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2015年08月26日

薬を使わない高血圧の治療法は?

『循環器ナーシング』2014年2月号<高血圧患者さんを理解して看護のエキスパートに! >より抜粋。
薬を使わない高血圧の治療法について解説します。

 

Point

  • 減塩が最も重要! 減塩指導には,実際の食塩摂取量の評価を行う必要がある!
  • 減量指導は減塩にもつながる!
  • 「ニコニコペース」で継続できる運動を!
  • お酒はほどほどに!
  • 野菜・果物の摂取も効果的!

坂田智子
(九州大学大学院 医学研究院 病態機能内科学 研究生)

土橋卓也
(国立病院機構九州医療センター 高血圧内科 医長)

はじめに

食生活やライフスタイルの変化により,メタボリックシンドロームに代表される代謝異常合併高血圧が増えています。減塩や肥満の是正などを中心とした生活習慣の改善は,高血圧の管理だけではなく,合併症の管理や予防のためきわめて重要です。
本コラムでは,薬を飲んでいる人も飲んでいない人も,今日からできる高血圧治療,すなわち生活習慣の修正について説明します。

 

〈目次〉

 

減塩

食塩摂取量の現状

生活習慣修正項目のなかでも減塩は最も重要であり,とくに食塩摂取量の多い日本では減塩指導が大きな課題です。

私たちは,実際にどれくらい塩分をとっているか検討するため,24時間家庭蓄尿による食塩排泄量の評価を外来高血圧患者に行っています(メモ1)。その結果では,男性578名の食塩排泄量は平均10.6g/日,女性755名は平均8.6g/日であり,6g/日未満を達成していたのは男性6.6%,女性10.3%に過ぎませんでした(1)

また,アンケート調査において減塩を意識していると答えた者と意識していないと答えた者の食塩排泄量の差は1g程度に過ぎず,「減塩をしている」という主観的減塩の意識イコール実際の減塩にはつながらないといえます(図1)。

そのため減塩指導をする際は,対象者が実際にどれくらい塩分を摂取しているかを把握することが大切です。

メモ1食塩摂取量の評価法

食塩摂取量の評価法のなかでも,24時間蓄尿による食塩排泄量の評価が最も信頼性が高いと考えられています。

図1減塩の意識と実際の食塩排泄量(文献1より引用)

減塩の意識と実際の食塩排泄量(文献1より引用)

 

 

食塩摂取量の評価法

食塩摂取の評価方法には表1(2)に挙げているようなものがあり,尿中にどれくらい塩分が出たかを把握する「排泄量の評価」と,食事内容にどれくらい塩分が含まれるかを把握する「摂取量の評価」に分けられます。

表1食塩摂取量の評価法(文献2より引用)

食塩摂取量の評価法(文献2より引用)

 

尿ナトリウム(Na)排泄量の測定による評価

1日分の尿をためて評価する24時間蓄尿により測定した食塩排泄量は最も信頼性が高いですが,簡便ではないため繰り返しの評価にはあまり向きません(メモ2)。一方,随時尿による食塩排泄量推定値は簡単に実施できますが,尿中食塩排泄に日内変動があることや,食事の影響が避けられないことを理解して用いる必要があります。

メモ2ココに注意①

蓄尿をすること自体が対象者の食事内容や行動に影響を与える可能性があるため,一回の測定が日常の食生活を反映しているとは限らないことにも注意が必要です。

食塩摂取量の評価

食事内容の評価には表1に挙げているような方法がありますが,信頼性の高い評価法は煩雑です。

そこで私たちは,自己記入アンケート方式の塩分チェックシートを開発しました(3)

これを用いると,半定量的に塩分摂取量を把握し,さらに塩分をどこからとっているかを評価することが可能です(図2)。前述したように,主観的な減塩の意識は必ずしも実際の減塩につながっていないことが多く,このチェックシートと併用して排泄量を評価することで,より効果的な減塩指導を行うことが可能です。

図2塩分チェックシート(文献3より引用)

塩分チェックシート(文献3より引用)

 

適正体重の維持

肥満は高血圧の重要な発症要因であるとともに,さまざまな代謝異常(糖,脂質尿酸など)を合併します。肥満を解消することでの降圧効果もわかってきており(4),適正体重の維持は血圧管理に重要です。

具体的には,肥満者はBMI(Body Mass Index:体格指数)で25未満を目標に減量し,肥満でない者はこのレベルを維持するように長期的に無理のない減量を行えるよう指導します。

また,食塩摂取量の最大の規定要因は体重です。つまり,肥満の患者ほど食塩摂取量が多いのです。したがって,肥満やメタボリックシンドロームを合併している高血圧患者では,エネルギー制限による減量が減塩にもつながると考えられます。

運動

減量を実行するうえでも運動は有効であり,血圧低下作用も確立されています。しかし,すべての患者に適応があるわけではなく,効果にも個人差があります(メモ3)。

また,『健康づくりのための身体活動基準2013』によると,運動のみならず,生活活動も含めた身体活動全体に着目することの重要性が示されています(5)

日常生活のなかで,現在の身体活動量を少しでも増やすべく,ごく短い時間の積み重ねでよいので,個々人のライフスタイルに合わせて指導します。

メモ3運動の適応のない者

血圧が180/110mmHgを超えるようなⅢ度高血圧の患者は,運動によって得られる効果よりも,心血管病による事故発生の危険性が高いので,血圧を下げた後に運動指導を行います。また,二次性高血圧患者も明確な原因が存在するため,運動は第一選択とはなりません。

運動の強度

具体的な運動の強度については,最大酸素摂取量の50%としている指針が多くみられます。

これは,自覚的所見から推定するボルグ・スケールで「ややきつい」程度です。この強度の運動は安全に行うことができ,疲労も少なく継続率が高いため,「ニコニコペース」と呼ばれており,高血圧患者での血圧降下効果も確認されています(6)

日本高血圧学会による『高血圧治療ガイドライン2009』では,中等度の強さの有酸素運動を中心に,定期的に(毎日30分以上を目標に)行うとしています。表2を参考に,「ややきつい」程度をめどに運動,身体活動量の増加を行うよう指導します。

表2中等度身体活動の例(文献7をもとに作成)

中等度身体活動の例(文献7をもとに作成)

 

運動の方法

高血圧の発症予防や降圧効果を得る運動として,有酸素運動が推奨されています。

有酸素運動には歩行,ジョギング,水泳,自転車などがあります。また,重りやダンベル,ゴムチューブなどで筋力,筋持久力を高めるレジスタンストレーニングも降圧効果があると報告されています(8)。有酸素運動と組み合わせると,降圧のみならず,骨粗しょう症・腰痛防止などにも有効です(メモ4)。

メモ4レジスタンストレーニングのポイント

運動中は,呼吸を止めず反動をつけないことが重要です。

また,福岡大学田中宏暁教授らは,前述した「ニコニコペース」でのステップエクササイズを提唱しています(9)

ステップエクササイズとは,台を昇っては降りる動作を繰り返すのみの単純な運動です。誰でも,天候に関係なく室内で気軽に実施でき,継続率も高くなります。階段の昇り降りが楽になったり,足に筋肉がついたりという効果が日常生活のなかで早く実感できます。

降圧とともにロコモティブシンドロームの予防も期待でき,とくに高齢者には有用である可能性があります。いずれの運動においても,対象の患者に合わせた無理のない方法を提案することが大切です。

アルコールの制限

飲酒後,数時間は血圧が下がりますが,翌朝には飲んでいない日よりも血圧が上昇すると報告されています(10)。つまり晩酌は夜間血圧低下,早朝血圧上昇の一因となります。また,多数の試験を統合した解析であるメタ解析でも,アルコール制限を行うことによる血圧低下効果が証明されています(4)

つまり高血圧患者には,飲酒習慣の有無や飲酒量を確認したうえで節酒の指導を行う必要があります。

具体的には,エタノール換算で男性は20~30mL/日(およそ日本酒1合,ビール中ビン1本,焼酎半合弱,ウィスキー・ブランデーダブル1杯,ワイン2杯弱に相当)以下,女性はその約半分の10~20mL/日以下とすべきです。

野菜・果物の摂取

野菜や果物などカリウムを多く含む食品の積極的摂取は,ナトリウムつまり塩分を体外に排泄することで降圧をもたらします(メモ5)。

メモ5ココに注意②

重篤な腎機能障害がある人では,高カリウム血症をきたすリスクがあるので積極的な摂取は推奨されません。また,果物の過剰摂取はカロリー過多となる可能性があるため注意が必要です。

喫煙

喫煙自体の血圧への影響ははっきりしておらず,高血圧の原因とは現時点では考えられていません。

しかし1本の紙巻きタバコを吸った場合,15分以上持続する血圧上昇を引き起こすことが示されており,ヘビースモーカーでは血圧上昇が持続する可能性もあります。喫煙は心血管病の明らかな危険因子であり,受動喫煙でも同様のリスクが上昇するため,血圧への影響に関わらず禁煙指導も併せて行う必要があります。

おわりに

本コラムでは,『高血圧治療ガイドライン2009』が提唱する生活習慣の修正項目に従って解説しました。

ここに挙げた各項目の修正による降圧は,収縮期血圧で3~6mmHgと必ずしも大きくはありませんが,複合的に行うことでより大きな効果が期待できます。高血圧患者さんをみる際には,個人の修正項目を抽出してきめ細やかな指導を行うことが重要と思われます。

 

 


[引用・参考文献]

  • (1)Ohta Y et al.: Relationship between the awareness of saltrestriction and the actual salt intake in hypertensive patients. Hypertens Res, 27: 243-246, 2004.
  • (2)日本高血圧学会減塩委員会(編):日本高血圧学会減塩委員会報告2012.2012.
  • (3)土橋卓也ほか:高血圧患者における簡易食事調査票『塩分チェックシート』の妥当性についての検討.血圧,in press.
  • (4)Dickinson HO et al.: Lifestyle interventions to reduce raised blood pressure: A sustematic review of randomized controlled trials. J Hypertens, 24: 215-233, 2006.
  • (5)運動基準・運動指針の改定に関する検討会:健康づくりのための身体活動基準2013.
  • (6)Kiyonaga A et al.: Blood pressure and hormonal response to aerobic exercise. Hypertension, 7: 125-131, 1985.
  • (7)厚生労働省:健康づくりのための運動指針2006(エクササイズガイド).2006.
  • (8)Cornelissen VA et al.: Impact of resistance training on blood pressure and other cardiovascular risk factors. Hypertension, 58: 950-958, 2011.
  • (9)田中宏暁:高齢者の筋力・筋機能向上プログラム 単純ゆえに継続でき効果も早いステップエクササイズ.Sports Medicine,50(4):19-21, 2003.
  • (10)Abe H et al.: Biphasic effect of repeated alcohol intake on 24-hour blood  pressure in hypertensive patients. Circulation, 89: 2626-2633, 1994.

[Profile]

坂田智子(さかた さとこ)
九州大学大学院 医学研究院 病態機能内科学 研究生
2006年 佐賀大学医学部卒業。九州医療センターでの初期臨床研修後,2008年 第二内科入局。後期研修を行い,2012年より久山町研究に従事。

土橋卓也(つちはし たくや)
国立病院機構九州医療センター 高血圧内科 医長
1980年 九州大学医学部卒業。同年 第二内科入局。米国クリーブランドクリニック留学を経て,2003年4月より現職。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]循環器ナーシング 2014年2月号

循環器ナーシング2014年2月号

P.39~「薬を使わない高血圧の治療法は?」

著作権について

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