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2015年09月03日

ストーマ装具選びのための最低限必要なポイント

『WOC Nursing』2015年2月号<これはわかる!実践!ストーマ装具の選択>より抜粋。
ストーマ装具を選択するために最低限必要なポイントについて解説します。

 

Point

  • 腹壁は座位でも確認することができる
  • 腹壁の硬さを確認することができる
  • ストーマの高さを確認することができる
  • ストーマ周囲皮膚のしわをみることができる

石澤美保子

(奈良県立医科大学 医学部 看護学科 教授,ET/皮膚・排泄ケア認定看護師)

 

〈目次〉

 

はじめに

本コラムで扱う「装具を選択するために最低限必要なポイント」は,4つあります。

人の顔がそれぞれ違うように,ストーマやその周囲の皮膚・腹壁の状況は千差万別ともいえます。以下に示す4つのポイントを的確にとらえて装具選択を実践していくと,装具選択の明らかな誤りによって発生する,貼付後数時間での排泄物の漏れを減少させることができます。

 

装具を貼付する前に腹壁を座位で確認する

ストーマ装具を選択する際,必ず腹壁を観察していると思いますが,仰臥位とともに座位も必ず確認しなければなりません。

どちらか一方しか確認できない場合は,優先するのは座位になります。仰臥位のみの確認でよいのは,寝たきりの方で頭部挙上がほとんどない方です。介助で車椅子乗車のできる方なども座位での確認が必要となります。

 

座位時の腹壁確認は装具選択のための第一歩

図1をご覧ください。

 

図1仰臥位でのストーマ計測

仰臥位でのストーマ計測

仰臥位でストーマの計測をしています。

この時点では皮膚に少し埋まっているように見えるストーマですが,ストーマ周囲の皮膚がそれほど変化するようには思えません。装具は単品系の平板全面皮膚保護剤を使用していました。

術後数日して排便が始まり,患者の座位姿勢時間が長くなると,すぐに1日5~6回の便漏れが始まりました。当初,原因がわかりませんでした。

なぜかというと,通常,装具からの便漏れに看護師が気づくと,自力で寝衣交換のできる患者以外はまずベッドに寝てもらいます。そして装具を外し,便で汚染された皮膚を清拭するなどの一連のケアは仰臥位で行います。そのため,ストーマ周囲の皮膚の状況の判断は常に仰臥位になります。そうすると漏れの原因がなかなか発見されないのです。

図2は,同じ方が座位になった状態です。

図2座位時の様子

座位時の様子

 

座位になるとストーマが見えなくなるほどストーマ上部の脂肪がかぶさり,腹壁が変化しストーマ周囲の皮膚がさらに陥凹しています。ストーマ装具が患者の体動にも影響されずに装着し続けるようにするには,最低でもストーマ粘膜の端から2~3 cmの皮膚が隙間なく面板に密着していなければなりません。図1のように仰臥位の状況を見るだけでは,平板装具でも貼れるように思います。図2の状況に最初に気づいていれば,装具選択を誤らずにすみます。

本症例のように,術後排便が始まり座位姿勢の時間が長くなるときには,凸型嵌め込み具内蔵の装具を選択することが推奨されます。

装具を貼付する前の座位での腹壁確認は,装具選択のための第一歩であることを覚えておいてください。

 

次に図3図4をご覧ください。

 

図3仰臥位のストーマとストーマ周囲の状況

仰臥位のストーマとストーマ周囲の状況

 

図4座位時のストーマとストーマ周囲の状況

座位時のストーマとストーマ周囲の状況

 

図3は仰臥位で,図4は座位です。先ほどの症例の方と違い脂肪が少ないので,ほとんど腹壁に変化がないように見えますが,よく見るとしわの入り方が違います。とくにストーマ下部にしわが入っています。便の性状が固形便であれば,ストーマに高さ(突出度)がありますので,すぐに便漏れするということはありません。ですが,下痢になったときや活動性が上がったときは,このしわを通して漏れることがあります。そのことも踏まえて,座位になった際に患者自身にこのしわの存在を示し,説明しておきます。

座位の際に発生するこのような柔らかいしわは,凸面装具で矯正せずとも,座位時に固定型フランジの装具でしわを伸ばして貼ると管理できますので,覚えておきましょう。

 

ストーマ周囲の腹壁の硬さをみる

意識してストーマ周囲の皮膚や腹壁を触る

ストーマ装具を選択する際に重要なこととして次に挙げられるのは,腹壁の硬さです。

腹壁の硬さは,ストーマ周囲の腹壁を指で押さえて判断します。ストーマはしっかり観察していても,ストーマ周囲の皮膚や腹壁を触る看護師はまだまだ少ないような印象を受けます。

もっとも皮膚の清拭のときに触れてはいると思いますが,さらに意識して腹壁を押さえる,感触を確かめるといったことを指します。

硬さの見方は,2本の指(示指,中指)をくっつけてストーマのすぐ際の皮膚に当ててみます。くっつけた指は横に並べず,縦に押さえ込むようにします。

「硬い」腹壁とは,揃えた指が1縦指以下の沈み,「普通」の腹壁は1縦指以上の沈み,「柔らかい」腹壁は2縦指以上の沈みです(1)

図5図6図7図8図9をご覧ください。

図5皮下脂肪の少ない硬い腹壁(正面写真)

皮下脂肪の少ない硬い腹壁(正面写真)

 

図6皮下脂肪の少ない硬い腹壁(横からの写真)

皮下脂肪の少ない硬い腹壁(横からの写真)

 

図7内臓脂肪型の硬めの腹壁

内臓脂肪型の硬めの腹壁

 

図8普通の硬さ(1縦指以上の沈み)の腹壁

普通の硬さ(1縦指以上の沈み)の腹壁

 

図9柔らかめの腹壁

柔らかめの腹壁

 

まず図5図6図7は硬い腹壁です。硬い腹壁はやはり皮下脂肪の少ない方に多いです(図5図6)。しかし,痩せていない図7のように,内臓脂肪型で体格のがっしりとした男性にみられる場合もあります。見ているだけではわからない,触らないといけない理由がこういうところです。図8は普通の腹壁,図9は柔らかめの腹壁です。

 

腹壁の硬さをみる理由

ではなぜ,腹壁の硬さをみなければならないのでしょうか。

装具を手にしたとき,面板の部分が硬いものと,二つ折りにできるほど柔らかいものがあるのをお気づきでしょうか。装具と腹壁の密着を考えるとき,硬いもの同士,柔らかいもの同士では持続時間が短くなります。

最もわかりやすい例を挙げましょう。図5図6のようにストーマの高さがない症例において,排泄物が漏れるかもしれないと考えて,凸面嵌め込み具内蔵装具を使ったとします。しかし凸面嵌め込み具内蔵装具のように面板が硬い場合,図5図6のような硬い腹壁に使用すると硬いもの同士反発し合い,うまく装具が皮膚に密着せず浮き上がりが起こって漏れやすくなります。

逆に図9のような柔らかい腹壁の場合,二つ折りにできるような単品系平板装具を使用するとストーマ周囲2~3 cmの皮膚が固定しにくく,面板の下に排泄物が入り込みやすくなることがあります。

このようなことからストーマケアの経験豊富な看護師たちは,「硬いお腹には柔らかい装具,柔らかいお腹には硬い装具」ということを常に意識して装具選択をするようにしています。

 

ストーマの高さをみる

ストーマの高さが装具装着日数の長短に直結しているということは,経験が浅い看護師でもすぐに感じることです。それぐらいにストーマの高さは,患者が予期せぬ排泄物の漏れを経験するか否かの重要な鍵になります。

ストーマの高さとは,皮膚から排泄口までの距離を指します。ストーマ粘膜自体を高さというのではなく,あくまで便の出る部位ということです。

ストーマの形状によっては,排泄口が粘膜の中心ではなく左右どちらかに傾いて皮膚に向かっている場合があり,そうなると当然皮膚から排泄口までの距離は短くなり高さのないストーマになります。

ストーマの高さが「ある」「ない」というのは,主観的な要素もありますが,10 mm以上を「突出型」,10 mm未満を「非突出型」と判定する方法もあります(2)

2012年には,社会復帰後のストーマの高さが15.9 mmである場合,ストーマ装具の交換間隔が最大時間になったという報告(3)がなされました。このことからも,ストーマの高さと装具の安定は密接な関係にあることがわかります。

ストーマ装具を選択する際,ストーマの高さを計測し,10 mmに満たない場合は,凸型嵌め込み具内蔵装具をまず念頭に置きます。そして凸型嵌め込み具内蔵装具を使用する際は,専用のベルトの使用も考慮します。ベルトを使用することで,凸型嵌め込み具内蔵装具の効果を確実にすることができます。

 

ストーマの高さがなく,凸型嵌め込み具内蔵装具を選択する際に忘れてならないのが,前述した腹壁の硬さです。そういう意味で,ストーマの高さと腹壁の硬さは同時にみる習慣をつけ,自分が選択した凸型嵌め込み具内蔵装具は,腹壁に沿うか,反発し合わないかを確認する必要があります。

「ストーマの高さがない=凸面装具」という単純な考えでいると装具選択を誤ってしまいます。腹壁の硬さを考慮した凸型嵌め込み具内蔵装具の選択をしていくことが重要です。

簡単な方法としては,自分が選んだ凸型嵌め込み具内蔵装具の面板の裏紙を外さずに,ストーマに近い部位の腹壁に押し当ててみて,面板周囲全体に皮膚が隙間なく当たっているかをみます。

 

ストーマ周囲皮膚のしわをみる

4つめのポイントは,ストーマ周囲の皮膚のしわです。しわの見方については応用編で詳しく述べますが,しわの有無は仰臥位と座位の両方で確認することがまず基本です。これは本章のはじめの「装具を貼付する前に腹壁を座位で確認する」の項で解説しました。しわは,細かいしわから深く刻まれたしわ,可動性のあるしわと種類があります。まずそのことを認識しましょう。

 

おわりに

本コラムで述べた4つのポイントは,指導的立場の方がストーマケアに初めて携わる方に教授する際に取り上げるべき内容と考えます。毎年次々と新しい装具が開発され,あるいは改善されている現状で,ともすれば入手しやすい装具やストックしてある装具を試していき,うまくいけばその装具で管理して退院していってもらう,ということもしばしば見受けられます。

このやり方は,成功する場合も当然ありますが,やはり患者側の状態から選択すべき装具を抽出し,「自分が把握している装具のなかから選択する」というのが最も安全です。またこうすることで,装具選択が知識・技術として確実に身についていきますので,誤った装具選択で排泄物が漏れるという,患者に最も大きなダメージを与えてしまうことを回避できます。

装具が主導権を握るのではなく,あくまで患者の状況から装具を選択するということを忘れないようにしたいものです。

 

 


[文献]

  • (1)秋山結美子:ストーマ装具の種類・分類と特徴.穴澤貞夫・大村裕子(編):ストーマ装具選択ガイドブック.金原出版,pp22-27,2012.
  • (2)山田陽子:ストーマ管理条件のアセスメントツール.穴澤貞夫・大村裕子(編):ストーマ装具選択ガイドブック.金原出版,pp239-244,2012.
  • (3)石澤美保子ほか:ストーマ局所条件と装具耐久時間の関連.日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌,29:5-12,2013.
  • (4)日本ストーマリハビリテーション学会(編):ストーマリハビリテーション学用語集 第2版.金原出版,2003.

 


[profile]

石澤美保子(いしざわ みほこ)

奈良県立医科大学 医学部 看護学科 教授,ET/皮膚・排泄ケア認定看護師

1983年 大阪キリスト教短期大学 卒業,1986年 近畿大学附属高等看護学校 卒業後,近畿大学医学部附属病院 勤務,1992年 渡米し,オハイオ州 クリーブランドクリニック ETスクール 修了,ET認定証 取得,ブリストルマイヤーズ・スクイブ(株)コンバテック事業部 課長,2007年 和歌山県立医科大学 保健看護学部 講師,2008年 大阪大学大学院 保健学専攻 博士後期課程 修了,博士(看護学)取得,2009年 大阪府立大学 看護学部 准教授を経て,2011年より現職。資格・所属学会:皮膚・排泄ケア認定看護師(2014年〔15年目〕資格更新),日本褥瘡学会 理事,日本創傷オストミー失禁管理学会 評議員,日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会 評議員ほか。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2015 医学出版
[出典]WOC Nursing 2015年2月号

p.14~「装具を選択するために最低限必要なポイント」

著作権について

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