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2015年10月30日

せん妄に対するケア-看護師にできること

『循環器ナーシング』2015年8月号<循環器疾患を持つ高齢者のメンタルヘルスケア>より抜粋。
せん妄に対するケアについて解説します。

 

Point

  • せん妄を起こしやすい高齢者だからこそ「予防」のケアを!
  • その人が持っているリスク因子を確かめて,促進因子を減らすケアに力を注ごう!
  • 高齢者本人の体験にケアの手がかりがある!本人のを丁寧に聴こう!

中筋美子
(兵庫県立大学 看護学部 生涯広域健康看護講座I 老人看護学 助教,老人看護専門看護師)

 

〈目次〉

はじめに

循環器看護の臨床現場では,せん妄を発症する高齢者が少なくありません。これは,加齢に伴い脳機能の予備力が低下することによって,せん妄を発症しやすくなることが一因として挙げられます。

そのため,高齢者に対してはせん妄予防の視点を持ってケアを実施することが求められます。また,せん妄の体験は本人固有の,主観的なものです。

本コラムでは,せん妄を起こしやすい高齢者に必要な,本人の体験に焦点を当てるケアについて考えていきます。

 

せん妄を起こしやすい高齢者に必要なケア

高齢者に対するせん妄ケアは予防から

循環器看護の臨床現場では,手術を受けた高齢者や,慢性心不全増悪によって緊急入院した高齢者が,せん妄を発症する場面をしばしば経験します。

循環器疾患を抱える高齢者は,高齢であること自体がせん妄のリスク因子であることに加えて,せん妄発症の原因となりうる代謝障害や循環障害,呼吸障害を抱えており,また治療に用いる薬剤の影響を受けやすいなど,せん妄を発症する状態に陥りやすいといえます。

そのため,せん妄を発症しないようあらかじめ備えるという「予防」の考え方が必要になるのです。

では,予防のケアは,どのような状態の人へ提供すればよいのでしょうか? 表1に示したせん妄のリスク因子をみてください。

表1せん妄の主なリスク因子

せん妄の主なリスク因子

 

このような因子を持つ人は,せん妄を発症する可能性が高く,因子を多く持つ人ほどせん妄を発症しやすいと考えられています。

皆さんが勤めている施設の患者と照らし合わせてみてください。どのリスク因子を持つ方が多いでしょうか? 「点滴ルートを触る人,点滴に不快感を訴える人がよくいる」など,とくに多い因子があれば,そこへ対応したケアから取り組んでいくのもよいかもしれません。

 

高齢者に対するせん妄の予防ケアとせん妄発症時のケア

はじめに,せん妄の予防ケアについて考えてみたいと思います。

予防ケアの有用性についてInouyeらが報告した『A multicomponent intervention to prevent delirium in hospitalized older patients(高齢入院患者のせん妄予防に対する複合的介入)』を紹介します(1)

この論文では,一般内科病棟に入院した高齢者に対してせん妄予防を目的とした複合的介入を行った結果,複合的介入を受けた患者のほうがせん妄発症率は低く,発症した場合でもせん妄が続く日数が短かったことが示されています。この複合的介入というのは,せん妄のリスク因子である,認知機能低下,睡眠障害,不動,視覚障害,聴覚障害,脱水に対してケアを実施するものです。

循環器疾患を抱える高齢者のなかには重篤な状態にある方や生体への侵襲が大きい治療を受けた方がおり,発症を完全に防ぐことは難しい場合もあります。このような高齢者が多い部署の場合は,完全に発症を防ぐことを目標にするのではなく,まずは「発症しても持続日数が短い」「症状が軽い」ことを目指して,予防ケアに取り組まれるほうがよいと思います。

 

予防ケア:基本的ニーズの充足と環境調整

予防ケアには,「基本的ニーズの充足」と「環境調整」の2つの重要な柱があります(表2)。

表2せん妄の予防ケア

せん妄の予防ケア

 

基本的ニーズの充足には,水・電解質・ビタミン・栄養のバランスを整えること,睡眠(休息)・活動のバランスを整えること,排泄を維持すること,安楽を保つことが含まれます。環境調整とは,基本的ニーズの充足ともつながりますが,高齢者が安全かつ落ち着いて過ごせるように環境を整えていくことを指します。

たとえば,体調が変化したときや術後には,水・電解質のバランスが崩れやすくなります。そのような場合,経口摂取が可能であれば,食べやすい姿勢・体位を整えて,食欲が保たれるような工夫(嗜好品,食習慣,雰囲気づくりなど)を取り入れ,食べられるように援助します。

睡眠(休息)・活動のバランスを整え,安楽を保つかかわりも重要です。

自宅であれば聞こえない音,見ることがない白衣姿の人であふれた病院の環境では休まらないとおっしゃる方は少なくありません。物音や人の声に留意するのはいうまでもないことですが,どうしても消すことができない機器類の音やアラーム音についてわかりやすく説明し,了承を得るよう努めます。

また,高齢者には白内障を持つ方が多く,太陽光や照明の灯りがまぶしく不快に感じられ,気持ちが休まらないとおっしゃる方もいます。「まぶしくありませんか?」などと本人に尋ねたり,表情や仕草の変化を確かめたりしながら,カーテンや照明を調整して不快でない明るさに整えていきます。とくに,夜は突然灯りをつけたり,直接顔に当てたりして驚かせないように留意しましょう。

さらに,落ち着いて過ごせる環境づくりにおいては,一緒にいて安らげる家族などと過ごす時間は欠かせず,十分に確保したいものです。検査や処置,リハビリなどが続き,落ち着いて家族と過ごせないような状況を避けるため,処置などの時間調整を行います。場合によっては,家族へ面会を依頼する必要があるかもしれません。

感覚遮断を減らし,現実を認識する力を高めるような援助も重要です。高齢者には視聴覚障害や認知機能障害を抱える方が少なくありません。眼鏡や補聴器は適切に使用してもらう,コミュニケーション方法を工夫する,時間・場所・状況についての情報を提供するといった援助を行い,その人が持つ現実を認識する力が発揮されるように働きかけていきます。

そのうえで,今後起こりうる出来事や体験について,その人に合った方法で伝え,気持ちの準備ができるように援助していきます。

高齢者の場合は,促進因子だけでもせん妄を発症することがあります。新たな直接因子と促進因子が生じないように,それらの影響が増大しないことを目指して,先に述べてきたようなケアを丁寧に行うことが,せん妄予防に向けて働きかけることになります。

 

せん妄発症時の安心・安全を保つケア

先にも述べたように,予防のケアを実施してもせん妄を発症することがあります。せん妄を発症したときは,対症的薬物療法と並行して,予防として行ってきたケアに「安心・安全を保つケア」を追加します。このとき,興奮や幻覚・錯覚,妄想などせん妄によって生じた症状に合わせてケアを選択します。

まずは,症状を引き起こし促進している要因を排除・緩和するために,高齢者の言動をよく観察して要因を探していきます。

どこかをじっと繰り返し見て,険しい表情をしている方に出会ったことはありませんか? たとえば,「点滴台のほうを見て幻覚や錯覚を訴えている」「壁にかけた絵の周りに幻覚を見ている」ということがわかれば,幻覚や錯覚につながる点滴台の置き場所を変えたり,絵を外したりするなど可能な範囲でそれらの対象物を取り除くようにします。

また,恐怖や不安をあおらないようなコミュニケーションの工夫は欠かせません(図1メモ1)。興奮し,幻覚や妄想を訴える方とかかわる場面では,ついこちらも興奮気味に早口になってしまったり,表情が硬くなってしまったりすることはないでしょうか?

図1せん妄を発症した患者とのコミュニケーションの工夫

せん妄を発症した患者とのコミュニケーションの工夫

 

せん妄を生じているときは,意識障害や注意障害,精神症状のために,外界からの刺激を適切に受け取ることが困難な状態にあります。平常時よりもわかりやすく,不安や誤解を生まない表情・言葉を選び,接するように心がけましょう。

 

メモ1肩の力を抜きましょう

せん妄患者とかかわる前に,数秒立ち止まってみるのもよいでしょう。肩の力を抜けるような工夫を持っていると,落ち着いて接することができるのではないでしょうか。

 

対症的薬物療法を行う際のポイント

最後に,対症的薬物療法を行う場合の観察についても述べたいと思います。

循環器疾患を抱える高齢者がせん妄を起こした場合には,安静を要する状態であったり,せん妄症状が重症であったりするために対症的薬物療法を行うこともあります。対症的薬物療法を行う場合は,薬物動態を踏まえて薬効と副作用を観察しなければなりません。

高齢者は,代謝・排泄の遅延によって薬剤の作用が遷延しやすく,その弊害も大きくなります。鎮静作用を持つ薬剤を例に挙げると,副作用により傾眠傾向となって活動量が低下すると,高齢者の筋力は容易に低下してしまいます。高齢者は回復力が低下しているため,筋力を取り戻すには若年者よりも多く時間を要することが少なくありません。

そのため高齢者の場合は,対症的薬物療法で標的とする症状や治療目標について慎重な検討が求められ,先に述べたような薬物を用いないケアが非常に重要となるのです。


***


ここまで,せん妄の予防ケア,発症時のケアについて述べてきました。これらのケアに共通する重要な考え方は,「本人の体験に焦点を当てる」ことです。

次項からは,この「本人の体験」について考えていきましょう。

 

せん妄を発症した高齢者本人の体験

高齢者本人が体験していること

「せん妄は意識障害を伴う状態だから,本人は覚えておらず,何も感じていないのでは?」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。しかし,実践場面を振り返ってみたとき,必ずしもそうではないと思う体験をしている方も多いのではないでしょうか。

ここで,せん妄を発症した高齢者が体験していることについて考えてみます。

まず,せん妄を発症した患者本人の体験について考える手がかりとなる報告を1つ紹介します。

藤崎は,冠動脈バイパス術や弁置換術などの心臓外科手術を受け,ICU在室中にせん妄やせん妄の前駆症状を生じた患者にインタビューを行い,その体験世界について報告しています(2)

幻覚や妄想を体験している患者は,周囲の人がとらえる事実とは異なる解釈で現実をとらえているのですが,具体的な記憶としてその内容は思い出せなくても,抱いている強い恐怖心や焦燥感は長く続いていることが示されました。このことは,臨床場面でしばしば経験します。

総室でせん妄を発症したある方は,「あんな恥ずかしい姿を見せてしまって。どんな顔をしていいかわからない」と言って,前日までは開けていたベッド間を仕切るカーテンを翌日からはぴったりと閉めてしまい,薄暗いなかで過ごすようになってしまいました。

他にも,幻覚や妄想を体験している最中に「あの人たち,私のことをどうにかしようと思って企んでるみたい」と声をひそめ,おびえた表情で語る方や,日中に話を聞いてみると「よく覚えていないんだけど怖くって」と語る方もいらっしゃいます。

次に,高齢者の特徴という側面から,患者本人の体験について考えてみます。

本人の体験に関連するものとして,加齢に伴う視聴覚機能の変化が挙げられます。

加齢に伴い,視力の低下や明暗順応の低下が生じ,白内障・緑内障を持つ方も増えてきます。感音性難聴を抱える方も増え,若い頃は不快に感じなかった大きさの音であっても,補充現象によってとても大きく聞こえるようになることがあります。「話し声がにつく」「耳障り」などとおっしゃる方がいますが,高齢者より年下の看護師には違和感を感じない音であっても,高齢者本人は不快に感じていることがあります。

このような方は,眼鏡や補聴器など補助具を適切に使う,わかりやすい方法で伝えてもらうなど視聴覚の変化を適切に補う必要があります。そうでないと,外界から適切に刺激を受け取ることができず,現実の解釈が事実と異なってしまう場合があります。

また,認知機能障害を抱える高齢者が体験していることも,周囲の人にとっての事実とは異なる場合があります。ここへせん妄による意識の混濁や変容が加わると,正しく現実を解釈することがさらに難しくなってしまうのです。

あなたが勤める施設で過ごしている高齢者は,見聞きするもの,周囲にあるものをどのようにとらえ,何を感じておられるでしょう? 一度,高齢者本人の目から,その人の体験を想像し,考えてみませんか?

 

患者の体験に配慮したかかわりを

せん妄患者とかかわるとき,話がかみあわない,つじつまが合わない,といったことに困惑する人も少なくないのではないでしょうか。他の患者への影響を危惧してさらに焦り,「静かにしてほしい」との気持ちが募り,つい表情は硬く,声は大きく,語気もやや荒くなってしまうことがあるかもしれません。

そのような局面を打開してくれるのが,本人の体験に焦点を当てるという考え方です。

せん妄患者が体験している世界は,外にいる者が客観的に知ることができない,その人固有の主観的なものです。

だからこそ,その人の言葉,仕草,振る舞いからいかなる体験内容なのか,どのような感情を持っているのかを想像し,そこにあるつらさや苦しみへ援助の焦点を当てることが求められます。そうでないと,看護援助の内容が本人の体験世界と食い違い,さらにつらさを増すことにもなりかねないからです。

 

高齢者本人の体験に焦点を当てたせん妄ケア

ここで,心筋梗塞で入院した高齢者がせん妄を生じた事例を通して,本人の体験に焦点を当てたせん妄ケアについて考えてみましょう(メモ2)。

事例80歳代前半の女性,Aさん

80歳代前半の女性Aさんは,高血圧症,糖尿病脳梗塞の既往があり,外来に通院していました。ある日,自宅で胸痛を訴えるAさんを家族が発見し,救急要請しました。かかりつけの病院へ搬送されたAさんは,心筋梗塞との診断を受けて入院することになりました。

入院後,冠動脈インターベンションを受け,床上安静との医師の指示のもと,心電図モニター酸素カニューラ,末梢静脈点滴をつけ,ベッド上で過ごしていました。

夜勤帯に入ると,あちこちを見まわして視線が定まらず,寝返りや体動が多くなりました。Aさんの様子が気になった看護師は,頻繁に様子を見に行っていました。その後も興奮はおさまらず「家に帰る!」と大声を出して立ち上がろうとしたり,心電図モニターの電極やカニューラ,点滴ルートを外したりするようになりました。

 

Aさんが持つせん妄のリスク因子

上述のAさんの状態はせん妄を発症していると考えられます。

Aさんが持つせん妄のリスク因子を考えてみると,準備因子として高齢であること,脳梗塞・糖尿病の既往があることが挙げられます。さらに,心筋梗塞を発症し侵襲的な治療を受けた直後であること,緊急入院であること,モニター類を複数装着し不快感を感じていることなど多くの直接因子および促進因子を持つことから,発症のハイリスク状態にあったことがわかります。

このAさんのようにせん妄発症のリスクが高い方を入院の段階で同定し,病棟看護師全員で予防のケアを漏れなく提供する仕組みを作ることにより,せん妄の発症を防ぐことができます。仕組みの一例を図2に示します(メモ3)。

図2せん妄の治療とケアの流れの例

せん妄の治療とケアの流れの例

 

Aさんに必要な予防ケアと発症時のケア

せん妄発症のリスクが高いAさんに必要な予防ケアと発症時のケアを,基本的ニーズの充足と環境調整,安全・安心を保つという視点で考えてみましょう。

 

眠りやすい環境を整える

モニター音や機械音をすべてなくすことはできませんが,少しでも睡眠に適した環境を整えるために寝具の工夫はできるのではないでしょうか。環境が変われば眠りにくいのは高齢者に限ったことではありません。

愛用の枕があれば持参してもらったり,布団が顔に触れるところには使い慣れたタオルを当て,においや肌触りをなじみのあるものへ近づけたりするなど,心地よさをどれだけ増やせるかは看護師の発想力に委ねられているところがあります。

 

視聴覚機能の低下を補う

Aさんの視聴覚機能を入院後早いうちに確認し,必要な補助具は入院前と同様に使用できるように援助することも大切です。これは,本人に状況を説明して少しでも不明なことを減らし,不安を和らげたいと働きかけても,Aさんにとっては見えにくい,聞こえにくいものであっては,かえって本人を困惑させ,不可解なことを増やしてしまうことにつながりかねないからです。

 

点滴に伴うケアの工夫

次に,点滴に伴うケアの工夫を取りあげます。薬物療法や水・電解質のバランスを整えるために末梢静脈点滴が行われますが,手を動かす・寝返りなど動作への支障が生じたり,点滴に伴う拘束感を感じたり,視野に入った点滴ルートを邪魔に感じたりしないように,ルートの長さは適度に遊びを持たせ,点滴支柱台の置き場所・固定方法を工夫します。

乾燥しやすく傷つきやすい脆弱な皮膚を持つ高齢者の固定においては,とくに注意が必要です。固定方法によっては掻痒感や痛みといった不快感・苦痛を生み,せん妄を予防するために工夫したはずが,促進因子を増やすことにつながりかねません。固定の工夫の1つとして,本人が使い慣れている,好みの色・柄のタオルやハンカチを使って,刺入部を覆い隠すのもよいでしょう。

 

快刺激を増やす

促進因子を減らすだけでなく,心地よい快刺激を増やす援助を提供し,安心を増やすことも効果的です。

全身清拭だけでなく,顔や頸部,手足などの部分清拭や口腔ケアによって,こまめに心地よさを提供することもできます。一回あたりに費やす時間は短くても,こまめにかかわることは,高齢者本人が体験していること,とくに何を心地よく感じ,不快に感じるのかを知る機会が増える,ととらえることもできます。

メモ2家族のケア

せん妄を発症した患者の家族は,せん妄により“人が変わってしまった”ような姿に困惑や悲しみといった苦しみを抱えやすく,家族もケアを必要としています。せん妄の回復の見通しや患者とのかかわり方を伝え,心情にも配慮して接するようにしましょう。

メモ3せん妄の測定ツール

せん妄が疑われるときの判定やせん妄の重症度把握には,測定ツール(せん妄スクリーニングツール,日本語版ニーチャム混乱・錯乱スケール,CAM-ICUなど)が有用です。せん妄を発症した患者の情報を多職種で共有するときにも役立ちます。

***

このようにとらえてかかわってみると,安心して過ごせる環境づくりや,身体的苦痛・心理的ストレスを和らげるケアの手がかりが見つかることが少なくありません。さらにいうと,せん妄は一日のうちでもその症状が変動することが特徴の1つでもあります。

Aさんにも,上述のようなケアを実施しながら,興奮していないときには今の状況を簡潔に伝えていったところ,安静度が拡大するにつれて,興奮したり,つじつまの合わない言動をとったりする場面はなくなっていきました。

発症のリスクが高く,直接因子の影響を強く受けてせん妄を発症している高齢者では,せん妄が短期間で消退することを期待しにくい場合も少なくありません。

まずはせん妄が今以上に悪化しないこと,少しでも症状が軽くなることを目標に,せん妄の原因となっている疾患や身体状態の回復を支援しながら,1つでも多くの促進因子を見つけ出し,それを取り除くための援助を継続的に提供していくことが重要となります。そして,この一連のプロセスにおいては,本人の体験に焦点を当てて,その方に合ったケアとなっているか? を常に問いながらかかわることが欠かせません。

 

おわりに

せん妄の体験がその人固有の,主観的なものである以上,せん妄のケアはハウツー本のように手順だけで示せるものではありません。加えてせん妄の体験は,その人にとって愉快な,心地よいものではなく,苦しみを抱えておられる方がほとんどです。

そのような体験をしている高齢者へかかわる看護師には,患者に温かい関心を寄せて,その人の体験や人となりをとらえ,そこからケアの手がかりを見つけ出し,丁寧に実践するプロセスを歩める力が求められているのではないでしょうか。

 

 


[引用・参考文献]

  • (1)Inouye SK et al.: A multicomponent intervention to prevent delirium in hospitalized older patients. N Engl J Med, 340: 669-676, 1999.
  • (2)藤崎 郁:“不穏”状態の患者の看護 不穏患者の体験世界と介入の方向性.看護研究,44(11):39-45,1998.

[Profile]
中筋美子(なかすじ よしこ)
兵庫県立大学 看護学部 生涯広域健康看護講座Ⅰ老人看護学 助教,老人看護専門看護師
兵庫県立大学看護学研究科博士前期課程修了後,一般財団法人住友病院での勤務を経て,2014年より現職。2011年 老人看護専門看護師認定取得。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2015 医学出版
[出典]循環器ナーシング2015年8月号

循環器ナーシング2015年8月号

P.37~「必ず取り入れたいせん妄に対するケア-看護師にできること-」

著作権について

この連載

  • せん妄を有する心不全患者へのケア [12/22up]

    『循環器ナーシング』2015年10月号<心不全を徹底理解!応用編>より抜粋。 せん妄を有する心不全患者へのケアについて解説します。   Point せん妄は,身体疾患や薬剤を原因とする器質性の意識障害で... [ 記事を読む ]

  • 認知症患者の退院後の生活指導をどうする? [12/15up]

    『循環器ナーシング』2015年7月号<他疾患を持つ患者さんの看護ケア-糖尿病・認知症・CKD・がん>より抜粋。 認知症および認知症患者の退院後の生活指導について解説します。   Point 認知症を正し... [ 記事を読む ]

  • せん妄に対するケア-看護師にできること [10/30up]

    『循環器ナーシング』2015年8月号<循環器疾患を持つ高齢者のメンタルヘルスケア>より抜粋。 せん妄に対するケアについて解説します。   Point せん妄を起こしやすい高齢者だからこそ「予防」のケアを...

  • 不眠の診断と基本的な対応 [10/23up]

    『循環器ナーシング』2015年8月号<循環器疾患を持つ高齢者のメンタルヘルスケア>より抜粋。 不眠の診断と基本的な対応について解説します。   Point 不眠の背景には精神・身体疾患が隠れていることが... [ 記事を読む ]

  • 認知症患者に対する環境調整-入院中・外来でできること [11/02up]

    『循環器ナーシング』2015年8月号<循環器疾患を持つ高齢者のメンタルヘルスケア>より抜粋。 認知症患者に対する環境調整について解説します。   Point 認知症の疾患別のかかわり方を知る! 認知... [ 記事を読む ]

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