1. 看護roo!>
  2. 看護・ケア>
  3. WOC Nursing>
  4. 便秘|便秘のタイプ別アプローチ

2015年12月04日

便秘|便秘のタイプ別アプローチ

『WOC Nursing』2015年8月号<排尿・排便障害のアセスメント>より抜粋。
便秘のタイプ別アプローチについて解説します。

 

Point

  • 患者の便秘がどのタイプにあたるのかを分類できる
  • 便性状から,下剤の効果をアセスメントできる
  • 食事日誌や排便チャートを活用し,適切にアプローチできる

神山剛一
(さいたま新開橋クリニック ペルビックフロアセンター長)

 

〈目次〉

 

はじめに

便秘はありふれた症状の1つで,平成25年の国民生活基礎調査(1)によると,人口1000人に対する有訴者は,男性26人,女性46.7人でした(図1)。

図1便秘の自覚症状(文献1より引用)

便秘の自覚症状

 

SauresとFordらの調査(2)でも,便秘は地域人口の14%にみられ,とくに女性や高齢者に多いと報告されています。これは,日本における性別・年齢分布とも一致します。一方で,単なる加齢と排便回数に直接的な関連があるかは明確ではなく(3)(4)(5)(6),また高齢者だからといって必ずしも結腸通過時間が延長するわけでもありません(6)(7)

このことから高齢者に伴う便秘は,併存する全身疾患や多数の服薬などといった要因が,二次的に腸管運動へ作用した結果であると考えられます。また人種による違い(8)や地域によって発生率が異なるといった報告(9)もみられ,図2に示すように便秘をきたす背景は複雑で多様であると指摘されています(10)

図2便秘の原因となる多様な要因(文献10より引用)

便秘の原因となる多様な要因

 

したがって,便秘患者をアセスメントする際にはこれらの点を踏まえ,患者の生活様式や症状出現の経緯について,できるだけ詳しく把握しておく必要があります。

本コラムではWOCナースが便秘患者に対して適確なアセスメントを行い,より専門的なケアが実践できるように解説します。

 

便秘の3つのタイプ

便秘の分類

2013年に米国消化器病学会(以下AGA)が便秘治療のアルゴリズム(図3)を公表しており(11),このなかで便秘は①通過時間遅延型便秘,②正常通過時間型便秘,③排出困難型便秘の3つのカテゴリーに分類されています。

図3便秘治療の流れ(文献11より引用)

便秘治療の流れ

 

「正常通過時間なのに便秘?」と戸惑ってしまいますが,②は古典的な便秘の分類である「痙性便秘」と好対照となるカテゴリーです。①と③も,それぞれ「弛緩性便秘」「直腸性便秘」と対応しています。おおよその印象で「排便回数が少ない便秘(排便回数減少型便秘)」「お腹が張る便秘(腹部症状型便秘)」「出せない,出しにくい便秘(直腸性便秘)」と,簡単に区別できる分類法です。

ただし「痙性便秘」は過敏性腸症候群と混同されがちですが,Rome Ⅲの診断基準では,過敏性腸症候群の便秘型と痙性便秘のような機能性便秘は区別されています。一方で,過敏性腸症候群の便秘型と機能性便秘の患者像はかなり重複しており(12)(13)(14),さらにそれらの診断は時間によって推移することが示され(13),実臨床では両者を明確に区別することは困難です。

たとえ直感による分類であっても,3つのタイプに区別することで個別の対処法を提示できる利点があるため,ここではAGAの分類にならって,便秘を「排便回数減少型便秘」,「腹部症状型便秘」,「直腸性便秘」の3つのタイプに分類します(図4)。

図4便秘のタイプ

便秘のタイプ

 

便秘スコアリングシステム

便秘のタイプを知るには,便秘スコアリングシステム(15)(以下,CSS)(表1)を利用する方法があります。

表1Constipation Scoring System(便秘スコアリングシステム)(文献15より引用)

Constipation Scoring System(便秘スコアリングシステム)

 

たとえば腹痛や排便困難がなく,排便回数が減少していれば「排便回数減少型便秘」に分類できるでしょう。これに対して,排便回数が減少していないのに排便困難や残便感の症状が強くある場合は「直腸性便秘」の可能性が高く,また腹痛や腹部不快感が主症状であれば「腹部症状型便秘」と考えられます。

CSSによって,主観的な便秘の症状が点数化されるため,症状の推移や重症度を比較できる利点もあります。

 

便秘に対するアセスメントとアプローチ

便秘患者に対するアプローチは,図3に示すように進めるのが最も合理的であると考えられます。

実際の一般診療でも,必要があれば大腸のスクリーニングや便秘の原因となる全身疾患の検索を行うでしょうし,食物繊維をより多く摂取する指導や下剤の処方も施行します。しかし,個々の患者に対して個別の生活指導やきめ細やかな下剤の調整を行うとなると,通常の外来診療では時間的な制約からも難しいのが現状でしょう。

そこで,食事日誌を用いた詳細な食事内容の評価と,便の性状を参考にした下剤の調整を行います。

 

下剤について

一般的に使用される下剤を表2に示します。

表2下剤の種類

下剤の種類

 

結腸通過時間と便の性状が相関するという報告がいくつかありますが,Lewisら(16)は,下剤を使用すれば通過時間が短縮すると同時に便性が軟らかくなり,逆に止痢剤を使用すると通過時間が延長し,便性も硬くなるという関連性を示しました(図5)。

図5便性と腸管通過時間の相関(文献6より引用)

便性と腸管通過時間の相関

 

すなわち下剤を使用して軟便の排出が得られている場合は,結腸通過時間は短縮し,下剤の効果は現れていると判断できます(図6)。

図6下剤の影響

下剤の影響

 

多くの患者は下剤の効果を主観的に判断しがちですが,ブリストルスケール(表3)を用いることによって,その効果を客観的に評価できます。

表3ブリストルスケール

ブリストルスケール

 

食生活の評価と下剤の調整

患者の生活様式,食事内容,下剤の服用,排便パターンをみるために,食事日誌(表4)を活用します。記録にあたって,便の性状はブリストルスケール(表3)を用いて数字で記入してもらいます。

1日の食物繊維摂取量を推定し,15 g以下であれば,より多く食物繊維を摂取できるようなメニューを提案します。調理を得意としない人に対しては,1食で食物繊維が7 g以上摂取できるシリアルを勧めます。

 

タイプ別のアプローチ

排便回数減少型便秘

表4は20歳代女性の食事日誌です。若いころから便秘があり「下剤を飲まないと出ない」といって受診しました。腹痛はなく,週に2回未満の排便回数が主訴で,排便回数減少型便秘と判断されました。

表420歳代女性(排便回数減少型便秘)の食事日誌

20歳代女性(排便回数減少型便秘)の食事日誌

 

この女性の1週間の記録をみると,1日の食物繊維摂取量は10 g程度で,そもそも便の貯留が少ないための排便回数減少と考えられます。さらに下剤内服後の排便パターンをみると,始めの便はType1で硬いものの,最後はType7と水様便で終わっています。

このことから下剤は十分に効いていると判断できます。あまり調理をしない患者だったことから,1食12 gの食物繊維を摂取できるシリアルを勧めたところ,その後は下剤を使用しなくても排便がみられるようになりました。

この症例のように排便回数減少型便秘の場合は,食物繊維不足があればまず増量を指導し,その後の下剤は便の性状に応じて増減します。

 

腹部症状型便秘

食生活の詳細は表4のような1週間の記録で把握しますが,その後の下剤の調整は排便チャート(図7)を用いてフォローします。また施設で食事をしている患者などは,メニューが決まっていると思われるため,食事日誌は必ずしも必要ありません。

図7のチャートは「腹痛を伴った便秘」の50歳代女性の記録です。症状がなかなか改善せず,いろいろな病院で薬をもらっていました。

図750歳代女性(腹部症状型便秘)の排便チャート

50歳代女性(腹部症状型便秘)の排便チャート

 

確かに上段の記録をみると排便が不規則で,1日に何度も腹痛が起きていることがわかります。これは排便困難よりも腹痛がメインの腹部症状型便秘です。しかしながら便性に着目すると,その日の最終排便は軟便で終わっており,下剤の効果は十分に出ていることがわかります。むしろ過剰な下剤が腹痛の原因となっている可能性も否定できません。

そこで作用機序の異なる下剤に変更し,チャートを継続してもらったところ,下段のように腹痛は緩和し,排便もまとまった形でみられるようになりました。

このように腹部症状型便秘に対しては,強力な下剤を処方するとかえって症状が悪化してしまうケースが少なくありません。下剤を投与して軟便または水様便となっているにもかかわらず症状が改善しない場合には,不規則な生活習慣を改めたり,運動を導入したりして,症状の改善に努める必要があります。

 

直腸性便秘

表5は80歳代男性で,「力んでも力んでも,便が出ない」と大変悩んで来院しました。

表580歳代男性(直腸性便秘)の食事日誌

80歳代男性(直腸性便秘)の食事日誌

 

食事日誌をみると下剤を常用しており,浣腸を使用しても排便困難と残便感があり,苦労している様子がうかがえます。食物繊維摂取量は15~20 gで決して少なくありませんが,便の性状は軟便または水様便で,便性からみた下剤の量はむしろ過量と判断できます。症状は典型的な直腸性便秘ですが,便が残って残便感となっているのか,下剤が効きすぎて残便感が出てしまっているのか判断しかねます。

そこで毎日の浣腸を,2日に1回にするように提案しました。当初は便を出さない日を不安に感じるようでしたが,浣腸の間隔を空けたことによって,まとまった排便がみられるようになると不安も解消し,排便に対する執着も解消しました。

 

おわりに

便秘を訴える患者に,まず下剤を試すことはまったく問題ありません。ただし,症状の改善がなかなか得られないときは,食生活と下剤についてより詳細な評価を行う必要性が生じます。

褥瘡ケアやストーマ外来を通じ,WOCナースは排便管理に接する機会が最も多い医療職と思われます。便秘に対する排便管理に精通すれば,多くの便失禁に対してもコントロール可能になります。便性を整えたうえで直腸の便を完全に排出できるように管理すれば,便失禁は予防できるからです。

生活全般を網羅した情報収集を行って,オーダーメイドの排便ケアを目指してください。

 

[関連記事]

 


[引用・参考文献]


[Profile]
神山剛一(かみやま ごういち)
さいたま新開橋クリニック ペルビックフロアセンター長
1992年 昭和大学医学部 卒業。同年 昭和大学医学部附属病院 外科学教室,1999年 イギリス セントマークス病院 留学,2005年 昭和大学医学部 消化器一般外科 講師,2009年 大腸肛門病センター 高野会 くるめ病院 排泄リハビリテーションセンター長,2012年 亀田総合病院 ウロギネコロジー 副センター長,2013年 亀田京クリニック 診療部 部長,2014年より現職。
便秘,下痢,便失禁といった排便障害のエキスパート。排便障害は病院に受診できない施設や在宅の現場でも多く存在し,当事者や家族だけでなく,介護者までも困らせている。そのような問題に対して排便障害の専門家として取り組むだけでなく,全国展開での啓発活動も行っている。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2015 医学出版
[出典]WOC Nursing2015年8月号

WOC Nursing2015年8月号

P.56~「便秘」

著作権について

この連載

  • おむつの処方箋 [02/15up]

    『WOC Nursing』2015年12月号<快適な排尿を取り戻す~おしっこのケア・最前線~>より抜粋。 おむつの処方箋について解説します。   Point おむつ使用における利点と問題点を知る 排... [ 記事を読む ]

  • 下痢|下痢の原因と治療法 [11/10up]

    『WOC Nursing』2015年8月号<排尿・排便障害のアセスメント>より抜粋。 下痢の原因と治療法について解説します。 Point 急性下痢症の原因はウイルスや細菌による感染性腸炎が多い 慢性下... [ 記事を読む ]

  • 便秘|便秘のタイプ別アプローチ [12/04up]

    『WOC Nursing』2015年8月号<排尿・排便障害のアセスメント>より抜粋。 便秘のタイプ別アプローチについて解説します。   Point 患者の便秘がどのタイプにあたるのかを分類できる 便...

  • 在宅における失禁管理とスキンケア [07/23up]

    『WOC Nursing』2014年10月号<在宅で考える、褥瘡治療の基本と実際>より抜粋。 在宅における失禁管理とスキンケアについて解説します。   Point 高齢者の皮膚特徴と,失禁を伴うことによ... [ 記事を読む ]

  • 高齢者排尿ケアにおける飲水指導の重要性 [07/03up]

    『WOC Nursing』2014年8月号<高齢者排尿障害のアセスメントと対処~適切な排尿ケアの普及・啓発のために>より抜粋。 高齢者排尿ケアにおける飲水指導の重要性について解説します。   Point ... [ 記事を読む ]

関連記事

いちおし記事

電池切れ|マンガ・ぴんとこなーす【226】

夜勤明けあるある!夜勤ハイがずっと続くと思いきや… [ 記事を読む ]

【イラストで解説!】消化器系の解剖生理

胆汁は胆嚢から放出されます。では、胆汁を作るのはどこでしょう? [ 記事を読む ]

看護師みんなのアンケート

TV番組、毎週どれだけ録画してる?

投票数:
1294
実施期間:
2019年05月31日 2019年06月21日

院内のジンクス教えて!

投票数:
1130
実施期間:
2019年06月04日 2019年06月25日

4番目に大切な人は?

投票数:
1102
実施期間:
2019年06月07日 2019年06月28日

「採血が難しい血管」選手権!

投票数:
1031
実施期間:
2019年06月11日 2019年07月02日

勤務先にめずらしい福利厚生、ある?

投票数:
928
実施期間:
2019年06月14日 2019年07月05日

エンゼルケアどこまでやっている?

投票数:
3031
実施期間:
2019年06月18日 2019年07月09日
もっと見る

今日の看護クイズ 挑戦者3223

過敏性腸症候群のRome Ⅲ診察基準では、「半年以上前から腹痛や腹部不快感を繰り返し、特に最近3カ月は、月のうち3日以上ある」という症状のほか、3つの項目が当てはまることとされています。下記の選択肢のうち、その3つの項目に当てはまらないものはどれでしょうか?

  • 1.腹痛や腹部不快感は、排便すると軽くなる。
  • 2.症状とともに排便の回数が増えたり減ったりする。
  • 3.症状とともに便の形状が以前と変わった(柔らかくなったり硬くなったりする)。
  • 4.症状とともに発熱のような随伴症状、もしくは血便が見られる。
今日のクイズに挑戦!