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2015年12月27日

栄養管理の基本的な知識

『循環器ナーシング』2013年1月号<ナースの力を発揮しよう! 循環器疾患の栄養管理>より抜粋。
栄養管理の基本的な知識について解説します。

Point

  • 栄養管理は医師の包括的な指示のもと,各医療スタッフがその専門性を生かしチーム医療を行うことが必要不可欠。
  • 看護師による予後を見据えたモニタリングと,それに基づく情報提供,アセスメントは,栄養管理計画の実効性を高める。
  • 体重変化率,食事摂取量の低下のモニタリングは,看護師による栄養不良のリスク評価に不可欠。

府川則子
(東京都健康長寿医療センター 栄養科 科長)

〈目次〉

 

はじめに

循環器疾患の治療において,栄養管理は薬物療法とともに,その重要性が広く周知されています。 一方,生活様式の変化や不適切な食習慣による栄養のアンバランスは,全身の動脈硬化を招き,虚血性心疾患脳卒中の発症を増加させます。

日本における平成20年患者調査によりますと,循環器疾患関連の推計患者数は,高血圧脂質異常症脳梗塞心筋梗塞で6割を超えています(図1)。

図1平成20年患者調査:推計患者数

図1平成20年患者調査:推計患者数

 

また,入院患者のうち2割が脳血管疾患,心疾患,高血圧性疾患の循環器疾患を有しています(表1(1)

表1平成20年患者調査:病院の推計入院患者数

表1平成20年患者調査:病院の推計入院患者数

 

循環器疾患の患者の多くは,入院期間が長くなればなるほど,複数の合併症を発症する危険性が高くなることが知られています。

したがって看護師は,治療や二次予防において危険因子を厳密に管理し,治療が円滑に進むために,また,患者が早期に社会や家庭に復帰できるように,看護計画に栄養状態の維持・改善を組み込む必要があります。

そこで本コラムでは,栄養管理の基本について,さらに疾患別の具体的なポイントについて解説します。

 

栄養アセスメントにおける看護師の役割

現在,栄養管理は,医師の包括的な指示のもと,各医療スタッフがその専門性を生かして,チームによる管理を行うことが不可欠な時代となりました。

そこで,ベッドサイドでケアを担う看護師としては,まず,入院前・入院直後からの患者の病状や経過,日常の患者との会話などから,栄養改善を目標に,さまざまな指標を用いて栄養スクリーニングを行う必要があります。

そのうえで,医師,管理栄養士,薬剤師,言語聴覚士などの医療スタッフと患者情報を共有し,個々の患者に即した栄養管理計画書をチームで作成することになります。

栄養管理計画書には,栄養補給に関する事項,その他栄養管理上の課題に関する事項,栄養状態の評価間隔などを記載することが一般的です(図2)。

図2栄養管理計画書図2栄養管理計画書

 

当該患者について,栄養管理計画に基づいた栄養管理を行い,栄養状態を定期的に評価し,必要に応じて栄養管理計画を見直す必要があります(図3)。

図3栄養管理の進め方図3栄養管理の進め方

 

栄養サポートチームの活動

多くの施設で,各専門職で構成される栄養サポートチーム(nutrition support team;NST)が設置されています。

2010年には,栄養サポートチーム加算が新設され,栄養不良の状態にある患者に対し,原疾患の治癒促進および感染症などの合併症予防などを目的として,栄養管理に関する専門的知識を有した医師,看護師,薬剤師,管理栄養士など多職種からなる栄養サポートチーム活動が評価され,診療報酬上の算定が可能となりました(図4)。

図4栄養サポートチーム組織図例図4栄養サポートチーム組織図例

 

しかし,栄養管理は,すべての栄養不良の状態にある患者のみならず,栄養管理をしなければ栄養不良の状態になることが予想される患者に対しても行う必要があります。

したがって多くの対象患者が存在し,NSTだけでこれらの患者の栄養管理を行うことは,ほとんどの医療施設で難しいと考えます。そこで,質の高い栄養管理を行うために,NSTと各病棟の医師,看護師が連携し,役割分担を上手に行うことが重要となります(MEMO1)。

MEMO1看護師の役割

ベッドサイドケアを担う看護師は,病状の経過や,日常の患者との会話などから,患者に即した実行可能な栄養計画の作成をリードすべき役割を担います。

 

以下に,その基本となる栄養アセスメントの知識を述べます。

 

栄養アセスメントの流れ

一般的に行われている栄養アセスメントの流れ(2)は,下記のとおりです。

  • 第一段階:主観的包括的栄養評価(subjective global assessment;SGA)により栄養スクリーニングを行います。
  • 第二段階:第一段階で抽出した栄養不良リスク患者について,客観的データ栄養評価(objective data assessment;ODA)と診察によって,疾患と病状に即した治療状況の把握と栄養状態の評価を行います。

 

栄養スクリーニング

2006年に栄養管理実施加算が診療報酬として新設され,栄養スクリーニングが全国的に行われるようになり,簡単な問診と診察によって主観的に栄養状態を評価するSGAが多く用いられるようになりました。
SGAでは,まず,問診・病歴として表2に示すような項目を評価します。

表2SGAで使用する項目(文献1より引用)表2SGAで使用する項目(文献1より引用)

 

これらは問診や体重測定をはじめとする簡単な身体計測によって得られるものです(MEMO2)。

MEMO2年齢,性別,身長,体重からわかること

(1)標準体重,BMI,肥満度,%体重変化
(2)エネルギー必要量
(3)蛋白質必要量

 

以下に,SGAで用いられる指標について解説します。

 

体重変化率

体重変化率は,栄養障害の有無の評価によく用いられます。意図的でない体重減少が最近6ヵ月以内で10%以上あれば,有意の体重減少と診断します。また,1週間で1~2%の減少があれば,積極的な栄養療法の適応となります(2)

体重変化率を評価するためには定期的な体重測定が不可欠です。体重減少は栄養不良を示す重要な指標です。 減少が始まった時期,体重減少の程度,さらに体重減少の原因を確認することが重要です。

また,急激な体重の増加は心疾患,腎疾患に伴う浮腫による場合が多く,判定は慎重に行う必要があります。表3に一般的な判定基準を示します。

表3体重変化率による栄養状態の評価(有意の体重変化と判定されるもの)(文献1より引用)

表3体重変化率による栄養状態の評価(有意の体重変化と判定されるもの)(文献1より引用)

 

寝たきりの場合の予測式は表4です。
体重変化率以外の身体指標には,BMI(body mass index),%IBW(%理想体重)があります。

表4寝たきり患者の体重予測法:Grantの式(文献1より引用)

表4寝たきり患者の体重予測法:Grantの式(文献1より引用)

 

看護のポイント
  • 身長・体重は,とくに客観的評価項目として重要!
  • 寝たきりの患者には測定自体が行われない場合や測定不可能の場合があります!
  • 寝たきりの患者ほど栄養状態が不良な場合が多いので,スケールベッドの活用や推定値算出(表4)など,あらゆる方法で体重測定を確実に行いましょう!

 

食事摂取状況の変化

食事摂取量の減少などの変化についての観察は,必要栄養量の充足率の把握と栄養管理計画書の作成において必要な情報源であることはいうまでもありません。とくに,食事摂取量の減少は,必要栄養量の充足率を低下させ,栄養不良のリスク要因となります。

 

摂食量が低下した状態が長期間続いている場合

入院前(問題が発生する前)の食事量と現在の食事量の比較確認は,非常に重要となります。場合によっては,本人のみならず,食事を準備する家族や介護者からの情報も必要です。さらに,食事を生活の一部ととらえ,広範囲で考えていく必要があります。

摂食量が50%以下に低下した状態が1週間以上続いている場合,必要栄養量の充足率が低くなり,栄養不良のリスクが高いと考えられます。食事摂取量の減少を見逃さないよう,丁寧に聞き取りや観察をしてみてください。

また,入院前から入院後までほとんど経口摂取しておらず,末梢静脈栄養法のみの期間と合わせて1週間以上となっている場合も,必要栄養量の充足率が低くなり,栄養不良のリスクが高いと考えられます。いずれにしても,必要栄養量の充足率が低い期間が,長期間にならないように,他の栄養投与ルートの検討も必要です。

看護のポイント

〜食事摂取量低下の変化を見逃さないポイント〜

  • 食事時間が30分以上かかっているか。
  • 食事は1人で食べられているか,介助が必要になったか。
  • 食事をするときの姿勢は保持できているか。
  • はあるか,または義歯が合っていないなど口腔内のトラブルがないか。
  • 発熱や疼痛など,入院の原因となった疾患の影響はないか。
  • 便秘や下痢をしていないか。
  • ムセや咳き込みが多くないか。
  • 食事の準備に問題が生じるような独居などの環境であるか。
  • 歩行障害や視力障害などで運動制限や行動制限はないか。
 
食事摂取量が減少した原因の究明

食事摂取量が減少してきた原因を究明し,今後の栄養管理に役立てる必要があります。以下に,食事中における患者観察の留意点を示します。

  • 意識レベル
    日本で用いられている意識障害の評価基準であるJCS(Japan Coma Scale:3-3-9度方式)のI-1「刺激しなくても覚醒している状態で大体意識清明」以外は,食事摂取ができる状況にないことはいうまでもありません。
  • 食欲不振
    体重減少の大きな要因となり,栄養不良のリスクとなりかねません。コミュニケーションが十分にとれない患者については,「患者自身がすすんで食べる」「促すことにより食べる」「自ら食べようとしない」など患者の食行動について観察し,評価します。
  • 摂食嚥下問題
    摂食・嚥下各期の観察が必要となります(表5)。併せて,簡単にベッドサイドで行う嚥下評価として,反復唾液嚥下テストや改訂水飲みテストを行うことが望ましいと考えます。方法については正書を参考にしてください。

表5摂食・嚥下各期の観察ポイント(文献2より引用)表5摂食・嚥下各期の観察ポイント(文献2より引用)

 

  • 薬による影響
    向精神薬や入眠導入薬,睡眠薬の過度な使用は食欲の低下や意識障害を招くこともあります。また,ステロイド剤による代謝亢進など,薬物による栄養不良への影響も勘案する必要があります(MEMO3)。薬の種類,投与量などにも注意を払いましょう。
MEMO3摂取量の低下をきたす薬剤(3)
  • 食欲低下をきたす薬剤
    クロミプラミン塩酸,ユビデカレノン,プロピオン酸ジョサマイシン,マジンドールなど。
  • 味覚変化を起こす薬剤
    D-ペニシラミン,降圧薬(ACE阻害薬,カルシウム拮抗薬,β遮断薬),抗生剤製剤,利尿薬,抗腫瘍剤,塩酸ドキソルビシン,パーキンソン病治療薬,アスピリン
  • 悪心をきたす薬剤
  • 口内炎を生じる薬剤

 

看護のポイント
  • 食欲不振が原疾患に対する治療によって生じる場合は,原疾患の治療で改善する場合も少なくありません!(表6
  • 病院での治療食は,患者にとって,日常の食事より「塩分が少ない」「おいしくない」「硬い」「やわらかい」「冷たい」「食事時間が異なる」など。これらが原因で,治療食を食べない患者もいます!
  • ベッドサイドでの看護師による摂食量の確認や聞き取りなどの情報収集は,管理栄養士にとって非常に貴重な情報です。摂食量の正しい評価(エネルギー量や蛋白質量の充足の有無,不足の場合どの程度不足しているか)は,必要量の充足率の評価に不可欠です!
  • 入院中は,持込食などに注意を払うことも必要です!
  • 患者のベッドサイドに最も近い看護師の観察が,この後の栄養管理計画の実効性に大きく影響するといっても過言ではありません!

 

表6食欲不振の原因となる病態(文献4より引用)表6食欲不振の原因となる病態(文献4より引用)

 

消化器症状

2週間以上消化器症状が継続する患者は,栄養不良の可能性があります。とくに持続的な嘔吐や下痢に悪心が伴う場合には栄養不良の危険性が高くなります。嘔吐内容,便性状はもとより,水分量,食事摂取量・内容,服薬中の薬物などを経時的に観察して確認します。

さまざまな原因で便通速度が変化し,水分吸収が不安定になると下痢や便秘が起こるといわれています。 通常の食事では,ウイルスや細菌などによる感染性でないかぎり,直接下痢になることは少ないでしょう。

浸透圧の高い経腸栄養剤を投与したときに,下痢に傾くことがあります。また,なんらかの消化・吸収障害が存在し,吸収できない物質が摂取されると,腸管内の浸透圧を高め,体液が腸管内に移行し,下痢を起こします。

化学療法中の患者では,免疫力の低下による下痢以外にも,腸内細菌叢の変化によるものも考えられますので,観察が必要です。

嘔吐は,十二指腸潰瘍や幽門狭窄などの消化器疾患や脳出血などによるもの,心理的要因や,薬物などで起こるものなどさまざまです。

看護のポイント

下痢,嘔吐で食欲不振や悪心が持続すると,食事量が低下し,脱水電解質異常,栄養不良を引き起すことも! 注意深くケアする必要があります!

 

日常生活の活動状態

エネルギー必要量と蛋白質必要量は,日常生活における活動量を反映します。そのため,活動内容と時間について,十分に聞き取り確認します。 疾患があると体力が低下し,運動する意欲が低下します。また疲れやすくもなるので,毎日の身体活動についても質問や観察をします。

 

栄養アセスメントについて(1)

SGAにより栄養スクリーニングを行い,ODAによって身体計測,血液生化学検査など各種検査データを収集し,栄養不良を細部にわたって確認するという形式が一般的です。 得られたデータから栄養状態を総合的に判定し,患者に適した栄養管理計画を立て,その計画に基づいて実際に栄養療法を実施します。

 

ODAにおける評価指標の考え方

SGAが主観的に栄養評価を行う方法であるのに対して,臨床検査値などの客観的なデータに基づいての評価を客観的栄養評価(objective data assessment;ODA)といいます。 何が不足しているのか,どのような栄養不良か,より深く判定することが可能となります。評価項目としては,身体計測,血液・尿検査,免疫能検査などが挙げられます。これらのうちの血液・尿検査について解説します。

 

血液・尿検査

栄養アセスメントに有用とされる指標を表7に挙げます。

表7栄養アセスメントの指標(尿・血液生化学検査関連)(文献1より引用改変)

表7栄養アセスメントの指標(尿・血液生化学検査関連)(文献1より引用改変)

 

血清アルブミンは,死亡率や合併症に関連する信頼できる指標ではありますが,必ずしもその値が栄養状態を反映していないこともあるため,栄養評価に用いる際には注意が必要といわれています。

血清アルブミン値は,栄養状態以外にもさまざまな要素の影響を受けます。副腎皮質ステロイド,肝機能障害,心機能障害,吸収障害などで低下するといわれています。 また侵襲下でも,血清アルブミン値は低下します。 これはサイトカインを中心とする急性期の炎症性メディエーター合成が増加し,アルブミンなどの合成が低下することと,侵襲に伴いアルブミンの血管外への移動が起こるためといわれています。

栄養管理計画作成やモニタリングにおいては,肝機能検査(GOT,GPTなど)や糖代謝検査(血糖,HbA1cなど),腎機能検査(クレアチニンや尿素窒素など)のデータについて,栄養療法を行う際に適正な栄養が投与されているかの指標として留意する必要があります。

 

微量元素,ビタミン

長期間の栄養療法中,血清ナトリウム(Na),カリウム(K)値の低下,ビタミンや亜鉛(Zn)などの微量元素の欠乏をきたすことがあります。表8表9に微量元素やビタミンの欠乏症状などを示しますので,ケアの際の参考としてください。

表8微量元素の血清基準値と欠乏症状(文献5より引用)表8微量元素の血清基準値と欠乏症状(文献5より引用)

 

表9ビタミンの栄養状態の判定(文献5より引用)表9ビタミンの栄養状態の判定(文献5より引用)

 

栄養投与量の決定(1)

栄養投与量を決定する場合,まず総エネルギー量を算出してから,蛋白質,脂肪,炭水化物の投与量を決定します(図5)。その後,水分,電解質,ビタミン,微量元素の投与量を設定します。

図5栄養素投与量の決定(文献1より引用)

図5栄養素投与量の決定(文献1より引用)

 

エネルギー必要量の決定

エネルギー必要量の算定は,基礎エネルギー消費量にストレス係数と活動係数を乗じた推定式で求めます。

エネルギー必要量(kcal/日)=基礎エネルギー消費量×活動係数×ストレス係数

 

基礎エネルギー消費量の推定

基礎エネルギー消費量(BEE)は,現在,臨床的に最も普及しているHarris-Benedictの式から求めます。この推定値から実際の投与栄養量を決定します。

重症患者では,代謝が経時的に変化すると考えられますので,投与栄養量もその都度増減させます。そこで,リアルタイムにエネルギー消費量を把握することが大変重要になります。

また,過剰な栄養投与による合併症(高血糖,脂肪肝など)を予防するうえでも,正確な基礎エネルギー消費量の投与は非常に大切です。

間接熱量計による基礎エネルギー消費量の実測は,一般の医療機関などでルーチンに測定できるものではありません。 そこで,Harris-Benedictの式などの推定式を使用し算出することが一般的です。

標準体重あたり25~30kcalで計算する方法もあります。現状ではどの方法が最も正確であるかについては,一定の見解はありません。 どの方法で求めるにしても,その後の経過をきちんとモニタリングし,必要に応じて評価し,変更しながら管理していくことが大切です。

 

脂肪,蛋白質,糖質の投与量および必要水分量

基本的に,病態や喫食量を考慮したうえで投与量を検討します(MEMO4)。

脂肪

経口摂取の際には,特殊な病態でない場合には総エネルギー量の15~40%を脂肪で供給するという考え方が一般的といわれています。静脈栄養や経腸栄養については,推奨される脂肪量は1g/kg/日ですが,一定の基準はないとされています。

蛋白質

侵襲度に応じた蛋白質の必要量を算出します。そのうえで,非蛋白熱量/窒素(non-protein calorie/nitrogen;NPC/N)比を考慮して決定することになります。侵襲が加わらない状態では,NPC/N比は150~200になるように設定します。熱量とアミノ酸投与量の最適な比を意識することは重要です(図6)。

図6非蛋白熱量/窒素(NPC/N)比とは

図6非蛋白熱量/窒素(NPC/N)比とは

 

糖質

通常,非蛋白質エネルギーの60~70%を糖質で投与します。

水分

水分投与量の決定方法はさまざまですが,実際的には,①体重あたり30~35mL/日,②1mL×総エネルギー必要量などの計算式で求めます。いずれの方法でも,摂取量と排泄量をチェックしながら,脱水などに注意しましょう。

MEMO4計算例

男性,体重60kg,ストレスレベル1.0とすると,総エネルギー1800kcalの場合,蛋白質,脂肪,糖質の投与量は?

  1. 1)蛋白質投与量(表10
    1.0g/kg/日×60kg=60g/日の投与量
    これは60g×4(kcal/g)=240kcalとなります。
  2. 2)脂肪投与量
    1800kcal×20%=360kcal
    これは脂肪として360kcal÷9(kcal/g)=40gの投与量となります。
  3. 3)糖質投与量
    1800kcal-240kcal-360kcal=1200kcal
    これは糖質として1200kcal÷4(kcal/g)=300gの投与量となります。
    計算上は,蛋白質60g,脂肪40g,糖質300gの投与量を設定することとなります。

 

表10蛋白質投与量決定の目安(文献1より引用)

表10蛋白質投与量決定の目安(文献1より引用)

 

看護のポイント
  • 水分量は,対象者によって要求量が異なります。 必要量を十分に補給することが大切です。とくに下痢,発熱などの感染症がある場合,水分の喪失量が多いので脱水の予防を!
  • 高齢患者では,一般に脱水を探知する機能が低下するため口渇感を訴えなくなります。 排便・排尿に立つのがおっくう,介助を頼むのが面倒などの理由により水分の摂取を控えることが多いので,十分に水分の摂取を勧めることが必要です!

 

栄養補給法(1)

疾患(糖尿病,腎障害など),嚥下障害の有無,ADL,理解力などで決まってきます。また,摂食姿勢や食形態の工夫,食事前後の口腔ケアなども重要です。いずれにしても,必要エネルギー量,脂質,蛋白質,糖質,微量元素(MEMO5),ビタミン,食物繊維,そして水分などの栄養素(図7)について,合併疾患を考慮し,消化管を使用した栄養補給ルートで補給することを第一に考えます(図8)。

MEMO5微量元素

ミネラルのなかで,体内含量が体重1kgあたり1mgより少ない,または鉄より少ないものを「微量元素」といいます。微量元素の1日必要量は数μg~数mgで,必須のミネラルとして非常に重要です。鉄,亜鉛,銅,マンガン,セレン,クロム,モリブデン,ヨード,コバルトがあります。

 

図7栄養素の種類図7栄養素の種類

 

図8栄養療法のdecision tree(文献1より引用)図8栄養療法のdecision tree(文献1より引用)

 

経腸栄養法(1)

経腸栄養法の利点

腸管が使用できれば,消化管を使用する経口・経腸栄養法が第一選択です。その利点を表11に示します。

表11経腸栄養法の利点(文献5より引用)表11経腸栄養法の利点(文献5より引用)

 

投与法を規定する要素とその決定法

投与法を決定する患者の状態を表12に挙げます。

表12投与法を決定する患者の状態(文献1より引用)

表12投与法を決定する患者の状態(文献1より引用)

 

決定の順序は一律ではありませんが,まず投与部位と投与経路を決定し,それに合わせて経腸栄養剤を選択すると円滑に行えます。

 

経腸栄養剤の種類

個々の特徴を理解し,病態に即した栄養剤を選択しましょう(表13)。

表13経腸栄養剤の種類と特徴

表13経腸栄養剤の種類と特徴

 

おわりに

チーム医療が叫ばれるなか,医療スタッフはそれぞれの専門性を生かして,集学的治療とケアを行うことが必要不可欠です。そのなかで,患者にとって看護師は,最も近いところでケアしてくれる「頼りになる」存在であることはいうまでもありません。

患者に害が加わることを,患者の望むことだからとそのまま許すようなことがあってもよいのでしょうか。もちろん,どんなときでも患者・家族の意向,感情に配慮して対応することはいうまでもありません。

しかし,看護師としての役割を十分果たすためには,まずは,患者の状況を把握し,アセスメントを十分に,繰り返し行うことが必要です。

次に大切なことは,チームメンバーとの連携です。例えば,食事量の低下がみられたら,是非,管理栄養士にその情報を伝え,一緒に考えましょう。きっと力になってくれることでしょう。 しかし,丸投げはいけません。まず,栄養管理についての基本的な知識は整理しておく必要があります。そして当然,病状や心理状態の把握は怠らないようにしましょう。

看護師は,患者にもっとも近い存在として,患者がその人らしく過ごすために,QOLに配慮したサポートを行い続けることが大事であると考えます。

 

 


[文献]

  • (1)日本静脈経腸栄養学会(編):静脈経腸栄養ハンドブック.南江堂,p104/105/113/151/169/176/180/185,2011.
  • (2)藤島一郎:脳卒中の摂食・嚥下障害 第2版.医歯薬出版,p220,1998.
  • (3)谷口英喜:医師が伝える実践クリニカルニュートリション 全身状態からみる栄養管理.日本医療企画,p62,2011.
  • (4)佐々木雅也:消化・吸収にまつわる症状 食欲不振.看護技術,vol57 no6,p36,メヂカルフレンド社,2011.
  • (5)東口高志:重症患者と栄養管理Q&A 第3版.総合医学社,p19/63,2010.

[Profile]
府川則子(ふかわ のりこ)
東京都健康長寿医療センター 栄養科 科長
1980年 東京都衛生局入職,2008年より現職。糖尿病療養指導士,NST専門療法士。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2013 医学出版
[出典]循環器ナーシング 2013年1月号循環器ナーシング 2013年1月号

P.29~「栄養管理の基本的な知識」

著作権について

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  • 3.SpO2が正常であれば、体内の酸素量は十分であると判断できる。
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