また、関節包を強化したり、関節の過度の運動を阻止し、損傷を防ぐために靭帯によって補強されています。

 

memoヒアルロン酸とその仲間

ヒアルロン酸はアミ基をもつ糖(N-アセチルグルコサミン)と酸化糖(グルクロン酸)が結合した二糖単位がたくさん連結した構造をしたクリコサミノグルカン(ムコ多糖)です。大量の水分を含み、空間を占めるのでクッションまたは潤滑成分としてはたらきます。関節の滑液だけでなく眼の硝子体、臍帯などにも存在しています。グリコサミノグルカンにはそのほか、軟骨、骨、皮膚に存在するコンドロイチン硫酸や肝臓、肺、皮膚などに存在するヘパリンがあり、ヘパリンは抗凝固因子としてはたらいています。

 

関節はさまざまな観点から分類することができます。第1の分類は、運動軸によるものです。たとえば、肘などは通常内側にしか曲がりませんから、運動軸は1です。これに対し、手首などの運動軸は2、肩関節など多方向に動かすことができる関節は多軸ということになります(図6表1)。

図6関節の種類とはたらき

 

表1主な関節の種類とそのはたらき

 

第2の分類法は、関節体の数によるもので、2つの骨から構成される関節を単関節、3つ以上の骨から構成される関節を複関節といいます。

 

memo単関節と複関節

単関節:肩関節、股関節、指間節関節など

複関節:肘関節、膝関節、橈骨手根関節など

 

さらに、関節体の形によって分類する方法もあります。たとえば、関節頭が球状で、関節窩が頭に対応する凹面のくぼみをもつものを球関節といいます。これは第1の分類でいうと多軸性で、多方向に動かすことができる関節です。そのなかで、関節窩がとくに深いものを臼状関節といいます。

また、関節頭と関節窩の量関節体が馬の鞍状で互いに直角方向に動き、2軸性の動きができるものを鞍関節、関節体が楕円状で、鞍関節同様2軸性に動くものを楕円関節といいます。

関節窩が円柱状で、そこに入り込んでいる関節頭がこの軸の周りだけ動くものを蝶番関節、関節頭が環状で関節窩が切り込まれて車の軸を受けるような形になっているのを車軸関節といいます。両方とも、運動軸は1なので可動性は低くなります。

関節面が平面に近く、可動性が少ないものを平面関節といい、ほとんど可動性がないものを半関節といいます。

股関節(図7)は大腿骨頭を関節頭とし、寛骨臼を関節窩とする臼状関節で、体幹と下肢を連結しています。

図7股関節

 

これは球関節の1つで多軸性ですが、球の約2/3をなす関節頭が深い寛骨臼にはまり込むために可動性が制限されています。しかし、それによって体重を支持し、身体を安定させる重要な役割を果たしています。

 

memo寛骨と寛骨臼

寛骨は腸骨、坐骨、恥骨の3つの骨が癒合して1個の骨になったもので、2つの寛骨によって骨盤が構成されます。3個の骨が会合する外側に寛骨臼があり、ここに大腿骨頭がはまり込み、股関節がつくられます。

 

大腿骨頸は骨折(大腿骨頸部骨折)がよく起こる部位で、とくに高齢者に多くみられます。骨粗鬆症の進行に伴い骨がもろくなり、少しつまずいただけでも骨折しやくなります。高齢者の寝たきりの原因の第3位が骨粗鬆症による骨折で、なかでも大腿骨頸部骨折は4人に1人程度で寝たきりの原因となっています。

膝関節(図8)は人体の中で最も大きく、また最も複雑な複関節です。膝関節を構成する骨は大腿骨、脛骨および膝蓋骨で、大腿骨と脛骨との関節は蝶番関節になっています。

図8膝関節

 

関節頭である大腿骨の外側顆と内側顆は比較的強い凸面になっていますが、脛骨の外側顆と内側顆は平坦で浅い関節窩になっているので、これらの間の適合性を高めるために線維軟骨の両側に関節半月が(内側半月と外側半月)があります。関節包内には前十字靭帯と後十字靭帯からなる膝十字靭帯があり、膝関節の前後方向の安定化に寄与しています。関節は内側側副靭帯と外側側副靭帯によって補強され、膝関節の左右方向の安定性を強化しています。

 

関節の動き

関節の動きには、屈曲・伸展・内転・外転・描円・回旋・回内・回外などがあります。整形外科や術後のリハビリテーションなどに必要な場合も多いので、図9と一緒に覚えておくとよいでしょう。

図9関節の動き

 

memo人工股関節置換術後の禁忌肢位

変形性股関節症や関節リウマチの患者の治療に、人工股関節置換術(total hip arthroplasty;THA)があります。この手術の後、ベッドの移動や体位変換の時に患肢を内転、内旋、過度に屈曲すると脱臼が起こりやすくなります。脱臼すると、リハビリテーションや日常生活に重大な支障をきたすので、避けなければなりません。

したがって、術直後から14日頃まで外転枕を使用し、患肢位は股関節を軽度(15〜20°)屈曲、外転10〜15°、内外旋はさせないようにします。靴を履く動作やしゃがむ姿勢をとる時に脱臼が起こりやすいので、股関節脱臼四肢外回旋中間位で挙上し、膝下に挿入されたロールタオルで膝関節軽度屈曲の良肢位と位(屈曲、内転、内旋位、術後3〜4週までは自分で靴を履かないように指導します。

また、足をクロスしない、低いソファーに座らない、和式トイレは使用しない―なども、禁忌肢位として覚えておくとよいでしょう(図10)。

図10人工関節置換術後の禁忌肢位

 

【屈曲】関節の角度が小さくなるような運動

【伸展】関節の角度を大きくするような運動

【外転】体肢を身体の正中面から遠ざける運動

【内転】体肢を正中面に近づける運動

【描円】上記4つの運動が総合されて、体幹や体肢の一端で円を描くような運動

例:上肢を伸ばして円を描く場合

【回旋】上腕や大腿ではその長軸を軸としてコマのように回転する運動で、その部分の位置は変わらない。内旋とは内側(正中面に近づくよう)に、外旋とは外側(正中面から遠ざかるよう)に回転すること

【回内・回外】前腕の回転にだけ使う特別な用語。前腕を差し出して手のひらを上に向けた位置(このとき橈骨と尺骨は平行の位置にある)をとらせる運動。その逆に手のひらを伏せるような位置をとらせる運動を回内という

 

memo不動結合の種類

不動結合とは結合組織や軟骨、骨によって固定された結合です。結合組織による結合の例として頭蓋骨に見られる縫合、と歯槽骨の間の釘植、軟骨結合の例として恥骨結合があります。これらの結合において、両骨間の結合組織や軟骨が骨化したものに頭蓋骨、寛骨、仙骨などがあります。

 

memo脱臼とは

関節頭と関節窩の位置が外からの力によって食い違ったり、離れたりすることを脱臼(luxation)といいます。顎関節、股関節などに起こりやすいといわれています。

 

〈次回〉

骨格筋の構造と筋収縮|動作のしくみから理解する(2)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『身体のしくみとはたらき』 (編著)増田敦子/2015年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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