2015年10月12日

下部消化管内視鏡検査|消化器系の検査

看護師のための検査本『看護に生かす検査マニュアル』より。
今回は、下部消化管内視鏡検査について解説します。

 

〈目次〉

 

下部消化管内視鏡検査とはどんな検査か

下部消化管内視鏡検査とは、内視鏡を肛門から挿入し回盲部まで進め、大腸内の粘膜の観察を行う検査である。近年、大腸疾患は増加しており、この検査の役割は重要なものとなっている。
大腸全域を観察することが多いが、その他にS状結腸までの観察を行うシグモイドスコピーも行われる。
内視鏡での肉眼的観察のため前処置が非常に重要であり、大腸内を便のない状態にしておくことが必要である。また、患者の苦痛や負担が大きいため、あらかじめ検査の目的と方法を説明し同意を得ることが大切である。

 

下部消化管内視鏡検査の目的

大腸粘膜の観察を肉眼的に行う。また炎症や潰瘍・憩室・ポリープ・癌などの診断を行うことが可能であり、必要時生検を行い、診断を確定する。
適応の疾患は表1を参照。
大腸ポリープの場合は内視鏡での切除が可能であるが、消化管穿孔や巨大結腸症・重症大腸炎の場合は禁忌とされている。

表1下部消化管内視鏡検査の適応

 

下部消化管内視鏡検査の実際

  1. 患者に左側臥位の体位をとらせ、上半身には術衣を着せる。下半身はディスポーザブルのパンツ(殿部が開くもの)を着用させる(図1)。

図1ディスポーザブルのパンツ

 

  1. 前投薬ブスコパン1Aを筋肉注射する(前立腺肥大、心疾患などがある場合は投与しない)。
  2. 患者に口で息をするように説明しながら、肛門から内視鏡を挿入し大腸粘膜の観察を行う。
  3. 観察部位により左側臥位や仰臥位など体位の変換を行うため、患者に声をかけ協力してもらう(必要時介助する)。途中、観察のため空気の注入をする。観察が終了した部位ではその都度脱気を行う。空気の注入時には腹部膨満感やひきつる感じがないか声をかける。
  4. 回盲部までの観察が終了したら、静かに内視鏡を抜去する。抜去の際も必要に応じ体位変換を行うよう声をかけ介助する。
  5. 検査が終了したことを患者に伝え、衣類を整える。

図2下部消化管内視鏡検査時の体位

 

図3左側臥位

 

図4仰臥位

 

下部消化管内視鏡検査前後の看護の手順

下部消化管内視鏡検査に関する患者への説明

  • 肛門から大腸に内視鏡を挿入し、大腸の粘膜を肉眼的に観察する検査である。
  • 途中内視鏡を進めるための体位の変換や観察のための空気の注入を行う。
  • 身体の力を抜いてリラックスする。

 

下部消化管内視鏡検査に準備するもの

・大腸ファイバースコープと付属品・フィルム・ブスコパン1A・アルコール綿・ガーゼ・膿盆・ホルマリン入り容器・術衣・ディスポーザブルパンツ

 

下部消化管内視鏡検査後の管理

1)前日

  • 夜9時に下剤(プルゼニド2錠)を内服させる。以降禁食とするが、水分(水・お茶などのみで牛乳・粒入りのものは禁ずる)は摂取してもよい。
  • 検査の目的と方法を説明し、同意を得るとともに不安の除去に努める。

2)検査前

  • 検査当日の朝7時頃より腸管洗浄のためマグコロールP2包を1.8リットルの水で溶いたものを2時間かけて内服させる。3時間ほどで排便が終わること、便の状態を看護師に見せることを説明する。
  • カスが残っている状態の場合は医師に報告し、必要時浣腸などを行う。
  • 感染症の有無・既往歴を確認する(既往に前立腺肥大や心疾患がある場合は薬剤の投与ができないため)。
  • バイタルサインの測定を行う。
  • 必要時、血管確保し、点滴を滴下する。
  • ポリープ切除の場合は血管確保し、止血薬入りの点滴を滴下する。

3)検査中

  • 内視鏡挿入時は患者の手を握るなどして苦痛の緩和に努める。また、口で息をするように声をかける。
  • 検査の進行に合わせ、患者の体位を整えるよう介助する。

4)検査後

  • 安静:1〜2時間は安静とする。大腸ポリープの切除を行った場合は、安静解除後も入浴は避ける。
  • 食事:観察のみの場合は水分・食事とも摂取可能である。大腸ポリープの切除を行った場合は水分のみ1時間後から開始し、食事は翌朝全粥から開始とする。
  • 観察:観察のみの場合は終了後、ポリープ切除の場合は終了時と1時間後にバイタルサインの測定と腹部症状の有無を観察する。また検査後の最初の排便時は便の状態を観察する。
  • 検査中に出血を認めた場合は止血を確認し、検査後のバイタルサインや腹部症状の有無、排便の性状に十分注意する。
  • 検査直後の車・バイクなどの運転は禁止する。

表2下部消化管内視鏡検査の合併症

 

下部消化管内視鏡検査において注意すべきこと

  • 高血圧・心疾患などの内服薬は医師の指示に従い、内服する場合はマグコロールP内服後1時間とする。
  • ポリープを切除する患者の場合、ワーファリンなどの抗凝固薬は1週間前から中止しておく。
  • 苦痛を伴う検査であるため、常に声をかけながら行うよう努める。

 

下部消化管内視鏡検査現場での患者との問答例

明日は下部消化管内視鏡検査を行います。

どんな検査ですか。

肛門からカメラを入れて大腸粘膜を観察する検査です。

苦しいですか。

腸の動きを抑えるように注射をしてから行います。カメラが通りやすいように体の向きを変えてもらうことがあります。検査中も看護師がついていますので、つらい時はすぐに伝えてください。

何か準備をしておくことはありますか。

今日の夜9時と明日の朝7時に下剤を飲んでいただきます。腸に便が残っていないようにするためです。明日は検査が終わるまでは食べたり飲んだりしないでください。

はい。

 

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典]『看護に生かす検査マニュアル』(編著)高木康/2015年3月刊行

看護に生かす検査マニュアル

引用・参考文献 / 著作権について

この連載

  • 腹腔穿刺|消化器系の検査 [10/16up]

    看護師のための検査本『看護に生かす検査マニュアル』より。 今回は、腹腔穿刺について解説します。   〈目次〉 腹腔穿刺とはどんな検査か 腹腔穿刺の目的 腹腔穿刺の実際 ・腹腔穿刺の必要物品 ... [ 記事を読む ]

  • 肛門鏡検査|消化器系の検査 [10/14up]

    看護師のための検査本『看護に生かす検査マニュアル』より。 今回は、肛門鏡検査について解説します。   〈目次〉 肛門鏡検査とはどんな検査か 肛門鏡検査の目的 肛門鏡検査の実際 ・肛門鏡検査の体位... [ 記事を読む ]

  • 下部消化管内視鏡検査|消化器系の検査 [10/12up]

    看護師のための検査本『看護に生かす検査マニュアル』より。 今回は、下部消化管内視鏡検査について解説します。   〈目次〉 下部消化管内視鏡検査とはどんな検査か 下部消化管内視鏡検査の目的 下部消化管...

  • 上部消化管内視鏡検査|消化器系の検査 [10/09up]

    看護師のための検査本『看護に生かす検査マニュアル』より。 今回は、上部消化管内視鏡検査について解説します。 〈目次〉 上部消化管内視鏡検査とはどんな検査か 上部消化管内視鏡検査の目的 上部消化管内視鏡検査... [ 記事を読む ]

  • 腹部超音波検査|消化器系の検査 [10/07up]

    看護師のための検査本『看護に生かす検査マニュアル』より。 今回は、腹部超音波検査について解説します。 〈目次〉 腹部超音波検査とはどんな検査か 腹部超音波検査の目的 腹部超音波検査の実際 腹部超音波検... [ 記事を読む ]

もっと見る

関連記事

  • エコー検査の準備と片付け [08/17up]

    画像検査のなかでも、エコー(超音波)検査は、侵襲度が低く、簡便に行える検査です。 外来や病棟で、ナースが目にすることの多いエコー検査について、コツやポイントを消化器内科医が解説します。 〈前回の内容〉 腎臓のエコー像 ... [ 記事を読む ]

  • 腎盂が拡張しているエコー像 [10/05up]

    画像検査のなかでも、エコー(超音波)検査は、侵襲度が低く、簡便に行える検査です。 外来や病棟で、看護師が目にすることの多いエコー検査について、コツやポイントを消化器内科医が解説します。 〈前回の内容〉 尿路結石は腎盂拡... [ 記事を読む ]

  • 胆嚢壁が肥厚しているエコー像 [09/21up]

    画像検査のなかでも、エコー(超音波)検査は、侵襲度が低く、簡便に行える検査です。 外来や病棟で、看護師が目にすることの多いエコー検査について、コツやポイントを消化器内科医が解説します。 〈前回の内容〉 胆嚢壁肥厚は胆嚢... [ 記事を読む ]

  • 総目次:初めてのエコー(超音波)検査 [07/13up]

      はじめに エコー(超音波)検査は、患者さんに与える負担が少なく、簡便に行える検査として、非常に汎用性の高い画像検査です。このため、看護師として働いている皆さんの多くが、入院してくる患者さんの現病歴や申し送りの... [ 記事を読む ]

  • エコーガイド下ドレナージ術は緊急処置! 5つの手順を押さえよう [04/19up]

    画像検査のなかでも、エコー(超音波)検査は、侵襲度が低く、簡便に行える検査です。 外来や病棟で、看護師が目にすることの多いエコー検査について、コツやポイントを消化器内科医が解説します。 今回は、看護師さんに知っておいて欲しい「緊... [ 記事を読む ]

いちおし記事

「フレイル」ってわかる?老年看護の新用語を解説

2018年の看護師国家試験から出題範囲に含まれた新用語群を解説します。 [ 記事を読む ]

頭痛の時に痛みを感じているのは脳?

見逃すとこわい「頭痛」。なぜ、痛みを感じるのか、どこを観察するかなどを解説します。 [ 記事を読む ]

人気トピック

もっと見る

看護師みんなのアンケート

仕事での調べ物、何が一番多い?

投票数:
815
実施期間:
2017年09月29日 2017年10月20日

EPA外国人看護師と協働したことある?

投票数:
602
実施期間:
2017年10月03日 2017年10月24日

あなたの通勤方法は?

投票数:
705
実施期間:
2017年10月06日 2017年10月27日

今年のハロウィンの予定は?

投票数:
592
実施期間:
2017年10月10日 2017年10月31日

退院調整看護師と協働したことある?

投票数:
516
実施期間:
2017年10月13日 2017年11月03日

自分が服用するなら、先発医薬品?後発医薬品?

投票数:
420
実施期間:
2017年10月17日 2017年11月07日

ホスピタルアートに興味ある?

投票数:
113
実施期間:
2017年10月20日 2017年11月10日
もっと見る

今日の看護クイズ 挑戦者2126

Aさんは、気管カニューレを挿入し、人口呼吸器を使用した状態で、自宅へ退院する予定です。Aさんのご家族への吸引指導として、適切な内容はどれでしょうか?

  • 1.気管吸引は、多少時間が長くても差し支えないので、きちんと痰を取りきる。
  • 2.気管内は清潔であり、清潔な手袋を使うため、吸引を行う際には手洗いを実施する必要はない。
  • 3.口腔内より先に気管カニューレから吸引する。
  • 4.清潔を維持するために、吸引瓶は随時、消毒を行う。
今日のクイズに挑戦!