1. 看護roo!>
  2. 看護・ケア>
  3. BRAIN>
  4. 脳血管性認知症

2015年09月02日

脳血管性認知症

脳神経外科看護の専門誌『BRAIN』2011年11月号<基礎力を高める! 脳血管障害看護のトピックス 後編>より抜粋。
脳血管性認知症について解説します。

 

Point

  • 脳血管性認知症脳卒中発作によって症状が段階的に悪化する。
  • 脳血管性認知症では人格や判断力は保たれていることが多い。
  • 脳血管性認知症にならないためには脳卒中を予防することが大切。

和田 晃1),阿部琢巳2)
1)昭和大学医学部 脳神経外科 講師,2)昭和大学医学部 脳神経外科 主任教授

 

〈目次〉

 

はじめに

脳血管性認知症と聞くと,脳血管障害によって認知症になることだと,なんとなくわかると思いますが,脳血管障害や認知症とはなんのことでしょうか?

脳血管障害とは脳梗塞脳出血クモ膜下出血に代表される脳の病気の総称で,脳卒中とは,脳血管障害のうち急激に発症したものをいいます。具体的には,脳組織が傷害されることによって,突然手足が動かなくなったり,しびれたり,言葉が話せなくなったり,あるいは意識がなくなったりといった発作的な症状を示します。

その原因は,脳の血管が詰まって血液が流れなくなること(脳梗塞),脳の血管が破綻して出血すること(脳出血,クモ膜下出血)の2つに分かれます。

認知症とは,脳や身体の病気を原因として,記憶・判断力などの障害が起こり,普通の社会生活が送れなくなった状態をいいます。通常の老化による神経細胞の減少より早く,神経細胞が消失してしまう脳の病気です。老化による物忘れなどは,日常生活に支障はないので認知症ではありません。

初期のうちは老化による物忘れと区別がつきにくいものの,認知症は体験のすべてを忘れてしまうのに対し,老化による物忘れは体験の一部を忘れているという点が大きな違いです。

 

認知症の原因

認知症の原因となる主な疾患は,(1)アルツハイマー病,前頭側頭型認知症,レビー小体病などの脳の神経細胞がゆっくりとんでいく「変性疾患」と呼ばれるものや,(2)脳梗塞,脳出血,脳動脈硬化などのために神経細胞に栄養酸素が行き渡らなくなり,その結果,その部分の神経細胞が死に至り,神経ネットワークが壊れてしまう「脳血管障害」などがあります。

また,(3)他に病気があってその結果として認知症状が出ている「二次性認知症」と呼ばれるもので,正常圧水頭症慢性硬膜下血腫脳腫瘍,脳炎,ビタミンなどの代謝・栄養障害,甲状腺機能低下などがあります(表1)。

表1認知症を起こす主な疾患

認知症を起こす主な疾患

日本において,とくに多いのがアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症で,この2つとその混合型を合わせると,認知症全体の8〜9割を占める(1)と考えられています(図1)。

図1原因疾患別認知症の割合

原因疾患別認知症の割合

アルツハイマー型認知症とは,原因はよくわかっていないのですが,脳の細胞が変性(性状,性質が変わる)したり,消失したりした結果,脳が萎縮して高度の知能低下や人格の崩壊が起こる認知症です。両者の違いを表2図2に示します。

表2脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の違い

脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の違い

図2認知症の経過

認知症の経過

かつて日本人の認知症はほとんど脳血管性認知症で,アルツハイマー病はほとんどないとまでいわれていましたが,生活習慣の改善や高血圧の治療の普及により脳血管障害が減ったため,これらの認知症の割合は減少しています。

 

脳血管性認知症とは?

脳卒中によって障害された脳の部分の働きが悪くなり,そのため認知症になることがあり,このような認知症を「脳血管性認知症」といいます。脳に大きな脳梗塞や小さな脳梗塞がたくさんある場合,脳全体の血流が低下している場合など,さまざまな原因で発症します。70~80%は多発性脳梗塞が原因です。

脳血管性認知症では,障害された脳の部位によって,ある能力は低下しているものの別の能力は比較的保たれているといったように,まだら状の能力低下が見られ,記憶障害が重度でも人格や判断力は保たれていることが多いことが特徴です。

また,認知症状が出る前にはっきりした発作があるとは限らず,脳の虚血性病変がじわじわ進行したり,それとわからない小さな発作を繰り返したりして,認知症が目立ってくることもあります。

脳血管障害の場合,画像診断で微小病変が見つかっているような場合でも,これらが認知症状の原因になっているかどうかの判別は難しく,これまでは脳血管性認知症と診断されてきたが,実際はむしろアルツハイマー病が認知症の原因となっている,いわゆる「脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症」である場合が少なくありません。

 

脳血管性認知症の画像所見

認知症をきたす疾患の鑑別は,臨床症状や経過,神経学的所見,神経心理学的所見により行われますが,とくに初期の段階では困難なことが多く,頭部CTMRI脳血流SPECTなどの画像所見も補助的診断として行われます。

脳血管性認知症を起こしやすい病変のタイプで一番多いのは,大脳白質が広く障害されるタイプ(ビンスワンガー病),小さな梗塞が多発しているタイプ(多発梗塞性認知症)です(図3)。

図3ビンスワンガー病と多発梗塞性認知症のCT像

ビンスワンガー病と多発梗塞性認知症のCT像

A:62歳症例の脳MRI(T2画像)。正常例。
B:69歳のビンスワンガー病症例。大脳白質に慢性虚血部位が高信号域として認められる。
C:73歳の多発梗塞性認知症症例。両側側脳室前角周囲,放線冠に多発梗塞を認める。

このタイプは高血圧と強く関係しているといわれていますが,大きな脳梗塞や脳出血,クモ膜下出血の後でも認知症になる可能性があります。脳血流SPECT検査では,脳梗塞巣に対応した局所的な非対称性の脳血流低下部位が前頭葉優位に散在します(図4)。ビンスワンガー病では前頭葉だけでなく,大脳皮質全体の脳血流低下が見られることが多くあります。

図4前頭葉優位に散在する脳血流低下部位

前頭葉優位に散在する脳血流低下部位

73歳女性症例。もともと軽度の認知症を指摘されていたが,一過性脳虚血発作を頻回に起こした後,右脳梗塞(A)を発症。精査で右内頸動脈起始部に高度狭窄(B)を認めた。脳血流検査(IMP,安静時)では,右脳梗塞巣に一致した前頭葉の血流低下(C)を認める。認知症状はさらに悪化した。

 

脳血管性認知症の症状

脳血管性認知症ではどんな症状が出やすいかというと,脳のどの部分が障害を受けたかによって,症状も異なります。

脳の健康な部分とそうでない部分が分かれるため,認知症の症状もいわゆる「まだら認知症」というように,一部の能力は健康時と変わらないのに,ある部分では能力が著しく落ちるというような状態になります。

軽いうちは常識は保たれ,うつ的な気分になることが多く,はしゃいだりはしません。しかし,感情の揺れは激しく(感情失禁:すぐに泣いたり怒ったりする),片麻痺,歩行の障害,動作緩慢,発音の不明瞭などの症状をしばしば伴います。進行すると言葉も発せず,飲み込みもできず,寝たきり状態になります。

また高血圧,糖尿病脂質異常症,喫煙など心疾患や動脈硬化の危険因子を持っていることが多いことも特徴です。

 

脳血管性認知症の治療

現在,残念ながら根本的な治療や認知症状を軽くする手段はありません。症状の一部を和らげたり,精神活動を少しでも高めたりすることを願って,いくつかの薬が使われることがありますが,認知症そのものには無力です。認知症にならないよう努力するしかありません。

では認知症にならないためにはどうしたらよいでしょうか。脳血管性認知症は脳血管性障害(多くは脳梗塞)の結果なので,これを予防することが合理的かつ最も有効な方法です。

認知症を起こしやすいタイプで一番多いビンスワンガー病と多発梗塞性認知症ですが,これは高血圧との関係が強く,脳の動脈硬化が強い人に起きやすいです。最も効果的な治療は早い時期から高血圧をきちんと治療することで,これによって動脈硬化の進行をできるだけ抑えることができます。

では動脈硬化の進んだ人はどうすればよいでしょうか。血圧の下げすぎはよくありませんが(脳の血流が減る危険があるため),高血圧をきちんと管理することが大切です。もちろん他の危険因子(糖尿病,脂質異常症など)の治療も大切ですが,これらの因子の関与は高血圧より弱いといわれています。

 

脳梗塞の予防,再発の予防

脳梗塞や脳出血の危険因子として高血圧,脂質異常症,糖尿病,心疾患,食塩の過剰摂取,運動不足,肥満,飲酒,喫煙などの生活習慣があります。この危険因子を減らすことが予防になります。

脳梗塞には,動脈硬化性血栓性脳梗塞と,脳塞栓(心臓のなかにできた血栓が剥がれて脳で詰まるもの,心房細動という不整脈に伴うものが大部分)の2つの型があります。脳梗塞にならないためには,動脈硬化にならないように心臓病にならないようにすればよいのですが,これがなかなか難しいのが現実です。

動脈硬化病変においてアテロームという粥腫の破壊によって血管内皮が障害されると,そこに壁在血栓が形成され,脳梗塞が引き起こされます。この血栓は血小板が凝集することから形成されはじめるため,血栓の予防には血小板の機能を抑える薬(アスピリンやチクロピジン)が用いられます。これらの薬剤は脳梗塞の発症やその再発をある程度は減らします。

「無症候性脳梗塞」や「隠れ脳梗塞」という言葉を耳にしたことがあると思いますが,これはCT,MRIでたまたま見つかった小さな梗塞で,症状がないものをいいます。これが独立した因子として将来の認知症の前触れになるか,本物の脳梗塞の前触れなのかどうか議論されていますが,まだ本当のところはわかっていません。高血圧の人に多いのは事実です。

大きな脳梗塞や多発性の皮質梗塞は,心臓のなかにできた血栓が剥がれて脳のなかで詰まること(脳塞栓)によって起こるものが多く,このタイプは再発しやすいのです。

原因としては心房細動という不整脈が圧倒的に多く,今まで不整脈の既往がなかった人でも,高齢になると心房細動が増えます。しかし,この心房細動を規則正しい脈に戻すことは難しいので,心臓のなかに血栓ができないようにするのです。

脳塞栓の再発予防には,血液の凝固を抑える薬(ワルファリン)が有効です。問題は心房細動の人に対する脳塞栓の一次予防をどうするかです。一次予防にもワルファリンが有効であることが最近確認されましたが,この治療はまだ広くは行われていません。

したがって脳血管性認知症にならないためには,脳卒中を予防することが大切なのです。日本脳卒中協会は脳卒中に関する知識を普及させることを目的に,わかりやすい「脳卒中予防十カ条」を作成し,啓発活動を行っています。あたりまえのような内容ですが,脳卒中を患って不安が強い患者さんやご家族に対し,わかりやすく説明する際に役立つと思いますので,参考にしてみてください(表3)。

表3脳卒中予防十か条(社団法人日本脳卒中協会)

脳卒中予防十か条(社団法人日本脳卒中協会)

 

認知症患者を看護するには

脳血管障害の看護をするうえで,認知症の既往のある方や脳血管性認知症の患者さんに接する機会は今後さらに増えていくことが予想されます。

認知症の患者さんというと,何度も同じことを尋ねられたり,一生懸命看護しても暴言を吐かれたり,感謝の気持ちを示してもらえなかったりなどの理由で,看護する側も苦手意識を持っている方が多いのではないでしょうか? たしかに身体に障害を持つ患者さんの一般の看護にはない大変さがあります。

認知症の患者さんには,精神的な不安や混乱などが背景となって,妄想・幻覚・無気力・不安・徘徊・失禁・暴言・暴力などの症状が現れます。これらの障害は周囲との関わりのなかで悩んだり,傷ついたり,興奮したりする感情的なもつれが要因となって現れるともいわれています。これらの障害をなくしていく関わり方,認知症の患者さんが安心しリラックスできるような接し方が大切です。

具体的な注意点や接し方,支え方を表4にまとめましたので,看護の参考にしてみてください。

表4認知症の看護

認知症の看護

 

 



[PROFILE]

和田 晃(わだ あきら)
昭和大学医学部 脳神経外科 講師
1970年 生まれ。1996年 昭和大学医学部卒業。1997年 公立昭和病院 脳神経外科,1998年 山梨赤十字病院 脳神経外科,2006年 昭和大学医学部 脳神経外科 講師,2007年 旭川赤十字病院 脳神経外科を経て,2009年より現職。

阿部琢巳(あべ たくみ)
昭和大学医学部 脳神経外科 主任教授
1959年 生まれ。1985年 昭和大学医学部卒業。1989年 医学博士,同年 公立昭和病院 脳神経外科 主事,1995年 ドイツ・ハンブルグ大学脳神経外科留学,1997年 昭和大学医学部 脳神経外科 講師を経て,2002年より現職。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2011 医学出版

[出典]BRAIN 2011年11月号

P.252~「脳血管性認知症」

著作権について

この連載

  • くも膜下出血の手術 [11/17up]

    『BRAIN』2013年第1号<脳神経外科手術の合併症と術後ケア>より抜粋。 くも膜下出血の手術について解説します。 Point 術前は再出血予防,術後は脳血管攣縮対策が治療の要です。 脳血管攣縮が起きる... [ 記事を読む ]

  • 高血圧性脳出血の治療と看護 [08/30up]

    脳神経外科看護の専門誌『BRAIN』2011年11月号<基礎力を高める!脳血管障害看護のトピックス>より抜粋。 高血圧性脳出血の治療と看護について解説します。   Point 脳出血の原因は高血圧が主役... [ 記事を読む ]

  • 脳血管性認知症 [09/02up]

    脳神経外科看護の専門誌『BRAIN』2011年11月号<基礎力を高める! 脳血管障害看護のトピックス 後編>より抜粋。 脳血管性認知症について解説します。   Point 脳血管性認知症は脳卒中発作によ...

  • 脳室ドレーン,脳槽ドレーン,腰椎ドレーン [03/10up]

    『BRAIN』2013年第3号<これだけは覚えたい!身につけたい!脳神経外科患者の集中治療ケア>より抜粋。 脳室ドレーン,脳槽ドレーン,腰椎ドレーンについて解説します。 Point 正常な髄液循環,髄液の正常... [ 記事を読む ]

  • 脳神経外科術後の看護ポイント [10/09up]

    脳神経外科看護の専門誌『BRAIN』2013年第1号<脳神経外科手術の合併症と術後ケア>より抜粋。 脳神経外科術後の看護ポイントについて解説します。   Point 正確にフィジカルアセスメントを行い,... [ 記事を読む ]

関連記事

いちおし記事

シバリングの対応、大丈夫?

見過ごすと低酸素血症や眼圧・脳圧の上昇につながることも…! [ 記事を読む ]

人気トピック

もっと見る

看護師みんなのアンケート

あなたを癒やしてくれる存在とは?

投票数:
1291
実施期間:
2019年08月02日 2019年08月23日

あなたの勤務先にはローカルルールってある?

投票数:
1117
実施期間:
2019年08月06日 2019年08月27日

病棟の申し送り、どれくらい時間をかけてる?

投票数:
1104
実施期間:
2019年08月09日 2019年08月30日

「あぁ、看護師でよかった」と思ったことはある?

投票数:
988
実施期間:
2019年08月13日 2019年09月03日

あなたの職場はマタハラある?

投票数:
885
実施期間:
2019年08月16日 2019年09月06日

あなたの推しスイーツがあるコンビニは?

投票数:
601
実施期間:
2019年08月20日 2019年09月10日
もっと見る

今日の看護クイズ 挑戦者4599

40歳の男性。一日20本程度タバコを吸っています。検診で高血圧を指摘され、外来を受診しました。来院時の血圧は168/102mmHgでしたが、再検査したところ170/102mmHgとなりました。以下のうち、看護師が行う生活指導の内容として、最も優先度が高いものはどれでしょうか?

  • 1.運動を控えるよう指導する。
  • 2.毎日血圧を測定し記録をつけるよう指導する。
  • 3.禁煙するよう指導する。
  • 4.水分をよく摂取するよう指導する。
今日のクイズに挑戦!