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2015年07月28日

よく使用される循環器用剤

『循環器ナーシング』2013年5月号<新人さん必読!循環器ナースが絶対知っておくべき基礎知識>より抜粋。
よく使用される循環器用剤について解説します。

 

Point

  • 生活指導を行い,日々の自己管理,非薬物療法を徹底させることが治療の基本!
  • 各学会からガイドラインが出されており薬物選択時の目安になるが,最終的には個別に判断すべき!
  • 急性心不全治療薬や抗不整脈薬などを漫然と投与すると,予後を悪化させてしまう!
  • 投与開始後は,薬剤の効果と副作用に関して注意深く観察する!
  • 定期的に診察と検査を行い,状態に応じた薬剤選択や用量調節を行う!

 

森田啓行

(東京大学大学院医学系研究科 健康医科学創造講座 特任准教授)

〈目次〉

 

はじめに

循環器用剤には,心血管系に直接作用する薬剤,体液量を調節する薬剤,凝固能を調節する薬剤などが含まれます。症状,血圧脈拍尿量,食欲,体重動脈血酸素飽和度,肺聴診所見,胸部X線,心電図,関連検査値などを指標に,こまめな用量調節を必要とする薬剤が多いのが特徴です。
本コラムでは,①慢性心不全治療薬,②急性心不全治療薬,③不整脈の薬物治療,④抗血栓薬,⑤高血圧治療薬(降圧薬),⑥虚血性心疾患の薬物治療,の順に薬剤使用の考え方と代表的薬剤の適応,主作用,用法用量,副作用に関して解説します(MEMO1)。

 

MEMO1ココに注意!

循環器用剤も他領域の薬剤同様,
1)高齢者では代謝が低下しているので減量が必要
2)多種類の薬剤を併用している場合,相互作用や副作用増強に注意が必要
3)排泄経路を考慮し,腎排泄性ならば腎機能低下時には減量するなどの調節が必要
です。

 

慢性心不全治療薬

慢性心不全の予後を決定する重要な因子は,①循環血液量増加とうっ血,②神経体液性因子活性化,③左室肥大とリモデリング,④致死性不整脈の発生,です。基礎疾患の治療も必要です。とくに,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)をはじめとする神経体液性因子および交感神経系の寄与は大きく,これらを調節することが今日の心不全治療の中心となっています(図1)。

図1心不全の重症度からみた薬物治療指針

心不全の重症度からみた薬物治療指針

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009年度合同研究班報告)慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版).http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2010_matsuzaki_h.pdf(2013年3月7日閲覧)

さらに,心筋リモデリング抑制や致死性不整脈の発生予防を意識した治療が望まれます。静脈系のうっ血改善に対しては利尿薬,長期予後改善を目的とした場合は,RAA系阻害薬とβ遮断薬が使用されます。また,非薬物治療として,両心室ペーシング再同期療法(cardiac resynchronization therapy;CRT)や植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator;ICD)があります。

 

利尿薬

ループ利尿薬

フロセミド(ラシックス®)は腎ヘンレループの太い上行脚に作用し,ナトリウム(Na)再吸収を抑制して強い利尿効果を発揮します。腎機能障害例でも使用できます。うっ血改善に有効ですが,生命予後改善のエビデンスはありません。低カリウム(K),低カルシウム(Ca),低マグネシウム(Mg)血症や,大量静注では聴力障害の副作用に注意します。また,飲水不十分例に漫然と使用すると脱水を招くので注意しましょう。

〔処方例〕

  • ラシックス® 20mg錠 1回1~3錠を1日1回

 

サイアザイド系利尿薬

腎遠位尿細管でのNa再吸収を抑制します。利尿効果が緩徐であるため軽度の心不全症例に用いられます。低K血症や高Ca血症,耐糖能異常,高尿酸血症など代謝への影響があります。血清クレアチニン2.0mg/dL以上では禁忌です。

〔処方例〕

  • フルイトラン® 2mg錠 1回1~2錠を1日1回

 

カリウム保持性利尿薬

抗アルドステロン薬のスピロノラクトン(アルダクトン®A25mg錠)がよく使われます。腎遠位尿細管および集合管に作用し,Na再吸収を抑えてK排泄を阻害し,利尿効果を発揮します。心血管保護作用や致死性不整脈抑制作用が示されており,心不全患者の予後改善効果も証明されています。副作用として女性化乳房が知られています。腎機能障害例での使用,ARB,ACE阻害薬との併用の際には,高K血症に注意します。

〔処方例〕

  • アルダクトン®A25mg錠 1回1~2錠を1日1回

 

トルバプタン(サムスカ®

選択的バソプレシンV2受容体拮抗薬です。既存の利尿薬では効果不十分な心不全体液貯留患者(希釈性低Na血症)に対して慎重投与されます。高Na血症,血栓塞栓症,腎不全,高K血症に注意しましょう。

〔処方例〕

  • サムスカ® 15mg錠 1回1錠を1日1回

 

RAA系阻害薬

ARBとACE阻害薬がよく使用されます。

ARB

ARBはアンジオテンシンⅡ受容体タイプ1に選択的に結合し,アンジオテンシンⅡの効果(血管収縮,体液貯留,交感神経活性亢進作用)を抑制します。心肥大を抑制し,心不全の予後を改善します。また腎保護作用,糖尿病新規発症抑制作用も有しています。妊婦や授乳婦への投与は禁忌です。クレアチニン2.0mg/dL以上では投与量を減らします。両側性腎動脈狭窄例または単腎で一側性腎動脈狭窄例では使用しません。K保持性利尿薬との併用で高K血症をきたすことがあります。

 

ACE阻害薬

ACE阻害薬はアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害しアンジオテンシンⅡの産生を抑制することで,その効果を抑えます。エナラプリル(レニベース®)は心保護作用,腎保護作用に関する豊富なエビデンスを有しています。冠動脈疾患をすでに発症している場合,再発予防にも有効です。投与時の注意,ならびに副作用はARBとほぼ同じですが,ブラジキニンの作用増強による空咳が特徴的です。

〔処方例〕

  • ディオバン® 80mg錠 1回1錠を1日1回

あるいは

  • レニベース® 5mg/10mg錠 1回1錠を1日1回

 

β遮断薬

交感神経終末のカテコラミンβ受容体に作用します。心臓にはβ1受容体が多く,カテコラミンは収縮力増強,心拍数増加,刺激伝導性亢進に作用します。また血管,気管支にはβ2受容体が多く,カテコラミンは血管拡張,気管支拡張に作用します。

β遮断薬はかつて心不全には禁忌とされていましたが,現在では慢性心不全患者における心保護効果,左室リモデリング抑制(逆リモデリング)効果,生命予後改善効果が証明され,ACE阻害薬,ARBと並んで慢性心不全治療の第一選択薬となっています。またレニン産生抑制効果も持っています。交感神経活性の亢進した若年者高血圧や頻脈例,労作性狭心症心筋梗塞後,閉塞性肥大型心筋症,大動脈解離甲状腺機能亢進症にはよい適応です。

原則として入院のうえ,ごく低用量から開始し,症状,心機能,副作用に注意しつつ1~2週間ごとに段階的に増量します。急に休薬すると,リバウンドして血圧急上昇をきたす離脱現象を起こしうるので,徐々に減量して中止します。

カルベジロール(アーチスト®)はαβ遮断薬であり,心不全の予後改善に関するエビデンスも豊富です。ビソプロロール(メインテート®)では心室性不整脈の抑制効果が強くみられます。副作用としては,単独または利尿薬との併用により耐糖能異常,高尿酸血症など代謝への影響があります。気管支喘息,高度徐脈,Ⅱ度以上の房室ブロック,冠攣縮性狭心症,末梢循環障害では使用しません。ジルチアゼム(ヘルベッサー®)との併用で高度徐脈,心抑制作用が増強します。

〔処方例〕

  • アーチスト® 1.25mg錠 1回1錠を1日2回から開始し,漸増

あるいは

  • メインテート® 0.625mg錠 1回1錠を1日1回から開始し,漸増

 

急性心不全治療薬

症状改善と血行動態安定が治療目標であり,静脈ラインを確保のうえ,うっ血改善あるいは心拍出量維持作用のある薬剤が使用されます。酸素療法,薬物治療で効果不十分のときは大動脈内バルーンパンピング(IABP),経皮的心肺補助法(PCPS),血液浄化療法を考慮します。

ここで使用される薬剤は,いずれも急性期を乗り切るために必要な薬剤ではありますが,長期予後改善にはつながらないことに注意しましょう。症状と血行動態が安定したら徐々に減量して,慢性心不全治療薬(前述)への切り替えを進めます。

 

ループ利尿薬

多くの場合,フロセミド(ラシックス®)20mg静注が行われます。適宜追加投与します。利尿薬の過剰投与は血管内脱水,ときに血栓症をもたらします。低K血症にも注意しましょう。

 

硝酸薬

低用量では主に静脈系,高用量では動脈系抵抗血管を拡張させて,うっ血を改善し,心臓への負荷を軽減させます。冠動脈拡張作用も有しています。投与する際は,血圧低下に注意しましょう。また,高用量では耐性を生じます。主に硝酸イソソルビド(ニトロール®)が用いられ,高血圧を伴うときにはニトログリセリン(ミリスロール®)が選択されます。

〔使用例〕

  • ニトロール® 5~10mg/時点滴 または
  • ミリスロール® 0.1γ点滴で開始し,適宜増量

※γ=μg/kg/分

 

カルペリチド(ハンプ®

心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial natriuretic peptide;ANP)であり,血管拡張効果やNa利尿効果,RAA系合成抑制効果により,肺うっ血改善作用と心拍出量増加作用を有します。心拍数を増加させません。投与する際は,血圧低下に注意しましょう。

〔使用例〕

  • ハンプ® 0.05γ 点滴で開始し,0.2γ点滴まで増量

 

カテコラミン製剤

ドパミン(イノバン®,カコージン®,カタボン®

低用量(2μg/kg/分以下)では,ドパミン受容体を刺激し腎動脈を拡張して利尿効果が得られます。中用量(2~10μg/kg/分)では陽性変力作用,心拍数増加(β1作用),血管収縮による血圧上昇(α1作用)がみられます。高用量ではα1作用により血管が収縮し血圧が上昇しますが,後負荷が増大するので心拍出量は増加せず,腎動脈が収縮するので尿量も得られなくなります。

 

ドブタミン(ドブトレックス®

β1選択性が高く,用量依存性に陽性変力作用をきたします。5μg/kg/分以下ではβ2刺激による血管拡張作用で,末梢血管抵抗,肺毛細管抵抗を低下させます。心拍数増加も他のカテコラミン製剤よりは軽度で心筋酸素消費量増加が少ないので,虚血性心疾患にはよい適応となります。

両者の特徴を生かすため,多くの場合ドパミンとドブタミンは併用されます。その際,頻脈や心室性不整脈に注意しましょう。

〔使用例〕

  • イノバン® 3γ+ドブトレックス® 5γ点滴で開始

 

ノルアドレナリン

心原性ショックなど昇圧が必要なときに用いられます。0.05~0.5μg/kg/分で投与します。強力なα1作用により血管が収縮し,血圧が上昇します。

〔使用例〕

 

ホスホジエステラーゼⅢ (PDEⅢ)阻害薬

β受容体を介さずに作用するので,カテコラミン抵抗性の状態(β遮断薬が投与されている慢性心不全患者の急性増悪)でも有効です。強心作用以外に血管拡張作用があり,心筋酸素消費量を増加させずに心拍出量を増加させる作用があります。オルプリノン(コアテック®),ミルリノン(ミルリーラ®)が使用されますが,カテコラミン製剤と同様に心室性不整脈出現に注意します。

〔使用例〕

  • コアテック® 10μg/kgを5分間かけて静注,引き続き0.1~0.3γ点滴

 

不整脈の薬物治療

抗不整脈薬は種類が多く,薬理作用は多岐にわたります。ここではVaughan Williams(ボーンウィリアムス)分類(表1)にしたがって表記を行います。

表1Vaughan Williams分類

不整脈薬物治療の特徴として,
1)根治療法ではない
2)多くの薬剤は心筋収縮力を弱める(陰性変力作用)
3)房室伝導抑制(PR時間延長),心室内伝導遅延(QRS幅増大)をきたすことがある
4)本来不整脈を抑えることが目的であるが,ときに不整脈を悪化させてしまうことや新たな不整脈を引き起こすことがある(催不整脈作用)
などが挙げられます。

事実,抗不整脈薬のなかで長期投与による生命予後改善効果が証明されているのは,β遮断薬とアミオダロン(心機能が保たれている症例)だけとなっています。

血行動態が安定しており,致死的不整脈に移行する可能性が低く,無症状の場合は,安易に抗不整脈薬を投与せず,まず不整脈の原因(虚血,弁膜症,内分泌異常,電解質異常,貧血,脱水,低酸素,アシドーシスなど)を精査し,あれば原因除去に努めます。原因が明らかでない場合でも,カテーテルアブレーションやICDを選択することで薬物治療の必要を減らすことができます。

抗不整脈薬投与中も,ただ漫然と投与することは避け,心機能や新規不整脈発生をモニターし,脱水や電解質異常に配慮しましょう。とくにI群薬は陰性変力作用があるので長期連用は避ける必要があります。
以下に,よく使用される抗不整脈薬をまとめます。

 

リドカイン(キシロカイン®

血行動態安定下での心室性不整脈予防の第一選択薬です。半減期は2時間です。とくに高齢者では中枢神経系への影響に注意する必要があります。無効なときはメキシレチン,β遮断薬を用います。

 

アミオダロン(アンカロン®

Kチャネル遮断薬であり,心室性不整脈の治療に用います。また,心房細動に対しては高い洞調律維持効果が示されています。ほとんどが肝臓で代謝され,腎臓からの排泄はほとんどみられないので,腎機能障害例でも減量する必要はありません。経口投与では1日400mgを7日間初期負荷し,その後は1日200mgを維持投与量とします。静注投与は薬物添付文書を参照して注意深く行いましょう。

急性期には,心機能抑制,血圧低下,徐脈に注意する必要があります。慢性期には心保護作用,心機能改善効果が期待されます。

心臓以外の副作用として,間質性肺炎が知られ,定期的な問診,聴診,胸部X線検査,肺機能検査,血液検査による早期診断が重要です。他に甲状腺機能障害,肝機能障害などがあります。副作用を避けるためにも適切な用量設定が必要です。

 

ATP(アデホス)

上室性頻拍の治療に用います。半減期が10秒以下ときわめて短いため,数秒間以内で急速静注します。速やかにアデノシンに代謝され心房筋に作用して上室性頻拍を停止させます。ほぼ全例で短時間の灼熱感や不快感を自覚します。冠攣縮や気管支攣縮作用があるので虚血性心疾患や気管支喘息症例では使用できません。

 

ベラパミル(ワソラン®

房室伝導を抑えるので上室性頻拍の治療,ベラパミル感受性心室頻拍(右脚ブロック+左軸偏位型特発性心室頻拍),心房粗動,心房細動のレートコントロール(徐脈化)に用いられます。WPW症候群では使用禁忌です。高度徐脈,心不全悪化に注意しましょう。

 

ジゴキシン

かつては強心薬として頻用されたジギタリス製剤です。迷走神経刺激作用により房室伝導を抑えるので心房粗動,心房細動のレートコントロール(徐脈化)に用いられますが,速効性はなく,静注後効果発現までに約2時間かかります。

心室性不整脈が出現しやすく,高齢者,腎機能低下例,低K血症例では中毒になりやすいので注意しましょう。Ⅱ度以上の房室ブロック,閉塞性肥大型心筋症,WPW症候群では使用禁忌です。

 

β遮断薬

交感神経活性を抑制します。心房粗動,心房細動のレートコントロール(徐脈化),上室性頻拍の予防・停止,上室性・心室性期外収縮の予防に用いられます。高度徐脈,心不全悪化に注意しましょう。

 

抗血栓薬

血栓症は動脈血栓,静脈血栓,塞栓に大別されます。

動脈血栓はプラーク破綻をきっかけに始まり,主に活性化血小板が凝集して形成される白色血栓です。活性化血小板はアデノシン二リン酸(ADP),トロンボキサンA2(TXA2)を放出して血小板凝集を引き起こします。

したがって動脈血栓予防には抗血小板薬が使われます。

アスピリンは血小板シクロオキシゲナーゼを阻害してTXA2産生を抑制することにより,またクロピドグレル(プラビックス®),チクロピジン(パナルジン®)はADP受容体を拮抗することにより,抗血小板作用を発揮します。薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent;DES)による冠動脈形成術施行時は少なくとも1年間,ベアメタルステントの場合でも少なくとも1ヵ月間,アスピリン(バファリン,バイアスピリン®)とクロピドグレル(プラビックス®)との併用投与を行います。抗血小板薬投与により出血時間(正常値1~5分)が延長し,血小板凝集能低下をきたします。そのため,手術前10日間は投与を中止します。

一方,静脈血栓は,流れの遅いところにできやすいという特徴があります。肝臓で合成された凝固因子が活性化血小板の膜表面で連鎖反応を起こし(凝固カスケード活性化:図2),フィブリン網が形成され,その網のなかに赤血球が多く巻き込まれて赤色血栓を形成します。

図2凝固因子カスケードと各抗凝固薬の作用点

凝固因子カスケードと各抗凝固薬の作用点

静脈血栓の予防には抗凝固薬が用いられます。静脈血栓が肺塞栓を,低圧系の左房にできた血栓が脳塞栓をきたすので,いずれも抗凝固薬による予防が有効です。
以下に,よく使用される抗血栓薬をまとめます。

 

ヘパリン

アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)と複合体を形成してATⅢを活性化し,トロンビン(Ⅱa)および凝固因子Xaを阻害します。肝臓で代謝され,半減期は30分と短時間です。5000単位を静注後,1日1万単位持続点滴することが多いです。活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT:正常値30~40秒),活性凝固時間(ACT:正常値90~120秒)を指標に投与量を調節します。APTTが基準値の2倍になるようにすることが多いですが,手技(IABP,PCPS,冠動脈ステント術)によっては強く効かせる必要があります。ヘパリン1000単位に対してプロタミン10mg(1mL)静注で拮抗できます。

 

ワルファリン(ワーファリン)

ビタミンKと拮抗してビタミンK依存性凝固因子(Ⅱ,Ⅶ,Ⅸ,Ⅹ)の肝臓での合成を阻害し,凝固カスケードを抑制します。ビタミンK含有食物(納豆,クロレラ,青汁,一部の野菜など)の摂取により効果が減弱するので,ワルファリン内服中の患者ではそれらの摂取を避けるように食事指導が必要です。

心房細動患者の血栓・脳塞栓予防,機械弁術後患者の血栓予防,その他血栓塞栓症に汎用されています。心房細動患者では,CHADS2スコア1点以上ならワルファリン投与を考慮し,2点以上ならワルファリンを投与します(MEMO2)。

効果には個人差が大きいので,プロトロンビン時間(PT-INR:正常値1.0)が2.0~3.0になるように用量設定・調整を行います。高齢者などでは効きを弱くする(PT-INR 1.6~2.6)などの工夫が必要になります。待機的除細動に際しては,除細動前3週間と除細動後4週間はワルファリン継続が必要です。手術前5日間は投与を中止します。緊急時はビタミンK静注で拮抗できます。妊婦,重症肝障害,骨粗鬆症治療用ビタミンK2製剤との併用は禁忌です。

〔処方例〕

  •  ワーファリン1mg錠 1回2~6錠を1日1回

 

ダビガトラン(プラザキサ®

直接トロンビンと結合して作用を阻害する抗トロンビン薬です。非弁膜症性心房細動患者における脳塞栓・全身性塞栓予防に適応があります。食事の影響は受けません。内服したその日から効果を発揮します。ワルファリンと異なり,一日のなかでも効果に強弱がみられます。CHADS2スコア1点以上で本剤投与が推奨されています。手術前2~4日間は投与を中止します。腎機能低下例,高齢者,抗血小板薬使用例では出血が増加するので,投与量の調節が必要となります。

〔処方例〕

  • プラザキサ®75mgカプセル1回2カプセルを1日2回,あるいは110mgカプセル 1回1カプセルを1日2回

 

MEMO2CHADS2スコア

塞栓症リスクの指標です。心不全(conges
tive heart failure)1点,高血圧(hyper
tension)1点,年齢(age)75歳以上 1点,糖尿病(diabetes)1点,脳梗塞あるいは一過性脳虚血発作(stroke or transient ischemic attacks;TIA)の既往 2点の合計点で診断します。高スコアであるほど塞栓症のリスクは高まります。

 

リバーロキサバン  (イグザレルト®

凝固因子Xaを選択的に直接阻害します。非弁膜症性心房細動患者における脳塞栓・全身性塞栓予防に適応があります。食事の影響を受けません。内服したその日から効果を発揮します。ワルファリンと異なり,一日のなかでも効果に強弱がみられます。手術前日は投与を中止します。腎機能低下例,高齢者,抗血小板薬使用例では出血が増加するので,投与量調節が必要です。

〔処方例〕

  • イグザレルト®15mg/10mg錠 1回1錠を1日1回

抗血小板薬,抗凝固薬使用時は消化管出血予防のためにプロトンポンプ阻害薬(PPI)を併用することが多い。

 

高血圧治療薬(降圧薬)

血圧が高くなると心血管死亡が増加します。また,血圧を下げることにより心血管病リスクが減少することも疫学研究で証明されています。とくに心筋梗塞後患者,糖尿病患者,慢性腎臓病患者では降圧目標が低く設定されており(診察室血圧 130/80mmHg未満,家庭血圧 125/75mmHg),強力な生活習慣修正指導(禁煙,減塩,適正体重維持,運動)とともに薬物治療を併用し厳格に降圧することが必要です。

薬物治療の原則は,①一日一回投与のものを選択,②低用量からの開始,③効果不十分の場合は増量または作用機序の異なる薬剤との併用療法を行うことです。配合剤も使われるようになってきました。よく使用されるのは,Ca拮抗薬,ARB,ACE阻害薬,利尿薬,β遮断薬です。ARBとCa拮抗薬,あるいはARBと利尿薬の併用が多くみられます。
主な降圧薬の禁忌ならびに慎重投与を表2にまとめました。

表2主要降圧薬の禁忌もしくは慎重投与例(文献1より転載)

β遮断薬と非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬ジルチアゼム(ヘルベッサー®)との併用で高度徐脈,心不全悪化をきたすことがあります。また,K保持性利尿薬とARB,ACE阻害薬との併用で高K血症をきたすことがあります。

 

Ca拮抗薬

血管平滑筋を弛緩して血管を拡張させ,降圧効果を発揮します。高齢者にも使用しやすい薬剤です。冠攣縮性狭心症によい適応です。妊婦への投与は禁忌です。アムロジピン(ノルバスク®),ニフェジピン(アダラート®CR)などジヒドロピリジン系薬剤がよく使われます。グレープフルーツ摂取後にこれらの薬剤の血中濃度が増加するので注意してください。また,ジルチアゼム(ヘルベッサー®)では,高度徐脈,心不全悪化に注意が必要です。

 

ARB

慢性心不全治療薬の項を参照してください。

 

ACE阻害薬

慢性心不全治療薬の項を参照してください。

 

利尿薬

慢性心不全治療薬の項を参照してください。降圧剤としてはサイアザイド系利尿薬が主に用いられます。また少量を他のクラスの降圧薬と併用することで降圧効果の増大を図ることができます。

 

K保持性利尿薬

慢性心不全治療薬の項を参照してください。選択的アルドステロン拮抗薬のエプレレノン(セララ®)も使われます。

 

β遮断薬

慢性心不全治療薬の項を参照してください。

***

高血圧緊急症(大動脈解離など)に対しては,ジルチアゼム(ヘルベッサー®),ニトログリセリン(ミリスロール®),ニトロプルシド(ニトプロ®)などの持続点滴が行われます。

 

〔使用例〕

  •  ヘルベッサー® R5~15γ点滴
  • ミリスロール® 0.5γ点滴,適宜増量
  • ニトプロ® 0.5~2γ点滴(過剰降圧,シアン中毒に注意)

 

虚血性心疾患の薬物治療

心筋梗塞・不安定狭心症 急性期の治療

患者をCCUに入室させ,心電図モニターを開始します。酸素投与を行い,静脈ラインを確保し,緊急心臓カテーテル検査の準備を行います。迅速な血行再建と血行再建前後の循環動態の維持,抗血栓・抗不整脈治療を行います。

  • 硝酸イソソルビド(ニトロール®) 5~10mg/時点滴。高血圧時は,ニトログリセリン(ミリスロール®)0.1μg/kg/分点滴で開始し適宜増量。
  •  ヘパリン 5000単位を静注後,   1日1万単位点滴。
  • インアウトバランスをチェックして,血管内脱水を起こさないように努める。
  • 症例により,高血圧や急性心不全,心原性ショックの治療を併行して行う必要がある。血圧を保てないときはIABP挿入を考慮する。血圧は普段よりやや低めに保つことが梗塞後心破裂予防の観点からも望ましい。
  • 下壁梗塞時には房室ブロックを合併し,一時的ペーシングを必要とすることがある。前壁中隔梗塞に伴う房室ブロックは高度であることが多い。心室性不整脈に対しては,キシロカイン®50mg(2.5mL)を1~2分間かけて静注後,1~2mg/分を点滴静注することが多いが,現在推奨されている治療法ではない。
  •   冠動脈ステント挿入が行われる場  合も多く,このような症例では,抗血小板療法を速やかに開始する。PPIの併用による消化管粘膜保護 も必要になる。

〔処方例〕

  • バイアスピリン® 100mg錠 1回1錠を1日1回,プラビックス®75mg錠 1回1錠を1日1回(開始時のみ300mgを1日1回)を併用
  • ネキシウム® 20mgカプセル 1回1カプセルを1日1回

 

安定労作性狭心症

虚血の評価を行い,冠動脈造影の結果をふまえて血行再建を行うことが望ましいでしょう。薬物治療としては,硝酸薬,Ca拮抗薬,β遮断薬,抗血小板薬が用いられます。冠攣縮性狭心症ではβ遮断薬を使用しません。

〔処方例〕

  • フランドル®テープ 1回1枚を1日1回貼付
  • ヘルベッサー®R 100mg/200mgカプセル 1回1カプセルを1日1回
  • メインテート® 5mg錠 1回1錠を1日1回
  • バイアスピリン® 100mg錠 1回1錠を1日1回

 

おわりに

循環器用剤使用の考え方と代表的薬剤の適応,主作用,用法用量,副作用について解説しました(MEMO3)。

これら薬物治療の前提として,日々の自己管理があります。生活指導を行い,日々の自己管理を徹底させることが治療の基本です。投与開始後は,薬剤の効果と副作用に関して注意深く観察すること,さらに定期的に診察と検査を行い,状態に応じた薬剤選択や用量調節を行うことが必要です。

とくに急性心不全治療薬と抗不整脈薬を「漫然と」投与することは予後悪化を招くので注意しましょう。

MEMO3ケアのコツ

・カテコラミン製剤は,確実な投与が望ましいので中心静脈ルートからの投与がよいでしょう。ドパミンは血管外に漏れると組織壊死を起こします。
・抗不整脈薬の静注投与時は,必ず心電図と血圧のモニターを行いましょう。
・Kチャネル遮断作用を有するアミオダロン(アンカロン®),プロカインアミド(アミサリン®),ジソピラミド(リスモダン®),シベンゾリン(シベノール®)ではQT延長から心室性不整脈(Torsades de Pointes,トルサード・ド・ポアンツ)をきたすことがあります。下痢,食欲不振,利尿薬使用による低K血症下で誘発されやすくなります。また,QT延長をきたす薬剤(エリスロマイシン,クラリスロマイシン,プロブコールなど)との併用は,QT延長増悪の観点から要注意です。

 

 


[引用・参考文献]

  • (1)日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会(編):高血圧治療ガイドライン2009.p40,2009.
  • (2)日本循環器学会ほか:循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009年度合同研究班報告)慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版).http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2010_matsuzaki_h.pdf(2013年3月5日閲覧)

[Profile]
森田啓行(もりた ひろゆき)
東京大学大学院医学系研究科 健康医科学創造講座 特任准教授
1991年 東京大学医学部卒業。東京大学循環器内科を経て,2008年より現職。日本内科学会総合内科専門医,日本循環器学会認定専門医。薬剤および薬剤間相互作用が臨床所見に及ぼす影響を解明するため臨床研究を展開している。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2013 医学出版
[出典]循環器ナーシング 2013年5月号

P.57~「よく使用される循環器用剤」

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