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2015年11月07日

肝臓のはたらき|食物の流れから理解する(5)

ナースのための解剖生理の解説書『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』より
今回は、食物の流れから解剖生理を理解するお話の5回目です。

〈前回の内容〉

食物の旅―小腸、大腸|食物の流れから理解する(4)

前回は、食物が小腸から大腸へと移動する際の消化管のはたらきについて学びました。

今回は、生命を維持するうえで欠かせない大切な役割をしている肝臓のはたらきについて解説します。

 

〈目次〉

 

肝臓は代謝の中枢

さて、いよいよ肝臓です。人間が生命を維持していくうえで、肝臓は欠かせない大切なはたらきをしています。それは消化管からの吸収された栄養素が門脈を経て肝臓に入るからです。

たとえば皆さんが我が家の家計を考えるとき、生活にまわすお金と貯蓄にまわすお金を分け、お金が余ったら貯金をし、足りなくなったら貯金をおろすという作業をしていますね。肝臓がしている重要な役割の1つが、この仕分け作業です。小腸で吸収された栄養分のうち、いますぐ身体に必要な栄養分だけを体内にまわし、余分な栄養分をいざというときのために蓄えているのです。

では、いったい何のためにこんなことをしているのでしょう。

私たちが貯金をするのは、いざというときに備えるためです。ヒトの身体でいう「いざというとき」というのは、私たちが栄養分を取り込めないとき、つまり、働いたり、スポーツをしたり、勉強したり、夜間にゆっくり眠って身体を休めているときなどのことです。

細胞は24時間、栄養素と酸素を必要としますから、血管には常に血液が流れていて、必要な物質をせっせと細胞に運び続けています。もし、肝臓が栄養分を貯めておかなかったら、食べた栄養素はすぐに使い果たされてしまい、またすぐに栄養分を取り込まなければなりません。これでは、人間は年がら年中食べることばかり考えて、働くことも、考えることも、夜間おちおち眠ることさえできません。

それに、肝臓がなかったら、食べた直後と食べて時間が経ってからでは血糖値が大きく上下して内部環境が大きく変化し、細胞にとっても非常に住みにくい状態になってしまいます。

 

memoインスリンと糖尿病

血糖値を下げる効果があるホルモンは、インスリンだけです。余分なグルコースを脂肪へ合成し、他方でグルコースの消費を促します。体内のインスリンが不足すると糖尿病になることで知られます。

 

肝臓はこのほかにも、吸収した栄養分を同化したり解毒したりするなど、大きな化学工場の役割も担っています。

 

肝臓の位置と構造

肝臓は、人体で最も重い臓器で、横隔膜の下で右側に片寄って位置しています(図1)。

図1肝臓の位置

肝臓の位置

 

その重さは成人で1,400gほどにもなります。その構造は、肝鎌状間膜を境に、右葉と左葉に分かれます(図2)。

図2肝臓の前面と後面

肝臓の前面と後面

 

大きさは左葉のほうが一見して小さく、ほぼ全体の3分の1から6分の1程度といわれます。肝臓を顕微鏡で覗くと、1~2mmほどの小さな六角柱が無数に集まっているのがみえます。これは肝小葉とよばれます(図3)。

図3肝小葉:肝臓の血流と胆汁の流れ

肝小葉:肝臓の血流と胆汁の流れ

 

肝小葉には、2つの血管系から異なった性質の血液が流れてきます。その1つは肝動脈で、腹大動脈の枝の1つである腹腔動脈がさらに枝分かれしたものです(図4)。ですからこの血管は、心臓から送られる酸素に富んだ血液を運びます。

図4肝臓を出入りする血管系

肝臓を出入りする血管系

 

一方、胃や小腸からの栄養に富んだ血液と脾臓や膵臓などの血液を集め、肝臓に送り込む静脈を、特別に門脈とよんでいます。この2種類の血流は、肝小葉の周辺で一緒に並び(小葉間動脈、小葉間静脈)、肝小葉の組織内を流れて処理されたあと、中心静脈から肝静脈を経て下大静脈に導かれ、心臓に戻ります。

肝臓を1日に通過する血液量は約2,160L、一升瓶にして1,200本分といわれます。そのうち、7~8割は門脈から入り、残りは肝動脈から入ります。肝臓が暗い赤味を帯びているのは、こうして常に大量の血液がそこに集まっているからです。

肝小葉には血液の流れとは逆に、中心部から周辺に向かって胆汁が流れています(図3)。肝細胞で生成された胆汁(肝胆汁)は毛細胆管に入り、小葉間胆管となり、右葉・左葉のそれぞれ右肝管・左肝管は肝門部で1本の総肝管となり肝臓から出ます。胆汁の貯蔵器である胆嚢へ、その導管である胆嚢管を通り、胆嚢へ入り濃縮されます。胆嚢からの胆汁(胆胆汁)は胆嚢管を通り、総胆管を経て、膵液とともにファーター乳頭で十二指腸に送り出されます(図5)。

図5胆汁と膵液の分泌調節

胆汁と膵液の分泌調節

 

肝臓で起こる化学反応

肝臓は、消化器系に広く分布する静脈から、必要な材料を集め、同化・異化といったさまざまな化学処理を施し、一部を蓄えたり、再び身体の各部分に送り出したりといったはたらきをしています(図6)。

図6代謝のプロセス

 

小腸で吸収されたブドウ糖の一部は、肝臓でグリコーゲンにつくり変えて蓄えられます。このグリコーゲンは、ブドウ糖分子が集まってできた構造をしており、必要なときには再びブドウ糖に分解され、血液によって体内に送り出されます。

また、胃や腸で消化されたアミノ酸も、肝臓で再びアルブミンフィブリノゲン(凝固因子の1つ)といった蛋白質に再合成されます。

脂肪もまた、肝臓でコレステロール、リン脂質中性脂肪などの人間が活用しやすい形に変えられ、再び血中へ送られます。コレステロールは、細胞膜や性ホルモン、ステロイドの材料にもなります。

 

memoコレステロールとは

コレステロールは、細胞膜の構成成分で、代表的なステロイド化合物です。血液中では、リポ蛋白質と結合した状態で存在し、このうち、低密度リポ蛋白質(LDL)はコレステロールを50%含み、血管壁に沈着して動脈硬化を引き起こす一因になります。そこで、卵などコレステロールを多く含む食品の摂取を控えるようにいわれることがあります。でも、体内のコレステロールは食事から入る量より体内で合成される量のほうが多いのです。コレステロールの合成は主として肝臓で、そのほか小腸、副腎皮質、性腺でも行われます。そして、食事からコレステロールが取り込まれると、肝臓でのコレステロール合成を取り仕切っている酵素(HMG-CoA還元酵素)を阻害し体内での合成を低下させます。高コレステロール血症の治療にはこの酵素の阻害薬が使われています。

 

このように、肝臓は人体という社会を成り立たせるための巨大な化学工場であり、貯蔵庫でもあります。したがって、病気によって肝臓の機能が弱まると、必要な物質を十分につくり出せなくなり、人体の各所に影響を及ぼします(表1)。

表1胆汁と膵液の分泌調節

 

肝臓の解毒作用

化学工場としての肝臓には、もう1つ血液中の有毒な物質を無害な形にして体外へ出す解毒のはたらきがあります。

たとえば、体内に入ったアルコールの20%は胃で吸収されますが、残りの80%は肝臓へ送られます。肝臓ではまず、アルコールをアルコール脱水酵素のはたらきでアセトアルデヒドに分解します。すると今度は、アセトアルデヒド脱水素酵素により、それを酢酸に変え、最終的には水と二酸化炭素に分解します。また、異物、主に水に溶けない脂溶性の物質を毒性の少ない水溶性の物質に変え、尿中や胆汁中に排泄させるはたらきもあります。

不要なアミノ酸が分解される過程ではずれたアミノ基は有毒なアンモニアになります。肝臓はこれを無毒な尿素につくり変える尿素回路をもっており、尿素は尿中に排泄されます。

肝臓疾患などで尿素回路が障害されるとアンモニアの処理ができなくなり、高アンモニア血症に陥ります。アンモニアは脳組織において、TCA回路におけるATP生成を停止させる毒性をもっています。血中濃度が高くなると、意識障害や昏睡(肝性昏睡)に陥り、呼吸抑制が出現したりします。

 

memo肝臓の食細胞:クッパー細胞

肝小葉の血管(類洞)壁にあるクッパー細胞は、ドイツ人のクッパーが墨汁粒子を取り込み黒く染まる細胞の存在から発見された食細胞です。消化管から送られてくるあらゆる物質は肝臓を通るので、ここで有害物質や異物が処理されるのです。クッパー細胞は古くなった赤血球を破壊し、ヘモグロビンのヘム色素をビリルビン(胆汁色素)に変えてくれます。

 

〈次回〉

栄養素の代謝|食物の流れから理解する(6)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典]『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』(編著)増田敦子/2015年3月刊行

引用・参考文献 

著作権について

この連載

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