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2015年07月14日

ICTの概要と役割|感染症対策の標準化とチームでの対応

脳神経外科看護の専門誌『BRAIN』2013年第2号< 脳神経外科でよくみる感染症の予防と管理>より抜粋。
ICTの概要と役割について解説します。

 

Point

  • Infection Control Teamは,定期的な病棟ラウンドや緊急事態の対応などを行う病院感染対策のチームです。
  • Infection Control Teamは,主に医師,看護師,薬剤師,臨床検査技師で構成される医療チームです。
  • 診療報酬における感染対策防止加算の施設基準でInfection Control Teamの構成と役割が明記されています。

花岡勅行
(千葉県救急医療センター 集中治療科)

 

〈目次〉

はじめに

1946年に米国でCenter for Disease Control and Prevention(以下CDC)が設立され,これまで科学的根拠に基づいた数々のCDCガイドラインが発表されてきました。1961年にはCDCが,院内感染担当官(Infection Control Professionals;ICP)を各病院に設置するように勧告しています。

国内では1986年に日本環境感染学会が設立され,ようやく1990年に同学会から病院感染対策指針が発表されました。法律上の動きは,2007年に施行された改正医療法第6条において,医療安全確保が医療機関の法的義務とされ,病院感染対策も医療安全確保の重要項目に位置づけられることとなりました。

さらに2009年の新型インフルエンザのパンデミック,2010年の特定機能病院での多剤耐性菌によるアウトブレイクなど,ここ数年で感染対策の重要性は医療機関のみならず社会的にも認識されつつあります。また現在,栄養サポートチーム,精神科リエゾンチーム,呼吸ケアチームなど,職域を越えたチーム医療がさかんになってきています。診療報酬においても,これらのチーム加算が組み込まれるようになってきました。

このような背景において注目を浴びているチーム医療の1つで,医療機関における感染対策部門で中心的存在となる,感染制御チーム(Infection Control Team;ICT)について説明していきます。

ICTの概要

ICTの組織上の位置づけ

病院感染対策部門の委員会としては,病院感染関連部署の管理者や責任者から構成される感染対策委員会(Infection Control Committee;ICC)があります。ICCは,ICTが決定したことを承認・批准する機関であり,病院内の最終決定機関です。ICTの組織上の位置づけは,主に3パターンあります(図1)。感染制御(ICS)講習会出席者のアンケート調査によると,約50%がICCの下部組織,約30%がICCと兼務,約20%が病院長(施設長)直属となっています(1)

図1ICTの組織上の位置づけ

ICTの組織上の位置づけ

 

ICTが行うべき業務(図2

ICT業務は,日常業務と緊急時の対応に分けることができます。日常業務としては,病院感染予防,職員教育,職員健康管理,感染症コンサルテーション,抗菌薬適正使用の指導などが挙げられます。緊急時の対応として,多剤耐性菌アウトブレイクや伝染性感染症への対応などが挙げられます。ICT業務の詳細は,次項のICTスタッフの役割で紹介します。

図2ICTが行うべき業務(文献2)より改変)

ICTが行うべき業務(文献2)より改変)

2011年の厚生労働省医政局指導課による通知「医療機関等における院内感染対策について」(2)の添付資料を改変。

 

ICTの構成メンバーとその主な役割

ICTは,医師,看護師,薬剤師,臨床検査技師などから構成されますが,少人数ほど効率的です。ICTの業務は組織横断的であり,人間関係を円滑に維持できる能力が強く求められ,普段からの他部門との関わりが重要です。チームとしての各部門の関係や立場について図示してみると,従来の通常診療(図3)と異なり,ICTでは看護師が中心的な存在です(図4)。また,情報の最先端となる微生物検査室も重要な役割を担うといえましょう。以下に,ICTの構成メンバーとその感染対策の専門資格(図5),さらにメンバーの主な役割(図6)を紹介します。

医師:ICD(infection control doctor)

感染対策と感染制御の実質的な責任者であり,感染対策に関係する多くの職種の役割を理解するとともに感染症に関する全般的なコンサルテーション・指導業務を行います。感染対策に関する知識・経験が必要とされ,ICD制度協議会によるICD認定医や日本感染症学会による感染症専門医の資格を持つ医師が望ましいでしょう。

看護師:ICN(infection control nurse)

ICNは,病棟管理におけるICT実務の中心的存在となることが多く,感染管理に関する専門的知識が必要とされます。このため,2001年に日本看護協会が,医療関連感染サーベイランスの実践と各施設の状況評価と感染予防・管理システムの構築を目標として発足させた「感染管理認定看護師(ICN)」が務めるのが望ましいでしょう。

薬剤師:ICP(infection control pharmacist)

薬剤師は,ICTにおける抗菌薬・消毒薬の専門家としての実務が中心となります。
日本病院薬剤師会は,2006年から専門・認定薬剤師制度の1つとして「感染制御専門・認定薬剤師認定制度(Board Certified Pharmacy Specialist in Infection Control;BCICPS,Board Certified Pharmacist in Infection Control;BIPIC)」をスタートしています。この制度は,感染制御に関する高度な知識,技術,実践能力により,感染症治療に関わる薬物療法の適切かつ安全な遂行に寄与することを目的としています。

臨床検査技師:ICMT(infection control microbiological technologist)

微生物検査室は,院内感染の発生などの情報発信の拠点となります。通常のベースラインからのずれに早く気づくことで,アウトブレイクの早期発見と介入が可能となります。耐性菌検出時や伝染性感染症発見時には,ICD・ICNや担当医・病棟師長などに迅速に報告します。感染制御の専門資格としては,「感染制御認定臨床微生物検査技師(ICMT)」として認定する制度が2006年に開始されています。これは,臨床微生物検査を高度に実践できる認定臨床微生物検査技師のうち,医療施設内の感染制御に積極的に取り組んでおり,必要条件を満たした者をICMTとして認定する制度です。

図3通常診療スタッフの関係

通常診療スタッフの関係

医師が中心的な立場となり,かつ責任者となる医療チーム。

 

図4ICTスタッフの関係

ICTスタッフの関係

医師・看護師・臨床検査技師・薬剤師がお互いの専門知識を生かし,活動します。病棟の感染対策が中心となるため,看護師が大きな役割を果たします。

 

図5ICTスタッフの各分野における感染に関わる資格認定制度

ICTスタッフの各分野における感染に関わる資格認定制度

 

図6ICTスタッフの各分野における主な役割

ICTスタッフの各分野における主な役割

 

ICTと診療報酬

1996年,診療報酬上で病院感染対策における評価がはじめて「院内感染防止対策加算」として導入されました。2010年に医療安全対策加算の枠組みで「感染防止対策加算」が新設されました。さらに2012年に見直しが行われ,「医療安全対策加算」から別の評価体系となり,大幅に報酬点数が引き上げられました。改定された診療報酬での感染防止対策加算における施設基準での感染防止対策チーム(ICT)の構成は,図7のとおりです。ICTスタッフは,専従または専任であることが必須条件です。

図7感染防止対策加算点数と感染防止対策チームの構成(文献(4)(5)より作成)

感染防止対策加算点数と感染防止対策チームの構成

平成24年に改定された診療報酬における感染防止対策加算点数(4) と施設基準での感染防止対策チーム(ICT)の構成(5)を示します。

このように,診療報酬上でも病院感染対策は重要視されることとなりました。この背景には,この数年,特定機能病院での多剤耐性菌アウトブレイクが相次ぎ,原因の1つとして医療施設における感染対策の専任者が少ないことや病棟巡視回数が少ないことが指摘されたことがあるようです。実際,厚生労働省の「2012年医療施設静態調査(3)」における医療安全に関する体制の責任者の専任・兼任の状況は,専任 31.7%,兼任 64.1%となっています。まだまだ一般病院では専任者が少ないようです。

おわりに

病院感染対策は,病院の医療安全と診療報酬を考えるうえでも,きわめて重要な項目であるといえます。病院感染の発生を防止するためには,根拠に基づいた病院感染対策マニュアルを整備し,さらにそれを遂行する必要があります。このためには,効果的かつ効率的な病院感染対策組織が必要であり,それが活動部隊としてのICTとなります。ICTはチーム医療であり,各専門職がお互いの能力を尊重し,理解し合い,連携していくことが重要です。

 

 


[参考・引用図書/文献]

  • (1)小林寛伊:インフェクション・コントロール・スタッフ(ICS)の日常業務.医療関連感染,2:98-102,2009.
  • (2)厚生労働省ホームページ;平成23年度厚生労働省医政局指導課による通知「医療機関等における院内感染対策について」.http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/index.html(2012年11月13日閲覧).
  • (3)厚生労働省ホームページ;平成20年医療施設静態調査.http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/08/dl/03.pdf(2012年11月13日閲覧).
  • (4)厚生労働省ホームページ;平成24年度診療報酬改定に関する告示・通知.http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/2-2.pdf(2012年11月13日閲覧).
  • (5)厚生労働省ホームページ;平成24年度診療報酬改定に関する告示・通知.http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/5-2-1.pdf(2012年11月13日閲覧).

[Profile]
花岡勅行(はなおか のりゆき)
1973年生まれ。1998年 愛知医科大学卒業。2000年より千葉県救急医療センター 集中治療科に勤務。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]BRAIN 2013年第2号

BRAIN 2013年第2号

P.170~「感染症対策の標準化とチームでの対応(1)ICT(Infection Control Team)の概要と役割」

著作権について

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