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2015年11月14日

呼吸のしくみ|ガスの流れから理解する(1)

ナースのための解剖生理の解説書『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』より
今回は、ガスの流れから解剖生理を理解するお話の1回目です。

〈前回の内容〉

大腸と肛門のはたらき|食物の流れから理解する(7)

前回は、大腸と肛門のはたらきについて学びました。

今回は、エネルギーの生成に必要な酸素を取り入れ、不要となった二酸化炭素を排出する呼吸のしくみについて解説します。

 

〈目次〉

 

呼吸のしくみ

私たちは日ごろ、意識しなくても息を吸ったり吐いたりして呼吸を繰り返しています。

呼吸の目的は、エネルギー生成に必要な酸素を大気から血液に取り込み、細胞の代謝により産生され血液に排出された二酸化炭素を体外に出すことです。しかし、呼吸のこの機能を果たすためには血液と循環系の協力が不可欠であることも忘れてはいけません。

 

memo呼吸数

成人呼吸数:15〜17回/分

新生児呼吸数:40〜50回/分

 

呼吸の役割は、4つのステップを経て行われます(図1)。

図1呼吸の4つのステップ

呼吸の4つのステップ

 

(1)大気と肺胞との間での空気の入れ換えを換気といいます。窓を開けて空気の入れ換えをするのと同じで、あえていうなら「肺胞換気」です。

(2)肺胞では吸気とともに入ってきた大気中の酸素が血液に、血液中の二酸化炭素が肺胞に拡散します。つまり、酸素と二酸化炭素という2種類のガスが交換されているので、ガス交換といいます。肺胞と血液との間のガス交換を「外呼吸」といいます。

(3)肺胞から血液に拡散した酸素を細胞まで運んだり、細胞から出された二酸化炭素を肺胞まで運ぶ、といった「ガスの運搬」は血液と循環系の協力が不可欠です。

(4)細胞まで運ばれた酸素は細胞内に取り込まれ、その代わりに二酸化炭素が血液に出されます。血液と細胞との間のガス交換を「内呼吸」といいます。

 

呼吸運動のしくみ

私たちは肺を膨らませて息を吸っているように思いますが、肺自体には膨らむ能力はありません。肺はゴム風船のような弾力性組織で、自らの弾性で縮まろうとしています。ですから、肺は、外から引っ張るか(自発呼吸)、外から機械(人工呼吸器)を使って空気を入れるかしないと膨らみません。

肺は横隔膜と肋間筋に囲まれた胸郭の中(胸腔)にあり、肺の動きは胸腔容積の変化によるものです。胸腔は外界とは区切られた閉鎖空間です。ですから、容積が増えると内圧は低下し、逆に容積が減ると内圧は上がります(ボイルの法則)。胸腔容積を変えるのが、横隔膜と肋間筋で、これらの筋肉は呼吸運動にかかわるので呼吸筋といいます。ですから、呼吸筋がはたらかなくなったら自発呼吸ができなくなるということです。

 

memoボイルの法則

イギリスの化学者・物理学者であるボイル(Robert Boyle:1627〜1692)は、1662年、温度一定の空気にはたらく圧力と体積は、反比例することを発見しました。一方、フランスの物理学者・数学者であるシャルル(Jacques Alexandre Cesar Chaeles:1746〜1823)は1778年、圧力を一定にしたとき、体積と気体の絶対温度が比例することを発見しました。

両者の発見を組み合わせると、気体の圧力は体積に反比例し絶対温度に比例する、となり、これをボイル・シャルルの法則といいます。

 

吸息時には、延髄にある呼吸中枢から横隔膜と外肋間筋に収縮命令が出されます。横隔膜は膜とはいっていますが実は筋肉で弛緩して伸びているときは腹部の臓器に押され上に上がっています。しかし、収縮指令により短くなると下に下がるので、胸郭容積が縦方向に増えます。一方、外肋間筋が収縮すると肋骨がもち上がり、胸郭容積は左右前後方向に増えます(図2)。

図2呼吸に伴う呼吸筋と胸郭の動き

呼吸に伴う呼吸筋と胸郭の動き

 

このように、胸腔容積が増えると内圧が低下するので、圧を戻すために肺を引っ張って容積を減らそうとします。すると、肺が膨らまされて空気が入ります(図3)。

図3呼吸に伴う胸郭内の動き

呼吸に伴う胸郭内の動き

 

呼息時には、横隔膜が弛緩すると上にもち上がり、外肋間筋が弛緩すると肋骨が下がるので胸郭容積が減少します。肺を引っ張る力がはたらかなくなると、ゴム風船のように縮みます。もちろん、胸腔内圧が上昇するので肺を圧迫して中の空気を押し出します。さらに、頑張って吐き出したいときは、内肋間筋が収縮して肋骨をさらに押し下げます。ただ、胸腔内圧が上昇するとはいっても大気圧よりは常に低いので(陰圧なので)、どんなに頑張って吐いても肺の中に空気は残ります。

 

吸(呼)気と吸(呼)息の使い分け

吸(呼)気:息を吸い込む(吐き出す)こと。また、吸い込んだ(吐き出した)息。

吸(呼)息:息を吸い込む(吐き出す)こと。

吸息は息を吸い込むこと、であり、吸気にも息を吸い込むこと、という動作が含まれています。しかし、吸気は吸い込んだ息そのものも指しているので、ここでは動作を示すときは吸息に統一したいと思います。吸気(呼気)は、吸い込む(吐き出した)空気中の酸素濃度というときに吸(呼)気中の酸素濃度というように使います。

 

肺から出入りする空気の量;肺気量

呼吸の際に出入りする空気の量、つまり肺気量は次のように定義されており、肺の機能を検査する際に用いられます。

検査にはスパイロメータという機器を用います。測定された結果を図4に示してあります。

図4スパイロメータによる肺気量分画

スパイロメータによる肺気量分画

 

基本量は4つに分けられます。

1回換気量(tidal volume;TV):1回の呼吸で肺に入る、あるいは出る空気量です、約500mLです。

予備吸気量(inspiratory reserve volume;IRV):安静吸気のあと、努力して吸い込める空気量です。

予備呼気量(expiratory reserve volume;ERV):安静呼気のあと、努力して吐き出せる空気量です。

残気量(residual volume;RV):努力して吐いても肺に残る空気量です。残気量は肺の中に残っているのでスパイロメータでは測定できないので、別の方法で測定します。

上記4つの基本量を組み合わると、まず、①+②+③、つまり予備吸気量+1回換気量+予備呼気量を⑤肺活量(vital capacity;VC)といいます。さらに、これに④残気量を加えた量、つまり肺活量+残気量を⑦全肺気量(total lung capacity;TLC)といいます。また、⑥機能的残気量(functional residual capacity;FRC)といいます。これは安静呼吸で息を吐いたときに肺内に残っている空気量を意味しています。呼気時に肺胞に流れる血液もガス交換を行えるので、この名称がつけられています。

1回換気量は、1回の呼吸で吸い込まれる(吐き出される)空気量ですが、実は吸い込んだ500mLの空気のすべてが肺胞に達することはありません。鼻腔や気管・気管支にたまったままなので、ガス交換に関与することはありません。そこで、細胞が死んでいるわけではありませんが、ガス交換という機能をはたしていないので、この空気量を死腔量といいます。これは気道の容積に相当し、約150mLです。したがって、肺胞に到達してガス交換に関与できる空気量は500−150=350mLとなり、これを肺胞換気量といいます。

この場合、肺胞換気量は1回換気量の70%がガス交換に関与できることになります。浅い呼吸で1回換気量が250mLしかなくても死腔量は150mLなので肺胞換気量は100mLとなり、1回換気量の40%しかガス交換に関与できないことになります。

一方、深呼吸で1回換気量が1,000mLのときでも死腔量は150mLなので肺胞換気量は850mLとなり、85%がガス交換に関与することになります。より深い呼吸のほうがより効率よくガス交換できることがわかります。

 

COLUMN換気能力の評価とその障害

換気能力は、(1)空気が気道をスムーズに出入りできるか、(2)必要な空気を取り込めるように肺が膨らむか、の2つの視点で評価します。

(1)を調べるためには、最大の速度で強制的に肺活量をすべて呼出したときの肺活量を測定します。この肺活量は努力肺活量といいます。そして、呼出開始後1秒間の呼出量として1秒量を調べます。1秒量の努力肺活量に対する百分率(1秒量/努力肺活量×100%)を1秒率といいます。正常では70%以上あります。つまり、吐き始めて最初の1秒間で吸い込んだ空気の7割以上を吐き出せるということで、これが下がるということは、気道に狭窄があり、吐き出しにくいことを意味しています。呼息時に気道が閉塞して吐き出しにくくなった肺気腫や気道の浮腫やけいれんで呼息が困難になる喘息では70%未満になり、このような状態を閉塞性換気障害といいます。

(2)を調べるには肺活量を調べてよいのですが、性別や年齢、体格によって肺活量は異なるので、測定値そのもので評価することができません。肺活量は測定しなくても、性別、年齢、体格から計算して肺活量を予測することができます。これを予測肺活量といいます。実測肺活量の予測肺活量に対する百分率(実測肺活量/予測肺活量×100)を%肺活量といいます。同じ体格の人でも水泳をしたり吹奏楽で肺活量が多くなっている人は、100%を越えることもありますが、80%以上が正常です。一方、肺線維症のように肺が伸展しにくくなったり、片肺を摘出した人は80%未満になり、このような状態を拘束性換気障害といいます。

1秒率と%肺活量の組合せで換気障害を分類することができます(図5)。

図5換気障害の分類

換気障害の分類

 

〈次回〉

空気の通る道筋をたどる|ガスの流れから理解する(2)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『身体のしくみとはたらき』 (編著)増田敦子/2015年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

この連載

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