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2015年10月13日

人間の身体を構成する細胞|生体としての人体(2)

ナースのための解剖生理の解説書『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』より
今回は、生体としての人体についてのお話の2回目です。

〈前回の内容〉

解剖生理を学ぶ理由|生体としての人体(1)

前回は、解剖生理を学ぶ理由と、生きているということについて学びました。

今回は、人間の身体を構成する細胞について解説します。

 

〈目次〉

 

細胞の中には何があるの?

人間の身体は約60兆個の細胞から構成されているといわれています。その一つひとつの細胞が生命活動を行っており、一つの社会を構成しています。それでは細胞の中に何があるかみてみましょう(図1)。

図1動物細胞の構造

動物細胞の構造

 

細胞の中には細胞質という液体の中に細胞内小器官とよばれるいろいろな構造体が点在していて、個々のはたらきを行っています。

まず細胞内で目につくのが核です。この中にはDNA(deoxyribonucleic acid)がヒストンという蛋白質に絡まって糸状になった染色質(クロマチン)という物質がつまっています。

細胞分裂をするときは染色質がコイル状に巻いて、太くなって光学顕微鏡でも見えるくらい棒状になった染色体とよばれる構造になります(図2)。DNAはヒトの設計図の原本なので、核という部屋に保管しています。

図2有糸分裂の各段階

有糸分裂の各段階

 

DNAはデオキシリボ核酸の略で、リン酸とデオキシリボースと塩基からなるヌクレオチドがたくさんつながってできた鎖が2本、塩基どうしで軽く手をつないだ状態でらせん状にねじれてできたものです。図3には塩基がアデニンの場合で、塩基にはほかにチミン、シトシン、グアニンがあります。塩基どうしの結合はアデニンとチミン、シトシンとグアニンというように決まっています。

 

図3アデニンヌクレオチド

アデニンヌクレオチド

 

核酸にはリボ核酸、つまりRNA(ribonucleic acid)があります。RNAはDNAとは違い1本鎖です。そして、デオキシリボースではなくリボースで、塩基のうちチミンはウラシルになっています。

核の外にあり、ソーセージのような形をしているのはミトコンドリアです。生命活動を営むために必要なエネルギーをつくる発電所のような器官です。ここでは酸素を使って大量のエネルギーをつくりますが、ミトコンドリアの外、つまり細胞質でも少量のエネルギーをつくることができます。これは酸素を使わないので嫌気性解糖といいます。

 

memo嫌気性解糖

ブドウ糖の分子中には酸素もあります。ですから、ブドウ糖を分解するごく初期の段階では酸素を使わずに少量のATPがつくり出されています。これを嫌気性解糖といいます。

50mや100mなどの短距離走では無意識に息を止めて走っているようで、嫌気性解糖がこのときのエネルギー供給源になっています。

 

2枚の膜が袋状に広がっているのは小胞体といいます。膜の表面にリボソームという粒子が付着しているものを粗面小胞体、付着していないものを滑面小胞体といいます。

小胞体に付着しているリボソームでは細胞膜や細胞外で使われる蛋白質がつくられています。ここでつくられた蛋白質は細胞内に張り巡らされた道路のような小胞体の中に入り、ゴルジ装置へ送られていきます。郵便局に小包を持っていって荷札をつけてもらうように、ゴルジ装置に運ばれた蛋白質に荷札に相当する糖などがつけられ、埋め込まれたり細胞膜の外に分泌されたりします。

小胞体に付着せず細胞質に浮遊しているリボソームでは、細胞内で日常的に使われる蛋白質をつくっています。一方、リボソームが付着していない滑面小胞体ではコレステロールの合成と分解といった脂質代謝や薬物や毒物などの解毒を行っているので、肝臓でよく発達しています。

細胞内にはゴミ処理場もあり、それを担当しているのがリソソームで、袋の中に強力な消化酵素がつまっていて、細胞内で古くなったものや細胞内に取り込んだ異物を分解して処理してくれます。

 

細胞にとっての国境;細胞膜

細胞を取り巻く細胞膜は、細胞の内部と外部とを仕切り保護してくれています。細胞膜はリン脂質という脂質が2枚重なってできています。リン脂質は水になじむ部分(親水基)であるリン含有部分と水になじまない部分である疎水基の両方からできていて、二重層になっています。疎水基同士がくっつき、親水基を外側に向けています。

この二重層のところどころにはコレステロールがはめ込まれており、細胞膜が柔らかすぎず、硬すぎないように流動性をほどよく調整しています(図4)。

図4細胞膜の構造

細胞膜の構造

 

細胞膜を介した物質の移動

細胞膜には蛋白質が浮遊しています。これらの蛋白質は、酵素や受容体としてはたらいています。脂質二重層をまたぐように存在している蛋白質は、細胞の内外を物質が通り抜けられるための通路を提供しています。

細胞膜を仕切りとしてさまざまな物質が出入りしますが、それには選択性があります。酸素や栄養素など生命活動に必要なものは細胞内に入り、老廃物などは細胞外に出ていきます。また細胞膜は、細胞にとって有用なものは細胞内にとどめおかれ、細胞にとって好ましくないものを入れないようになっています。このような性質をもつ膜を半透膜といいます(図5)。

図5細胞膜

細胞膜

 

細胞膜を介して起こる物質移動には基本的に2つに分けられます(図6)。

図6膜輸送の分類

膜輸送の分類

 

1つは受動輸送といい、物質が多い(高い)ほうから少ない(低い)ほうへ拡散していきます。これは勾配にしたがった輸送で、あたかもボールが下り坂を自然に転がるように移動するので、物質は細胞からのエネルギーの供給を受けなくても輸送されます。

もう1つは少ない(低い)ほうから多い(高い)ほうへ物質が上り坂を登っていくような輸送なので、細胞からエネルギーの供給を必要としています。これを能動輸送といいます。イメージとしては日本庭園のように水が重力の向きに任せて自然に上から下へ流れているのが受動輸送、洋風庭園の噴水のようにポンプからのエネルギーを使って重力に逆らって水が下から上へ噴き上げるのが能動輸送だとイメージしてください(図7)。

図7膜輸送の例

膜輸送の例

 

細胞膜は脂質二重層ですから、脂肪や脂肪に溶けるビタミン類などの脂溶性物質や酸素・二酸化炭素をはじめ小さい分子などは脂質二重層を直接通過することができます。このとき、物質の移動の向きは濃度勾配にしたがって拡散します(図8)。

図8細胞膜を介しての拡散・単純拡散

細胞膜を介しての拡散・単純拡散

 

細胞膜に貫通した穴があるチャネルという蛋白質が浮遊しています。チャネルは水路、経路を意味する英単語でテレビのチャンネルと同じ単語ですが、生理学ではチャネルと縮めて表記・発音する慣習が定着しています。

水溶性の物質やイオンなど細胞膜の脂質二重層を直接通過できない分子は、チャネルを通って拡散します。ナトリウムイオンやカリウムイオンなどはそれぞれ専用のチャネルがあります(図9)。

図9輸送蛋白質を介した拡散・促進拡散

輸送蛋白質を介した拡散・促進拡散

 

チャネルには水専用のアクアポリンというチャネルがあります(図10)。

図10水の拡散・アクアポリン

水の拡散・アクアポリン

 

ある物質が細胞膜を境に中と外で濃度が違うとき、濃度を均一にしようとして水が移動します。つまり濃度の低いほうから高いほうに水が移動し、言い換えると水分子が多いほうから少ないほうへアクアポリンを通って拡散します。これを浸透といいます(図11)。

図11浸透

浸透

 

memoアクアポリンの発見はセレンディピティ

ふとしたときに、以前いくら探しても見つからなかったものを見つけることがあります。これをセレンディピティ(思いがけないものの発見)といいます。

アクアポリンを発見したのはアメリカの研究者ピーター・アグリ教授で、1992年、赤血球の膜の研究をしているとき偶然に発見したのです。そして、2003年にノーベル化学賞を受賞しています。

 

細胞膜に浮遊している蛋白質にはポンプのはたらきをするものもあります。エネルギーを使って地面の下から上へ重力に逆らってくみ上げるように、細胞膜を境に濃度の低いほうから高いほうへ物質を移動させるのです。細胞で最も重要なのがナトリウム-カリウムポンプです(図12)。

図12ナトリウム-カリウムポンプ

ナトリウム-カリウムポンプ

 

このポンプにより細胞内のナトリウムイオンは濃度の高い細胞外へくみ出されるとともに、細胞外のカリウムイオンが濃度の高い細胞内にくみ入れています。ナトリウム(Na)−カリウム(K)イオンの細胞内外の濃度差が神経活動には必須なので、エネルギーの供給によりこのポンプがはたらき、細胞内外でナトリウムイオンとカリウムイオンの濃度に差が形成されることは重要なことです。

イオンの濃度差を水力発電のダムで考えてみましょう。ダムには水の高さに大きな差があり、ダムの水門を開けたときに流れ落ちる水力エネルギーでタービンを回して発電します。

同じように、ある一定以上の刺激を受けると神経細胞の膜にあるナトリウムイオンチャネルのゲート(水門)が開きます。すると細胞外にたくさんあるナトリウムイオンが細胞内にどーっと流入することで神経細胞は活動電位という電気信号を発生させ、情報を伝達することができるのです。

 

〈次回〉

身体の中の社会|生体としての人体(3)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典]『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』(編著)増田敦子/2015年3月刊行

引用・参考文献 

著作権について

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