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2015年08月12日

B型肝炎とC型肝炎 —母子感染予防対策は?

『BIRTH』2013年1月号<妊娠と感染症 忘れてはならないエッセンス>より抜粋。
B型肝炎とC型肝炎および母子感染予防について解説します。

 

Point

  • B型肝炎とは? 感染の現状とは?
  • C型肝炎とは? 感染の現状とは?
  • 母子感染予防対策について学びましょう!

飯塚美徳
(千葉市立海浜病院 産科統括部長)

〈目次〉

 

はじめに

日本における肝がんによる年間死亡者数は約3万人であり,肝がんはがんによる死亡原因の第3位です。

B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus;HBV)とC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus;HCV)は慢性肝炎,肝硬変,肝がんの原因ウイルスであり,肝がんの原因としておおよそ15%がHBV感染,75%がHCV感染とされています。

一般にB型肝炎とC型肝炎はウイルスを含む人の血液を介して感染するため,母子感染もその感染経路の1つとして挙げられます。そのため現在日本において,すべての妊婦にB型肝炎とC型肝炎のスクリーニング検査としてHBs抗原検査とHCV抗体検査が行われています。

 

B型肝炎とは

一過性感染と持続感染

HBVは,1968年に発見されたDNAウイルスで,血液・体液を介して感染します。そして,感染した時期,感染時の宿主の免疫能によって,感染してから数か月の後に身体からウイルスが排除され,その後に免疫ができる一過性感染と,長期にわたってウイルスが肝臓にすみついてしまう持続感染(キャリア状態)の2種類に大別されます(図1)。

図1HBV感染様式

HBV感染様式

 

感染経路

一過性感染は思春期以降の宿主の免疫能が十分確立されてからのHBV感染です。急性肝炎として発症し,ごく一部劇症肝炎として死亡する例がみられますが,大多数例では一過性感染としてその後治癒し終生免疫を獲得します。感染経路の大部分はHBVキャリアからの性行為感染と考えられます。

一方,持続感染の多くはHBVキャリアの母親からの分娩時における血液感染によって起こります(母子感染)。また,一部は乳幼児期にHBVキャリアの血液または体液が体内に侵入することによっても持続感染が成立します。その理由として乳幼児期は免疫寛容の状況にあり,HBVが体内に侵入してきても自己の免疫システムが未熟なため,HBVを非自己として認識できないことが挙げられます。

一般に持続感染が成立しやすいのは3歳頃までのHBV感染であり,思春期になると免疫システムが確立するため,HBVに感染してもほとんど一過性感染であり,持続感染になることはまれでした。しかし,近年わが国においても成人の急性B型肝炎後にも持続感染となる症例が増加しています。

それは従来日本人のHBVの大部分を占めるHBVの遺伝子型(ジェノタイプ)がBまたはCであったのに対し,近年国際交流がさかんになり,HBVの遺伝子型A(欧米型,アジアアフリカ型)による性行為感染を理由とした急性肝炎の患者数が急増しているからです。遺伝子型AのHBVの急性肝炎罹患後のキャリア率は10%に達します(1)

 

B型肝炎の血液マーカー検査

HBV粒子の構造

HBV粒子はウイルスDNAを包むコア粒子とこれを被う外被との二重構造から成り立っています。コア粒子を構成する蛋白がHBc抗原であり,外被を構成する蛋白がHBs抗原です。HBc抗原は外被に包まれているため通常は測定できません。

HBc抗体はHBc抗原に対する抗体で,HBV感染早期から出現します。HBs抗体はHBs抗原に対する抗体であり,中和抗体(感染防御)としての働きを持っています。また,HBe抗原は感染した肝細胞の中でHBVが増殖する際に過剰に作られ,HBVのコア粒子を構成する蛋白とは別個に血液中に流れ出した可溶性の蛋白です。

HBe抗原が陽性ということは血中のウイルス量が多く,感染力が強いことを意味します。HBe抗体はHBe抗原に対する抗体ですが,中和抗体としての働きはありません(表1表2)。

表1HBVマーカー検査

HBVマーカー検査

表2HBVマーカー検査と臨床像

HBVマーカー検査と臨床像

 

HBVキャリアでは多くの場合,10歳代から30歳代にかけてHBV遺伝子の一部に変異が生じ,血液中に流れ出すHBe抗原が作られなくなるとHBe抗体が作られようになります。HBe抗体陽性になると感染力は低くなり,ほとんどの場合肝炎の活動も沈静化します。

ただし,HBe抗体陽性になっても慢性肝障害が持続する症例はこの変異株による肝障害と考えられています。HBVキャリアにおけるHBVマーカー検査の推移を図2に示します。

図2HBVキャリアにおけるHBVマーカーの推移

HBVキャリアにおけるHBVマーカーの推移

 

ここに注目!スクリーニング検査陽性の判定が意味することは?

HBs抗原が陽性であることはHBV感染が現在成立し,その個体の肝組織にHBVが存在していることを示しています。そのため,妊娠初期のスクリーニング検査でHBs抗原陽性と判定された妊婦はほとんどがHBVキャリア(持続感染者)です。

一方,妊娠初期のスクリーニング検査でHCV抗体が陽性と判定された妊婦は,これまでにHCVの感染を受けたことを意味しているだけです。そのため,HCV抗体陽性者=HCVキャリアではありません。HCV持続感染者(キャリア)とHCV感染既往者が含まれています。

 

日本の現状

現在,日本でのHBVの持続感染者は130万人と推定されています。

近年,日本における妊婦のHBs抗原陽性率は低下しており,0.3〜0.5%です。また,HBs抗原陽性妊婦のHBe抗原陽性率は約25%です。さらに「B型肝炎母子感染防止事業」が全国的に実施された1986年以降に生まれた若い世代ではHBs抗原陽性率は0.04%程度になっています。

 

ここに注目!児のHBs抗原検査

児のHBs抗原検査は従来(1995年3月まで),出生直後のさい帯血を用いて行っていましたが,血液採取時にさい帯周囲に付着した母体血が混入する場合があるため,現在では生後1か月の児の血液を用いてHBs抗原検査を行っています。重要なことは,HBIGを出生後なるべく早く(24時間以内),新生児に投与することです。

 

B型肝炎の母子感染予防

母子感染のリスク

妊婦がHBVキャリアの場合,母子感染防止対策をとらないと出生児の約30%がHBVキャリアとなりますが,児がHBVキャリアになるか否かは妊婦のHBe抗原が関係しています(2)。すなわち,HBe抗原陽性妊婦(ハイリスク群)から出生した児を放置した場合のキャリア化率は80〜90%とされています。

一方,HBe抗原陰性の妊婦(ローリスク群)から出生した児はキャリアになることはほとんどありませんが,10%程度に一過性感染が起こり,急性肝炎や劇症肝炎が発生します。

B型肝炎母子感染防止対策

B型肝炎の母子感染は通常分娩時に起こるとされていますが,胎内感染が成立する場合もあります。分娩時の感染はB型肝炎母子感染防止対策をとることにより母子感染を防ぐことはできますが,胎内感染をした場合,児のキャリア化を防ぐことはできません。

現在,HBs抗原陽性のHBVキャリア妊婦より出生したすべての新生児に対して,B型肝炎母子感染防止対策を行います(図3)。

図3B型肝炎母子感染防止対策のプロトコール

B型肝炎母子感染防止対策のプロトコール

母親がHBe抗原陰性(ローリスク群)の場合,()内は省略することができる。
(画像は掲載時のものです。2013年10月18日よりB型肝炎母児感染予防のプロトコールが変更。参考:厚生労働省

B型肝炎母子感染防止対策として,HBe抗原陽性妊婦から出生した児に対してはHB免疫グロブリン(HBIG)を出生後早期(遅くとも48時間以内)と生後2か月の2回に筋肉注射を行い,B型肝炎ワクチンを生後2,3,5か月に接種します。これによりHBe抗原陽性妊婦より出生した児であっても95〜97%でキャリア化を阻止することができます。一方,HBe抗原陰性妊婦から出生した児に対しては,上記のプロトコールより生後2か月時のHBIG注射を省略することは可能です。

また生後1か月の児に対して,HBs抗原検査を行います。この時点でHBs抗原陽性であれば胎内感染が成立したと考えます。また,HBe抗原陰性妊婦から出生した児においては,この検査は省略することができます。

さらに,生後6か月に児のHBs抗原およびHBs抗体検査を行います。HBs抗体陽性であれば,予防措置は成功したと考えます。HBs抗体検査陰性または低値で,HBs抗原陰性の場合は免疫が獲得できていないのでB型ワクチンの追加接種を行います。

2004年,厚生労働省よりB型肝炎母子感染防止対策が適切に行われずにB型HBVキャリアとなった症例が報告されています。患者教育の不徹底,産科・小児科の連携の不備による未接種や不完全接種などがこの原因とされています。

母子感染防止のための処置は妊娠から生後6か月までと長期にわたることから,産婦人科と小児科の緊密な連携が重要であることが指摘されており,これらのことを周知徹底しなくてはならないとしています(3)。今後このようなことが起こらないためにも,HBVキャリア妊婦に対してB型肝炎母子感染防止対策の重要性についての助産師指導は大切と思われます。

また,妊婦がHBVキャリアで夫が未感染(HBs抗原・HBs抗体ともに陰性)であれば,夫にHBワクチンの接種を勧めます。

 

ここに注目!ワクチンで防げる病気

B型肝炎はワクチンで防げる病気(vaccine preventable diseases;VPD)であり,WHO(世界保健機関)は,世界中の子どもたちに対して生まれたらすぐにHBワクチンを定期接種として接種するように指示し,ほとんどの国において定期接種になっています。しかし,日本では未だB型肝炎ワクチンは任意接種であり,B型肝炎キャリアの母親より出生した児以外に接種されることはあまりありませんでした。

しかし,近年ワクチンの同時接種が行われるようになり,生後2か月からHibワクチン,小児用肺炎球菌ワクチン,ロタワクチンとともにHBワクチンの同時接種が日本でも推奨されています。

 

C型肝炎とは

特徴と現状

HCVは1989年に発見されたRNAウイルスで,血液を介して感染します。HCV感染においても一過性感染と持続感染(キャリア状態)がありますが,B型肝炎と異なり,どの時期に感染しても容易に持続感染になりやすいのが特徴です(図4)。

図4HCVの感染様式

HCVの感染様式

 

またC型肝炎は肝硬変,肝がんへの移行率が高いとされています。現在のHCVキャリアの多くは,母子感染以外の輸血や血液製剤を原因として感染したため,輸血血液のHCVスクリーニングが行われた1992年以降のHCV感染は激減しており,現在は母子感染が主因となっています。

1995〜2000年の6年間に,全国の日赤血液センターにおいて初回献血者348.6万人について,2000年時点における年齢に換算して集計した年齢別のHCV抗体陽性率をみると,16〜19歳で0.1%,20〜29歳で0.2%,30〜39歳で0.8%,40〜49歳で1.3%,50〜59歳で1.8%,60〜69歳で3.4%となっています(4)

わが国においては新たな感染によるHCVキャリアの発生はまれであるため,15歳未満の年代でのHCVキャリア率は0.02〜0.05%になっています。

C型肝炎の血液マーカー検査

C型肝炎のスクリーニング検査としてHCV抗体検査が行われています。HCV抗体陽性であることはこれまでにHCVの感染を受けたことを意味しています。HCV抗体陽性者の中には,感染既往者(一過性感染後)と持続感染者が含まれており,それらを鑑別するためにHCV-RNA定量検査を行います。

HCV-RNA定量検査でHCV-RNAが陽性(検出)であればHCV持続感染者(キャリア)であり,HCV-RNAが陰性(検出せず)であればHCV感染既往者と判断します(表3)。一般妊婦のHCV抗体陽性率は0.4〜0.7%であり,その70%がHCV-RNA陽性です。

表3HCVマーカー検査

HCVマーカー検査

 

C型肝炎の母子感染予防

HCVの母子感染の大部分は分娩時に起こるとされており,HCVキャリア妊婦から出生した児のキャリア化率は約10%です(5)

児キャリアのリスク因子として,母体のHIVの重複感染(ただし,感染率が3〜4倍上昇すると報告されています),母体の血中HCV-RNA量の高値(約6.0LogIU/mL以上とする報告が多いですが,高値であっても母子感染例は多くありません)があります(5)

このようにリスク因子はわかっていますが,C型肝炎母子感染を防止する有効な手段は現在のところありません。そして,予定帝王切開による分娩がHCV母子感染を防止できるか否かについては否定的な意見と肯定的な意見があります。2006年のコクランレビューにおいてはランダム化比較試験成績がない時点でHCVキャリア妊婦に帝王切開を勧めるべきでないとしています(6)

一方で,産婦人科診療ガイドラインには,「HCV-RNA量高値群の妊婦の分娩様式を決定する際には日本における分娩様式による母子感染率を提示し,患者・家族に選択させる」との記載もあります(7)

 

ここに注目!母乳育児は?

妊婦がHBVキャリアやHCVキャリアであっても,児に母乳栄養を行うことは問題ありません。ただし,乳頭に明らかな傷があったり,出血がある場合には一時的に授乳を控えます。また,キャリア妊婦から他の新生児へ母乳を与えることも避けるべきです。

 

おわりに

現在,日本において,B型肝炎およびC型肝炎キャリアは,世代が若くなるごとにその数が減ってきています。B型肝炎は母子感染だけでなく,性行為感染も問題になっていますが,今後すべての児に対してB型肝炎ワクチン接種が行われればこの問題も解決されると思われます。

C型肝炎感染については,現在C型肝炎ワクチンの実用化には至っていません。B型肝炎ワクチンのような積極予防対策が存在しないため,感染源との接触をさけて感染を未然に防ぐことが重要です。

 

 



[Profile]
飯塚美徳(いいつか よしのり)
千葉市立海浜病院 産科統括部長

1988年 千葉大学医学部卒業,千葉大学医学部 産婦人科教室,1998年 千葉大学大学院医学研究科修了,ベイラー医科大学 産婦人科留学を経て,2004年より千葉市立海浜病院勤務。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2013 医学出版

[出典]BIRTH 2013年1月号

P.25~「B型肝炎とC型肝炎 —母子感染予防対策は?—」

著作権について

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