2015年06月23日

生化学検査(腎機能)|検体検査(血液検査)

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、生化学検査(腎機能)について解説します。

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

生化学検査(腎機能)とはどんな検査か

血液中や尿中の成分を分析することで、腎臓の機能を調べることができる。

指標としては血中尿素窒素、クレアチニン、尿酸、尿中蛋白、クレアチニン・クリアランスなどが用いられる。

腎臓は、生理・解剖的最小単位であるネフロン(腎小体)から構成されている。ネフロンはボウマン嚢に覆われた糸球体・近位尿細管・ヘンレの係蹄・遠位尿細管からなる。

図1腎臓の各部位の機能と検査

腎臓の各部位の機能と検査

 

生化学検査(腎機能)の目的

腎機能障害の程度と障害部位を推定するために検査する。

 

生化学検査(腎機能)の実際

血中尿素窒素(BUN)

  • 血中の尿素中の窒素量のことをいう(測定可能となった初期には、尿素を分解してアンモニア窒素を測定していたためにこの名前がついた)。
  • 酵素により尿素をアンモニアに分解し、これを定量する方法により測定する。
  • 試験紙による半定量キットも市販されている。
  • 尿素は毒性の強いアンモニアを無毒化するために肝臓で合成される。
  • 尿素は糸球体で濾過された後、尿中に排泄される。このため糸球体の濾過機能が低下すると尿中への排泄量が減少して、血中濃度が上昇する。

〈注意〉

  • アンモニアは蛋白が分解すると生成するため、高蛋白食や消化管出血などでは高値となる。
  • クレアチニンと比較して、腎機能障害の特異性は低い(表1)。

表1腎機能障害の程度とBUN・クレアチニン

腎機能障害の程度とBUN・クレアチニン

 

血中クレアチニン

  • 酵素法により測定する。
  • クレアチニンは筋肉中のクレアチンから生成される。
  • クレアチニンは糸球体で濾過され、尿細管で再吸収や分泌がされずに尿中に排泄される。
  • 糸球体の濾過機能の低下により血中に停滞して高値となる。
  • 腎機能の指標としては、BUNより優れている。
  • BUN/クレアチニン比により、腎性か非腎性かを鑑別することも行われている。

表2クレアチニンと病態

クレアチニンと病態

 

〈注意〉

  • クレアチニンの産生量は筋肉量に比例するため、身体が大きいと血中濃度も高値である。
  • このため、筋肉量(体重)を考慮して解釈する必要がある。

 

尿酸

  • 酵素(ウリカーゼ)により尿酸を分解して、生成する過酸化水素を定量する方法により測定する。
  • 尿酸は糸球体から尿中に濾過されるため腎機能の指標にはなるが、尿細管で再吸収されるため、BUNやクレアチニンと比較すると良好な指標ではない。
  • 痛風では高値となり、100人中99人は10mg/dL以上で発症する。

 

β2マイクログロブリン・α1マイクログロブリン

  • 特異抗体を用いて免疫学的方法により測定する。
  • 肝臓で産生され、糸球体を通過し近位尿細管で再吸収される低分子(β2マイクログロブリンは分子量約12,000、α1マイクログロブリンは分子量約30,000)蛋白である。
  • 糸球体での濾過機能が低下すると、血中では上昇する。
  • 近位尿細管に障害があると再吸収されないため、尿中に多量に排泄される。

表3生化学検査(腎機能)の基準値

生化学検査(腎機能)の基準値

日本臨床検査標準化協議会基準範囲共用化委員会:共用基準範囲2014
※BML総合検査案内
 β2MG、α1MGはJCCLSで基準範囲が設定されていないので、BMLの基準値を載せた。

 

クレアチニン・クリアランス(Ccr)

  • クリアランスとは、血中に存在するある物質を一定時間内に尿中に排泄するのに必要な血漿量のことである。
  • クレアチニンは腎臓で再吸収も分泌もされずに尿中に排泄されるので、そのクリアランスは糸球体濾過量(GFR)とほぼ一致する。
  • 血中クレアチニン濃度と尿中クレアチニン濃度と尿量(24時間法が正式であるが2時間簡便法もある)、患者の身長、体重を次の計算式にあてはめ算出する。

公式:Ccr=Ucr×尿量/Pcr×1.48/体表面積(m2
Ucr:尿中クレアチニン濃度
Pcr:血中クレアチニン濃度
尿量:1分間の尿量
1.48:日本人の平均体表面積

〈注意〉

  • 24時間蓄尿する場合はすべての尿をためるように指示する。
  • 2時間法クレアチニン・クリアランスは、採血のために針を2度刺さなければならないことをあらかじめ患者に伝える。
  • Ccrは40歳代を100%とすると、10歳加齢するごとに10%ずつ低下する。

 

推算糸球体濾過量(eGFR:estimated glemerular filtration rate)

慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD,図2)の指標として用いられている。

図2CKD診療の概念の基本

CKD診療の概念の基本

(KDIGO CKD guideline 2012を日本人用に改変)

  • クレアチニンクリアランスと異なり、尿中クレアチニン値が不要であるため尿を貯めなくてもよく簡便である。
  • 年齢、性別による筋肉量の影響を考慮できる。
  • 血中クレアチニン値、年齢を次の式にあてはめ算出する。公式:eGFR=194×血中クレアチニン-1.094×年齢-0.287(女性の場合は0.739を乗する)
  • 基準値:90mL/分以上
  • 腎機能障害;高度低下:30〉eGFR≧15、末期腎不全:15〉eGFR

〈注意〉

  • 18歳以上に適応する。
  • 標準体表面積(1.73㎡)の場合の日本人向けの計算式である。
  • あくまで推算値であるため、正確な腎機能を評価するためにはクレアチニンクリアランスなどで実測できる検査を行う。

 

生化学検査(腎機能)前後の看護の手順(採血時の注意)

  • 採血は通常の採血で、抗凝固剤は使用しない。
  • 採血時、無理な吸引は避ける(赤血球溶血してしまうとクレアチニンの測定値に正の誤差を与えるため)。

 

生化学検査(腎機能)に関するQ&A

Q.尿酸は腎機能を調べる検査項目でもあり、痛風にも関係する検査項目でもあるということですが、尿酸は痛風で必ず増加するのですか?

A.痛風は、血中に過剰に尿酸が増加すると、血中のナトリウムと尿酸が結合して尿酸ナトリウムとなり、関節内にその結晶の沈着が起こる疾患です。血中尿酸増加の原因は、プリン体代謝異常(過剰摂取)、腎糸球体の濾過率の低下です。痛風発作を起こすのは10mg/dL以上の人(約99%)ですが、発症時に受診した時には基準値の場合も多くあります。これは関節に沈着するために血中では低下するためです。

 

略語

  • BUN:blood urea nitrogen(血液尿素窒素)
  • Ccr:creatinine clearance(クレアチニン・クリアランス)
  • GFR:glomerular filtration rate(糸球体濾過量)

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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