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2015年11月24日

ネフロンと尿の生成|体液の調節から理解する(2)

ナースのための解剖生理の解説書『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』より
今回は、体液の調節から解剖生理を理解するお話の2回目です。

〈前回の内容〉

血液を浄化する腎臓のはたらき|体液の調節から理解する(1)

前回は、全身を巡って老廃物と二酸化炭素を含んだ血液を浄化する泌尿器系の位置と構造について学びました。

今回は、腎臓で尿を生成する小さな構造体であるネフロンについて解説します。

 

増田敦子
了徳寺大学医学教育センター教授

 

〈目次〉

 

ネフロンの構造

それぞれの腎臓にはネフロン(腎単位)という小さな構造体があり、これが尿を生成する1つのユニットを構成しています。ネフロンは左右の腎臓で合計約200万個あります。

ネフロンは腎小体とそれに続く尿細管から構成されます。腎小体は毛細血管のかたまりである糸球体とそれを取り囲むボーマン嚢からできています(図1)。

図1腎臓の位置

腎臓の位置

 

ボーマン嚢は尿細管の末端の盲端が杯状に拡張して糸球体をすっぽり覆っています。糸球体を包んでいるボーマン嚢は尿細管へと移行します。尿細管は初め曲がりくねった近位尿細管をつくり、次いで髄質までまっすぐ下行してからヘアピン状にUターンして皮質に戻ります。これをヘンレのループ(ヘンレ係蹄)といいます。

皮質内では曲がりくねった遠位尿細管をつくり、ボーマン嚢に近づいて輸入細動脈と輸出細動脈に接します。この接触部の尿細管細胞は特殊に分化した緻密斑を形成し、この部分の輸入細動脈にはレニンを放出する糸球体近接細胞があります。その後、遠位尿細管は集合管という太い直行する管に合流します。集合管には多数の遠位尿細管が合流し、次第に太くなり腎盂に開口します(図2)。

図2ネフロンの構造

ネフロンの構造

 

ネフロンには2種類の毛細血管がみられます。一般組織では、左心室から送り出された動脈血は大動脈から分岐した動脈から酸素と栄養素を受け取り、毛細血管における物質交換を経て静脈血が右心房に戻ります。一方、腎臓へ入った腎動脈は輸入細動脈になりボーマン嚢に入ります。その中では糸球体という毛細血管をつくり、輸出細動脈になってボーマン嚢から出ていきます。最初の毛細血管では血液をろ過するだけでガス交換は行っていないので、ボーマン嚢に入った動脈血は、動脈血のまま出ていきます。

2番目の毛細血管は尿細管の周囲に密着しており、最終的には腎静脈に合流して腎臓から出ていきます(図3)。この毛細血管と尿細管との間では再吸収と分泌を行いながらガス交換もしているので、静脈血となります。

図3腎臓の血管

腎臓の血管

 

尿の生成

ろ過

腎臓に流入した血液は糸球体でろ過され、ボーマン嚢に受け止められます。このろ過液を原尿といいます。このとき、糸球体はろ紙のような役割を果たし、蛋白質と血球はこのろ紙を通り抜けることができません。しかし、それ以外の血漿成分はろ過されます。つまり、原尿=血漿−蛋白質、ということになります。

 

memo尿素はどこでつくられる?

尿の代表的な成分である尿素は、肝臓でつくられています。化学物質を生成したりするのではなく、ろ過、再吸収、分泌の3つの機能によって体内に残す物質と体外に排泄する物質を振り分けるのが腎臓の役目です。

 

糸球体から1分間にろ過される量を、糸球体ろ過量(GFR)といいます。基準値はだいたい100~110mL/分で、下の式のように計算すると1日およそ144~150Lの原尿がこし出されていることになります。

  • 100mL/分 × 60分 × 24時間 = 144,000mL/日

ろ過の原動力は糸球体血圧です。輸出細動脈は輸入細動脈よりも細くなっているので、糸球体毛細血管の血圧はほかの毛細血管よりも高く、約60mmHgです。この圧力に対して血管に水を引き込もうとする膠質浸透圧がはたらきます。さらに、ボーマン嚢からも血圧と反対方向にはたらきます(図4)。

図4糸球体ろ過に関与する圧力

糸球体ろ過に関与する圧力

 

ですから、ろ過に有効にはたらく有効ろ過圧は次の式のようになります。

  • 有効ろ過圧 = 糸球体血圧 −(膠質浸透圧 + ボーマン嚢内圧)=60−(25+15)=20mmHg

したがって、膠質浸透圧とボーマン嚢内圧が変わらない場合、糸球体血圧が20mmHg以下になるとろ過が行われなくなります。つまり、老廃物が血液に残ったままになります。これは尿毒症とよばれる重篤な病態となります。原疾患が心臓にあっても、心不全で心臓のポンプ機能の障害による血圧低下が続き、尿毒症が直接の死因で亡くなることもあります。

一方、血圧が高くなるとろ過圧も高くなり、大量にろ過された物質を再吸収するのに余分なエネルギーが費やされることになります。しかし、腎臓には腎動脈圧80~200mmHgの範囲であれば血圧が変化しても腎血流量がほとんど変わらない自動調節作用がはたらいています。これは、平滑筋自体の機械的な性質だと考えられています。

 

尿細管における再吸収と分泌

血漿中の蛋白質以外の物質がすべてろ過されてしまうので、原尿中には、除去すべき老廃物や毒物だけでなく、水やグルコース、アミノ酸などの栄養素、電解質など多くの有用な物質も含まれています。これらの物質は、原尿から血液に回収するために、尿細管中の原尿からその周囲の毛細血管に再吸収されます(図5)。

図5ネフロンにおけるろ過、再吸収、分泌

ネフロンにおけるろ過、再吸収、分泌

 

まず、栄養素は原尿が近位尿細管に流入すると、すぐに再吸収され、100%が血漿に回収されます。つまり、尿細管側がゼロになるまで血管に輸送するので、能動輸送により大量のエネルギーが使われます。また、細胞外液の主要電解質であるNa+もここで約80%が能動的に再吸収されます。このとき、Na+は相方の陰イオンのClも引っ張っていってくれます。さらに、Na+が血漿側で多くなるため、この浸透圧に引っ張られ水も約80%が受動的に再吸収されます。このように栄養素やNa+など必要なものはエネルギーを使ってでも再吸収するので、尿細管上皮細胞にはエネルギーをつくり出すミトコンドリアがぎっしり詰まっています。

糖尿病患者が高血糖のときは、大量のグルコースもろ過されます。尿細管の再吸収能にも限度がありますから、それを越えるグルコースがろ過されると再吸収しきれなかった糖が尿に残ったまま排出されます(糖尿)。血糖が高くなくても、尿細管の再吸収能が障害されると尿中に糖が検出されることがあります(腎性糖尿)。

その後も、腎小体で生成された原尿は、尿細管を通る間に必要な物質を血液に戻され、血液に残っている不要な物質を血液から捨てられる再吸収と分泌を受け最終的な尿になって腎臓から出ていきます。

 

COLUMN腎臓がエリスロポエチンを分泌するのはなぜか?

腎臓はエリスロポエチンを分泌し、赤血球をつくるように骨髄にはたらきかけています。これは、一見すると腎臓のごみ捨てというはたらきに無関係のように思えます。血液を掃除する際に、血液の中からごみだけを見つけて捨てるには限界があります。ゴミの中には毒物もあり、これを見落としてしまうと、命の危機に曝されることになります。そこで、腎臓は血液から必要・不要にかかわらず血球と蛋白質以外をろ過によっていったん捨てます。その後、必要なものを大量のエネルギーを使って血液に回収しています。

大量のエネルギーの生成はミトコンドリア内のクエン酸回路で酸素を使うと効率がよいことはご存じのとおりです。つまり、大量のエネルギーをつくるためには大量の酸素を必要としています。腎臓は血液中の酸素が少なくなると自分で骨髄にSOSを出して、酸素の運び屋である赤血球の産生を増やしてもらっているのではないでしょうか。

ちなみに、エリスロポエチンは腎臓のどこで産生されているか長い間議論されていましたが、尿細管周囲の間質にある線維芽細胞で産生されることがマウスの試験で明らかになりました。

 

〈次回〉

腎臓の排泄能力|体液の調節から理解する(3)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『身体のしくみとはたらき』 (編著)増田敦子/2015年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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