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2015年10月02日

尿路感染症|脳神経外科疾患に随伴する全身感染症

脳神経外科看護の専門誌『BRAIN』2013年第2号<脳神経外科でよくみる感染症の予防と管理>より抜粋。
尿路感染症について解説します。

 

Point

  • 尿路感染の定義を知りましょう。
  • 排尿のしくみを知りましょう。
  • なぜ尿道留置カテーテルを使用するのか,理由を考えましょう。
  • 正しい挿入方法と適切な管理方法を知りましょう。
  • 尿道カテーテルを抜去する時期を見きわめましょう。

菅沢直美
(千葉県救急医療センター,集中ケア認定看護師)

〈目次〉

はじめに

尿路感染は最も一般的な医療関連感染であり,急性期病院で報告される感染の30%以上を占めます。ほぼすべての医療関連尿路感染は,尿路へのデバイス留置が原因といわれます。

では,なぜ中枢神経障害に随伴する尿路感染は起きるのでしょうか。

脳神経疾患の患者は急性期の治療において高浸透圧利尿剤の投与や時間尿量の測定,厳密な水分管理が要求されるために膀胱留置カテーテルを留置することが多く,カテーテルを留置することそのものが感染を起こす原因となっているのです。また,意識障害などによってみずから症状を訴えることができず,尿路感染の主要症状の発見が遅れる傾向にあるなど,患者自身の状況が発症の原因の1つとなるのです。

カテーテル関連尿路感染は,多くの場合カテーテルの抜去によって自然寛解します。しかし,脳神経外科疾患急性期などでは全身状態が不安定であるため,感染症が全身に波及し,敗血症など重篤な合併症に発展する場合が少なくありません。

私たちは,正しい知識と技術を身につけ,適切な看護介入を実践し,尿路感染症によって患者の回復を妨げることなく,1日でも早く健康が取り戻せるように関わる必要があるのです。

 

尿路感染とは

尿路感染の定義

尿路感染症とは,上部尿路(腎盂〈じんう〉および腎実質)または下部尿路(尿道,膀胱,尿管)の感染の総称です。

 

発生機序(1)

カテーテル関連尿路感染(catheter-associated urinary tract infection;CAUTI)の原因微生物の発生源は通常,(1)尿道,直腸や腟の保菌による「内因性」の場合と,(2)汚染された医療従事者の手指や医療器具を介した「外因性」の場合があります。病原微生物は,(1)カテーテルの外側で尿道周囲の粘液の鞘を経由する「管腔外経路(extraluminal route)」か,(2)汚染された採尿バッグやカテーテルと導尿チューブ間の連結部からカテーテル内腔へ移動する「管腔内経路(intraluminal route)」のいずれかを通じて尿路に侵入します。

カテーテル留置による細菌尿症のリスクは1日ごとに3~10%増加し,30日後には100%に近づきます。このことは,カテーテルの短期留置と長期留置とでは問題が大きく異なることを意味しています。

 

排尿障害

排尿障害には,(1)尿量の異常,(2)排尿回数の異常,(3)排尿状態の異常,(4)尿線の異常や放尿力減退などがあります。

 

排尿のしくみ(2)

尿は腎臓で生成され尿管を通って膀胱に流れ,膀胱で一定量貯められたのち,尿道を通って体外に排泄されます(図1)。

図1排尿のしくみ

排尿のしくみ

 

成人の場合,正常な膀胱では400~500mlの尿を貯留することができます。

膀胱と尿道は,尿をためる「蓄尿」と尿を排泄する「排尿」の2つの機能を持っています。この機能は脊髄から尿路までの「末梢神経」と,それをコントロールする「上位中枢神経」の支配を受けます。末梢神経は,「骨盤神経」「下腹神経」「陰部神経」の3種類に区別されます。

末梢神経の中枢は仙髄にあり,それぞれの感覚を伝える「求心路」と,動作を伝える「遠心路」の2通りに分かれます。上位中枢は大脳の前頭葉と脳幹部のにあり,尿意の感知と排尿のコントロールをつかさどっており,この他にも大脳基底核,視床下部,小脳などが排尿運動に関与しているといわれます。

 

排尿機能の障害

排尿に関わる神経の障害に基づく排尿機能障害を「神経因性膀胱」といい,(1)神経障害部位による分類と,蓄尿期・排尿期を分けて評価する(2)ICS(国際禁制学会)分類があります。

その他に器質的障害(前立腺疾患,子宮筋腫・骨盤内の術後),心理的問題(症状排泄への羞恥心・介助者への気兼ね・排泄体位の変化への戸惑いなど)があります。

 

排尿動作遂行の障害

身体機能の障害

運動麻痺や平衡感覚障害,長期安静臥床による筋力低下などは,寝返り,起き上がり,座位保持,起立,歩行,トイレへの移乗など,排尿に必要な動作を障害する原因となります。

 

意識障害・高次脳機能障害

意識障害が重度の場合,膀胱の伸展刺激が脊髄から橋へ達しても大脳での尿意の知覚は障害されます。また,高次脳機能障害では,尿意を感じても適切に伝達できない,排尿動作の方法がわからない,安全への配慮ができない,といった障害が生じます。全般的な精神活動の低下により,トイレへ行く意欲が低下している場合もあります。

 

膀胱留置カテーテル

なぜ膀胱留置カテーテルを留置するのか

膀胱留置カテーテルを留置する理由

高浸透圧利尿剤の投与や時間尿量の測定,厳密な水分管理が要求されるために,膀胱留置カテーテルを留置することが多いです。

 

正しいカテーテルの挿入方法を知る

カテーテルの挿入には清潔野の確保が重要です。ほぼすべての医療関連尿路感染は,尿路へのデバイス留置が原因といわれるため,正しい方法で清潔操作を行って挿入することが大切です。誤った方法や不潔な操作は,感染を引き起こす原因となります(図2)。

図2閉鎖式尿道留置カテーテルセットの使用方法

閉鎖式尿道留置カテーテルセットの使用方法

 

適切な管理方法を知る

採尿バッグの選択と位置の管理方法

尿流を確保するために,導尿チューブは確実に周囲に固定し,たわみ・よじれを最小限にする必要があります。

 

尿路カテーテル維持の適切な手技

  • 停滞のない尿流を維持する
  • 採尿バッグは膀胱より低い位置を必ず保持する
  • 採尿バッグは床に置いてはならない
  • 患者ごとに別々の清潔な採尿容器を使用し,定期的に採尿バッグを空にする。尿の飛散を防止し,未滅菌の集尿容器と尿排出口が接触しないようにする(図3

図3集尿方法の実際

集尿方法の実際

 

長期のカテーテル留置では,膀胱や尿道の感染ばかりではなく,腎盂腎炎や腎不全に発展することもあるため,管理には十分に注意します。

 

患者の特徴を捉える

意識障害などによってみずから症状を訴えることができない場合,尿路感染の主要症状の発見は遅れる傾向にあります。

患者の全身状態,意識レベル,治療に伴う安静制限の程度を把握し,入院前と比較して排尿パターンがどのように変更されたかをアセスメントする必要があるでしょう。

また,入院により生活環境が変化したことによる精神的変化や,排泄行動に対する思いなど,羞恥心やプライバシーの保護に関わる内容も情報収集し,アセスメントの材料にするとよいでしょう。

患者を全人的に捉えアセスメントし,現在の排泄状況を正しく把握することが大切です。

 

看護ケアの実際

事例

【患者】A氏男性

【入院経過】意識障害のため入院。自力での排尿が困難であるため,尿道留置カテーテルを挿入。7病日目より徐々に意識レベルが改善,GCS E4 V1 M5となった。9病日目,尿道留置カテーテルを抜去。4~5時間おきに排尿があるが,尿意を訴えることはできない。床上で他動運動によるリハビリテーションを実施している。入院前,ADLは自立していた。

 

具体的な看護介入

尿道留置カテーテルを適切に管理する

超急性期から急性期の間は,正確な水分出納の算出が必要であるため,尿道留置カテーテルによる時間尿量測定が行われます。したがって,カテーテルの正しい挿入方法に従ってカテーテルを留置し,適切に管理します。

そして,カテーテル挿入部位の清潔を保つために,陰部洗浄を行います。陰部洗浄時には尿道口からの分泌物の有無,出血の有無,潰瘍形成の有無など,陰部の状態を観察します。カテーテル留置に伴う陰部のトラブル(尿道口のびらんや潰瘍形成)は感染の原因となります。陰部洗浄時に尿道口から約5cmまでのカテーテルを十分に洗浄することによって,陰部のトラブルを防止することができます。

また,尿の性状と臭気の観察を行います。浮遊物がないか,アンモニア臭以外の臭気変化はないか,色調など感染を疑う徴候が表れていないかを観察します。

浮遊物や臭気の変化,陰部のトラブルを発見した場合は,全身状態の観察とともに,すみやかに医師に報告しましょう。

急性期を脱し,全身状態が安定したら,尿道留置カテーテルを使用する必要があるかどうかを評価していきます。医師と相談のうえ,できるだけ早期の尿道留置カテーテルの抜去を検討します。

 

排尿の状態と排尿手段に関する能力を正しく評価する

  • 意識レベル・麻痺の程度・コミュニケーション障害の程度などの全身状態の評価
  • 排尿状態の評価
  • 患者の自覚症状,尿意の有無,残尿感,尿意切迫感
  • 客観的データとして24時間の水分摂取と排尿時間・量・失禁を記録し評価する
  • 排尿時痛の有無
  • 残尿感の有無
  • 膀胱用エコー画像診断を使用した,排泄前後での膀胱内尿量の評価

排尿の状態を把握し,尿道留置カテーテルの抜去に至ったら,抜去後の排尿の状態を新たに把握し評価します。尿意を感じることができ自力での排尿が可能な場合は,排尿時痛や残尿感の有無を確認します。残尿感がある場合は膀胱用エコー画像診断を使用し,排尿前後の膀胱内尿量を評価するとよいでしょう。排尿時痛がある場合は,尿の性状や臭気を観察し,感染を疑う徴候がないかを確認します。

尿意をみずから訴えることができず,失禁する場合は,汚染したオムツで陰部の湿潤状況が続かないように,排尿パターンを把握し,オムツを交換する必要があります。

尿のpHは4.8~8.0(2)ですが,体外に排出されると尿分解菌の作用でアルカリ性になり皮膚を刺激します。尿が皮膚に付着することで皮膚が浸軟し,ただれの原因となります。オムツの使用は蒸れによる汗疹・かぶれなどの皮膚炎を引き起こし,尿で汚染されたオムツをつけたままでいることで皮膚カンジタ症や尿路感染の原因となります。したがって,皮膚に尿が付着したままにならないように皮膚の清潔を保つ必要があります。

尿道留置カテーテルを使用していない場合でも,皮膚の清潔を保つために陰部洗浄は有効です。入浴やシャワー浴が行えない場合は,ベッド上での陰部洗浄を行うとよいでしょう。

 

排尿行動に必要な機能を評価し排泄時の環境を整える

  • 床上排泄時のプライバシーの保護
  • 室内排泄時の環境調整
  • 排尿誘導
  • 排尿行動に必要な筋力の維持と向上
  • 病室からトイレまでの距離など入院環境の整備
  • トイレの環境整備

治療に伴う安静度が床上である場合,床上で排尿を行わなければなりません。日常生活で行っていた「トイレで用を足す」という排尿行動が実行できません。

個室環境であれば一定のプライバシーは保たれていますが,大部屋に入室中の場合,排尿の臭気・音など,周囲に対する気兼ねが生じます。床上安静の場合,衣・食・住のすべてがベッド上で行われるため,日常生活の衣・食・住とはそもそも環境が異なります。また,医療者の介助が必要となるため,医療者に対する気兼ねも生じます。その気兼ねは,排泄行動を消極的にさせ,排尿パターンが変調する原因にもなりえます。

安静制限,排尿パターンの変更,環境の変化,羞恥心など,患者を取り巻くさまざまな要素を踏まえて全人的に捉え,アセスメントし,介入していくことが大切です。

看護ケアのためのカテーテル留置は避けたほうがよいでしょう。感染のリスクを高めるだけでなく,患者のQOLを低下させることにつながりかねません。患者にとって最良の排泄行動がどれであるのかを見きわめ,看護介入することを心がけるべきです。

 

他職種との連携を図る

毎日のケアを実施しても,皮膚のトラブルが起きてしまった場合は,皮膚排泄ケア認定看護師などの専門家との連携も必要となります。

また,身体機能の障害(運動麻痺や平衡感覚障害,長期安静臥床による筋力低下など)がある場合は,排泄行動を含む日常生活動作が行えるよう,理学療法士作業療法士とともにリハビリテーションのプログラムを早期から検討しましょう。

 

おわりに

カテーテル関連尿路感染は,免疫機能の低下などがなければ,多くの場合カテーテルの抜去によって自然寛解します。しかし,急性期の場合,全身状態の均衡が崩れ感染症が全身に波及し,全身性炎症症候群や敗血症に陥る場合もあります。

急性期の脳神経系疾患の治療において,尿量測定は重要な指標の1つです。デバイスの留置の利点と欠点を理解し,正しい方法で安全に管理することが,尿道留置カテーテル使用の原則であり,患者の回復を促進する第一歩です。

尿路感染によって回復を妨げることがないよう,排泄行動の最良の方法を見いだし,患者の回復を促進する個別性のある看護を提供することが,私たち看護師の役割であると考えます。

 

 


[引用・参考文献]

  • (1)満田年宏(訳・著):カテーテル関連尿路感染予防のためのCDCガイドライン2009.ヴァンメディカル,pp31-,2010.
  • (2)小林繁樹(編):新看護観察のキーポイントシリーズ 脳神経外科.中央法規出版,pp111-/pp119-,2011.

[Profile]
菅沢直美(すがさわ なおみ)
1998年 国保旭中央病院付属看護専門学校卒業。同年 総合病院国保旭中央病院入職,集中治療室勤務。2002年 千葉県救急医療センター入職,初療室・手術室を経て集中治療室勤務となる。2003年 3学会合同呼吸療法認定士資格,2011年 集中ケア認定看護師資格を取得。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2013 医学出版

[出典]BRAIN 2013年第2号

p.154~「脳神経外科疾患に随伴する全身感染症(2) 尿路感染症」

著作権について

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