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2015年08月09日

刺激伝導系(心電図)のメカニズムと異常心電図の特徴

循環器ナーシング 2011年10月号<フィジカルアセスメントに必要な知識と技術 >より抜粋。
刺激伝導系(心電図)のメカニズムと異常心電図の特徴について解説します。

 

Point

  • wideQRSとQRSの脱落は循環動態の変調をきたす場合が多く,注意が必要である。
  • 異常心電図の発生は,イオン濃度の変化に密接に関係している。
  • 心停止の4波形が出現したら,速やかなCPRを!!

桑島みく1),原田恭子2) 
1)日本医科大学付属病院 集中治療室,2)日本医科大学付属病院 集中治療室,集中ケア認定看護師

〈目次〉

 

はじめに

心電図の判読は,①正常所見との差異を“異常”として指摘し,②検出した所見の意味を考える作業です。心電図の判読において,手順を守って判読していく習慣づけが重要です。最初のうちは正常心電図を見慣れることを目標にします。

異常所見に関心が向きがちですが,重要なのはその心電図が正常でないことに気づき,その所見の意味を考えられるようになることであるといえます。

 

刺激伝導系の構造・仕組みと正常心電図波形

刺激伝導系と自動能(図1

図1刺激伝導系と自動能

刺激伝導系と自動能

 

心臓には,心房・心室の壁を構成して機械的収縮を司る固有心筋と,自律的収縮を行うための刺激を発生し伝導する刺激伝導系が存在します。

 

刺激伝導系における電気的興奮は右房上部に存在する洞結節から始まり,右房内を伝わり房室結節に入ります。この刺激により心房筋は興奮し,心房収縮が起こります(P波の発生)。

房室結節は,伝わってきた刺激を一定の間を取ってヒス束に伝えます。これは,心房の収縮によって心室に送り込まれた血液が心室内に十分充満するための時間です(PQ時間)。ここで時間を置くことにより,次に起こる心室の収縮で十分な血液を肺静脈・大動脈に駆出させることができます。

 

ヒス束に伝えられた刺激は左脚,右脚に分岐し,左脚はさらに左脚前肢,左脚後肢に分かれて,心室内のプルキンエ繊維に伝わります。そして心筋全体に効率よく刺激が伝わり,協調的な心室の収縮が生じます(QRS波の発生)。すべての心筋が興奮し,収縮したあと(ST部分),心室筋の興奮はゆっくりさめていき,次の刺激に備えます(T波)。

 

固有心筋と刺激伝導系はともに,外部からの刺激を受けなくても特有のペースで興奮を繰り返します。この性質を自動能と呼びます。そのなかでも,とくに高い自動能を持っている組織が洞結節です。その自動的興奮のリズムは60~100回/分と最も速いため,洞結節が心臓全体の興奮のペースメーカーの役割をします。

しかし,洞結節から刺激が伝わらなくなった場合には,洞結節以下の自動能を有する組織から刺激が発生することとなり,これを異所性ペースメーカーと呼びます。

 

活動電位とイオンチャネル 

心筋細胞の細胞膜には,心臓が規則正しくかつ協調性をもって収縮・拡張を繰り返すための電気的な活動のサイクルがあり,これを活動電位といいます。この活動電位は,細胞内外でのナトリウムイオン(Na)やカリウムイオン(K)などのイオン交換によって行われています。

 

心筋細胞が静止状態のとき,細胞内は細胞外に比べてマイナスになっており,この状態を分極しているといいます。細胞膜には,イオンチャネルというゲートのようなものがあり,電気刺激によって開閉して特定のイオンだけを通過させます。

これにより,細胞内の電位の変化(マイナスからプラスへ)が起こり,これに反応して心筋が収縮します。イオンチャネルはそれぞれの性質により,ナトリウムチャネル,カルシウム(Ca2+)チャネル,カリウムチャネルなどに分類されます。

 

心筋細胞位おける活動電位の変化は,図2のように4相に分けることができます。

図2活動電位とイオンチャネル(文献(1)より引用改変)

活動電位とイオンチャネル

 

不応期

心筋は,特定の電気的な活動を行っている間,そこに新たな刺激を与えても反応を示さない特性があります(不応期)。心電図上,T波の頂点付近は絶対不応期から相対的不応期へ移る時期です。

絶対不応期とは,いかなる強い刺激を与えても反応しない時期であり,相対不応期は,比較的強い刺激の場合に反応することがある期間を呼びます。

 

T波の頂点付近で新たな強い電気刺激を受けた場合,心室頻拍や心室細動のような危険性の高い不整脈が誘発されることがあります。

 

不整脈の発生機序

不整脈は,①興奮生産の異常,②興奮伝導の異常のどちらかによって発生します。興奮生産の異常とは,洞結節の自動能が低下し,洞不全症候群などの不整脈をきたす場合や,洞結節以外の組織に自動能の亢進が起こる場合をいいます。また,再分極過程(第3相)でなんらかの異常が発生し,興奮が誘発されることがあります。これを撃発活動(triggered activity)と呼びます。

 

一方,心筋の一部で興奮伝導が遅延すると,異常な興奮回路が形成されることがあり,これをリエントリーと呼びます。これは,心筋組織内のひとつの輪(旋回路)のなかで刺激が回り続ける現象を指します。現在,頻拍性不整脈が起こる機序として最も頻度が高いと考えられています。

 

心電図波形(図3)をどこからみるか

図3正常心電図:波の名称と間隔の正常値

正常心電図:波の名称と間隔の正常値

 

心電図判読の5つのステップ

1. 調律はなにか:P波があるか,RR間隔が一定か

洞結節(P波)がペースメーカーになっている洞調律が正常です。これを確認するためには,P波がとらえやすいⅡ誘導,V1で,P波とQRS波が規則的に対応していて,P波が一貫して同じ形であることを確認します。さらに,心拍数を数え,PP間隔,RR間隔が一定であるか確認します。

2. PQ時間は正常か

正常なPQ時間は,3mm(0.12秒)以上5mm(0.20秒)未満です。洞結節から房室結節へ正常に刺激伝導が行われていることを示します。

3. QRSの間隔・幅・高さはどうか

QRS波の正常は1.5mm(0.06秒)以上2.5mm(0.10秒)未満です。それより幅広である場合,脚ブロックや心室性不整脈などを疑います。

4. QT時間を確認する

 

5. ST変化の有無をみる

ST部分がPQ部分に一致し,上昇も下降もしていないのが正常といえます。ST部分に変化がある場合は,虚血性心疾患を疑います。

 

異常心電図とその特徴(1),(2

P波の間隔の異常

洞性頻脈

洞性頻脈の心電図グラフ

  • 特徴:洞調律(P-QRS-Tが正常な感覚で出現)であり,心拍数が100回/分以上のもの。徐々に脈が速くなり,P波が確認できる。
  • 要因:交感神経緊張亢進,発熱,疼痛,甲状腺機能亢進症,循環血液量の減少など。
  • 薬物:イソプロテレノール,ドパミン,アトロピンなどに影響。

 

洞性徐脈

洞性徐脈の心電図グラフ

  • 特徴:洞調律で心拍数が60/分以下のもの。
  • 要因:主に副交感神経刺激によるもの,甲状腺機能低下症,脳圧亢進の場合など。
  • 治療:洞性頻脈とともに危険性は低い。
  • 薬物:ジキタリス製剤,β受容体遮断薬,カルシウム拮抗薬などに影響。

 

上室性期外収縮(PAC)

上室性期外収縮(PAC)の心電図グラフ

心房または房室結合部付近から異所性に生じた興奮により,心臓が早期に収縮する状態。

  • 特徴:P波が予想されるタイミングよりも早く表れ,それに続くQRS波を認める。QRS波の形は基本波形と変わらないことが多い。
    右脚ブロック型やQRS波が脱落する非伝導性上室性期外収縮(blocked PAC)もある。
  • 治療:健常な人でも80%以上にみられるものであり,頻度が少なければ放置していても問題ない。多発したり連発するような頻度が多い場合,心房細動に移行することがあるため,注意が必要。

 

洞不全症候群(SSS)

洞不全症候群(SSS)の心電図グラフ

洞結節あるいはその周囲の障害により,高度の洞徐脈,洞停止,洞房ブロックなどを生じ,失神発作などを呈する症候群。

  • 特徴:規則正しいP波が出現せず一過性にPP間隔が延長。失神(アダムス・ストークス発作)を起こす可能性がある。
  • 分類:Ⅰ型…高度な洞徐脈,Ⅱ型…洞停止または洞房ブロック,Ⅲ型…徐脈頻脈症候群(ルーベンシュタイン〔Rubenstein〕分類)。
  • 治療:心拍数が40回/分以下を呈するものではペースメーカーの適応。
  • 薬物:徐脈を誘発する薬(β遮断薬,カルシウム拮抗薬,ジギタリス製剤など)は中止。アトロピン,イソプロテレノールの投与。

 

RR間隔の異常

心房細動(Af)

心房細動(Af)の心電図グラフ

洞結節以外の場所から350回/分以上の異所性刺激が生じて心房が無秩序に興奮し,心房全体としての収縮がない状態。

  • 特徴:P波は消失し,f波(細かい基線の揺れ)が現れる。RR間隔は不規則。
  • 要因:精神的緊張,カフェイン,アルコール過剰摂取,また僧房弁狭窄症,甲状腺機能亢進症,虚血性心疾患など。
  • 治療血圧低下症例で緊急治療を要する。頻脈で持続する場合は心不全を起こす可能性がある。その場合は抗不整脈薬の投与やカルディオバージョンが必要。
  • 薬物:ナトリウムチャネル遮断薬,レートコントロールとしてβ遮断薬,カルシウム拮抗薬,ジギタリスを使用。血栓塞栓症予防として抗凝固薬を使用。

 

心房粗動(AFL)

心房粗動(AFL)の心電図グラフ

洞結節以外の場所からの刺激が心房内を大きくグルグルとまわり,250〜350回/分の頻度で規則正しく心房が興奮している状態。

  • 特徴:P波がなく,心房の旋回を表すF波(鋸歯状波)が出現。F波とQRS波の伝導比率によって1:1,2:1,3:1などと表現。
  • 要因:僧房弁疾患,三尖弁疾患,肺性心,心筋虚血,電解質異常など。
  • 治療:血圧低下症例は緊急治療を要する。1:1伝導の場合は,心室も250〜300回/分で興奮することになり,失神,心不全を生じることもある。抗不整脈薬の投与や電気的除細動,抗凝固薬,カテーテルアブレーションなど。
  • 薬物:カリウムチャネル遮断薬,レートコントロールとしてβ遮断薬,カルシウム拮抗薬,ジギタリスを使用。血栓塞栓症予防として抗凝固薬を使用。

 

発作性上室性頻拍(PSVT)

発作性上室性頻拍(PSVT)の心電図グラフ

  • 特徴:P波はみえないことも多い。QRS波が規則正しく現れ,突然始まって突然止まる。
  • 要因:病的要因として,僧房弁疾患,三尖弁疾患,肺性心,心筋虚血,電解質異常など。
  • 治療:主に抗不整脈薬の投与,根治治療としてカテーテルアブレーションなど。
  • 薬物:レートコントロールとしてβ遮断薬やカルシウム拮抗薬を使用。アデホスの静注のほか,ナトリウムチャネル遮断薬などが有効。

 

PQ時間の異常

Ⅰ度房室ブロック

Ⅰ度房室ブロックの心電図グラフ

 心房から心室への伝導時間が一定に延長した状態。

  • 特徴:PQ時間は0.2秒以上でQRS波の脱落はない。
  • 要因迷走神経の過緊張や薬物の影響など。大部分が房室結節での機能的または可逆的な障害によるもの。

 

Ⅱ度房室ブロック

Ⅱ度房室ブロックの心電図グラフ

 心房から心室への伝導がときどき途切れる状態。

  • 特徴:P波はあるが,QRS波が脱落する。
  • 分類:ウェンケバッハ型…PQ時間が徐々に延長し,QRS波が脱落する。一過性のものかどうか観察が必要。
    モービッツⅡ型…PQ時間が一定のまま,突然QRS波が脱落する。血圧低下症例で緊急治療を要する。QRS波の欠損の頻度により,アダムス・ストークス発作を起こす。
  • 治療:モービッツⅡ型は,ペースメーカーが適応。
  • 薬物:β遮断薬(イソプロテレノールなど),アトロピンが有効。

 

高度房室ブロック

高度房室ブロックの心電図グラフ

  • 特徴:PQ時間が一定で,P波とQRS波がときどきつながり,2拍以上連続してQRS波が脱落。P波とQRS波の比率で2:1伝導,3:1伝導などと表現。
  • 治療:緊急性は高い。全く無症状なものを除きペースメーカー適応。

 

Ⅲ度房室ブロック (完全房室ブロック)

Ⅲ度房室ブロック (完全房室ブロック)の心電図グラフ

 房室伝導が完全に途絶した状態。

  • 特徴:P波とQRS波はそれぞれが一定の間隔で出現するが,それぞれ別のリズムを示す。
  • 治療:緊急性は高い。失神,心不全症状を伴うことがあるため,ただちに医師に報告し,救急カート,経皮ペーシングが可能な体外式除細動の準備が必要。
  • 薬物:薬物は無効。

 

QRS波の幅の異常

心室期外収縮(PVC)

心室期外収縮(PVC)の心電図グラフ心室期外収縮(PVC)のLown分類

 予定されたより早く心室興奮が出現する。心臓の拡張が不十分な状態で心臓が拍動するため,脈拍欠損が起こる。

  • 特徴:P波がなく幅広のQRS波。QRS波の幅は3mm(0.12秒)を超える。
  • 治療:Lown分類でⅢ度以上のものは致死的不整脈への移行の危険性が高く,要注意。なかでも,R on T型は心室頻拍や心室細動へ移行しやすく危険。
  • 薬物:精神安静薬やカルシウム拮抗薬,β遮断薬を使用。急性心筋梗塞急性期にはキシロカイン,メキシチールなど。

 

心室頻拍(VT)

心室頻拍(VT)の心電図グラフ

  • 特徴:心室性期外収縮が3個以上連続。心拍数が140~180回/分の頻拍をきたし,心拍出量が減少し,血圧低下,脳虚血による意識レベルの低下,失神をきたす。
    トルサード・ド・ポアンツ型心室頻拍(TDP)…QT時間の延長とT波に続く心室性期外収縮によって,QRS波の振幅が基線の周りをねじれるように変動するQRS波形が刻々と変化する多形性の心室頻拍(200~250回/分)。
  • 治療:緊急性は高い。バイタルサインや12誘導心電図をとるとともに救急カート,除細動を行う準備をしながら速やかに医師に報告する。
  • 薬物:リドカイン・アミオダロン・シンビットなど。

 

WPW症候群

WPW 症候群の心電図グラフ

  • 特徴:PQ時間は短縮(0.12秒以内)し,デルタ(⊿)波を認める。心房・心室間に「ケント束」という副伝導路が存在し,心房の興奮が正常の伝導路よりも早くケント束を経て心室の一部を興奮させるため,正常伝導路からの心室の興奮と融合して,幅の広いQRS波形(0.12秒以上)となる。
  • 治療:心房細動を伴う場合は緊急性が高い。心房細動を生じると副伝導路を通り,高頻度に刺激が心室に伝わり,300回/分近い頻拍となる。アダムス・ストーク発作を生じたり,心室細動に移行したりして,急変する可能性がある。

 

心停止(緊急性が最も高く、ただちに心肺蘇生(CPR)を行う)

心室細動(VF)

心室細動(VF)の心電図グラフ

心室を構成する多数の心筋線維が無秩序に収縮,弛緩を繰り返し,心臓のポンプ機能が全く失われた状態。

  • 特徴:無秩序な波形でP波,QRS波,T波などの同定ができない。
  • 治療:ただちに心臓マッサージおよび電気的除細動を行う。

 

無脈性心室頻拍(palsless VT)

心室頻拍と同様の波形で,脈を触れない状態。

  • 治療:ただちに心臓マッサージおよび電気的除細動を行う。

 

心静止(asystole)

心静止(asystole)の心電図グラフ

  • 特徴:心室の電気活動は認められないか,または6回/分以下のもの。
  • 治療:心室細動が隠れていることがあるため,心電図のリードの断線,感度や誘導を確認する。心静止の場合は,除細動はせず心臓マッサージを行う。

 

無脈性電気活動(PEA)

無脈性電気活動(PEA)の心電図グラフ

波形があるにかかわらず,脈が触れない状態。洞調律のような波形の場合もある。

  • 要因:循環血液量不足,低酸素血症,アシドーシス,高/低カリウム血症,低体温,薬物過量,心タンポナーデ,緊張性気胸心筋梗塞肺塞栓症など。
  • 治療:ほかの心停止と同様,原因検索を行いながら心肺蘇生を行う。

 

トルサード・ド・ポアンツ型心室頻拍(TDP)・心室細動(VF)の誘発

QT時間延長症候群

QT 時間延長症候群の心電図グラフ

  • 特徴:QT時間が男性では440ms,女性では460ms以上を呈した状態。トルサード・ド・ポアンツ型心室頻脈や心室細動が誘発される可能性が高くなる。心室の再分極が長くなることによって,心室の電気的興奮のサイクルが不安定となるためである。
  • 要因:先天性と後天性によるものがある。後天性の要因となるものは,一部の抗不整脈薬や向精神薬,抗ヒスタミン薬抗生物質,H2受容体拮抗薬,電解質の低下など。
  • 治療:トルサード・ド・ポアンツ型心室頻拍や心室細動を起こす可能性があるため,すぐに医師に報告する。徐脈が誘因となる場合は,高頻度の一時的ペーシングを行う場合がある。
  • 薬物:要因薬物の投与中止,マグネシウムの補正など。

 

ST部分の変化:虚血性心疾患などが疑われる

ST 部分の変化:虚血性心疾患などが疑われる例

  • 特徴:ST部分が上昇・低下をきたすもの。
    ST:QRS波の終了点からT波の開始までの部分,すなわち心室が興奮(QRS波)してから回復(T波)の開始までの部分を指す。なんらかの原因により心筋の電流障害が生じると,それにより障害電流という特殊な電気が発生,それが結果としてSTの上昇,あるいは低下として観察される。
  • 要因:虚血性心疾患,心肥大,心膜炎,心室瘤,高/低カリウム血症など。
  • 治療:原因疾患の治療。虚血性心疾患では,STが変化した誘導で,梗塞部位や責任病変部位の診断が可能。

 

抗不整脈薬の作用~刺激伝導系への影響

抗不整脈薬は,それぞれ活動電位でのイオン交換の速度を調節することでその効果を示しますが,その効果が別の不整脈を引き起こすこともあります。このことを催不整脈作用といい,抗不整脈薬を理解するうえで必ず知っておかなければならないものです。

代表的なものを以下に挙げます。

 

ナトリウムチャネル遮断薬:QRS波の拡大,心筋収縮力の低下(図4

図4ナトリウムチャネル遮断薬の影響

ナトリウムチャネル遮断薬の影響

 

心筋細胞の興奮(活動電位の脱分極:第0相)は,ナトリウムイオンが細胞内へ流入することで始まります。ナトリウム(Na)チャネル遮断薬は,このナトリウムイオンの流入を抑えることで心筋細胞の興奮を遅くする働きがあります。

図のように,急峻な立ち上がりをみせていた活動電位の脱分極(第0相)は緩やかな立ち上がりとなります。これによりリエントリー回路が原因となる不整脈では,回路内の伝導速度を遅くすることにより伝導途絶が起こり,心房や心室の頻拍,期外収縮の発生が抑制されます。また,興奮伝導速度を遅くしているため,心電図ではQRS波が幅広にみえます。

 

使用上の注意

強力なナトリウムチャネル遮断薬は心筋細胞の興奮を抑えるだけでなく,心収縮力も低下させてしまうことがあるため,低心機能症例への投与は慎重に行います。3:1伝導の心房粗動に使用した場合,伝導遅延によりリエントリー回数は減りますが,房室結節が伝導可能な頻度が増えるため,1:1伝導へ変調する可能性があります。その際,血圧低下などに注意してみる必要があります。

 

カリウムチャネル遮断薬:QT時間の延長(図5

図5カリウムチャネル遮断薬の影響

カリウムチャネル遮断薬:QT時間の延長

 

カリウム(K)チャネル遮断薬は,カリウムチャネルを抑制することにより活動電位の再分極(第3相)を遅らせます。その結果,図のように第3相は延長し,心電図上ではQT時間の延長としてみられます。再分極時間が長くなることで不応期が長くなるため,次に来た興奮が伝導されず,期外収縮などを抑制できます。

 

使用上の注意

QT延長が著明な場合,トルサード・ド・ポアンツ型心室頻拍を起こす可能性が高くなります。そのため,カリウム値を4.0mmol/L以下にしないよう補正を行い,徐脈にしないよう注意する必要があります。徐脈はQT延長を助長する可能性があります。

 

カルシウム拮抗薬:洞結節・房室結節の伝導時間を遅延(図6

図6カルシウム拮抗薬の影響

>カルシウム拮抗薬の影響

 

カルシウム(Ca)拮抗薬は,細胞内へのカルシウムイオン流入を抑制します。そのため,洞結節や房室結節など,カルシウムイオンの流入のみで仕事をしている細胞の興奮を抑える作用があります。

つまり,心房側で発生している頻繁な刺激を心室へ伝わりづらくすることから,心房細動や心房粗動などの頻拍発作を起こさないようにコントロールできます。

 

使用上の注意

過剰投与により,洞不全症候群や房室ブロックを起こし一時的にペースメーカーが必要となることがあります。WPW症候群では,房室伝導の働きが抑制されることよりKent束への伝導が通過しやすくなり,心室細動や心室頻拍を呈する危険性があるため,カルシウム拮抗薬の使用は禁忌です。

これら以外にも抗不整脈作用を示す薬剤はさまざまあります。不整脈を理解したうえで,それら薬剤の作用を考えながらみていく必要があります。患者さんによりよいケアを提供するために,医師や薬剤師,看護師,それぞれの専門性を生かした観察と情報の共有が重要です。

 

 


[文献]

  • (1)市田 聡:ハート先生の心電図セミナー中級編テキスト.医学同人社,pp53,2006.
  • (2)赤石 誠(監修):循環器ナースのための不整脈治療とケア.ハートナーシング(2010秋季増刊),メディカ出版,pp40–121,2010.

[PROFILE]
桑島みく(くわじま みく)
日本医科大学付属病院 集中治療室
2005年 弘前大学医学部保健学科卒業後,埼玉医大総合医療センター高度救命救急センターでの3年間の勤務を経て,2008年より現職。

原田恭子(はらだ きょうこ)
日本医科大学付属病院 集中治療室, 集中ケア認定看護師
1997年 市立三次中央病院(広島県)入職。2001年 同院集中治療病棟にて勤務。2007年7月より現職。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2011 医学出版

[出典]循環器ナーシング 2011年10月号

P.193~「刺激伝導系(心電図)のメカニズムと異常心電図の特徴」

著作権について

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今日の看護クイズ 挑戦者1072

酸素飽和度についての説明で、正しいものはどれでしょうか?

  • 1.酸素飽和度とは、静脈内の赤血球中のヘモグロビンが酸素と結合している割合を示したものである。
  • 2.パルスオキシメータを用いて測定した値をSaO2、動脈血ガス分析で測定した値をSpO2という。
  • 3.SpO2が正常であれば、体内の酸素量は十分であると判断できる。
  • 4.健康な人の酸素飽和度は96~99%だが、酸素吸入時はSpO2を90%以上維持すれば通常は十分である。
今日のクイズに挑戦!