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2015年10月13日

輸液の基礎知識

『循環器ナーシング』2013年10月号<学びなおしで疑問とサヨナラ! 輸液管理の基礎から実践まで>より抜粋。
輸液の基礎知識について解説します。

 

Point

  • 輸液とは,水分や電解質などを点滴静注により投与する治療法である!
  • 輸液管理は,「維持輸液」と「補充輸液」に分けて考える!
  • 維持輸液のゴールは,水と電解質のバランスを維持すること,栄養を与えることである!
  • 補充輸液のゴールは,血清電解質の異常と循環血液量の異常の補正である!

神應知道
(北里大学医学部 中毒・心身総合救急医学 助教)

 

〈目次〉

 

はじめに

ヒトは,正常な環境において,自ら食事,水分を摂取し,腎臓で幅広い調整を行いながら水分,電解質などを排泄しています。輸液療法は,周術期,人工呼吸器管理中など患者がある一定期間飲食できないとき,脱水出血などによる体液・電解質の欠損をただす必要があるときなどに行われます。本コラムでは,輸液の基礎と実践について説明したいと思います。

 

輸液

輸液とは

輸液とは,水分や電解質などを点滴静注により投与する治療法です。

 

輸液の目的

輸液の目的には,次の4つがあると考えられています。

静脈路の確保,②経口摂取の代替,③失われた水分および電解質の補充,④急激に喪失した血液の置換です。

①静脈路の確保に関しては,静脈注射のルートを維持するためです。

②経口摂取の代替に関しては,口から水分や食事がとれない場合に,水分・電解質・栄養素などの補充目的に行われます。

③失われた水分および電解質の補充に関しては,下痢嘔吐,脱水,発熱などにより不足した水分,電解質の補充目的に行います。

④急激に喪失した血液の置換に関しては,大量出血などで減少した循環血液量の補充目的に行います。

 

輸液の安全域

輸液は基礎中の基礎ともいうべき基本的手技ではありますが,その実際に関しては,あまり深く考えることもなく漠然と行われている現状があるといわれています。これはなぜでしょうか?

実は,医療の側から適当とは言い難い輸液の指示が出ているにもかかわらず,多くの場合,大過なく毎日が過ぎて行っているのは,生体,とくに腎臓の持つ幅広い調節能力により,それこそ適当に処理しているからです。

表1に腎臓で対応可能な一日当たりの水・電解質摂取量を示します。

表1腎臓で対応可能な一日当たりの水・電解質の摂取量

腎臓で対応可能な一日当たりの水・電解質の摂取量

その幅の大きさにちょっとした驚きを持たれると思います。程度の差こそあれ,このような腎臓による調節能の存在下においては,ある一定の範囲内であれば適当な輸液の処方を行っていても,腎臓のほうで何事もなかったかのごとく各種のパラメータを正常に保ってくれる,そんな領域が存在します。これを「輸液の安全域」といいます。

 

輸液の種類

輸液の種類には,「維持輸液」と「補充輸液」があります。

維持輸液

維持輸液とは,尿,汗,呼吸便を通した正常な状態での水,電解質の喪失を置き換える輸液とされています。つまり,経口摂取の代替の役割を果たしています。

補充輸液

補充輸液とは,現存する水,電解質の欠損(消化管,尿,皮膚,出血,サードスペースへの分布)をただす輸液とされています。つまり,失われた水分および電解質の補充,急激に喪失した血液の置換の役割を果たしています。

 

正常な水分バランス

正常な水分出納

水分摂取の源は,経口摂取からの水分量,炭水化物の酸化によって産生された水分(代謝水)の2つです。一方,水分の喪失は,尿,便,汗,呼吸器からの排泄です。汗,呼吸器から排泄される水分を合わせて「不感蒸泄」と呼びます。

 

代謝水の量

代謝水の量は,4~5mL/kg/日といわれています。

 

不感蒸泄の量

不感蒸泄の量は,室温(25℃前後)では,12~15mL/kg/日といわれていますが,体温が1℃上がるごとに15%増量するといわれています。

 

健常人の水分バランスの例

具体例として,体重60㎏の健常人において,食事からの水分約800mL,飲料水として約1200mL摂取し,尿量1300mL,便中の水分100mLとしてみますと,摂取量としては,

食事(800mL)+飲料水(1200mL)+代謝水(300mL:60㎏×5mL/kg/日)=2300mL/日

であるのに対し,排泄量としては,

尿(1300mL)+便(100mL)+不感蒸泄(900mL:60㎏×15mL/kg/日)=2300mL/日

となり,私たちの体は水分収支のバランスがとれるように調節されていることがわかります(図1)。

図1水分収支のバランス

水分収支のバランス

 

輸液の基礎

輸液の始まり

19世紀,英国のLatta医師がコレラ患者に対し大量の輸液を行い,生存率を上げることに成功したとされています。そのときに使われた輸液は,現在でいえば生理食塩液ですが,ラッタ液といい,これが輸液のはじまりといわれています。

 

輸液の進歩

生理食塩液の次に開発されたのが,生理食塩液にカリウムカルシウムが追加されたリンゲル液です。リンゲル液で灌流すれば,摘出したカエルの心臓もしばらく拍動を続けます。

その後,体内で産生される酸を中和するために,緩衝剤である乳酸,酢酸,重炭酸を添加したものが開発されました。乳酸リンゲル,酢酸リンゲル,重炭酸リンゲルです。これらは,主要な電解質(ナトリウムイオン〔Na〕,カリウムイオン〔K〕,カルシウムイオン〔Ca2〕,塩化物イオン〔Cl〕)だけでなく,酸塩基平衡まで考慮して作られているため,リンゲル液よりもさらに生理的です。

 

生理食塩水と5%ブドウ糖液

5%ブドウ糖液とは

塩化ナトリウムではなく,ブドウ糖で体液と同じ浸透圧を作り出したのが,5%ブドウ糖液です。

生理食塩液と5%ブドウ糖液の体内分布

生理食塩液と5%ブドウ糖液の大きな違いは,投与後の体内分布が全く異なることです。

ヒトは体重の60%が水分で構成されています。そして水分は,細胞の内と外で分布の割合が異なります。細胞内には体重の40%,細胞外には体重の20%が分布しています。さらに,細胞外の水分は,体重の5%が血管内(血漿),体重の15%が細胞と細胞の間(組織間液)に分布しています。

では具体的には,1Lの生理食塩液と1Lの5%ブドウ糖液を輸液した後の体液分布の違いはどのようになるのでしょうか?

図2に輸液後の体液分布の違いを示します。

図2輸液後の分布

輸液後の分布

 

生理食塩液1L(NaCl 9g)を投与すると,すべて細胞外液に分布するので,血管内に入る水は1000mL×5/20=250mLです。一方,ブドウ糖液は体内で速やかに代謝されるので,5%ブドウ糖液1Lを投与しても,血管内に入る水は1000mL×20/60×5/20=83mLとわずかになります。

この大きな違いを考慮して病態に応じた輸液の選択が行われています。細胞外液が足りないような病態では生理食塩液が好ましく,血管内容量負荷に耐えられない心不全患者には5%ブドウ糖液が好ましいと考えられます。

 

生理食塩液よりも効率的に血管内容量を増加させる輸液

生理食塩液よりも効率的に血管内容量を増加させる輸液には,正常な毛細血管を通過しない高分子物質(分子量が万単位)を含む膠質液があります。高分子物質が血管内に留まり,血管内にのみ分布され,血漿成分を血管内に保つ働きをします。

膠質液には,血液製剤であるヒト血清アルブミンや加熱ヒト血漿蛋白,血漿増量薬であるデキストラン製剤,ヒドロキシエチルデンプン(HES)製剤があります。

 

輸液の分類

ブドウ糖液以外の輸液にはさまざまな電解質が入っており,「複合電解質液」といわれています。複合電解質液は,「等張電解質輸液」と「低張電解質輸液」に分類されます(図3)。

図3複合電解質液

複合電解質液

 

等張電解質輸液は別名「細胞外液」(補充輸液)と呼ばれるものです。ナトリウム濃度が血漿のナトリウム濃度とほぼ同じになっています。ナトリウムは細胞外液に多く分布しているので,水は細胞外液のみに補充されます。

生理食塩液以外にリンゲル液,乳酸リンゲル液,酢酸リンゲル液,重炭酸リンゲル液があります(MEMO1)。

一方,低張電解質輸液は,ナトリウム濃度が血漿より低いため,低張電解質輸液といわれています。

これらは,生理食塩液と5%ブドウ糖液をブレンドして作成され,図4に示すように,1号液~4号液といわれています(MEMO2)。生理食塩液の割合が大きい1号液はナトリウム補給効果が大きく,5%ブドウ糖液の割合が大きくなるにつれて,水分補給効果が大きくなります。

図4低張電解質輸液

低張電解質輸液

 

MEMO1等張電解質輸液(細胞外液)の特徴
  • 生理食塩液:大量急速投与で血中の重炭酸イオン濃度が低下します。併せて高クロール血症も伴うと,さらに重炭酸イオンが減少し,代謝性アシドーシスが持続することがあります。
  • リンゲル液:3つのクロライド液といわれ,生理食塩水に塩化ナトリウム,塩化カリウム,塩化カルシウムが加えられています。
  • 乳酸リンゲル液:乳酸は代謝されると重炭酸になります。その乳酸は肝臓でしか代謝されません。乳酸イオンの過剰負荷によりアルカリ化が進み,ショック回復後2~3日して高度の代謝性アルカローシスが起きることがあります。
  • 酢酸リンゲル液:酢酸は代謝されると重炭酸になります。しかし乳酸と異なり,肝臓以外でも筋肉ほか多くの場所で代謝されるので,乳酸リンゲル液より早く重炭酸に変わるといわれています。
  • 重炭酸リンゲル液:重炭酸はリンゲル液のカルシウム,マグネシウムと混合すると沈殿しますが,沈殿しないような工夫がされており,細胞外補充液のなかで最も生理的といわれています。薬価で他の細胞外液より1.5倍ほど高価です。
MEMO2低張電解質輸液の特徴
  • 1号液(開始液):カリウムを含まないので,腎機能不明時や救急外来,緊急時に使用されます。
  • 2号液(脱水補給液):ナトリウム,クロール,乳酸に加え,カリウム,マグネシウムといった細胞内の電解質を含みます。別名「細胞内液補充液」といわれています。
  • 3号液(維持液):2L投与で,健常人の水・電解質の平均的な一日必要量を補えます。
  • 4号液(術後回復液):利尿がつくまでの術後などに用いられます。カリウムを含まない維持液と考えられています。

 

輸液の実践

輸液の決め方

前述した輸液の目的①~④に合わせて考えたいと思います。

①の静脈路確保の目的では,どの輸液でもよいですが,腎機能がわからない救急外来や緊急時は1号液で輸液を開始するのが望ましいです。これにより1号液は別名「開始液」といわれています。

②の経口摂取の代替では,高カリウム血症がなければ3号液,高カリウム血症があれば4号液を選択します。3号液は,2L投与で健常人の水・電解質の平均的な一日必要量を補え,維持ができるということで「維持液」といわれています。

③の失われた水分および電解質の補充に関しては,水欠乏型脱水(高張性脱水)は,発汗のようにナトリウム濃度が少ない体液を喪失した場合や食事摂取量の低下などによって生じる脱水であり,細胞外液のみならず細胞内の体液も喪失するため2号液を選択します。一方,ナトリウム欠乏型脱水(低張性脱水)では,コレラにみられるような激しい下痢や嘔吐により高濃度のナトリウムを有する細胞外液を喪失するため,細胞外液を投与します(MEMO3)。

そして,④急激に喪失した血液の置換の目的では,細胞外液を投与します。

MEMO3脱水の種類

脱水は,水とナトリウムのどちらを多く失うかによって,水欠乏型脱水(高張性脱水),ナトリウム欠乏型脱水(低張性脱水)と,これらが混合している混合型脱水に分類されます。臨床的には両者が混合した混合型脱水が最も多いようです。

 

輸液管理の実際

維持輸液と補充輸液に分けて考えます。

維持輸液

維持輸液とは,尿,汗,呼吸,便を通した正常な状態での水,電解質の喪失を置き換える輸液ですので,経口摂取ができない患者に対しては,平均的な体型であれば,4本(2L)で必要な水,電解質が補われます。

しかし循環器疾患患者をはじめ,輸液を絞りたい患者に対してはこのかぎりではなく,病態に応じて2~3本(1~1.5L)に減らすこともしばしばみられます。

また絶食状態が続くときは,維持液の糖の濃度を高くし,栄養補給のことも考える必要があります。

補充輸液

補充輸液とは,現存する水,電解質の欠損(消化管,尿,皮膚,出血,サードスペースへの分布)をただす輸液です。

急性期の患者では,経口摂取ができないだけでなく,発熱,下痢,脱水,出血,ショックなどの病態も合併していることがあります。その際には,補充輸液として細胞外液を投与します。

補充輸液のゴールは,ボリュームの異常と血清電解質の異常の補正といわれています。

しかし,具体的にどれくらいの量を補正すべきかを決定するのは,非常に困難です。教科書には,トータルのボリューム欠乏を評価して補いましょう,という書き方がされているものもありますが,正確に評価する方法はないともいわれています。体重の増減がわかれば評価の参考になりますが,体重がわからなければ評価することは困難です。

実際は,血圧脈拍中心静脈圧,超音波による下大静脈径,動脈ラインの呼吸性変動,SVV(stroke volume variation),尿量,尿比重,尿のナトリウム濃度(MEMO4),乳酸値,出血がなければヘマトクリットなどの所見で総合的に評価するようにしています。

そして,急性期,とくに重症であるほど補充輸液の量は1日単位で決めるのではなく,数時間単位で決めるようにすべきです。

はじめに評価をして補充輸液の速度を決定し(経験的な要素が大きいと思われます),さまざまな所見を総合し,補充輸液の速度を変更します。尿が0.5mL/kg/時~1.0mL/kg/時以上でている,乳酸が正常値,もしくは減少傾向というのが補充輸液量を減らすタイミングと考えます。

MEMO4尿のナトリウム濃度

尿のナトリウム濃度が15mEq/L以下のままであれば,腎臓は体内水分量の減少を感じているので,もっと水分を投与すべきです。ただし,心不全,肝不全などの浮腫状態にある患者には,尿のナトリウム濃度を評価に使用するのは控えるべきといわれています。

 

おわりに

「輸液ってよくわからない…」と思っている医療者は比較的多いと思います。しかし,本コラムで述べた最低限の内容を理解していただければ,それほど恐れるものではありません。

なぜかというと,輸液には安全域があるからです。それ故に,病棟では各医者のこだわりの輸液が飛び交っているのかもしれません。大切なことは,患者さんをよく観察し,輸液の前後の変化を観察することです。

本コラムが皆さんの臨床の助けになれば幸いです。

 

 


[引用・参考文献]

  • (1)Sterns RH: Maintenance and replacement fluid therapy in adults. 2013 UpToDate. http://www.uptodate.com/contents/maintenance-and-replacement-fluid-therapy-in-adults
  • (2)奥田俊洋:輸液療法の組み立ての基礎.診断と治療,88(5):721-726,2000.
  • (3)日本静脈経腸栄養学会ほか(編):やさしく学ぶための輸液・栄養の第一歩 第一版.2001.
  • (4)溝手博義:第一線医師・研修医・コメディカルのための新・輸液ガイド すぐ役立つ手技・手法のすべて 身につけるべき水・電解質輸液の基本手技 基本的輸液の進めかた 開始時輸液と維持輸液の実際.Medical Practice,23(臨時増刊号):62-66,2006.

[Profile]
神應知道(かんおう ともみち)
北里大学医学部 中毒・心身総合救急医学 助教
日本救急医学会専門医,日本集中治療医学会専門医,日本内科学会認定医,東洋医学会専門医,国際中医師。育児休暇3ヵ月取得。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2013 医学出版
[出典]循環器ナーシング 2013年10月号

循環器ナーシング2013年10月号

P.21~「輸液の基礎知識」

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