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2015年11月13日

不整脈とその理解

『循環器ナーシング』2013年5月号<循環器ナースが知っておくべき基礎知識>より抜粋。
不整脈について解説します。

Point

  • 正常心電図における,「刺激伝導系を介した心臓の興奮伝達と心電図波形との関連性」をしっかりとおさえておくこと!
  • よくみかける不整脈の波形の特徴をしっかりと理解する!
  • 危険な不整脈を発見したら,まず取るべき行動を理解することが重要!

山下美由紀
(公益財団法人 日本心臓血圧研究振興会附属 榊原記念病院 CCU 副看護師長)

〈目次〉

 

はじめに

“不整脈”と聞いて,「難しい…」「苦手…」と感じている方,学習しているけれど,何だかよくわからないと思っている方も多いのではないでしょうか。

しかし,常にベッドサイドにいて,患者の観察をしている看護師にとって,不整脈を発見し適切な対応をすることは重要な役割だといえます。そのためには,やはり不整脈を正しく理解することが必要不可欠です。

まずは,臨床の現場でよくみかける不整脈の特徴を本コラムでしっかりと理解していきましょう。また,危険な不整脈は,直接患者の生命予後を左右します。危険な不整脈にはどのようなものがあるのか,そして,危険な不整脈を発見したときにはどのように行動すればよいのかをしっかりとおさえておきましょう。

残念ながら,心電図を理解する近道はありません。一つずつ理解していくことが大切です。より多くの心電図波形をみて,慣れ,苦手意識を克服していきましょう。

 

よくみる不整脈の理解

まずは,臨床でみかけることの多い不整脈の特徴を理解していきましょう(表1)。

表1不整脈の分類

不整脈の分類

 

洞性頻脈(図1

図1洞性頻脈

洞性頻脈

洞性頻脈(sinus tachycardia)は,洞調律と同様の波形ですが,洞結節から発生する刺激が100回/分以上になる不整脈です。

 

洞性徐脈(図2

図2洞性徐脈

洞性徐脈

洞性徐脈(sinus bradycardia)は,洞調律と同様の波形ですが,洞結節から発生する刺激が60回/分以下になる不整脈です。

 

洞停止(図3

図3洞停止

洞停止

洞停止(sinus arrest)とは,洞結節が刺激を出さない状態です。

 

心房性期外収縮(図4

図4心房性期外収縮

心房性期外収縮

心房性期外収縮(premature atrial contraction;PAC)とは,本来の洞調律よりも早いタイミングで,洞結節以外の心房のどこか1ヵ所から刺激が発生することで出現する不整脈です。

 

心房粗動(図5

図52:1~4:1の心房粗動

2:1~4:1の心房粗動

心房粗動(atrial flutter;AFL)とは,洞結節から刺激が発生するのではなく,心房のある1ヵ所から刺激が発生し,ぐるぐると回っている状態で出現する不整脈です。

 

心房細動(図6

図6心房細動

心房細動(atrial fibrillation;AF)とは,洞結節から刺激が発生するのではなく,心房のあらゆる場所から刺激が発生している状態です。

心房細動

 

発作性上室性頻拍(図7

図7発作性上室性頻拍

発作性上室性頻拍

発作性上室性頻拍(paroxysmal supraventricular tachycardia;PSVT)は,おおまかにいうと心室よりも上から発生する不整脈で,突然始まり,突然止まるという特徴があります。通常160~200回/分の頻拍になります(MEMO1)。

MEMO1まずは患者のもとへ

洞性頻脈,1:1の心房粗動,発作性上室性頻拍では,いずれも心拍数が早くP波がはっきりしません。そのため,一見すると心室頻拍にみえることがあります。まずは,患者のもとへ駆けつけ,意識レベルの確認とバイタルサインのチェックを行い,12誘導心電図で鑑別をしていきます。

 

心室性期外収縮(図8

図8多源性の心室性期外収縮

多源性の心室性期外収縮

心室性期外収縮(premature ven-tricular contraction;PVC)は,洞結節とは別に,少し早いタイミングで心室のどこか1ヵ所から刺激が発生することで出現します。

心室性期外収縮が2拍に1回の割合で出現する場合を2段脈,3拍連続で出現する場合をショートラン,心室のいろいろな場所から刺激が発生する場合を多源性と呼びます。また,先行しているT波に心室性期外収縮が重なるように発生した場合をR on Tと呼びます(MEMO2)。

MEMO2R on T

R on Tは,前のT波の頂上付近に心室性期外収縮が重なった状態です。T波の頂上付近は心室全体が非常に敏感になっており,この時期に刺激が発生すると,心室頻拍や心室細動に移行しやすく大変危険です。

 

心室頻拍(図9

図9心室頻拍

心室頻拍

心室頻拍(ventricular tachycardia;VT)とは,心室のある部位から刺激が発生して心室のみが頻回な収縮を繰り返し,心拍数150~200回/分となる不整脈です(MEMO3)。

心室頻拍が30拍以上持続する場合を持続性心室頻拍(sustained VT;susVT),それ以下のものを非持続性心室頻拍(non-sustained VT;NSVT)と呼びます。
また,数拍ごとにねじれるような波形を示すものをトルサード・ド・ポアンツ(torsades de pointes;Tds)と呼びます。

MEMO3心室頻拍

磨き,体動,シバリング,モニターの電極が剥がれかけていることが原因で,心室頻拍にみえることがあります。また,心室頻拍の場合でも,意識レベルが保たれている患者もいます。まずは患者のもとへ駆けつけ,不整脈の有無,意識レベルの確認を行い,心室頻拍が疑われる場合には,バイタルサインや12誘導心電図を確認します。

 

心室細動(図10

図10心室細動

心室細動

心室細動(ventricular fibrillation;VF)とは,心室のあらゆるところから刺激が発生し,心室が細かくふるえている状態です。心臓のポンプ機能は完全に失われており,全身に血液を送り出せず心停止とほぼ同じ状態です。

 

洞房ブロック(図11

図11洞房ブロック

洞房ブロック

洞房ブロック(SA block)とは,洞結節で発生した電気刺激が,心房に伝わりにくくなった状態で起こる不整脈です(MEMO4)。

MEMO4もしかしたら洞不全症候群?

持続する洞性徐脈,洞停止あるいは洞房ブロックを認める場合には,洞不全症候群(sick sinus syndrome;SSS)という,何らかの原因で洞結節の機能が低下した状態が潜んでいるかもしれません。

 

房室ブロック(図12)

房室ブロック(AV block)とは,心房–心室間の機能障害により,心房から心室に電気刺激が伝わる際に,遅延または伝導されない状態になり発生する不整脈のことです。伝導障害の程度により,I度,Ⅱ度,Ⅲ度に分類されます。また,連続する2つ以上のP波が心室に伝導されない(QRS波が現れない)場合を,高度房室ブロックといいます。

 

Ⅰ度房室ブロック(図12A

図12(A) I度房室ブロック

I度房室ブロック

心房–心室間の刺激伝導が不完全なために出現する不整脈です。

 

ウェンケバッハ型(モビッツⅠ型)房室ブロック(図12B

図12(B) ウェンケバッハ型房室ブロック

ウェンケバッハ型房室ブロック

心房–心室間の伝導が不完全な場合に発生する不整脈です。Ⅰ度房室ブロックとの違いは,心房から心室への伝導時間が次第に延長したのち,伝導が中断されて心室に興奮が伝わらなくなるという点です。

 

モビッツⅡ型房室ブロック(図12C

図12(C) モビッツⅡ型房室ブロック

モビッツⅡ型房室ブロック

ウェンケバッハ型房室ブロックと異なる点は,心房から心室への刺激伝導が,ときどき中断されるという点です。

 

Ⅲ度房室ブロック(図12D

図12(D) Ⅲ度房室ブロック

Ⅲ度房室ブロック

完全房室ブロック(complete AV block;CAVB)とも呼ばれます。心房から心室への刺激伝導が完全に障害され,心房から心室に刺激がまったく伝導されない不整脈です。

心室は,房室接合部以下の下位中枢において,洞結節から刺激を受けなくても自分で心筋を動かす「自動能」により,心房とはまったく関係なく拍動を繰り返すようになります。

 

危険な不整脈とその対応

生命に危険を及ぼす不整脈:心室頻拍と心室細動

初期対応

初期対応については,図13のフローチャートをご参照ください。

図13初期対応フローチャート

初期対応フローチャート

VT:心室頻拍,VF:心室細動

 

治療

〔心室頻拍を停止するための治療〕
  • 電気的除細動
  • 抗不整脈薬の投与:リドカイン,シベンゾリン,ニフェカラントなど
〔心室頻拍の発作を予防する治療〕
  • 抗不整脈薬の投与:プロカインアミド,ジソピラミド,フレカイニド,ピルジカイニド,アミオダロンなど
  • 遮断薬の投与:カルベジロールなど
  • カテーテル焼灼法(カテーテルアブレーション)
  • 植込み型自動除細動器

 

観察ポイント

  • 心電図モニターに注意:失神発作につながるような心拍数のさらなる低下や洞停止・洞房ブロックの有無に注意が必要です。
  • 意識レベルに注意:失神発作を招く危険性があるため,心電図モニターの監視とともに意識レベルの低下の有無にも注意しましょう。
  • 基礎疾患に注意:心筋梗塞狭心症,心筋症など心筋に異常がある基礎疾患があると,心室頻拍に移行しやすいので注意が必要です。

 

循環動態に影響を及ぼす危険のある不整脈:完全房室ブロック

初期対応(MEMO5

  • 意識消失に備えて,硫酸アトロピンなどの救急薬品,体表ペーシング,心臓マッサージ,気管内挿管の準備をしておきます。
  • 誘導心電図検査,意識レベルの確認,バイタルサインの測定を行います。
  • 意識消失を伴う場合には,すぐに一時的ペースメーカを装着できるように準備をします。
MEMO5ココに注意!

発作性上室性頻拍,心房細動,心房粗動は,基本的には生命に危険を及ぼすようなことはありません。しかし,心拍数が早い場合や心機能が悪い患者の場合には,心不全の悪化や循環動態に破綻をきたすことがあります。そのような場合には早期に対応が必要です。

 

治療

  • ペースメーカ装着:一時的または植込み型が必要となります。
  • 薬物療法:抗不整脈薬など薬剤が原因の場合や,腎機能障害などによる電解質異常が原因の場合には,薬剤の中止や電解質補正を行います。

 

観察ポイント

  • 心電図モニターに注意:失神発作につながるような心拍数のさらなる低下や洞停止・洞房ブロックの有無に注意が必要です。
  • 意識レベルに注意:失神発作を招く危険性があるため,心電図モニターの監視とともに意識レベルの低下の有無にも注意しましょう。

 

おわりに

不整脈には,たくさんの種類がありますし,テキスト通りの心電図波形にお目にかかることはなかなかないかもしれません。しかし,臨床の現場でよく目にする不整脈はそう多くの種類ではないと思います。

本コラムでは,臨床の現場で日常的に目にする不整脈を中心に解説しました。不整脈の鑑別方法やそれぞれの不整脈の特徴をしっかりと理解することで,少しずつ不整脈の解析ができるようになっていきます。そして,一つでも多くの心電図波形に触れ,テキストの内容と照らし合わせて不整脈の特徴をつかんでいくことで,苦手意識を克服していただけたらよいと思います。

また,危険な不整脈を最初に発見するのは,いつも患者さんの近くにいて心電図モニターを観察している看護師です。はじめはどのように対応してよいのか戸惑い,身体が動かないかもしれませんが,少しずつ経験を積んで対応できるようにしていきましょう。

 

 


[引用・参考文献]

  • (1)村松 準:心電図と不整脈の手引き.南山堂,2000.
  • (2)三浦雅郁子(監修):初心者のための心電図 A to Z(NCブックス).医学芸術社,2006.
  • (3)日本蘇生協議会:AHA心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン日本語版(2005).中山書店,2006.

[Profile]
山下美由紀(やました みゆき)
公益財団法人 日本心臓血圧研究振興会附属 榊原記念病院 CCU 副看護師長
2001年 公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院へ入職。CCU勤務を経て,2009年度より現職。主要著書に『CCUエキスパート 看護マニュアル(分担執筆)』(中外医学社)がある。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2013 医学出版

[出典]循環器ナーシング 2013年5月号
循環器ナーシング 2013年5月号
P.48~「不整脈とその理解」

著作権について

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