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2015年11月19日

呼吸の調節|ガスの流れから理解する(3)

ナースのための解剖生理の解説書『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』より
今回は、ガスの流れから解剖生理を理解するお話の3回目です。

〈前回の内容〉

空気の通る道筋をたどる|ガスの流れから理解する(2)

前回は、吸い込まれた空気が細胞までどのような道筋を通ってたどり着くかについて学びました。

今回は、呼吸によって血液中の酸素と二酸化炭素の量を調節しているしくみについて解説します。

 

〈目次〉

 

呼吸の調節

通常、意識することなく行われている呼吸運動は呼吸筋である横隔膜と肋間筋の収縮と弛緩によるものです。これらの筋肉は自分の意思でコントロールできる骨格筋なので、意識的に息を遅くしたり早くしたりできます。でも、意識がなくなる睡眠中にも絶えず呼吸は続けられています。それは、脳幹の延髄から呼吸筋に絶えず呼吸指令が出ているからです。

呼吸の目的は細胞に必要な酸素を血液に供給し、不要になった二酸化炭素を排出することで、血液ガスのホメオスタシスを維持することにあります。したがって、血液中の酸素が不足しないように、二酸化炭素がたまらないように延髄から呼吸指令が出ています。つまり、血液中の酸素と二酸化炭素の量は動脈と脳にある受容器で監視され、絶えずその情報が延髄に送られ、そこから呼吸指令を出しているわけです。

 

血液ガスの調節

血液ガスの変化を監視する受容器はどこにあるでしょうか。監視される血液は、肺でガス交換を受けた動脈血です。この血液が心臓に戻り、心臓から生命維持に重要な臓器である脳に送り出す手前で監視したいものです。もし、肺で十分な酸素を受け取ることができず、酸素の少ない血液が脳に流れてしまってからでは遅いからです。

大動脈弓から分岐する総頸動脈は脳組織を養う内頸動脈と頭部の皮膚や筋を養う外頸動脈に分かれます。この分岐部に米粒ほどの小体があり、多くの神経線維がきています。これを頸動脈小体といい、これが血液中の酸素量を監視する受容器です。大動脈弓にも血液の酸素量を監視する受容器があり、これを大動脈小体といいます。これらは中枢とは離れたところで、血液中の化学成分であるガス量を監視しているので、末梢化学受容器といいます。

呼吸中枢の延髄にも化学受容器があり、これを中枢化学受容器といいます。これは血液中の二酸化炭素量を監視しています。細胞から血液に放出された二酸化炭素はただちに重炭酸イオンと水素イオンに解離するので、二酸化炭素が増加すると水素イオン濃度が増加し、pHが低下します。

末梢化学受容器から血液中の酸素が減少した情報や、中枢化学受容器から血液中の二酸化炭素が増加あるいはpHが低下した情報が延髄に送られると、呼吸指令が呼吸筋に出されます。そして、呼吸が増えると酸素が供給され、二酸化炭素が排出されます(図1)。

図1呼吸調節

呼吸調節

 

血液pHの調節

呼吸の目的の1つは、老廃物である二酸化炭素を体外に排出することです。呼吸器の疾患により二酸化炭素の排出が障害されると、血液中にそれ(二酸化炭素)が増え、水素イオンの増加、言い換えるとpHの低下を引き起こし、血液を酸性に傾かせます(呼吸性アシドーシス)。

それでは、たくさん呼吸して老廃物を出せるだけ出したほうがいいと思われるかもしれませんね。でも、二酸化炭素を出しすぎると水素イオンが減ってpHは逆に上がってしまい、血液がアルカリ性に傾いてしまいます(呼吸性アルカローシス)。血液の正常pHは7.4前後の弱アルカリ性で、かつ7.35から7.45という非常に狭い範囲で調節される必要があります。ですから、この正常範囲を越えてアルカリ性に傾いてもかえって困るのです(図1)。

血液のpHを狭い範囲で維持するために、ヒトの身体は適切な量の呼吸をすることで、適切な量の二酸化炭素を排出しています。つまり、呼吸で二酸化炭素を排出することは、単に老廃物を排出することにとどまらず、血液pHを正常に維持するためでもあるのです。

 

COLUMN病的呼吸のパターン

呼吸は意識することなく、呼吸中枢からの呼吸指令により適切なリズムで行われています。しかし、呼吸中枢の機能障害により、そのリズムが失われることがあります。その例として、無呼吸の間に1回換気量が漸増・漸減する呼吸が出現するチェーン・ストークス呼吸や無呼吸の間の呼吸が漸増・漸減しないビオー呼吸があります(図2)。

図2異常呼吸

異常呼吸

 

睡眠中に呼吸が一時的に止まる睡眠時無呼吸症候群にも呼吸中枢の障害によるものもあります。また、睡眠中の喉頭の筋弛緩により舌根が下がり気道を閉塞したり、肥満により首周りに脂肪が沈着して気道が狭くなっても起こります。

狭くなっている気道を空気が出入りするわけですから、笛と同じ原理で音が発生します。つまりいびきです。もちろん、無呼吸のときにはいびきは消えます。隣で寝ている家族が、大きないびきと、それがときどき止まることで無呼吸に気がつくのです。家族などの同居者がいないと発見が遅れます。自覚症状としては、昼間の眠気が強いことです。眠っていても途中で呼吸が止まってしまうので、深い睡眠することができなくなり、慢性の睡眠不足に陥ります。昼間の眠気は勉強や仕事の妨げになるだけでなく、交通事故の危険性が高まります。

糖尿病では深く、そのわりには早い呼吸がみられます。これをクスマウル呼吸といいます。インスリンの作用不足により十分な量のグルコースが細胞に入らなくなると脂肪分解が進みます。すると、脂肪酸が増え、それが肝臓で酸性のケトン体につくり変えられので、血液のpHは低下します。このpHの低下は中枢化学受容器に検出され、その情報が呼吸中枢に送られることで呼吸が刺激されます。

 

〈次回〉

血液を浄化する腎臓のはたらき|体液の調節から理解する(1)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『身体のしくみとはたらき』 (編著)増田敦子/2015年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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