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2015年10月31日

栄養素の特徴|食物の流れから理解する(2)

ナースのための解剖生理の解説書『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』より
今回は、食物の流れから解剖生理を理解するお話の2回目です。

〈前回の内容〉

食物は生命のエネルギー源|食物の流れから理解する(1)

前回は、身体をつくるためのエネルギー源である食物を食べるということについて学びました。

今回は、それぞれの栄養素の特徴について解説します。

 

増田敦子
了徳寺大学医学教育センター教授

 

〈目次〉

 

糖質(炭水化物)

糖質は米やパンに含まれ、そのはたらきはエネルギー源になることです。炭素・水素・酸素を有しており、ほとんどの場合、炭素原子に水素原子2に対して酸素原子1という割合、つまり水(H2O)が結合しているようにみえるので、炭水化物あるいは含水炭素とよんでいました。たとえば、ブドウ糖グルコース)の分子式はC6H12O6ですが、C(6H2O)6と表すこともできます(図1)。

図1単糖の化学構造(炭素同士の結合を線で示し、炭素原子を省略してある)

単糖の化学構造

 

しかし、水素原子と酸素原子の比率が2:1でない炭水化物もあり、それらを総称して糖質あるいは糖とよばれることが多くなりました。糖質は大きさによって単糖類、二糖類、多糖類に分類されます。

 

COLUMNうるち米ともち米

お米には約70%の糖質が含まれていますが、そのほとんどはデンプンです。デンプンはその構造によりアミロースとアミロペクチンに分けられます。アミロースは単糖であるグルコースがα1-4結合で結合した直鎖状の分子で分子量も比較的に小さいです。アミロペクチンはα1-4結合の鎖にグルコースがα1-6結合で枝分かれして結合しています。デンプンがアミロペクチンのみでアミロースを含まない米をもち米、それ以外をうるち米といいます。ふだん、ご飯として炊いて食べているお米はうるち米で、アミロースが16〜23%含まれています。アミロースの含有量は品種や気温などにより異なります。

動物の貯蔵糖質であるグリコーゲンはアミロペクチンよりさらに枝分かれが多くなっています。

一般に酵素の名称には「基質(酵素が作用する相手)の語源+アーゼ(ase)」になっていることが多いです。デンプンはラテン語でアミラムといいます。これに「アーゼ」がついて「アミラーゼ」となり、これがデンプン分解酵素です。

 

単糖類は糖質の基本単位で、体内で最も重要な単糖はグルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、デオキシリボースです。グルコースは骨組みとなる炭素を6個もっているので、六炭糖に分類されます。核酸の構成成分となっているリボース、デオキシリボースは五炭糖です。血液中のグルコースを血糖といい、細胞がいちばん使いやすい燃料です。

二糖類は単糖が2個結合したものです(図2)。食物中で重要な二糖類は発芽中の種に含まれているマルトース(麦芽糖、グルコース+グルコース)、サトウキビの糖であるスクロース(ショ糖、グルコース+フルクトース)、乳汁中のラクトース(乳糖、グルコース+ガラクトース)です。

図2主な二糖類

主な二糖類

 

二糖類は細胞膜を通るには大きすぎるので、消化管の中で単糖に分解されてから吸収されます。

単糖がたくさんつながったものを多糖類といいます。植物は地中の水と空気中の二酸化炭素と太陽光で光合成をしてグルコースをつくることができます。植物は自然界の食物連鎖のなかでは生産者になります。お気づきかと思いますが、この反応は、人間が酸素と栄養素からエネルギーをつくり出す反応「燃料(有機物) + O2 → CO2 + H2O + エネルギー」の逆です。動物は生産者がつくり出した有機物を食べて生きる消費者なのです。

 

  • 水 + 二酸化炭素 + 太陽エネルギー → 糖質(C、Hの化合物)+ 酸素

 

  • 6H2O + 6CO2 + 太陽エネルギー → C6H12O6 + 6O2

 

植物は光合成により産生したグルコースを多数結合してデンプンという形で根や茎、種に蓄えています。一方、ヒトをはじめとする動物はこれを取り込んで、消化管の中で消化しグルコースにして吸収し、細胞が利用しています。余ったぶんを結合して多糖類のグリコーゲンという形で肝臓筋肉に蓄えます。食間期に血糖が下がらないように、肝臓はグリコーゲンをグルコースにまで分解して血液中に放出してくれます。筋肉はグルコースにまで分解して運動エネルギーを産生するために燃やします。要するにグルコースはエネルギー源としてすぐ使える現金で、グリコーゲンは余ったときに貯めておく貯金のようなものです(図3)。

図3グルコースとグリコーゲン

グルコースとグリコーゲン

 

体内に貯蔵されている糖質は肝臓と筋肉の細胞内に貯蔵されるグリコーゲン、細胞外では血漿など細胞外に少しあるくらいです。体重70kgの人の体内糖質の合計が約350gですから体重の0.5%しかありません。エネルギーとしては345g×4kcal=1,380kcalしか発生しないので、一日のエネルギーをまかなえるほどは蓄えられていません(表1)。

表170kgの人の糖質貯蔵

70kgの人の糖質貯蔵

 

その他の多糖類としては、フルクトースが多数結合したものがあり、イヌリンといい、キク科の植物がつくります。ガラクトースを多く含む多糖類にはガラクタンがあり、寒天などに含まれています。

アミロース含有量が低い、言い換えるとアミロペクチン含有量が高いとお米を炊いたとき粘性が高くなります。逆に低いと粘性が低くなりパサパサした食感になります。日本人は粘性の高い食物を好むようで、お米もアミロースの少ないほうをおいしいと感じる人が多いそうです。おいしいお米として有名なコシヒカリはアミロースが少なくなるように品種改良したものです。

稲穂が出てからの気温でアミロースの量が異なるそうです。低いほどアミロース含有量が増え、高いほどアミロースが減ります。ですから、自然に任せて栽培すれば北海道や東北ではアミロースの多いお米になってしまいます。北海道や東北でおいしいお米をつくるために多大な努力をはらったことがうかがえます。

 

COLUMN食物繊維は第6の栄養素

ヒトの消化酵素で消化されない食品中の難消化性成分の総体とされている食物繊維は、野菜や果物に多く含まれており、お腹の調子を整える効果があります。食物繊維は食後の血糖の急激な上昇を抑えたり、コレステロールや有害物質を排出するなどのはたらきがあり、糖質、脂質、蛋白質、ミネラル、ビタミンからなる五大栄養素に次ぐ第6の栄養素といわれるほど、その存在は重要視されています。

食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。果物に含まれるペクチンやこんにゃくの主成分であるグルコマンナンは水溶性食物繊維です。不溶性食物繊維には植物の細胞壁の主成分であるセルロースや甲殻類の殻の主成分であるキチンなどがあります。セルロースはデンプンと同じグルコースが多数結合した多糖類ですが、結合の形式がデンプンとは異なります。セルロースを分解することができるセルラーゼという消化酵素をもたない人間にとってセルロースは消化できない食物になります。一方、馬、牛、羊などの草食動物も自分でセルラーゼをもってはいません。でも、消化管にセルロースを分解できる微生物を消化管に住まわせ、共同生活しているから草を食べて生きていけるのです。

食物繊維の所要量として示されている数値は成人で20~25gです。しかし、近年の日本人では、食生活の変化により、摂取量が減少傾向にあり、平成13年度の国民栄養調査では平均14.6gと所要量を下回っています。

 

蛋白質

蛋白質は人体を構成する物質の有機物(水と無機物以外)の半分以上を占める重要な成分であり、さまざまな機能をもっています。

蛋白質はアミノ酸が多数結合したものです。図4に示してあるように、4つの結合部位をもつ炭素にアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)と水素が結合しているのがアミノ酸の基本構造です。残り1つの結合部位R(側鎖)に何が結合するかでアミノ酸の種類が決まってきます。一番単純なアミノ酸はRが水素でグリシンというアミノ酸です。

図4蛋白質の構造

蛋白質の構造

 

つまり、すべてのアミノ酸には窒素が含まれているので、蛋白質にも窒素が含まれています。Rに硫黄を含むアミノ酸もあります。人体の蛋白質を構成するアミノ酸は約20種類あり、そのうち、体内で合成することができないアミノ酸を必須アミノ酸、合成できるものを非必須アミノ酸といいます。

 

memoBCAA

BCAAとはbranched chain amino acid の略で日本語では分枝鎖アミノ酸といいます。アミノ酸のR(側鎖)が枝分けれしているからこの名前がついています。筋肉を構成している必須アミノ酸の約30〜40%がBCAAで、活動時にエネルギー源となって燃え、また筋肉を維持するうえで大切なアミノ酸です。このBCAAを含むスポーツ飲料水も発売されています。

 

蛋白質には人体を構成する構造蛋白質となんらかのはたらきをもつ機能蛋白質があります。機能蛋白質には体内のあらゆる化学反応に必須の酵素、生体防御にかかわる抗体、成長ホルモンインスリンといったホルモン、酸素を運搬するヘモグロビンといった輸送蛋白質があります。

 

COLUMN必須アミノ酸と非必須アミノ酸

アルギニンは体内で合成できるので非必須アミノ酸に分類されていますが、成長期には必須アミノ酸に分類されます。成長期には細胞分裂が盛んですからDNA合成も盛んになります。DNA(デオキシリボ核酸)は名前のとおり強い酸性を示しています。そのため、塩基性(アルカリ性)の蛋白質であるヒストンに巻きついて格納されています。ヒストンを構成するアミノ酸のうち20%以上が塩基性アミノ酸のリジンあるいはアルギニンです。

必須アミノ酸のリジンは穀類にあまり含まれていないので、かつては栄養強化の目的でリジンが学校給食のパンに添加されていた時期もありました。その後、食品添加物として合成されるL・リジン塩酸塩に発がん物質が含まれる、という指摘があり、現在は添加されていません。

 

COLUMNコラーゲンは飲んで効くのか?

コラーゲンは、真皮、靱帯、腱、骨、軟骨などを構成する蛋白質の1つで、細胞外基質の主成分です。ヒトでは、全蛋白質の約30%を占めています。コラーゲン蛋白質を構成するアミノ酸組成はグリシン50%、プロリンとヒドロキシプロリンが21%、アラニンが11%で、必須アミノ酸はごくわずかで、栄養学的には価値がないものです。

グリシンが約1/3、プロリンとハイドロキシプロリンが21%、アラニンが11%で、いずれも非必須アミノ酸です。ただ、プロリンをハイドロキシプロリンに変化させるためにはビタミンCという還元剤が必要です。

ビタミンC欠乏症に壊血病があります。これはビタミンC欠乏により血管を構成するコラーゲンの生成が障害されることで血管がもろくなり点状出血を起こす病気です。

コラーゲンがサプリメントとして売られています。コラーゲンを摂取してもコラーゲンの形で体内に吸収されるわけではありません。他の蛋白質と同様にアミノ酸にまで分解されてしまうので、これらのアミノ酸がコラーゲンに再合成されるとはかぎりません。バランスのとれた食事をとっていれば、コラーゲンの材料となるアミノ酸は供給されます。むしろ、コラーゲン合成にはビタミンCが必要だということです。ただ、コラーゲンを構成するアミノ酸は特定のアミノ酸にかたよっています。ですから、コラーゲンを摂取することで、材料を直接供給できるので、効果的にコラーゲンを合成することができるかもしれません。

 

memoパーマ

メチオニンとシステインは硫黄をもつ数少ないアミノ酸です。髪の毛を構成する蛋白質であるケラチン蛋白質にはシステインが含まれています。システイン同士が近くにあるとシステイン2分子で、ジスルフィド結合(S-S結合)をつくります。

パーマ液は髪の毛のS-S結合にはたらきかけ、髪にウェーブをつくったり、ストレートにしたりします。1液はアルカリ性で、S-S結合を切断します。ロッドに巻かれた状態(=ウェーブをつける)で、酸性の2液を塗布することで、1液で切れたS-S結合を再び結合させる、その結果、ウェーブが固定されるのです。

 

脂質

人体における脂質のはたらきはエネルギー源となることと細胞膜の主要な構成成分である、ということですが、そのほかにホルモン、胆汁酸などの生理活性をもつ物質の材料にもなっています。

体内に存在する代表的な脂質は、中性脂肪、リン脂質、ステロイド、そのほか脂肪性物質に分けられます。

中性脂肪はグリセロールというアルコールに脂肪酸が3つ結合したものなので、トリグリセリド(tri-glyceride)、略してTGとよんでいます(図5)。

図5中性脂肪(トリグリセリド)の合成と分解

中性脂肪(トリグリセリド)の合成と分解

 

脂肪酸は偶数の炭素からなる炭化水素の鎖でその一端にカルボキシル基本(-COOH)をもっています。脂肪酸は糖質と同じく炭素、水素、酸素原子から構成されていますが、脂肪酸は水素原子の数にくらべ酸素原子が少ないということです。ステアリン酸の分子式はC17H35COOHで、水素原子36に対して酸素原子はたった2です。炭素が水素で飽和されて二重結合がないものを飽和脂肪酸といい、二重結合をもっているものを不飽和脂肪酸といいます。

二重結合をもつ脂肪酸は構造上、直鎖にはならず折れ曲がり、互いに反発しあうので、通常は室温でも液体です。植物油がその典型例です。一方、牛脂(ヘッド)や豚油(ラード)といった動物油は室温では固体なのは、飽和脂肪酸が多いからです。

リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などは、植物性の脂質に多く含まれる不飽和脂肪酸で、体内で合成できないので必須脂肪酸とよばれています。アラキドン酸は体内で代謝されてプロスタグランジンとなり、血管拡張・収縮や血小板凝集などの生理活性をもっています。エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は魚に多く含まれ、最近は血小板凝集抑制や抗動脈硬化作用といった生理的作用が注目されています。

リン脂質はトリグリセリドとよく似た構造ですが、3つの脂肪酸のうち1つがリン含有基になっています。脂質は基本的には水になじまない疎水性の性質をもっていますが、このリン含有基の部分だけは水になじむ親水基になっています。そのため、疎水基同士がくっついて親水基を外に向けた2枚重ねにして細胞膜を構成しています。

ステロイドは基本的には4つの環状の脂質分子が連結した構造をしたステロイド骨格をもっています。最も重要なステロイドはコレステロールで、細胞膜の必須成分です。細胞膜にコレステロールが含まれることで、膜特有のしなやかさをつくり出しています。そのほか、ビタミンDやステロイドホルモン、胆汁酸の材料にもなっています。

 

COLUMN糖脂質

脂質には糖脂質といって糖を含むものがあります。これは脳神経系の構成成分の1つで、セレブロシドとガングリオシドがあります。セレブロシドはセラミドにグルコースかガラクトースが結合しています。ガラクトースを含むものをガラクトセレブロシドとよばれ、髄鞘の重要な成分になっています。

初期の胎児の脳を構成する神経細胞(ニューロン)の数は、必要な数よりはるかに多いのですが、余分なニューロンはやがて取り除かれます。誕生後には、神経細胞の数が増えるのではなく、神経細胞の樹状突起や軸索が成長し、シナプスの数が増えることで知能が発達していきます。成長する軸索の周りにはシュワン細胞が巻きつき、髄鞘を形成します。髄鞘は軸索を保護するとともに神経情報である電気信号を絶縁するはたらきをもっています。髄鞘は脂質が非常に多く、コレステロール、糖脂質、リン脂質、糖脂質であるセレブロシドも重要な構成成分です。ですから、赤ちゃんの脳が発達するためには髄鞘の構成成分の1つであるセレブロシドに含まれるガラクトースも重要な栄養素です。ガラクトースは単糖ですが、乳汁中の二糖であるラクトースが分解されて供給されます。

乳汁分泌が悪いと、赤ちゃんにエネルギー源となるグルコースを与えればいいので、糖水(ショ糖を水で溶いたもの)を与えられます。ショ糖と乳汁中の糖である乳糖の違いは何でしょうか。乳糖にはガラクトースが含まれています。ガラクトースは赤ちゃんの脳を発達させるためには重要な糖質ですから、母乳が出ないときには、ほかの女性から乳をもらって赤ちゃんに飲ませることもあります。

 

ビタミン

ビタミンは、体内で全くまたはほとんど合成されないため、食物などから摂取しなければなりません。ビタミンのはたらきは、体内における栄養素の代謝に欠かせない酵素の補酵素となったり、大切な生理機能に重要な役割をもっているので、欠乏すると重篤な欠乏症状が現れます。食糧事情がよくなったころ、ビタミン不足による疾患は深刻な問題でした。

ビタミンが発見され始めたころは化学構造もはっきりわからず、発見された順番にA、B、C、というようにアルファベットがつけられてきました。しかし、化学構造がわかってくると、違う名前のものの化学構造が同じであったものは削除されたり、ビタミンB5がニコチン酸であることが判明してビタミンB群からはずしたりしました。必須脂肪酸は物質が特定される前はビタミンFとよばれていました。

ビタミンは化学的な性質から脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに分かれます。脂溶性ビタミンにはビタミンA、D、E、Kが、水溶性ビタミンにはビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6ビタミンB12、C、ニコチン酸、葉酸があります。脂溶性ビタミンは「これだけ(DAKE)にしよう(脂溶)」、と覚えればいいでしょう。

 

COLUMN酵素と補酵素

多くの酵素は補酵素とよばれる非蛋白質でできた有機物と結合して初めて生命維持に不可欠な代謝、すなわち化学反応の触媒として機能することができます。補酵素を除く酵素の蛋白質の部分をアポ酵素といい、これに補酵素が結合して触媒として機能する酵素をホロ酵素といいます。すべての酵素が補酵素を必要とするわけではありませんが、次のような関係が成り立ちます。

アポ酵素 + 補酵素 = ホロ酵素

ですから、補酵素は酵素に車の両輪のような関係にあり、切っても切れない関係にあります。

水溶性ビタミンはこの補酵素としての役割を果たしています。たとえば、アミノ基転移酵素により、グルコースの代謝の過程でつくられるケト酸は別のアミノ酸のアミノ基をもらってアミノ酸になることができます。非必須アミノ酸はこのように体内で糖からつくることができるのです。たとえば、肝機能の指標になるALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)というアミノ基転移酵素により、ケトグルタル酸というケト酸はアラニンというアミノ酸がもっているアミノ基を受け取り、グルタミン酸というアミノ酸になり、アミノ基を失ったアラニンはピルビン酸になります。

アラニン + ケトグルタル酸 ⇔ ケト酸 + ピルビン酸

ALTはアラニンと特異的に認識して結合して反応を触媒しますが、アラニンがもっていたアミノ基を受け取ってケト酸に渡す、つまり実際にアミノ基の運搬を請け負ってやっているのは水溶性ビタミンのビタミンB6です。

 

無機質

人体を構成する無機質のうち、比較的多量に存在するものに、カルシウム、リン、カリウム、硫黄、ナトリウム、塩素、マグネシウム、ヨウ素、鉄などがあります。

カルシウム、リン、マグネシウムなどは骨やの成分として存在します。カリウム、ナトリウム、カルシウム、リン、塩素などは体液の主要な電解質として存在し、浸透圧の調節やpHの維持に役立っています。硫黄は蛋白質を構成するアミノ酸の成分として、ヨウ素は甲状腺ホルモンの成分として、鉄はヘモグロビン分子の成分として欠かせないものです。

 

COLUMN原発事故後に配布されるヨウ素剤

2011年3月11日の東日本大震災後に福島第一原子力発電所では3基の原子炉がメルトダウンする事故が起きました。原子力発電は原子核を人工的に破壊する核分裂反応によってエネルギーを取り出すものなので、事故によりヨウ素、セシウム、プルトニウムなど多くの放射性物質が放出されます。そのなかでもヨウ素は184℃で気体になるため、原発事故では非常に放出されやすいのです。

天然のヨウ素は安定なヨウ素127で、食品中のヨウ素は甲状腺に集められ、甲状腺ホルモンの成分になります。放射性ヨウ素(ヨウ素131)も呼吸や水・食物を通して体内に入ると、ふつうのヨウ素と同じように甲状腺に集まり、崩壊する際に発生する放射線により集中して被爆します。そこで、放射能を持もたないヨウ素を前もって摂取し、体内のヨウ素濃度を上げておくと放射性ヨウ素が取り込まれず、放射線障害を予防・低減することができると言われています。放射性ヨウ素の被曝による甲状腺の障害は、甲状腺の機能が活発な若年者、特に甲状腺の形成過程である乳幼児においてに顕著なのでヨウ素剤の投与は40歳未満の者に対して行われます。

チェルノブイリ原発事故の際にはポーランドで児童にヨウ素剤が配布された反面、チェルノブイリ周辺では配布されず、被害の拡大につながったようです。福島の原発事故でも、ヨウ素剤の配布が地域に偏りがあったようです。

 

memo放射性物質と放射線のちがい

放射性物質は放射線の発生源となる物質で、放射線が細胞に当たると酵素のはたらきを抑えることで細胞の機能を低下させたり、DNAを傷つけ、線量が多ければ細胞は死にます。放射能とは放射性物質が放射線を発生する能力のことです。

 

〈次回〉

食物の旅―食道、胃|食物の流れから理解する(3)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『身体のしくみとはたらき』 (編著)増田敦子/2015年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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