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2015年11月26日

腎臓の排泄能力|体液の調節から理解する(3)

ナースのための解剖生理の解説書『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』より
今回は、体液の調節から解剖生理を理解するお話の3回目です。

〈前回の内容〉

ネフロンと尿の生成|体液の調節から理解する(2)

前回は、腎臓で尿を生成する小さな構造体であるネフロンについて学びました。

今回は、腎臓の排泄能力の指標である清掃値(クリアランス)と排尿のしくみについて解説します。

 

増田敦子
了徳寺大学医学教育センター教授

 

〈目次〉

 

クリアランス(清掃値)

腎臓の排泄能力の指標の1つにクリアランス(「除去」:動詞clear+ance;clearance)があります。これは、ある物質Xが腎臓を通過したとき、1分間でどれだけ尿中に排泄されるか、つまり、ある物質Xが存在していた血漿からその物質を除去し、毎分何mLの血漿を清掃することができるかを数値化したものです。

これは、たとえば「畳1枚につき2個のゴミで汚れていた部屋を1分間掃除するとき、1つに5個のゴミしか入れられないゴミを袋に入れたら2袋になった。何畳の畳がきれいになったか?」という算数の問題を解くのと同じです。

もともと、クリアランスとはきれいになった血漿量を指していますが、ここでいう例ではきれいになった畳の数に相当します(図1)。

図1部屋の掃除

部屋の掃除

 

図1の式から

 

これをクリアランスを求める式に置き換えると、

 

memo尿の組成

1日尿量(成人):約1,000〜1,500mL

多尿:2,000mL/日以上

乏尿:500mL/日以下

無尿:100mL/日以下

:淡黄色

比重:1.015〜1.030

pH:5〜7

主な固形物成分:尿素、尿酸、クレアチニン、塩素、ナトリウム、カリウム、アンモニア

 

糸球体でろ過されたあと、尿細管で再吸収も分泌もされずに尿中に排出される物質の場合、ろ過量=清掃された血漿量ですから、このような物質のクリアランスは糸球体ろ過量の指標として用いられます。具体的にはイヌリンがあります。

 

memoイヌリン

イヌリンはフルクトースからなる多糖の一つでフルクトサンともいいます。ダリア、チョウセンアザミ、タンポポの塊茎や根に存在しています。腸の酵素では加水分解されません。ちなみに、ガラクトースからなる多糖はガラクタンといい、寒天に含まれています。

 

しかし、イヌリンを用いて糸球体ろ過量を求めるにはイヌリンを点滴注射しなければなりません。もし人間の身体がつくる物質でイヌリンのように尿細管で再吸収も分泌もされない物質があれば、点滴注射する必要がなく簡単です。それが、クレアチニンという物質です。これは筋肉の中に存在するクレアチンの代謝産物で、実は尿細管でわずかに分泌されます。しかし、1日尿中排泄量は比較的一定なので、臨床的にはクレアチニン・クリアランス(CCr)が糸球体濾過量の指標として頻用されています。

 

memoクレアチンとクレアチニン

両者は名前がよく似ていますが、違う物質です。クレアチニンは全身の筋肉、特に心筋や骨格筋内に存在する高エネルギー化合物であるクレアチニン・リン酸に由来する代謝最終産物、つまり老廃物です。毎日、筋肉から一定の割合でクレアチニンから転換されたクレアチニンが腎臓に運ばれ排泄されます。

 

COLUMN血圧をコントロールする腎臓のはたらき(表1

血圧をコントロールするはたらきをもつ重要な臓器の1つは、意外にも腎臓です。

表1腎臓のはたらき

腎臓のはたらき

 

血圧=心拍出量×末梢血管抵抗で、心拍出量=循環血液量と考えると、血液量の増減が血圧の上昇低下に反映されます。したがって、血圧が上がって正常値を超えると、腎臓は血液からより多くの水分を尿中に排出することで循環血液量を減らし、血圧を下げます。

反対に血圧が下がると腎臓はレニンという酵素を出し、化学反応によりアンギオテンシンⅠを経てアンギオテンシンⅡを生成し、血管を収縮させ、副腎皮質からアルドステロンというホルモンを分泌させます。このホルモンは、腎臓がナトリウムを再吸収するのを助けます。水とナトリウムは非常に相性がよく、いつも一緒に行動します。そのため、ナトリウムが生体内にとどまると水も一緒にとどまることになり、血液量が増えます。すると、血管内により多くの血液が流れることになり、血圧は上がります。

血圧が下がると、ろ過圧も下がります。尿を生成するという腎臓の機能は血圧が維持されてこそ遂行できるものです。腎臓は血圧低下を自身で検出し、レニンを放出することで血圧上昇反応の引き金を引くのです。

 

排尿

腎臓で絶えずつくられている尿が尿管を通って膀胱に送り込まれます。膀胱と尿道の接合部には平滑筋が厚くなった内尿道括約筋があります。この筋肉は自分の意思で調節できず、普段は巾着の紐のように締められ、膀胱にためられた尿が出ていかないように閉じています。

膀胱にある程度の尿がたまると膀胱壁が伸展し、その情報が脊髄の排尿中枢に伝えられ、反射的に膀胱が収縮し、内尿道括約筋が弛緩し、排尿が起こります。しかし、尿がたまった情報は大脳にも伝えられるので、排尿の準備が整っていないときは自分の意思で外尿道括約筋を収縮させ排尿を我慢したり、随意的に弛緩させて排尿することもできます。

 

〈次回〉

動作を支える骨と筋肉、関節|動作のしくみから理解する(1)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『身体のしくみとはたらき』 (編著)増田敦子/2015年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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