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2015年08月07日

在宅での褥瘡治療における薬剤やドレッシング材の使い分け

『WOC Nursing』2014年10月号<在宅で考える、褥瘡治療の基本と実際>より抜粋。
在宅での褥瘡治療における薬剤やドレッシング材の使い分けについて解説します。

 

Point

  • どのような目的で,薬剤・ドレッシング材を使用するのかを明確にする
  • 褥瘡ダイアグラムを参考にして褥瘡の創状態を判断する
  • 浅い褥瘡での薬剤・ドレッシング材の使い分けを理解する
  • 深い褥瘡での炎症期,肉芽・上皮形成期での使い分けを理解する

河合修三
皮フ科シュウゾー 院長,大阪皮膚科医会 会長

〈目次〉

 

はじめに

団塊の世代が「後期高齢者」の年齢に達する10年後に,「後期高齢者」は現在の1.4倍の2179万人に膨らみます。高齢化社会が増々進むため,厚生労働省は,病院主体から,在宅重視の「地域完結型」にシフトしようとしています。

在宅で十分な褥瘡治療を行うことが今後,さらに重要になりますので,安全で的確な治療テクニックを習得する必要があります。

 

褥瘡での薬剤・ドレッシング材の使用目的

創傷の中で,治りにくいものの代表が褥瘡です。それは,他の創傷とは違い圧迫が要因で発生するため,必然的にダメージが全層へ加わり深い創になりやすく,圧迫を完全に取り除きがたい状況が続くこと,さらに,修復に必要な十分な栄養状態でないケースが多いことも要因です。

そのため,創に対して理想的とされる完全閉鎖密閉湿潤療法が,最良の方法とはならない状況が発生します。大量の壊死組織が存在する場合は,細菌感染を併発しやすい危険な状況であるため,この状況で完全閉鎖密閉湿潤療法を行うと,創の悪化が予測されます。

また,ヨウ素含有製剤などは細胞障害性があるので,治癒に向かっている再生期に入った創へは悪影響がありますが,壊死組織が多く細菌感染が併発している場合には,有効な薬剤となります。

薬剤・ドレッシング材は,創の自然治癒過程を妨げる要因を取り除き,治癒過程を促進させ,最良の環境を保持できるものを選択する必要があります。創傷治癒過程を基本に,個々の症例での創状態,創への圧迫の程度,栄養状態を考慮して,適切な創傷治療法を決定することが要求されます。

 

褥瘡の創状態を判断する

日本褥瘡学会は,褥瘡状態の評価法である「DESIGN®」を提唱し(1),現在,世界的にも評価されるツールになりました。正確な物差しを用いて評価することが科学的に重要ではありますが,褥瘡がどのようなものなのか,全体的な視覚的イメージを持つことも大切で,そのために,筆者が提唱した褥瘡ダイアグラム(2)を基本にして頂くと理解が容易になると思います。

多くの褥瘡治療従事者の頭の中には,この図と同じような褥瘡のイメージが存在しているのではないでしょうか。

 

図1褥瘡ダイアグラム(文献(2)より引用改変)

褥瘡ダイアグラム

褥瘡ダイアグラム(図1)は,褥瘡の発生から治癒までの主な経時的変化を示したもので,左側が急性期,右側が慢性期,上方が浅い褥瘡で,下方が深い褥瘡に相当します。このダイアグラムは統計的手法を用いて作成したものではなく,主観的なものであり科学的なものとはいえませんが,この中に示された創状態が代表的な褥瘡状態であり基本的な変化図に相当するものと考えています。

日本褥瘡学会は,「DESIGN®」の評価に応じてエビデンスに則った薬剤の選択方法として「褥瘡局所治療ガイドライン」(3)を策定しました。このガイドラインに沿って,薬剤・ドレッシング材を褥瘡ダイアグラムにあてはめて解説させて頂きます。

 

急性期での治療法

急性期に,浅い褥瘡なのか深い褥瘡なのかを判断することは困難です。骨突出部の30分以上消退しない発赤は,褥瘡です。

図1の褥瘡のダイアグラムに示すように急性期の赤色状態とは,種々の創に変化しうる状態であり,浅い褥瘡の場合と深い褥瘡の場合があります。創を透見できるポリウレタンフィルムや,ハイドロコロイドドレッシングを貼付するか,アズレンや酸化亜鉛を外用します(図2)。

図2浅い褥瘡の治療(文献(4)より引用改変)

浅い褥瘡の治療

 

その後,慢性期に移行した状態で,その状況に適した局所処置に変更していきます。

 

浅い褥瘡の慢性期での治療法

壊死組織や,膿のない赤色の創面の状態であれば,ハイドロコロイドドレッシングなどのドレッシング材で被覆するか,アズレン,酸化亜鉛,塩化リゾチーム,ブクラデシンナトリウム,プロスタグランディンE1などの外用剤を使用します(図2)。

壊死組織や膿が認められる場合は,感染予防と壊死組織の除去効果のあるスルファジアジン銀を使用します。スルファジアジン銀は,水分含有濃度が高いので,創の湿潤環境を保持する効果があります。

 

深い褥瘡の炎症期での治療法

表皮,真皮が完全に壊死になると黒色になります。これは痂皮とは異なりますので,デブリードマンが必要です。

デブリードマンは,周囲皮膚との分界線が自己融解し浸軟し始めてから行います。黒色の壊死組織を除去していきますと,壊死した黄色の脂肪織に達します。これも出血させないようにデブリードマンを行っていきます。

デブリードマンは一度に行うのではなく,こまめに続け,下床より肉芽組織が増生し始めるまで続けます。この時期は,「DESIGN®」では,感染・炎症の制御,壊死組織の除去,滲出液の制御を行う時期に相当します。

図3に示すように,この時期に使用する薬剤,ドレッシング材はオーバーラップしていますので,症状に応じて選択します。感染・炎症の制御を主目的とする場合は,ヨウ素や,銀などを含有する感染制御目的の外用剤を選択します。

図3深い褥瘡の炎症期での治療(文献(4)より引用改変)

深い褥瘡の炎症期での治療

 

感染症状が強い場合は,スルファジアジン銀よりもヨウ素含有製剤が効果的です。一方,スルファジアジン銀は,水分含有濃度が高いので,感染を制御しながら,壊死組織を浸軟,自己融解を促進させる効果があります。

感染症状が少なく,壊死組織の除去を目的とする場合は,ブロメラインやハイドロジェルを選択します。ブロメラインは,周囲の正常皮膚へのダメージも引き起こしますので,白色ワセリンを塗布して保護するほうが安全です。

滲出液の制御を目的とする場合は,多くは,感染を併発している場合が多いので,カデキソマーヨウ素やポビドンヨード・シュガーなどを使います。一方,感染のない場合は,デキストラノマー,ポリウレタンフォーム,キチン,ハイドロファイバー®,アルギン酸塩などで滲出液を制御します。

 

深い褥瘡の肉芽・上皮形成期での治療法

肉芽・上皮形成期での治療においては,創表面を乾燥させずに適度な湿潤状態に維持することがポイントになります。滲出液の量を考慮して,アルギン酸塩,ハイドロコロイド,ポリウレタンフォーム,キチン,ハイドロポリマー,ハイドロファイバー®などのドレッシング材を用いて肉芽組織の増生に適した湿潤状態を維持します。

あるいは,肉芽組織の形成を促進させる外用剤であるトレチノイントコフェリル,アルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート,塩化リゾチーム,トラフェルミン,プロスタグランディンE1,ブクラデシンナトリウム,幼牛血液抽出物などを使用します(図4)。

図4深い褥瘡の肉芽・上皮形成期での治療(文献(4)より引用改変)

深い褥瘡の肉芽・上皮形成期での治療

 

トレチノイントコフェリルは,外用剤の色が黄色なので,膿と間違えないように注意しましょう。周囲皮膚まで肉芽組織の増生が進むと,周囲皮膚からの上皮化が進みます。

 

ポケット形成時の治療法

ポケット形成した褥瘡の治療ポイントは,圧迫以外にズレを回避することが重要で,その次に,ポケット最深部での壊死組織を除去することが重要です。ポケット開口部から内部の壊死組織のデブリードマンを行うことが重要で,困難な場合は,ポケットの切開を考えます。

炎症期の場合は,ポビドンヨード・シュガーなどを外用し,創表面が赤色になれば,トレチノイントコフェリル,トラフェルミンなどの肉芽組織の形成を促進させる外用剤や,適度な湿潤環境を保持するために,アルギン酸塩やハイドロファイバー®を使用します(図4)。感染を併発している場合は,銀イオンが入ったハイドロファイバー®も効果的です。

 

おわりに

在宅での深い褥瘡の治療では,高価なドレッシング材を長期に使用することが困難ですので,外用剤,安価な代替品を使用することも大切で,“ラップ療法”もその一つです。

ただ,注意すべき点は,どの外用剤,ドレッシング材,代替品も万能なものはなく,状況に応じて使い分け,効果が悪い場合には再考を重ねることが重要です。とくに,壊死組織のある炎症期に,閉鎖湿潤療法を行っている過程で重篤な細菌感染症を引き起こさないようにしなければなりません。

創状態の変化に注意を払いながら,創状態に適したオーダーメイド治療を施すことが重要です。

 

 


[文献]

  • (1)日本褥瘡学会(編):褥瘡対策の指針.照林社,2002.
  • (2)河合修三:褥瘡.小澤利男・江藤文夫・高橋龍太郎(編):高齢者の生活機能評価ガイド.医歯薬出版,pp136-151,1999.
  • (3)日本褥瘡学会(編):科学的根拠に基づく褥瘡局所治療ガイドライン.照林社,2005.
  • (4)河合修三:第Ⅱ部 創傷ケア用品の選び方・使い方 1 薬剤.田中秀子(監):最新 創傷ケア用品の上手な選び方・使い方 第2版.日本看護協会出版会,pp27-36,2010.

[PROFILE]
河合修三(かわい しゅうぞう)
皮フ科シュウゾー 院長,大阪皮膚科医会 会長
1960年生まれ。1985年 関西医科大学卒業。その後,同大学皮膚科入局。1987年10月から倉敷中央病院皮膚科出向,1992年 関西医科大学皮膚科に帰向,1997年 同 講師,2003年 関西医科大学退職後に,大阪府豊中市に「皮フ科シュウゾー」を開院し現在に至る。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版

[出典]WOC Nursing 2014年10月号

P.35~「在宅褥瘡治療における薬剤やドレッシング材の使い分け」

著作権について

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