2015年10月21日

注腸造影検査|消化器系の検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、注腸造影検査について解説します。

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

 

注腸造影検査とはどんな検査か

注腸造影検査は、造影剤を用いてX線透視下で行われ、画像から診断を行うものである。

炎症性腸疾患の診断に必要な腸管の変形や潰瘍の形状を広い視野で確認することができる。さらに、クローン病で特徴的な裂溝形成と呼ばれる貫通性潰瘍も容易に診断することができる。

一方、腸管の重なるS状結腸や回盲部などの病変は見逃されやすい、平坦型病変は発見されにくい、生殖器の放射線被曝が大きいなどの問題があり、近年は、下部消化管検査では内視鏡検査が主流となっている。

図1注腸造影(二重造影像) 結腸癌

 

注腸造影検査の目的

注腸造影検査では、直腸から全結腸、さらに回盲部までの病変を診断することができる。バリウムはX線を通さないため白っぽく写るが、大腸癌やポリープなどは黒っぽく写る。

 

注腸造影検査の実際

  1. 検査着とディスポーザブルのパンツ(殿部が開くもの)を着用させる。
  2. 検査の目的・方法・注意点について説明する。
  3. 検査の5分前には鎮痙薬の筋肉注射を行い、消化管の蠕動運動を低下させる。
  4. 検査台へ移動する。
  5. まず肛門部の観察を行い、肛門病変の有無を見る。
  6. 直腸にカテーテルを挿入し、造影剤を300〜400mL注入し、ついで空気を注入し、大腸を伸展させる。
  7. 造影剤が大腸全周囲の粘膜に付着するように体位変換を行う。患者が体位を変えるだけでなく、検査台の起倒により体位変換を行う。
  8. 終了後は、腹満感の緩和のためにチューブから腸管内にたまっているガスや造影剤を排泄させ、殿部の清拭を行い、衣類を整える。
  9. トイレでの排泄を促す。

図2注腸造影検査の様子

 

注腸造影検査前後の看護の手順

注腸造影検査の患者への説明

  • 造影剤を肛門から注入して腸を調べる検査で、20〜30分で終了する。
  • 大腸を残渣や便のないきれいな状態にしないと検査ができないので、前日は検査食を摂り、下剤を服用する。下剤を服用したあとに腹痛や吐き気のある場合、また排便のない場合は連絡してもらう。
    ※検査食は専用のレトルトパックなどを院内の売店で購入してもらうのが一般的である。
  • 検査の前に消化管の動きを抑える注射をする。緑内症、前立腺肥大などがあると投与できないため確認しておく。
  • 検査中は手すりにつかまりながら医師の指示に従い、体位を変えるようにする。
  • 検査後はできるだけ早く造影剤が排泄されるようトイレで排便を試みる。
  • 検査終了後は、腹部の症状がなければ、消化のよいものから食べ始めるようにする。
  • 水分は多めにとってもらう。
  • 検査終了後6時間は車を運転しない。

 

注腸造影検査前の処置

  • 前日は検査食とする。
  • 就寝前には、浸透圧性塩類下剤1袋と大腸刺激性下剤1本を服用する(浸透圧性塩類下剤の服用により腸管穿孔や腸閉塞を起こすことがあるので、服用前に必ず通常程度の排便があったことを確認する)。
  • 浸透圧性塩類下剤は高張液投与とするため、水200 mL程度で溶解して服用させる。
  • 浸透圧性塩類下剤服用後、排便があったことを確認する。
  • 浸透圧性塩類下剤服用後、当日の便が固形の場合は、正確な検査ができない可能性があるため、医師に報告する。
  • 医師の指示により鎮痙薬を投与する。

 

注腸造影検査の準備するもの

・医師の指示による鎮痙薬
・造影剤
・検査着
・穴あきパンツ
・パンピングチューブ
バルーンカテーテル26号
・ピッチャー
・コッヘル
・注射器
・潤滑剤
・ガーゼ
膿盆(大)

 

注腸造影検査後の管理

  • 肛門に挿入したチューブから腸管内にたまっている空気や造影剤を排泄させる。これにより、患者の腹満感はかなり軽減できる。
  • 肛門を温かいタオルで清拭する。
  • 腹部の膨満感・不快感・腹痛の観察。
  • 鎮痙薬の副作用の観察。
  • 何度かトイレで排泄を試み、できるだけ早くガスと造影剤が排泄されるようにする。
  • 検査後しばらくすると、鎮痙薬の作用が弱まり腸蠕動が活発となり排泄しやすくなる。
  • 便秘症の患者には、緩下剤を投与したほうがよい場合もある。

 

注腸造影検査において注意すべきこと

  • 急性期の炎症性腸疾患、とくに潰瘍性大腸炎や大腸の腸閉塞が疑われる症例では、注腸検査により症状が悪化する場合がある。そのため、前処置を行わずに検査されることがあり、医師の指示を十分確認しなければならない。
  • 注腸検査では、体位変換が頻繁であり、寝台が動くため、しっかり手すりにつかまらせ、特に高齢者の場合は転倒に注意しなければならない。
  • 浸透圧性塩類下剤の服用により、まれに腸管穿孔や腸閉塞を起こすことがある。
  • 浸透圧性塩類下剤は必ず排便があったことを確認したあと服用させる。
  • 浸透圧性塩類下剤服用後、排便があった場合でも、腹痛、悪心・嘔吐が続くときには、腸管穿孔が考えられるため、医師に報告する。
  • 浸透圧性塩類下剤を高張液投与した場合、脱水状態が現れることがあるので、十分に水分を摂取させる。
  • 通常、検査後の下剤は必要ないが、便秘症などで排便を認めない場合には投与したほうがよい。
  • 鎮痙薬として膵ホルモン薬を投与した患者では、低血糖症状の出現に注意し、検査終了後早めに糖分や軽い食事を摂取させる。

 

注腸造影検査現場での患者との問答例

注腸検査の前日の夜に下剤を飲んでいただきます。

はい。

200mLの水にマグコロールPをよく溶いて、ラキソベロンを1本入れてお飲みください。

それは飲みにくいのですか。

柑橘系の香りがしますので、それほど飲みづらくはありません。

すぐトイレに行きたくなりますか。

夜中に何度かトイレに行かれると思います。

何度もトイレに行くのですね。

便が固形のままでは、検査ができません。お通じの様子もご自分で観察してください。

わかりました。

 

注腸造影検査の患者への説明用資料

説明用資料注腸検査を受ける患者様へ

この検査は、造影剤を用いて腸の形状や粘膜の変化を調べる検査です。
大腸を残渣や便のないきれいな状態にしないと正確な検査ができないため、前日から準備をしていただく必要があります。

〈前日〉

  • 3食検査食を摂取してください。
  • 寝る前に、下剤を服用してください(前日から排便がないようなときは、服用する前にご相談ください)。
  • 夕食後は禁食ですが、便を出しやすくするために水分は多めにとってください。

〈当日〉

  • 検査は午前中となります。
  • 検査終了まで禁食となります。
  • 下剤服用後、水様便になっていれば検査可能です。

〈検査中〉

  • 検査中は、造影剤が大腸全体に付着するように身体の向きを変えていただいたり、ベッドが動きます。安全のため必ず手すりにおつかまりください。
  • 空気を注入するのでお腹が張ります。苦しい時はおっしゃってください。

〈検査終了後〉

  • 検査後は造影剤の排泄を促すために十分に水分を摂ってください。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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