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2015年08月05日

術前検査の観察ポイント

『オペナース』2014年創刊号<術前・術後看護の視点 -フィジカルアセスメントを中心に>より抜粋。
術前検査の観察ポイントについて解説します。

 

Point

  • 術前状態を適切に評価することは,患者が安全に手術や麻酔を受けることにつながります。
  • 術前検査データや情報を読み取り,アセスメントするポイントを理解しましょう。
  • 術前情報をもとに術中や術後に起こりうる問題を予測して,看護に活かせるようにしましょう。

迫平智江
(神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院 中央手術部 手術看護認定看護師)

〈目次〉

 

はじめに

手術を受ける患者さんは,疾患やその治療のために,身体の生理機能が何らかの影響を受けている状態にあります。

たとえば,病変部位から出血を伴い貧血を合併していたり,経口摂取障害や吸収障害を伴う場合では,低栄養状態だったり,免疫機能も低下していることがあります。また,嘔吐下痢ドレナージなどによって消化液が喪失している場合などは,電解質・酸塩基バランスが崩れていることもあります。さらに,心・肺・肝・腎などの臓器の機能が低下している患者さんや,生命の危機にある患者さんなど,さまざまな状態で手術に臨んでいます。

術前の検査は,呼吸や循環をはじめとする全身機能の状態を把握し,手術や麻酔侵襲による生体へのリスクがどの程度であるかを評価するために行われます。そして,周手術期看護では,術前に行われる検査を理解して結果を読み取り,ケアに活かす力が求められます。

術中や術後に起こりうる合併症のリスクを予測し,患者さんが手術や麻酔に耐えられるように,身体的・精神的状態を整えて,よりよい状態で臨めるように備えることが大切です。

 

代表的な検査の種類と,みていくポイント

主な検査として,血算・凝固系検査,生化学検査,血糖などの検査を行います。これらは血液による検体検査で,貧血や出血傾向の有無,栄養状態だけでなく,電解質バランス,肝臓や腎機能,耐糖能などの重要な情報が多く得られます。

また,心機能や肺機能については,心電図などの生理機能検査や,胸部X線撮影などの画像検査を行います。疾患や患者さんの状態によっては,さらに詳しく調べるために必要な特殊検査を実施していきます。

術前は,患者さんの全身把握のために検査を確認し,リスクファクターをチェックします。検査データの基準値は試薬や測定機器によって異なるため,各施設に備えてあるものを参照してください。

 

検体検査

血算系の検査

血液一般検査(末梢血検査)

基本的な検査として,赤血球数(red blood cell count;RBC),ヘモグロビン量(hemoglobin;Hb),ヘマトクリット(hematocrit;Ht),白血球数(white blood cell count;WBC),血小板数(platelet count;PLT)などを調べます(表1)。

表1血算検査のチェックするポイント(文献(1)(2)より引用改変)

血算検査のチェックするポイント(文献1,2)より引用改変)

 

赤血球

赤血球は,数値が増加した場合を「多血症」といい,血液の粘稠度が亢進して,血栓ができやすく血管が閉塞しやすい状態となります。そして減少した場合を「貧血」といいます。赤血球に含まれる血色素量のヘモグロビンは,全身の臓器への酸素供給量を測る重要なデータとなります。

 

ヘマトクリット

ヘマトクリットは,血液全体に対する赤血球の割合をいいます。貧血の有無を診断するのに用います。循環血漿量が減少していると高くなり,上昇すると低くなります。

 

白血球

白血球は,免疫や感染などの炎症反応を示します。手術患者は,術前に化学療法放射線療法を行っている場合もあり,副作用で白血球が減少する影響があるため,注意する必要があります。

 

血小板

血小板は止血機能の指標であり,化学療法や出血性疾患,肝障害などでも血小板数は減少するため,注意します。また,後述する血液凝固検査と併せてみていく重要なデータです。

 

***

術前は疾患のために貧血や出血傾向になっていることもあるため,場合によっては術前に輸血を行い補正する必要もあります。

高齢者では,加齢に伴う生理的変動として,赤血球数やヘモグロビン,ヘマトクリットは減少傾向になります。また,妊娠中はヘモグロビンやヘマトクリットの減少から,生理的貧血になります。

このように,対象となる患者さんの病態や生理,薬剤投与や輸血,放射線などの治療背景も合わせてデータをみていくことが大切です。

 

凝固系に関する検査

血液凝固検査

手術では出血が伴うため,事前に出血傾向や止血機能を把握しておくために,プロトロンビン時間(prothrombin time;PT)や国際標準化比(international normalized ratio prothrombin time;PT-INR),活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time;APTT)などを調べます(表2)。

表2血液凝固検査とチェックするポイント(文献(1)(2)より引用改変)

血液凝固検査とチェックするポイント(文献1, 2)より引用改変)

 

これらの時間は,抗血小板薬や非ステロイド系抗炎症薬の使用,加齢に伴う生理的変化などで延長し,妊娠では短縮傾向となるなどの影響を受けます。

凝固機能の低下は,出血量の増加や手術・止血操作の妨げとなり,術後出血のリスクも高まります。

また,手術だけでなく麻酔方法にも影響します。出血傾向にある患者さんにおいて硬膜外麻酔や脊椎くも膜下麻酔を行うと,硬膜外血腫の合併症のリスクがあるため,禁忌となっています。

硬膜外血腫を生じると,脊髄神経根が圧迫されて神経障害を引き起こすためです。その他,抗凝固薬投与のモニタリング,肝機能障害播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation syndrome;DIC)の診断として,Dダイマーなどが用いられます。

術前に出血傾向や凝固機能が低下している場合は,補正するために輸血の準備が必要です。また,大量出血が予測される場合では,あらかじめタイプ&スクリーンなど輸血の準備を考慮します。

 

抗血栓療法の患者さんには

脳や心臓の梗塞,不整脈の治療のために,ビタミンK拮抗薬であるワルファリンなどの経口抗凝固療法をしている患者さんも多くみられます。抗凝固薬の使用は手術に支障をきたすため,薬の半減期を考慮して術前に中止する必要があります(表3)。

そのため,休薬によるリスクを回避するために,術前には作用時間の短いヘパリンの使用へ切り替えてコントロールする場合もあります。しかし,緊急手術などでワルファリンが休薬できなかった場合などは,ビタミンKの静注や,新鮮凍結血漿(FFP)を投与して凝固能を回復させます。これらのような場合には,PTやAPTT,ACTを測定し,凝固機能のモニタリングをしていくことが大切です。

表3術前に休薬する主な薬と期間の目安(文献(3)より作成)

術前に休薬する主な薬と期間の目安(文献3)より作成)

 

血液生化学検査

肝機能や腎機能,代謝・内分泌機能などを評価するために行います(表4)。

表4生化学検査でチェックするポイント(文献(1)(2)より引用改変)

生化学検査でチェックするポイント(文献1, 2より引用改変)

 

生化学検査

肝機能に関する検査

肝臓は,代謝機能(蛋白質・糖質・脂質)や解毒・排泄機能,合成機能など,さまざまな機能を持っています。しかし,麻酔薬や手術侵襲に伴い肝血流量が低下し,肝機能が影響を受けるため,術前の肝予備能の評価は重要です。

肝合成能の主な指標として,血清アルブミン(Alb)やコリンエステラーゼ(ChE)があります。いずれも,肝の合成能が低下すると低下します。また,凝固検査の1つであるプロトロンビン時間(PT)も肝機能が低下した場合,凝固因子の合成ができなくなるために低下します。

排泄機能の指標は血清ビリルビン(T-Bil)です。薬剤の代謝は肝臓で行われるものが多く,肝機能が低下した場合は薬剤の排泄が遅くなり,通常より作用が遷延する可能性があります。

その他,肝障害の指標として,ASTとALTを評価します。これらは,それぞれGOT,GPTとも呼ばれているトランスアミナーゼと総称される酵素で,細胞の障害が生じた際に血液中に流出して高値を示します。ただし,ASTは肝細胞のみならず,心筋,骨格筋,赤血球などにも広く存在するため,肝炎肝硬変などの肝障害のときだけでなく,心筋障害や骨格筋の障害でも上昇するため注意が必要です。ALTは主に肝細胞に局在するために,肝障害で上昇がみられます。

 

腎機能に関する検査

腎臓は,薬物代謝や酸塩基平衡,電解質の維持,水分の排泄などの機能を持っています。

腎機能が低下すると,薬物の代謝が遅れたり,低ナトリウム血症高カリウム血症などの電解質異常をきたしたり,代謝性アシドーシスをきたしたりするリスクが高くなります。また,蓄積した有毒物質を排泄できなくなることで,尿毒症から意識障害をきたしたり,水分を排出できなくなることで体内に余分な水が過剰に貯留し,肺水腫から呼吸不全をきたしたりするリスクも高まります。

術中は,麻酔や手術に伴う神経・内分泌反応や出血,また循環血液量の減少や腎血管収縮による腎血流量の低下などから,虚血性の腎障害を引き起こす可能性があります。とくに慢性的に腎機能が低下している患者さんや,血管障害(動脈硬化糖尿病高血圧など)のある患者さん,大量出血や侵襲の大きな手術を受ける場合では,周術期に腎機能障害をきたすリスクが高くなります。

また,腎機能を悪化させる薬剤にも注意が必要です。たとえば,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やX線造影剤,抗がん薬や免疫抑制剤などは腎機能を悪化させます。また,腎機能が悪化した場合,腎臓で排泄される薬物,たとえばモルヒネなどのオピオイドや筋弛緩薬などは薬物代謝が遅延し,効果が遷延する可能性があるために,投与量には注意が必要です。

術前の腎機能の指標として,血中尿素酵素(blood urea nitrogen;BUN)や血清クレアチニン(serum creatinine;Cr)などがあります。これらは血中の代謝産物で腎機能が低下して排泄が障害されると上昇します。また,腎予備能の評価として重要なクレアチニンクリアランス(Ccr)があります。基準値は110〜150(ml/分)で糸球体濾過率(GFR)を反映し,腎血流低下や腎障害によって腎機能が低下していると低値となります。

 

電解質系

ナトリウム(Na)は,主に細胞外液に存在し,血清ナトリウム値は体内の水分バランスの影響を受けて変化します。

高ナトリウム血症や低ナトリウム血症では,背景に体内の水分バランス異常がある可能性があります。原因として,脱水の存在や利尿薬の使用などがないかチェックが必要です。

それに対してカリウム(K)は,主に細胞内液に存在します。

細胞が崩壊したり,腎機能が悪化してカリウムを排泄できなくなることにより血中の濃度が上昇し,高カリウム血症となります。高カリウム血症では,心停止や不整脈の危険があるため,ただちに治療が必要です。

これに対し,カリウム摂取不足,インスリンの使用によるカリウムの細胞内移動,利尿薬の使用による体外排泄などにより,血清カリウム値は低下します。低カリウム血症も,心室細動や心室性頻拍などの致死的な不整脈を引き起こすため,注意が必要です。

カルシウム(Ca)の異常は,神経や筋,心筋収縮力に影響を及ぼしやすくなります。高カルシウム血症では,意識レベルの低下や脱力などが認められます。また低カルシウム血症では,テタニーや筋力低下,けいれん発作が起こりやすくなります。とくに大量輸血を行った場合,カルシウム値は低下します。

また,マグネシウム(Mg)にも注目します。高マグネシウム血症をきたした場合,筋弛緩作用が遷延する可能性があります。低マグネシウム血症は筋力低下やテタニー,心室頻拍(torsades de pointes:TDP)に代表されるような致死的不整脈をきたす可能性があるため,注意が必要です。

周手術期は,病態や疾患,治療の影響などから患者さんの電解質バランスは変動しやすいために,必要な補正を行って整えていくことが大切です。

 

酵素系

乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase;LDH)は,すべての細胞に存在する酵素で,細胞の障害や悪性腫瘍などによって数値が上昇します。クレアチンキナーゼ(creatine kinase;CK)は,骨格筋や心筋,平滑筋などに存在し,心筋梗塞や横紋筋融解症,コンパートメント症候群などで筋肉が障害を受けた場合,クレアチンキナーゼ値は上昇します。

 

免疫系

C反応性蛋白(C-reactive protein;CRP)は炎症の指標で,組織壊死や悪性腫瘍などによる組織の障害や,関節リウマチなどの膠原病でも高値を示します。

 

耐糖能に関する検査

手術や麻酔侵襲に対する神経・内分泌系の生体反応として,ストレスホルモン(カテコールアミンコルチゾール,グルカゴン)の分泌が増加します。

これらのホルモンは,インスリン拮抗ホルモンで,肝臓でのグリコーゲン分解,糖新生促進,末梢でのインスリン抵抗性が起こり,手術中はインスリンの作用不足から「外科的糖尿病」と呼ばれる高血糖状態になります。高度のインスリン作用不足は,急性合併症であるケトアシドーシスや浸透圧利尿が亢進して循環血漿量の低下が生じ,脱水をきたしやすくなります。

検査として,血糖値(glucose;GLU/blood suger;BS)は,血中に含まれるブドウ糖(血糖)の量を表し,代謝状態を示す指標となります。

空腹時血糖値は,80〜110 mg/dl未満,2時間後血糖値は80〜140 mg/dlを基準としています。また,糖化ヘモグロビン(HbA1c)は,赤血球のヘモグロビンにブドウ糖(グルコース)が結合したもので,過去1〜2か月前の平均的な血糖状態を反映します。

糖尿病で治療を受けているような場合や,糖尿病が疑わしい場合には,血糖値だけでなく必ずHbA1c(基準値はNGSP:4.6〜6.2 %,JDS:4.3〜5.8 %)も測定します。高値の場合は,糖尿病や腎不全を示し,低値では膵臓腫瘍のインスリノーマ(膵島線腫)や溶血性貧血が考えられます。とくに糖尿病の患者さんについては,術前の血糖コントロールの状態と治療法を知り,合併症の有無と症状を確認しておくことが大切です(表5)。

表5糖尿病術前コントロール(文献(3)より作成)

糖尿病術前コントロール(文献3より作成)

 

動脈血ガス分析

動脈血ガス分析により,酸素が血中に十分に取り込まれているか(酸素化能),二酸化炭素が排出できているか(換気能),酸塩基平衡はどうであるかを知ることができます(表6)。

表6動脈血液ガス分析のチェックするポイント(文献(4)より作成)

動脈血液ガス分析のチェックするポイント(文献4より作成)

 

動脈血酸素分圧(PaO2)は肺の酸素化能を示します。

酸素吸入などで上昇し,肺炎,COPD,間質性肺炎などの肺疾患を持った患者では低下します。それに対して動脈血炭酸ガス分圧(PaCO2)は,肺胞での換気能を判断する指標となります。低換気ではPaCO2は上昇し,過換気では低下します。

酸塩基平衡に注目するうえで最も重要なのが水素イオン指数(pH)です。

pHは血液の酸性度を示しており,pH 7.35以下は「酸血症(アシデミア)」,pH 7.45以上は「アルカリ血症(アルカレミア)」として定義されています。そして,アシドーシス,アルカローシスはその異常を起こす病態をいいます。どちらに傾いている状態かを鑑別し,いずれも電解質異常やエネルギー産生に異常をきたすため,必要な治療を行います。

たとえば,二酸化炭素が貯留するとPaCO2は上昇し,アシデミアとなります。また,過換気の場合には二酸化炭素が排出されPaCO2は低下し,アルカレミアとなります。呼吸が原因でアシデミアをきたすことを「呼吸性アシドーシス」と呼び,その逆を「呼吸性アルカローシス」と呼びます。

一方,体内に有毒な有機酸が蓄積すると重炭酸イオン濃度(HCO3)が相対的に低下し,アシデミアに傾きます。これに対し,嘔吐,低カリウム血症,脱水などではHCO3値は上昇し,アルカレミアとなります。代謝性物質が原因でアシデミアをきたすことを「代謝性アシドーシス」と呼びます。

動脈血液ガス分析では,塩基過剰(base exses;BE)も,HCO3とともに代謝性因子による酸塩基平衡異常の程度を表すため,アシドーシス,アルカローシスの原因の鑑別に有用です。

 

生理機能検査

呼吸機能の検査

全身麻酔では人工呼吸器を使用するために,肺へ大きな影響を及ぼします。そして,手術操作を容易にするために行われる片肺での換気や,体位変換,手術台を回転させることは,換気の制限や呼吸の抑制などが起こりやすい状態になります。それに伴い,換気血流不均衡や肺の膨張が妨げられ,術後肺合併症のリスクがより高くなります。また呼吸機能は,全身への酸素供給をするために重要です。そのために,換気と肺のガス交換の予備能を事前に把握し,呼吸機能を正確に評価することが術中の安全のために必要です。

術前には,スパイロメトリーなどの測定を行います。また,心機能,ヘモグロビン,末梢循環不全なども影響するため,胸部X線写真や,必要に応じて動脈血ガス分析なども併せて総合的に判断します。

 

スパイロメトリー

肺を通過する空気の量と速度を測定し,肺換気障害を評価します。%肺活量1秒率から,拘束性,閉塞性,混合性換気障害に分類されます(図1)。

図1肺換気障害の分類

肺換気障害の分類

 

%肺活量(%vital capacity;%VC)は,年齢や身長から予測される肺活量(VC)に対する実測肺活量の割合で,換気予備力の指標となります。

80%以下を「拘束性障害」といい,胸郭や胸腔内,肺自体の何らかの異常で肺の膨張が障害されている状態です。原因となる主な疾患として,無気肺や間質性肺炎,気胸などがあります。また,肥満の患者さんの肺も分厚い胸壁によって拡張しにくい状態です。肺の膨張が最大限に行われるように術前からの呼吸訓練を行うことや,深呼吸を促すことが大切です。

一方,1秒率(FEV1.0%)は,実測された努力性肺活量(forced vital capacity;FVC)と,1秒間に呼出した量(1秒量:FEV1.0)の割合で,術後肺合併症の発生にも関連する喀痰の喀出力の指標となります。

70%以下を「閉塞性障害」といい,気管支や肺胞道といった気道自体に狭窄や分泌物による抵抗が生じて,息を出しにくい状態となっています。原因となる主な疾患として,喘息や気管支炎,肺気腫などがあります。また,1秒量から術後合併症の発生リスクをみると,700〜1000 mlでは術後呼吸器不全は起こりやすくなっており,700 ml以下では生命への危険も大きいとされているため,注意が必要です。

 

循環機能の検査

標準12誘導心電図

術前の心電図の測定は,不整脈や心筋虚血などの評価になり,術中や術後に異常が起こった場合に比較するための指標となります。

周手術期は麻酔や手術侵襲に伴い,ストレスホルモンの分泌増加,血圧や酸素分圧,電解質バランスの変動などが容易に起こります。それらは,さらに心筋自動能や刺激伝導系に作用し,不整脈や心筋への酸素供給不足などさまざまな影響を引き起こすリスクを高めます。また,動脈硬化や高血圧,糖尿病などの危険因子を有している場合も多く,注意が必要です。

術前に異常が発見された場合,周術期に注意を要する不整脈を表7に示します。

表7術前に評価と対策を要する不整脈(文献(3)より作成)

術前に評価と対策を要する不整脈(文献3)より作成)

 

不整脈は,虚血性心疾患弁膜症などの心疾患とともにみられることが多いといわれます。

心房細動では弁膜症を合併していることが多く,血栓が認められた場合は抗凝固療法などが行われます。また,心室性不整脈は心室細動に移行する頻度が高いといわれており,抗不整脈薬の投与や除細動の準備を考慮し,房室ブロックでは事前に対処するためにペースメーカーの植え込みや経皮ペーシングが必要になる場合もあります。

循環動態への影響は生命に直結するために,術前に評価を行ったうえで,治療と準備をすることが重要です。

 

画像検査

術前の画像による診断検査では,胸部の異常や気道確保に必要な情報を得るために,胸部単純X線撮影を広く行っています。また,特殊検査として,CT撮影(コンピューター断層撮影:computed tomography)や,MRI検査(核磁気共鳴画像:magnetic resonance imaging),血管造影,エコーなどが必要に応じて行われています。

 

胸部単純X線撮影

胸部X線写真では,異常な陰影の有無や増強から,無気肺や肺炎,気胸などの疾患の判定や胸水貯留などの異常を知ることができます。また,心陰影の大きさや胸郭に対する心臓の占める割合の心胸郭比(cardiothoracic ratio;CTR)によって心不全を把握したりします。その他,気管の太さや長さ,変形の有無などの気道確保に必要な情報を得ることができます(図2)。

図2胸部X線のチェックするポイント

胸部X線のチェックするポイント

 

 

おわりに

手術や麻酔はさまざまな侵襲を生体に及ぼすために,患者さんの状態を術前に評価することはとても重要です。

術前検査は,在院日数の短縮から入院前検査センターなどが設置され早期に済ませることが多くなり,電子カルテの普及からデータなどの情報の共有がしやすくなりました。また,最近では術前訪問だけでなく,手術看護師による術前外来を実施し,情報収集や提供などに積極的に関わる施設もみられます。

術前評価では,それらから得られる既往歴や身体所見などの情報も,検査データと併せてみていくことが大切といえます。

そして検査結果から,今,患者さんに何が起こっているのか,それは手術や麻酔を受けることでどのような影響を受けるのか,そのために何が必要なのか,術中ケアの実際に繋げて考えます。

また,チーム医療では,麻酔科医や外科医と協同して患者さんの問題と対応策について取り組む場面も多くあります。

私たち看護師が検査データをアセスメントすることは,検査結果をもとに行われる治療や処置に迅速に対応することができ,患者さんに対する術中や術後の看護の質を左右するといえます。

 

 


[引用文献]

  • (1)日本臨牀社:広範囲血液・尿化学検査,免疫学的検査(第7版).日本臨牀増刊号.日本臨牀社:260-92,605,645,789,2010.
  • (2)弓削孟文(監修):標準麻酔科学(第6版).医学書院:pp85-6,2011.
  • (3)日本麻酔科学会・周術期管理チームプロジェクト(編):周術期管理チームテキスト(第2版).日本麻酔科学会:pp9-14,p26,p28,p43,p103,2011.
  • (4)竹内登美子(編著):講義から実習へ 高齢者と成人の周手術期看護 外来/病棟における術前看護 第2版.医歯薬出版株式会社:pp52-53,2012.

[参考文献]

  • ・日本糖尿病学会(編):糖尿病治療ガイド(2012-2013).文光堂:2012.
  • ・坂本眞美(編):術前情報収集&術前・術後訪問パーフェクトマニュアル.メディカ出版:pp10-58,2009.

[Profile]
迫平智江(さこひら ともえ)
神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院 中央手術部 手術看護認定看護師
1996年 神戸市立中央市民病院(現 神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院)に入職し,中央手術部に配属され,現在に至る。2008年 手術看護認定看護師資格取得。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]オペナース 2014年創刊号

『オペナース』2014年創刊号

P.34~「術前検査の観察ポイント」

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