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2015年07月15日

褥瘡(じょくそう)患者の病期に応じた「栄養管理」の基本

WOCケアの専門誌『WOC Nursing』2013年12月号<褥瘡患者のQOL向上をめざした栄養管理>より抜粋。
褥瘡患者の病期に応じた栄養管理の基本について解説します。

 

Point

  • 褥瘡予防・発生と栄養状態の関係が説明できる
  • 創傷治癒過程における各種栄養素の働きを理解できる
  • 褥瘡治療に有効な栄養素を病期により使い分けることができる

平石宏行
(京都桂病院 NST事務局)

〈目次〉

はじめに

褥瘡は,骨突起部に一定の圧力が加わることにより,阻血性壊死が生じて発生します。

発生した褥瘡の治療は除圧・スキンケア・栄養管理を軸に進められ,除圧・スキンケアのみで治癒する褥瘡も多く見受けられます。

しかし,それらの管理がしっかり行われているにもかかわらず,効果がはっきりと表れない症例も多くあります。おそらく褥瘡発生前や発生後の低栄養が大きく関係しているためで,栄養状態に生じているなんらかの問題を整えていくことが必要です。

表1に褥瘡治療と栄養管理に関するガイドラインの要約を示します(1),(2),(3)

表1褥瘡治療と栄養管理についてのガイドライン(文献1,2,3より引用改変)

褥瘡治療と栄養管理についてのガイドライン
褥瘡発生の要因には個体要因と環境・ケア要因とがあり,複雑に関係しています(4)図1)。共通して「栄養」がかかわっており,褥瘡予防・治療にとって切っても切れない関係にあります。

図1褥瘡の発生要因(文献4より引用改変)

褥瘡の発生要因

ADL(日常生活動作;activities of daily living)

褥瘡予防・発生と栄養

褥瘡発生に関係する栄養素の不足には,①総エネルギー量の不足,②蛋白質・アミノ酸の不足,③脂質の不足,④微量元素・ビタミンの不足,⑤脱水などが挙げられます(5)

とくに蛋白質・エネルギーが不足した低栄養状態(protein energy malnutrition;PEM)がある場合,褥瘡の発生リスクはさらに高くなります。

褥瘡患者では身体状況の変化により「食べる」ことが困難となり,十分な食事摂取ができていないか,他の栄養法(静脈栄養・経腸栄養)を併用していることが多く,栄養素が不足する原因となっています。

また,きざみ食や嚥下障害に対応した食事などでは,褥瘡治癒に必要な蛋白質やビタミン・ミネラル類などが不足しているおそれがあるため,たとえ全量摂取できていてもエネルギー量や栄養成分量を確認することが必要です。

さらに,主疾患以外に糖尿病脂質異常症,肝疾患,腎不全など褥瘡治癒過程に悪影響を及ぼす疾患や要因が存在する場合,褥瘡治癒の遅延が起こってしまいます(6)表2)。

そのため,栄養管理を行う際には,患者の全体像をとらえながら,状況に応じて基礎疾患の治療を行う必要があります(7)図2)。

表2全身性の創傷治癒阻害因子(文献6より引用)

全身性の創傷治癒阻害因子

図2疾患治療と栄養指標(文献7より引用改変)

疾患治療と栄養指標

褥瘡発生前の栄養管理

私たちの体を構成する細胞のほとんどがブドウ糖をエネルギー源として活動しています。

食事摂取不良などにより十分な栄養投与ができなくなると,体内では筋組織を分解してブドウ糖を産生したり,脂肪を分解したりしてエネルギーに利用する働きがみられます。また,エネルギー摂取が十分でも蛋白質摂取が不足すると,体蛋白合成に必要なアミノ酸を産生するために筋組織を分解していきます。

このように筋組織を壊してエネルギーや蛋白質の補充をしている状態を「異化亢進状態」あるいはPEMと呼びます。異化亢進状態では蛋白質合成が抑制されるため,圧迫で傷んだ部位の組織修復が行われず褥瘡発生の原因となります。

褥瘡発生リスクが高い患者には,評価を行うと同時にエネルギー・蛋白質と水分の投与をしっかり行っていくことが必要です。

栄養状態の不良にはさまざまな要因が存在します(表3)。

なかでも,ストレスやうつ,認知症,脳卒中などによる食欲不振や嚥下障害が起こると,食事や水分摂取量の低下を招くため,体重筋肉量が減少しADLが低下し,さらに食事摂取量が低下するといった悪循環が起こるため,なるべく早期にチーム介入していくことが重要になります(8)図3)。

表3食欲不振を起こす要因

図3褥瘡発生の過程とチーム介入(文献8より引用改変)

褥瘡発生の過程とチーム介入

栄養ケアが大切

褥瘡発生後の栄養管理

栄養と病態

創傷の1つとされる褥瘡は,一般的な受傷と同じく受傷から治癒までに多くの過程があり,多くの栄養素が関与しています(9)図4)。

図4創傷治癒過程と各種栄養素の関与(文献9より引用改変)

創傷治癒過程と各種栄養素の関与

褥瘡の治癒過程において必要な栄養素が欠乏すると,治癒は阻害され悪化し炎症の遷延,線維芽細胞の機能低下,コラーゲンの合成機能低下,架橋機能不全,上皮形成不全などが引き起こされ,治癒は遅延します。

効率的な治療を行うために,褥瘡の状態を評価した際には,その時期に必要な栄養素をみきわめ,先回りした栄養治療を計画していくことが必要です。

また,陰圧閉鎖療法による滲出液から漏出した栄養素の補正や動脈皮弁術後の安静に対する食事内容の配慮など,褥瘡の局所治療の状況に合わせた栄養投与を考慮していくことも重要です。

褥瘡の治癒過程(10),(11)

創傷の治癒過程は急性創傷の場合,①反応期(出血凝固期と炎症期),②肉芽形成期(増殖期),③再構築期と移行していきますが,慢性創傷である褥瘡の場合は,感染や壊死組織の存在,低栄養状態などが原因となり,組織反応期のなかの炎症期が遅延しやすくなります。

反応期(出血凝固期と炎症期)

受傷直後は創部から出血し創を洗い流します。次いで血小板凝集により凝固・止血され一時的に創閉鎖が行われ,血小板内より細胞増殖因子・サイトカインが放出されます。
好中球マクロファージなどの炎症細胞浸潤が起こり壊死組織が貪食されることにより,創の清浄化が図られます。その際,マクロファージは細胞増殖因子を放出します。

肉芽形成期

創の清浄化に伴い炎症細胞が減少してくると,組織を修復する細胞が増殖因子の分泌を活性化させ,細胞の遊走,増殖,血管新生,細胞外マトリックスの形成が促進されます。

再構築期

肉芽組織が形成されると筋線維芽細胞により創収縮し,創縁からの角化細胞の遊走により上皮が形成されます。
線維芽細胞によるコラーゲン合成の亢進と分解抑制によりコラーゲン線維を主体とした瘢痕組織が形成されます。そして数か月かけて白く軟らかくなり成熟化されます。

褥瘡の状態と栄養管理

褥瘡の栄養管理を行う際,創傷治癒過程において反応期,肉芽形成期,再構築期の3病期に応じた栄養補給を心がけます(12)表4)。

表4褥瘡の状態と栄養管理(文献12より引用改変)

褥瘡の状態と栄養管理
反応期のうち炎症期では白血球やマクロファージなどが創面の殺菌を行うため蛋白質が必要となり,それらの細胞は糖質をエネルギー源とするため十分な量の投与が必要です。また,創面からの滲出液には蛋白質や電解質が多く含まれるため補正を行い,血管拡張作用に関係するアルギニンの補給も行います(ただし,炎症による侵襲が高度である場合は使用の際に注意が必要です)。

肉芽形成期では炎症が消退し,肉芽組織形成が行われる時期で,肉芽組織の材料となる蛋白質,肉芽組織の合成に必要となる亜鉛,コラーゲン合成・安定化に必要であるビタミンA,ビタミンC,銅,アルギニンなどを適切に補給することが重要です。

再構築期においては,肉芽組織がより強固となり上皮を形成する時期で,コラーゲンの再構築に必要な栄養素としてカルシウム,ビタミンA,また,アルギニンや上皮細胞の合成に必要とされる亜鉛が重要となってきます(9),(11)。最近では,アルギニン+グルタミンの使用がラットの褥瘡治癒促進に寄与するという報告(13)やアルギニン+ビタミンC+亜鉛の強化が褥瘡治癒を促進させうるという報告(14)もみられます。

褥瘡治療において必要な栄養素

エネルギー

必要熱量は糖質・蛋白質・脂質から供給されます。必要エネルギー量の不足は栄養状態の低下を招き,創傷の治癒遅延を引き起こすため適正な設定が必要です。

エネルギー量の設定には,間接熱量測定により安静時エネルギー消費量の実測値を使用する方法やHarris-Benedictの式(HBE),Ganpuleの式(15)図5)などに活動係数やストレス係数を加味する方法,25〜35 kcal/kg/日×現体重 とする簡易式を用います。

図5Ganpuleの式(文献15より訳出)

Ganpuleの式

得られた値はあくまで推定値であり,真の値はこの推定値を中心に分布し,100 kcal/日以上異なることもありえる
*1;男性は0.5473×1,女性は0.5473×2 を代入

このような方法で決定したエネルギー量はあくまで目安値であり患者の状況は変化していくため,栄養指標を確認しつつ繰り返しアセスメントを行うことが重要です。

しかし,肥満による体圧上昇から発生した褥瘡や介護者の負担を考慮した場合では,体重を落とすエネルギー設定にすることもあります。

蛋白質

蛋白質はコラーゲン生成や細胞増殖など治癒過程において欠くことのできない栄養素です。

アルブミンが低値の場合,体内の浸透圧の変化により動脈では水分が血管外に出やすく,静脈では血管内に戻りにくくなるため浮腫が生じます。褥瘡の好発部位に浮腫が生じた場合,皮膚の組織耐久性の低下から褥瘡発生のリスクが高まるため,摂取エネルギー量の確保をしつつ窒素バランスを正に保つような蛋白質量を設定します。

設定された蛋白質量が体内において有効に利用されるには,非蛋白質エネルギーとの比が重要です(図6)。

図6NPC/N(非蛋白カロリー窒素比)

NPC/N(非蛋白カロリー窒素比)

窒素(N)1 gは蛋白質(アミノ酸)6.25 gに相当
通常(非侵襲下)では150〜200,褥瘡患者は80〜150である(ただし,腎不全などでは300以上となる)

蛋白質量を多く設定することで褥瘡治癒を促進させることができますが,腎機能低下がある患者ではBUN上昇など代謝障害の可能性があるため注意が必要です。

また,創傷治癒過程における蛋白質合成では必須アミノ酸である分岐鎖アミノ酸(バリン・ロイシン・イソロイシン)や侵襲時に優先的に消費される条件付き必須アミノ酸であるアルギニン・グルタミンが必要です(図7)。

図7アルギニンとグルタミンの作用

アルギニンとグルタミンの作用

アルギニンは成長ホルモンの分泌促進を介した蛋白合成促進に作用し,創傷治癒に重要な役割を示すことが知られています(16)

グルタミンは創傷治癒にかかわる細胞のエネルギー基質や消化管機能維持に働き細菌転座の予防などに関係します。

最近では蛋白質の合成促進(17)や体蛋白質の分解抑制(18)が報告されたHMB(β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸)や線維芽細胞の増殖促進作用に関係する(19)コラーゲンペプチドが創傷治癒をサポートする栄養素として注目されています。

ビタミン・ミネラル類

ビタミンC

コラーゲン合成時に多く消費されるため,組織修復に重要であり,鉄分吸収の補助や抗酸化作用もあるため,褥瘡管理には必要な栄養素です。

ビタミンA

コラーゲン合成や血管新生,上皮形成に関与します。

ビタミンE

皮膚の末梢血管を拡張し,血液循環を改善させます。また,皮脂の酸化を防ぐので肌荒れを防止します。

亜鉛

酵素活性の発現に関与し,核酸や体蛋白合成,組織の代謝促進に必須で,生命維持に重要な役割を果たします。欠乏すると口内炎,味覚障害などによる食欲低下,免疫能低下による感染の悪化などが起きます。

牡蠣・牛肉・チーズなどに多く含まれているため,とくに高齢者では動物性蛋白質摂取量の不足などにより亜鉛欠乏状態になっていることも考えられます。

造血機能,骨代謝,結合織代謝などの生理作用があります。欠乏すると貧血,白血球減少,骨変化(小児)があり(20)皮膚の組織耐久性が悪化し褥瘡を発生させやすくなります。銅と亜鉛には吸収における拮抗作用が起こりやすくなります。

褥瘡患者では炎症反応が強く,血清銅値が高くなっていることもあるため,銅を強化した経口補助食品の使用の際には注意が必要です。

赤血球を構成し各組織への酸素運搬を担います。また,コラーゲン合成に関与するため,鉄欠乏は褥瘡の発生・治癒過程に大きな影響を与えます。

おわりに

本コラムでは病期に応じた栄養管理の基本を述べました。

創の状態に応じた栄養管理ができれば早期に治癒する可能性も高まります。褥瘡治療にかかわるスタッフがこのような知識を持つことは,患者を総合的に診るという観点からも意味のあることであると思います。
褥瘡はさまざまな要因から発生するため,栄養状態が悪いからといって必ず褥瘡が発生するということはありません。しかし,患者の栄養状態はADL低下など療養生活に大きな影響を与えてしまうので必ず十分な栄養補給をするべきでしょう。

「この方の栄養状態はどうだろうか」と少しの興味を持つだけで防ぐことのできる褥瘡も必ずあるはずです。ぜひとも栄養管理の重要性について多くのスタッフに啓発していただきたいと思います。

 

 


文献


[Profile]
平石宏行(ひらいし ひろゆき)
京都桂病院 NST事務局
1975年 生まれ。1998年 甲子園大学 栄養学部 栄養学科を卒業後,但馬屋食品 株式会社入社。2001年 7月より京都桂病院 栄養科,2010年 4月 同病院 NST事務局,現在に至る。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2013 医学出版
[出典]WOC Nursing 2013年12月号

p.5~「褥瘡患者のQOL向上をめざした病期に応じた栄養管理の基本」

著作権について

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