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2015年10月29日

食物は生命のエネルギー源|食物の流れから理解する(1)

ナースのための解剖生理の解説書『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』より
今回は、食物の流れから解剖生理を理解するお話の1回目です。

〈前回の内容〉

血液の仕組みとはたらき|血液の流れから理解する(5)

前回は、血液の仕組みとはたらきについて学びました。

今回は、身体をつくるためのエネルギー源である食物を食べるということについて解説します。

 

増田敦子
了徳寺大学医学教育センター教授

 

〈目次〉

 

食べるとはどういうことか

食事のあいさつ、「いただきます」の意味を知っていますか。料理をつくってくれた方、野菜をつくったり魚を捕ってくれた方々など、食事に携わってくれた方々への感謝の気持ちを表すためです。そして、食材への感謝です。私たちの生命維持のために他の生命体である植物・動物の命をいただくわけですから、こちらが本意かと思います。

食物に含まれる栄養素は大きく5つに分けられ、糖質脂質、蛋白質、ビタミン、無機質(ミネラル)を五大栄養素といいます。小学生のころ、給食の献立に栄養素のはたらきが書かれていましたね。栄養素のはたらきは大きく3つ、「エネルギーのもと」「身体をつくる」「調子を整える(代謝を円滑に進める)」に分けることができます(図1)。

図1栄養素とそのはたらき

栄養素とそのはたらき

 

このうち、糖質、脂質、蛋白質を三大栄養素といい、体内で燃焼してエネルギーをつくることができるので、熱量素ともよばれています。この中でエネルギー源として重要なのは糖質と脂質です。蛋白質と無機質は身体の構成成分になり、蛋白質は筋肉、内臓、骨組織などの、無機質は骨組織や体液などの重要な成分となっています。無機質、ビタミン、あるいは蛋白質の一部は体内で代謝を円滑に進め、調子を整える役割があります。この場合の蛋白質は酵素やホルモンとしてはたらき、無機質やビタミンは生理活性物質として代謝に関与しています。いずれも体内では非常に微量ですが、大きな作用をもっています。

 

食物;生体のエネルギー源

では、どのようにして食物からエネルギーをつくるのでしょうか。

解剖生理を学ぶ理由|生体としての人体(1)』で、ヒトが酸素と栄養素からエネルギーを取り込むための一連の化学反応を代謝とよぶと説明しました。これは、自動車が化石燃料であるガソリンを燃やして運動エネルギーに変換し、道路を走っているのと同じです。

  • 燃料(有機物)+ O2 → CO2 + H2O + エネルギー

ヒトの場合、燃料にあたるのが食物です。パン、米、野菜、肉、果物……とさまざまな食物がありますが、これらの食物は体内の消化管を通るうちに、糖質や蛋白質、脂質、ビタミンといった栄養素にまで分解され、血液中に吸収されます。そして、血液の流れに沿って個々の細胞近くまで運ばれます。ガソリンなどの燃料が燃えるとき酸素を消費し、熱を発生します。食物燃料を体内細胞で燃やしても、これと同じことが起こります。細胞は組織液を介して血液から必要な酸素と栄養分を取り込み、燃焼させてエネルギーに変換します。

三大栄養素が呼吸によって取り込んだ酸素と結びついて(酸化して)生じるエネルギー(熱量)は、炭水化物、蛋白質が1g当たり4kcal、脂肪は1g当たり9kcalです。こうして得た熱エネルギーの多くは、体温維持のために使われます。

しかし、自動車がすべてのエネルギーをその場ですぐ燃やして運動のエネルギーに変えるのと違い、ヒトはこうして得たエネルギーをいったんATP(アデノシン三リン酸)という化学物質の形で蓄えます。そのATPのリン酸分子1個が分裂するときに生じるエネルギーを使って生きているのです。このATPを分解する化学反応に関与しているのが、体内で生産されるさまざまな酵素です。

 

食物;身体をつくるもの

私たち生物体は何でできているか、表1をみてみましょう。

表1ヒトの構成物質と構成原子

ヒトの構成物質と構成原子

 

ヒトの場合、成人では体重の半分以上の60%を水が占めています。これを体液とよぶことは、すでに話したとおりです。いちばん多いのが水で、そのあと蛋白質、脂質、糖質と続きます。男性は女性と比べると筋肉量が多いので蛋白質が多くなっています。また、女性は男性に比べ脂質が多いので、そのぶん、水の割合が少なくなっています。

ところが、この生体成分の割合と実際に摂取する食物量の割合とはかなり異なっています。どうも食べた物がそのまま身体の構成成分にはなっていないようです。食形態は時代とともに変化していますが、いまも昔も最も多いのは糖質(炭水化物)です。しかし、糖質が生体の成分として占めるのは体重の0.5%くらいです。つまり、摂取した糖質のほとんどは燃焼してエネルギー源となるので、体内にとどまるのはわずかな量なのです。

あらゆる物質を構成する最小単位は原子ですので、身体を構成する物質を原子まで分けると、糖質、蛋白質、脂質、核酸に共通してあるのが水素、酸素、炭素です。そのうち、炭素を含む物質、つまり炭素化合物(二酸化炭素や金属の炭酸塩などの少数の例外を除く)を総称して有機化合物(有機物)といいます。

 

memo有機物と無機物の定義の変遷

以前は、生体を構成する物質の多くは炭素原子のつながりを骨組みとしてできあがっているので、生命体から得られる物質を有機物、そうでない物質を無機物に分類してきました。

しかし、1828年に、ドイツの化学者ウェーラが試験管で尿素を合成したので、有機物が必ずしも生命体に付属したものに限定されないと考えるようになりました。そこで、いまは便宜上、一部の例外はあるものの炭素化合物を総称して有機物とよんでいます。

 

炭素原子の結合の手は4本あり、炭素原子同士の結合により長い分子をつくったり、分岐状、環状などいろいろな形に変化することができます。残りの手には他の原子が結合することができますが、基本は水素が結合した炭化水素です(図2)。

図2生化学:有機化合物の基本

生化学:有機化合物の基本

 

〈次回〉

栄養素の特徴|食物の流れから理解する(2)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『身体のしくみとはたらき』 (編著)増田敦子/2015年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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