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2015年10月10日

解剖生理を学ぶ理由|生体としての人体(1)

ナースのための解剖生理の解説書『身体のしくみとはたらき―楽しく学ぶ解剖生理』からの新連載。

初回である今回は、解剖生理を学ぶ理由と、生きているということについて解説します。

 

〈目次〉

 

なぜ、解剖生理学を学ぶのだろう?

家を建てるとき、まず基礎工事をします。家全体を支える基礎が整ったら、骨組みを組む「建前」を行い、「上棟式」をして工事の安全を祈願します。そして、「屋根工事」「外装工事」「設備工事」「内装工事」の作業を進め、安心して暮らせる家が完成すると「竣工」となります。

医師や歯科医師、看護師、理学・作業療法士、柔道整復師などの医療従事者を目指している皆さんはそれぞれの家を建てるように、これから一生懸命に勉強し、国家試験に合格すると正式な資格を有する医療従事者となります。家の屋根や外装、設備、内装は皆さんが担当するいわゆる専門科目になりますが、家全体を支える基礎が重要なように基礎科目である解剖学と生理学も医療従事者として重要な科目になります。

医療従事者の対象は人間であり、対象を理解しないで医療業務は行えません。多くの医療従事者は疾患や障害をもった人を対象にしているので、疾患や障害の理解は専門科目として学びます。しかし、機械の故障は正常な形とはたらきを知ったうえで修理するように、人体の正常の形とはたらきを理解することで疾患や障害の理解を深め、それぞれの業務を実践することができます。

試合に出場しているスポーツ選手をテレビで観ると格好いいと思います。でも、試合に出るための基礎体力をつけるための地道なトレーニングを積んでいるのを皆さんは知っているでしょう。試合出場に耐えられる基礎体力をつけることが、皆さんにとっては解剖生理学を勉強することなのです。解剖生理学は高校で生物・化学を履修していない人は苦労するかもしれません。

でもいいんです、高校で習っていなくても。大学・専門学校に入ってから新しい科目として奮起して勉強すればいいんです。それに基礎科目は専門科目に比べるとおもしろくありません。おもしろくないから、難しいから、面倒だから、と言ってそれをしないで、「高校で習っていない」と弱音の吐く人は医療従事者になる資格はありません。

と、ここまでは建前です。本音を言うと、医療従事者になろうと決めて勉強を始めたばかりの人はまだ将来の自分に解剖生理学がなぜ必要なのか実感できないのはわかります。その勉強がつらいことにも同情します。でも、人間相手の仕事に就こうとしている自分自身も同じ人間です。だから、自分の身体に興味をもってください。

精子と卵子が受精するのは奇跡です。受精卵から胎児として育ち、出産してこの世に生まれてくることも奇跡です。そして、今まで病気をしても回復し、こうして生きていることも奇跡です。今こうして生きている奇跡のしくみを勉強することはとても幸せなことなのです。それを勉強しないのはもったいないと思いませんか?!

 

memo解剖学と生理学

人間を生物体として理解するために必要な知識として、解剖学(anatomy)と生理学(physiology)があります。解剖学は身体の形態と構造を明らかにする学問で、生理学は働きや機能を探求する学問です。看護ではこの両者を解剖生理学として一緒に学びます。

 

エネルギーを生み出すには酸素が必要

私たちヒトは毎日、呼吸をして酸素を取り入れています。息ができないと苦しくなり、生命に危険を及ぶことは誰でも知っています。では、ヒトはなぜ呼吸をするのでしょう。

 

エネルギーの源ATP

生物はすべて、生きていくためにはエネルギーを必要とします。エネルギーをつくり出すためにヒトは、さまざま食物から必要な栄養素をとっています。しかし、この栄養素から生きていくのに必要な量のエネルギーを生み出す化学反応を起こすには、酸素が必要なのです。

酸素(O)と水素(H)が結合すると、水(H2O)ができるのは皆さん知っていますね。実は、体内では毎日、これと全く同じ化学反応が繰り返されているのです。その化学反応を起こすために私たちは毎日、呼吸をして酸素を体内に取り入れているのです。

  • 水の化学反応 2 H2 + O2 → 2 H2O

上記の化学反応で生み出されるのは、水だけではありません。子どものころの理科の実験を思い出してください。試験管の中で水素と酸素を混ぜたら、ポンと小さな爆発が起きませんでしたか。この爆発を起こすエネルギーの源がATP(adenosine triphosphate)です。

 

ATPの構造とはたらき

ATP(図1)は、アデノシン(adenosine)という物質にリン酸(triphosphate)が3つ(tri)ついた構造で、アデノシン三リン酸とよばれます。

図1ATPの構造と加水分解

ATPの構造と加水分解

 

これは充電された電池のようなものをイメージしてください。私たちは日ごろ、加水分解によりこのATPのいちばん端にあるリン酸分子1つが結合から離れてADPになるときに生じるエネルギーを使って、体温を維持したり、運動したり活動したりしているのです。

 

memo数を表す接頭語

レールが1本のモノレールの「モノ」はギリシャ語で「1」を、2つの間で板ばさみになっている状態のジレンマの「ジ」は「2」を、3人組のトリオの「トリ」は「3」を、4つ足で波消しブロックのテトラポッドの「テトラ」は「4」を、五角形のペンタゴンの「ペンタ」は「5」を表しています。

日常生活で使われている言葉の由来を知ると、専門用語を覚えるときも楽しくなります。

 

 

さて、化学反応を起こすもう一方の物質、水素はどこからやってきたのでしょう。実はこの水素は私たちの日ごろの食事からとっているのです。

米やパンに含まれる糖質を例にあげましょう。糖質を分解していくとまず、ブドウ糖(C6H12O6)になります。ブドウ糖の化学式の中には水素があります。この水素が呼吸によって体内に取り入れられた酸素と結びついて、先にあげた水とATPをつくり出す化学反応を起こします。

 

memo糖質と炭水化物の関係

糖質のほとんどは炭素・水素・酸素から構成されており、水素と酸素の割合が1:2です。あたかも炭素に水が結合した物質のようにみえるので炭水化物ともいい、かつては含水化物ともよばれていました。

しかし、デオキシリボースのように水素と酸素の割合が2:1でないものも含まれるようになり、今日では糖質ないしは糖とよばれることが多くなっています。

 

もう1つ、皆さんは疑問に思うことがあるでしょう。図2をみてわかるように、呼吸をするとき酸素を取り入れると同時に二酸化炭素を排出しますが、この二酸化炭素はどうやってつくられるのでしょうか。

図2身体のしくみ

身体のしくみ

 

さて、もう一度ブドウ糖の化学式をみてみると6つの炭素(C)がありますね。ヒトが吐き出す二酸化炭素は、この炭素と呼吸で取り入れた酸素がくっついてできたものなのです。

  • C6H12O6 + 6 O2 → 6 CO2 + 6 H2O

つまり、ヒトが行っている生命現象は、基本的には次のような式で表すことができます。

  • 食物からとる栄養素 + 酸素 → 水 + 二酸化炭素 + ATP

一般に尿と便は排泄物として一緒に扱っています。でも、図2をみてわかるように、ヒトの身体を構成する一つひとつの細胞が代謝の結果生じたゴミは血液中に捨て、それが腎臓に運ばれ尿として排泄されています。

上記の式をみてわかるように、生体を構成している多くの糖質や脂質は炭素と水素と酸素のみから構成されています。酸素により燃焼して生じる産物は二酸化炭素と水だけで、二酸化炭素は気体になる物質(揮発性物質)で呼吸によって排出することができます。

しかし、蛋白質や核酸には窒素が含まれており、これらの代謝産物である尿素や尿酸は水に溶かして尿として排出するしかありません。

一方、便はヒトが口から摂取した食物のうち、消化・吸収できなかったものが出ているので、細胞の代謝活動を反映していません。

尿を調べることで身体の状態がよくわかります。たとえば、尿蛋白や潜血反応から腎臓、膀胱の疾患、尿糖から糖尿病など代謝疾患、ウロビリノーゲンからは肝臓胆嚢の疾患まで見つけることができます。一方、便を調べてわかることは、消化管内で出血がないかどうか、あるいは寄生虫やその卵の有無がわかるくらいです。

 

生命現象の基本はヒトもアメーバも同じ

実は、この式で示したようなヒトが行う生命現象は、アメーバのような単細胞生物でもヒトのような高等動物でも、基本的には同じです。生体はすべて、外の世界から必要な栄養素と酸素を取り込み、消化・吸収して、活動に必要な物質やエネルギーを生成します。そして不要なものを排出しているのです。こうした体内の化学反応による物質の変化を、生理学では物質代謝と呼んでいます。

物質代謝には大きく分けて、同化作用と異化作用の2種類があります(図3)。

図3代謝のプロセス

代謝のプロセス

 

同化作用とは、食事で得られたエネルギーを筋肉の一部にグリコーゲンとして蓄えたり、脂肪として蓄えたりして身体の成分と同じになるようにつくり変えられていく過程をいいます。成長のためにこうしたエネルギーが使われるのもこの同化作用です。

一方、自分の身体の成分が分解され、異なる物質に変えられる過程を異化作用といいます。運動などでエネルギーを消費してしまうことなどがこの異化作用にあたります。

代謝は、化学反応の連鎖です。そして、その個々の化学反応は酵素という触媒によって促進されているのです。

 

memo酵素のパワー

代謝に関係する1つひとつの化学反応には、それぞれ別の酵素が力を貸しています。酵素は、自分が受け持つ特定の相手をつかまえて、引っ張ったり押したりして不安定な状態にし(活性化)、化学反応の進行を助けます。

 

〈次回〉

人間の身体を構成する細胞|生体としての人体(2)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『身体のしくみとはたらき』 (編著)増田敦子/2015年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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