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2015年10月17日

全身の血管|血液の流れから理解する(1)

ナースのための解剖生理の解説書『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』より
今回は、血液の流れから解剖生理を理解するお話の1回目です。

〈前回の内容〉

身体の中の社会|生体としての人体(3)

前回は、細胞が活動している内部環境について学びました。

今回は、体内の物流システムである全身の血管について解説します。

 

〈目次〉

 

24時間はたらく体内の物流システム

スーパーマーケットやコンビニエンスストアの陳列棚にはいつも十分な量の、でもあふれるほどではなく一定量の商品が並べられています。こういったお店でアルバイトをしたことがある方ならわかると思いますが、お客さんが買い物して陳列棚の商品が少なくなると、店員がそれを見つけて倉庫から出して補充しているからです。でも、こういったお店の倉庫は大きくはありません。工場でつくられた大量の商品はまず倉庫に保管されています。そこから必要量の商品がトラックで搬出され、毎日、店舗に納品されています。私たちはこうした物流システムのおかげで毎日、必要な物資をいつでも簡単に手に入れることができます。

これと同じように、細胞もまた、体内の物流システムによって活動に必要なエネルギーをつくるための栄養素と酸素を手に入れています。血液が24時間365日、休むことなく酸素や栄養素をせっせと運んでくれるからこそ、私たちは生体活動を維持することができるのです。血液が流れる全身の血管は図1に示してあります。

図1全身の血管

全身の血管

 

memo

大動脈の走行
大動脈口(左心室)→上行大動脈→大動脈弓(頭部・上肢へ)→胸大動脈→腹大動脈→左・右総腸骨動脈

大動脈弓
心臓の上部に位置し、脳や上肢に向かう腕頭動脈、左総頸動脈、左鎖骨下動脈に分かれる。体幹や下肢に行く血管は、大動脈弓からそのまま胸大動脈へと向かう。

総頚動脈
気管や喉頭の外側に沿って上に向かう血管で、甲状軟骨の上縁の高さで外頚動脈(頭蓋腔外、頭皮、顔面、頸部に向かう)と内頸動脈(頭蓋腔内に向かう)に分かれる。

腕頭動脈
右総頸動脈と右鎖骨下動脈に分かれる。

上肢の動脈
鎖骨下動脈→腋窩動脈→上腕動脈→橈骨動脈・尺骨動脈

脳の動脈
後大脳動脈、前大脳動脈、中大脳動脈が前・後交通動脈によって大脳動脈輪(ウィリス動脈輪)を構成している。

下肢の動脈
外腸骨動脈→大腿動脈→膝窩動脈→前脛骨動脈→足背動脈→後脛骨動脈→腓骨動脈→外側・内側足底動脈

上大静脈
頭部と上肢の静脈を集めた腕頭静脈が合流し、右心房に入る。

下大静脈
下肢の静脈を集めた総腸骨静脈が合流し、腎静脈や肝静脈が流入して右心房に入る。

頭部の静脈
脳内の太い静脈は静脈洞(硬膜静脈洞)とよばれ、S状静脈洞から内頸静脈へと連なり、心臓へ戻る。

血管吻合
血管が閉塞しても、他の通り道を血液が流れるように横同士の血管(細動脈同士あるいは細静脈同士)を結合させている部分があり、これを血管吻合という。

終動脈
細動脈に吻合をもたない動脈を終動脈とよび、腎臓、脾臓、脳、心臓などにある。

動静脈吻合
毛細血管を間に挟まず、動脈と静脈が直接つながっている場合のことで、皮膚や陰部海綿体にみられる。

側副循環
血管のどこかが詰まったときに他の血管がバイパスの役割を果たし、血流を保つことを側副循環(側副血行路)という。

 

血管を道路にたとえると、最も太いのは心臓から血液を送り出す大動脈と心臓に血液が流れ込む大静脈で、これは高速道路に相当します。住宅街の狭い路地に相当するのが毛細血管で、この付近では血漿がわずかに染み出し、間質液(組織液)となり、それが細胞内液と混じり合って相互に移動することによって物質の交換が行われます。細胞が密集している場所ほど血管が細く流れが緩やかなのは、そのほうが物質の交換がしやすいからともいえます。

 

memo血管新生と道路網の整備

再生医療の大きな問題は、移植した組織・臓器が生体内で生着できない拒絶反応です。でも、ノーベル賞を受賞した京都大学の山中教授らが開発したiPS細胞を利用することで拒絶反応が起きない再生医療が期待されています。そして、都市計画に道路網の整備が欠かせないように、移植した組織・臓器への栄養素と酸素を供給するための血管新生も不可欠です。最近は血管新生を調節する因子などについての研究も進んでいます。

 

また、体内には血管から染み出た血漿を回収する迂回路(リンパ管)もあります。それについては「リンパ管の構造と機能|血液の流れから理解する(4)」で詳しく説明することにしましょう。

さて、道路に相当する血管の中を流れる血液は生活物資を運ぶ宅配業者であるとともに、細胞から出たゴミを回収するゴミ収集業者でもあります。そのため、血液をトラックにたとえることができます。トラックはガソリンで走ることができますが、血液は自分自身で流れることはできません。そこで、心臓がポンプのはたらきをして、血液を流してくれています。これは、流れるプールの水がポンプで流れている様子をイメージしてください。この心臓と血管を合わせて循環器系といい、中を流れる血液とは区別しています。

循環とは、「一回りして元の場所に戻り、それを繰り返すこと」です。たとえば、ある駅で山手線に乗り、居眠りして目的の駅を乗り越してそのまま乗っていると、乗り込んだ駅に舞い戻ってしまいます。身体の中にも山手線のように心臓から送り出されてもまた心臓に戻るように血液が循環しています。

 

memo灌流と還流

動脈血が酸素や栄養を各臓器に流れることを「灌流」といい、静脈血は心臓にかえることから「還流」といいます。いずれも「かんりゅう」と読みます。

 

そして、大事なことは山手線に内回りと外回りがあって逆行しないように、血液の流れも一方通行だということです。逆流してしまうと、血液が運び出したゴミがまた舞い戻ってしまいます。ですから、心臓と静脈に弁というストッパーがあります。

トラックはガソリンがないと動かないように、心臓に栄養素と酸素が十分に届かなくなるとポンプとしての機能を果たすことができなくなります。また、土砂崩れで道路が寸断してしまうと、その先に住んでいる人々に生活物資が届かなくなり、飢え死にしてしまいます。このように、心臓のポンプの機能と血管の状態は、身体の中の細胞の生活に大きな影響を与えていることがわかります。

 

COLUMN塞栓と梗塞

土砂崩れで道路が寸断された状態は、身体の中でいうと血管に血栓(血の塊)ができてつまってしまうことです。この状態を塞栓といい、その先に血液がいかなくなるので、長引けばその先の細胞は死んでしまいます。このような細胞の死を壊死といいます。再生しない脳細胞や心筋細胞にとっては重大な問題であり、脳梗塞や心筋梗塞となります。でも、遠回りしてでも違う道を通ったり、ヘリコプターを使って物資を輸送することができるように、血管にも側副路、いわゆる迂回路があれば問題ありません。実は、脳には、生活物資を供給するいくつかの動脈が輪のようにつながったウィリス動脈輪があり、どこかが閉塞しても、別のところから血液が供給される安全装置が備わっています。

 

2種類の道路;動脈と静脈

道路が「行き」と「帰り」で車線が分かれているように、血液も「行き」と「帰り」では、違う道を通ります。

おおむね、心臓から送り出される酸素濃度の高い血液(動脈血)が流れる血管を動脈、心臓に戻ってくる酸素濃度の低い血液(静脈血)が流れる血管を静脈とよんでいます。動脈は体内に取り込んだ酸素や栄養分を個々の細胞に運ぶ通路、静脈は個々の細胞が活動して出た老廃物(ゴミ)を回収するための通路です。

血管の構造は、動脈も静脈ともに3層からなっています(図2)。

図2血管の構造

血管の構造

 

血管の一番内側を覆っている非常に薄い膜を内膜といい、筋肉と弾性組織でできた厚みのある中間層を中膜、線維性の組織からできていて、いちばん外側で血管を保護している膜を外膜とよんでいます。

 

memo血管の機能名称

太い動脈は弾性組織に富んでいるので弾性血管といえます。枝分かれして細い動脈になると、平滑筋が増え、収縮によりその先へ流れる血液量を減らす抵抗としてはたらくので、抵抗血管となります。血液循環の目的は物質交換であり、その舞台が毛細血管なので交換血管と呼びます。静脈は壁が薄く伸展性に富んでいるので中に血液を貯蔵することができる容量血管となります。

 

この層は通常、静脈よりも動脈のほうが厚くなっています。なぜかというと、動脈は心臓から送り出される血液が直接流れ込むので、弾力性があり、内圧の変化にも耐えられるように丈夫にできているのです。

一方、静脈は心臓から遠く、圧力も比較的低い状態に保たれるので、壁自体は薄くできています。しかし、血液が逆流するのを防ぐため、一部に動脈にはない弁がついています。多くの静脈は体表近くを流れ、体表面から容易に見たり触れたりできます。動脈はより深いところに位置し、保護されています。

 

肺循環と体循環

前にも述べましたように、血液は山手線のように心臓から出て心臓に戻ってきます(図3)。

図3全身の循環

全身の循環

 

memo8の字サーキット

血液の循環は心臓を中心とした8の字サーキットを描きます。肺循環と体循環の流れは以下のとおりです。

肺循環:右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房

体循環:左心室→大動脈→全身の器官・組織→上・下大静脈→右心房

 

血液はまず心房に流れ込み、続いてその下にある心室を満たします。送り込まれた血液でいっぱいになると、厚い筋肉でできた心室が収縮し、血液が外に送り出されます。

心臓は見た目には1つの臓器ですが、左右のはたきはきちんと役割分担がされており、直接血液のやり取りをすることはありません。右側(右心系)は全身の静脈から戻ってきた酸素濃度の低い血液を肺へ送り込むポンプで、左側(左心系)は肺から戻った酸素濃度の高い血液を全身へ送り出すポンプです。

 

memoポンプとは

一般にポンプとは、圧力のはたらきによって液体を送る装置です。ポンプはポンプの入口まで液体を吸引し、次にポンプに吸い込んだ液体を目的の場所まで移送する重要な能力をもっています。そのため、ポンプには吸水口と送水口があります。つまり、心臓は吸引室と送出室からできているということになります。流れるプールにもポンプが活躍していますが、残念なことに、蓋のはずれた吸水口に子どもが吸い込まれる事故が過去に起きています。

 

COLUMN動脈血が流れるのに肺静脈?

私たちは通常、心臓から送り出される酸素を多く含んだ血液を動脈血、体内の各細胞から心臓に戻される二酸化炭素を多く含んだ血液を静脈血とよんでいます。しかし、動脈血は必ずしも動脈を流れるとはかぎりません。

解剖学では心臓を基点に、流れ出ていく血管を動脈、そこに戻ってくる血管を静脈とよんでいます。肺から心臓へ血液を運ぶ血管には、酸素をたっぷり含んだ動脈血が流れています。それでも、名前は肺静脈ということになります。また、心臓から肺へ送られるのも、中を流れるのは静脈血ですが、血管は肺動脈なのです(図3)。

 

右心系から肺を通って左心系に戻る経路は、肺循環とよばれます。肺循環では、全身から戻った血液が上大静脈(頭や腕からの血液が流れ込む)・下大静脈(腹部や下肢からの血液が流れ込む)を通って右心系に入り、肺動脈幹に送り出され、左右に分かれて肺の中へ流れていきます。

肺に流れた血液は、そこで十分に酸素をもらい、今度は肺静脈を通って反対側の左心系に入ります。左心室にたまった血液は、ポンプ作用によって送り出され、大動脈を通って全身に流れていきます。このように、左心系を出て全身を巡って右心系に戻る経路を体循環とよびます。

 

memo混合静脈血

右心房に戻ってくる静脈血は、上半身からの上大静脈と下半身からの下大静脈だけでなく、心筋を循環した冠状静脈が注ぎ込む冠状静脈洞からの混合血になります。3つの血液の酸素量は「冠状静脈洞<上大静脈<下大静脈」の順になっています。右心房から右心室に流入するについて3つの血液は混じりあい、肺動脈までいくと均一になります。一般に混合静脈血というと肺静脈での血液のことを指しています。

 

〈次回〉

心臓の構造と血液との関係|血液の流れから理解する(2)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典]『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』(編著)増田敦子/2015年3月刊行

引用・参考文献 / 著作権について

この連載

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