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2015年10月24日

リンパ管の構造と機能|血液の流れから理解する(4)

ナースのための楽しく解剖生理を学べる解説書『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』より
今回は、血液の流れから解剖生理を理解するお話の4回目です。

〈前回の内容〉

心臓のポンプ機能と毛細血管|血液の流れから理解する(3)

前回は、心拍出量と血圧という心臓の持つポンプ機能と毛細血管の働きについて学びました。

今回は、リンパ管の構造と機能について解説します。

 

〈目次〉

 

血管から漏れた水分をすくうリンパ管

血管を流れる血液は心臓から拍出され、全身を巡り心臓に戻ってきます。このように血管は閉鎖回路を形成しています。ですから、心臓と血管を合わせて循環器系と呼んでいるわけです。しかし、血液の液体成分は常に血管内を流れているのではなく、細胞に酸素と栄養素を届けるために、毛細血管の動脈側で血管から流出します。そして、静脈側で血管に戻れなかった水分はリンパとなり、これを回収して血流に戻してくれるのがリンパ管です。このように、毛細血管から漏れた水分をすくい、血管の静脈系に戻してくれるリンパ管は血液の組織間を起点、血管を終点としたバイパスになっています(図1)。

図1リンパ管と心臓血管系との関係

リンパ管と心臓血管系との関係

 

memoリンパ系とは

細胞と細胞の間にある組織液は、毛細血管を経て血液中に戻ります。しかし、その一部(約10%)は毛細リンパ管に入り、リンパ管を通って静脈に入ります。この循環をリンパ系と呼んでいます。

 

心臓というポンプを中心とした閉鎖系をつくっている血管と違い、リンパ管は開放系となっています。リンパ管の一端は血管と接していますが、他端は血管と接していません。しかし、中を流れる水分、つまり細胞外液に視点を当てると、いったん血管から漏れることはありますが最終的には血管に戻るので循環しており、細胞外液量は一定に維持されています(図2)。

図2細胞外液の循環

細胞外液の循環

 

memo水腫・浮腫

組織液がリンパ管の回収容量を超えてたまった状態を水腫といいます。また、この水腫が皮下に起こった場合を浮腫と呼んでいます。

 

リンパを回収するリンパ管の出発点は毛細リンパ管といい、一端が閉じた管、つまり盲管として各組織内にクモの巣のように分布しています(図3)。

図3リンパ管の分布と特殊な構造

リンパ管の分布と特殊な構造

 

また、毛細血管の直径は約10μmですが、毛細リンパ管はそれより太く、直径は20~75μmほどあります。

毛細リンパ管は毛細血管と同じように一層の内皮細胞で構成されています。内皮細胞の結合はゆるく重なり合って、バルブ(弁の一種)のようにはたらいています。組織内の圧力が高まると、重なり合った内皮細胞の隙間から間質液がリンパ管に入り込みます(図4)。

図4毛細リンパ管末端断面

毛細リンパ管末端断面

 

毛細リンパ管が合流して太くなったものがリンパ管です。多くの弁をもち、とくに太いものでは弁のところがふくらみ、数珠状につながってみえます。リンパ管にはところどころにリンパ節というソラマメ状のふくらみがついています。リンパ管はリンパ節を経由しながら、最後はリンパ本幹となって静脈に注ぎます。右上半身のリンパ管は右リンパ本幹に集まり、それ以外からのリンパ管は胸管に集まり、それぞれ左右の鎖骨下静脈に合流します(図5)。

図5主なリンパ節とリンパ管系

主なリンパ節とリンパ管系

 

リンパはどうやって流れるのか

リンパ管には逆流を防止する弁がありますが、心臓のようなポンプはありません。しかし、弁の周囲や弁と弁の中間部(分節)には平滑筋が発達していて、リンパ管の収縮・拡張に働く神経が平滑筋層まで進入しています。そのため、リンパ管分節の収縮や蠕動運動によってリンパは常に一定方向に輸送されています。また、以前は平滑筋をもたない毛細リンパ管には神経は分布しないと考えられていましたが、近年の電子顕微鏡の技術向上により神経の存在が観察されています。

もちろん、静脈内の血液が心臓へ戻るのを助ける骨格筋の筋ポンプや呼吸に伴う胸腔内圧の変化による呼吸ポンプは、リンパの流れも促進します。また、皮膚や筋などへのマッサージなど外部からの刺激でも効果があります。

 

白い管、乳糜管

北イタリアのパヴィア大学で解剖学・外科学の教授だったガストロ・アセリは、1622年の夏のある日、神経の走行を調べるためにイヌを開腹して胃と腸を引き出しました。

その際、腸間膜に分岐する多数の白い筋をみて、はじめは神経かと思ったそうです。その1本を切断するとクリーム状の液が流れ出たのですが、翌日開腹したイヌには白い管がみられなかったのです。アセリは餌を食べていないからだと直感し、3日後に十分に餌を与えたイヌを開腹し、腸間膜に多数の白い管の存在を確認しました。これが消化管の表面に沿って分布する乳糜管の初めての発見です。

 

memoリンパは白い血

血管から漏れ出たリンパには赤血球は含まれておらず無色あるいは色が薄いため、ヒポクラテスによって「白い血」と呼ばれていました。ですから、古くから理髪店の店頭でくるくる回る赤・青・白の三色の看板は、「動脈血」「静脈血」「包帯」を表すとされていますが、白はリンパを表しているのではないかという見解もあります。

 

小腸の絨毛の内部には、消化した栄養素を吸収するために毛細血管と毛細リンパ管が変形した中心乳糜管が走っています。消化された栄養素のうち大きい粒子となった脂肪(カイロミクロン)は毛細血管に入ることができず、この中心乳糜管に入るのです。リンパ管は大きなリンパ管である乳糜槽に合流し、脂肪はそこから胸管に運ばれ血流に入ります。ですから、リンパ管は血管から漏れた水分をすくうと同時に、消化管では脂肪の運搬経路としての役割も果たしています。

 

リンパをろ過するリンパ節

リンパ流は、心臓に近づくまでの間に数千というリンパ節でろ過されます。リンパ節には白血球の一種である単球(マクロファージ)が存在し、リンパの中の細菌やウイルスなどの異物を破壊し、食べつくしてしまいます。また、リンパ節内にはリンパ球も多数存在し、細菌と闘って生体を守っています(図6)。

図6血球の成熟過程

血球の成熟過程

 

memoウィルヒョウのリンパ節

胸管の静脈流入部、左静脈角付近のリンパ節は、ウィルヒョウのリンパ節と呼ばれます。このリンパ節は、胃がんの転移の際に腫れることで知られ、臨床現場では左鎖骨上部の触診が重要視されています。

 

リンパ管には比較的分子の大きい物質も入りやすいため、こうした生体防御の機構が備わっているのです。

リンパ節は本来、病原体や腫瘍細胞を取り除くはたらきをしていますが、捕捉した細菌の数が多すぎると、リンパ節は激しい炎症を起こし、腫大します。また、がん細胞もリンパ管を介して転移し、全身に広がることがあります。

 

COLUMN膠質浸透圧の「膠」

血漿蛋白質が作る浸透圧を特に膠質浸透圧といいますが、「膠」(にかわ)は動物の皮や骨などから作られる接着剤で、化学的成分はコラーゲンをその母体としています。膠はその特徴である温度差による形態の変化を利用して、洋の東西を問わず、太古の昔から木工など様々な用途に用いられてきました。例えば、書道で使う固形墨も煤を膠で固めたもので、膠のにおいを消すために香料として麝香などが練りこまれ、独特の墨のにおいがするのです。

 

〈次回〉

血液の仕組みとはたらき|血液の流れから理解する(5)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典]『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』(編著)増田敦子/2015年3月刊行

引用・参考文献 

著作権について

この連載

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