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2015年06月30日

ストーマは単純にして複雑な人工構造物|どんなストーマが、よいストーマ?!

『WOC Nursing』2014年3月号<どんなストーマが,よいストーマ?!>より抜粋。
ストーマとはいったい何か?その実態について解説します。

 

Point

  • ストーマ装具に依存するオストメイトのQOLについて理解できる
  • 医学的ストーマと臨床的ストーマの違いがわかる
  • ストーマは多様な組織でできあがっている複合構造体であることが理解できる

穴澤貞夫
(高津看護専門学校 校長)

はじめに

1700年代の初頭に初めてのストーマ手術が行われてから現在までストーマ医療はさまざまな進歩発展を遂げてきましたが,最大の夢であるコンチネンス(禁制)機能を有するストーマ造設にはまだ誰も成功していません。禁制ストーマの試みはとくに20世紀の後半にはさまざまな試みがありましたが,すべてが不成功に終わっています。

したがって現状ではストーマを造設すれば必ず究極の排泄機能障害である完全失禁がもたらされることになります。すなわち最初のストーマ手術から現在まで完全失禁が生じるストーマしか造ることができないという点では,ストーマ医療は一歩も前進してはいません。

ストーマ造設者(オストメイト)には排泄障害以外にも多様な障害が生じますが,とくに排泄機能障害がQOL低下の最も大きな要因です。したがって,この完全失禁への対処なしにストーマリハビリテーションは成り立ちません。

排泄管理こそはストーマ造設者のQOL向上の根幹をなすものであり,この認識なしに「よいストーマとはどんなストーマか」というテーマの命題に答えることはできません。そしてよいストーマの概念を明らかにするためには,まずストーマという人工排泄口に対する正しい理解が必要です。

本コラムではまず「ストーマとは一体なんだろう?」という基本的な事項から述べたいと思います。

〈目次〉

ストーマとは一体なんだろう

ストーマ装具による排泄管理

括約筋機能を持つ禁制ストーマへの展望は現在まったく開けていないので,ストーマが造設されると患者には必ず完全失禁がもたらされます。しかし厳格な衛生管理思想のもとで営まれている現代社会では,何人といえどもこの完全失禁状態を放置して生活を営むことはできません。

ストーマ造設者はなんらかの手立てを講じてストーマからの排泄をコントロールする必要があり,現在この手立てとして,ストーマ装具という排泄管理用に特別に開発された装着具で対処する管理(自然排便・排尿法)で,不完全ながらも排泄のコントロールをしています。このことはストーマ排泄管理の質がストーマ装具の質によって規定されていることを意味しています。

今やストーマ医療界は商品数にして千数百種類以上といわれるストーマ装具で溢れかえっており,患者に一体どの装具を選択すればよいか,ストーマの専門看護師でさえ容易に判断できる状況にはありません。

これは驚くべき多様性であり,これだけ装具があればどんなストーマにも対応できるだろうと考えたいところですが,しかし物事はそれほど簡単ではありません。ストーマ装具を仔細にみると,一見多岐多様な装具が供市されているようにみえますが,実はどれも「体外装着式粘着袋型装具」と呼ばれる,ただ1つのシステムによって装具が造られていることに気づきます(図1)。

図1唯一のストーマ装具システム~体外装着式粘着袋型装具~

唯一のストーマ装具システム~体外装着式粘着袋型装具~

唯一のストーマ装具システム〜体外装着式粘着袋型装具〜


さて,体外装着式粘着袋型ストーマ装具は,どんな仕組みで排泄管理を行うのでしょうか。

体外装着式粘着袋型ストーマ装具とは,簡単にいえば粘着剤の付いたプラスチック袋構造の用具で,粘着部をストーマに装着して便・尿を採取し,袋部に落とし込み,貯留し,袋の下端の開放部から適宜便・尿を廃棄する仕組みです。装具で人工的に腸管を延長していると見立てればわかりやすいでしょう。

袋部は直腸,閉鎖具は括約筋,開放部は肛門とみなして,オストメイトは好きなとき,好きな場所で便・尿を廃棄することで,禁制機能の代行をさせるというものです。

現在ほとんどすべてのオストメイトがこのシステムの装具に依存して毎日の生活を送っています。したがって,オストメイトのQOLは体外装着式粘着袋型ストーマ装具を用いる生活の質に規定されています。

 

ストーマ装具の装着部位

さて,前項で装具をストーマに装着すると述べましたが,この人工の腸管の接続(装着)部位はストーマのどこを指すのでしょうか。

ストーマは体壁の貫通孔から引き出された腸管の開口部(粘膜)を指す言葉で,言い換えれば赤い粘膜部が医学的な意味でのストーマ部です。

しかしこの粘膜部に装具を装着することは可能でしょうか。粘膜は基本的に柔軟で剛性がなく,また粘膜の最上層は生きている組織であり,物理刺激に弱く損傷を受けやすいのです。また,吸収機能と粘液などを分泌する機能を有しており,このような部に装具を貼付し,支持固定を図るのは不可能です。

一方ストーマを取り囲む皮膚はどうでしょうか。

皮膚は一定の柔軟性と剛性を有しており,表面には厳密には細かな凹凸がありますが,おおむね平坦で,組織学的には角化重層扁平上皮と呼ばれる何層にも積み重なった細胞の最上層が,角質層という死んだ組織で覆われているため,物理刺激に強く,損傷しにくく,ある程度乱暴に扱っても耐えることができます。また汗腺などの付属器からの分泌はありますが,吸収能は基本的に高くありません。

粘膜と皮膚のどちらをストーマ装具装着部として選択すべきかと問えば,その答えは歴然です。皮膚がストーマ装具の装着部として用いられます(図2)。

図2装具を受け止めるのはストーマ周囲皮膚

装具を受け止めるのはストーマ周囲皮膚

ストーマとはどこだろう〜医学的ストーマと臨床的ストーマ〜

以上より現実には装具の装着部としてストーマ周囲皮膚を用いざるを得ません。

このことはストーマを取り囲む皮膚部の装具条件の良し悪しがストーマ管理に大きな影響を及ぼすことを意味しています。

したがって医学的には粘膜部がストーマですが,臨床的に粘膜部のみをストーマとするとストーマケアの現場でさまざまな不都合が生じます。よりよいケアのみならず,よりよいストーマ造設をも妨げることにもなります。

現在の標準的ストーマ装具は皮膚への装着を担う装具の面板がおおむね直径10×10 cm程度に標準化されているので,ストーマの中心から半径5 cm+α(6〜7 cm程度か?)の範囲の皮膚が装具の装着部として使われます。

そして実際にこの皮膚が装具装着に適した条件を有しているかどうかがストーマケアにおいてきわめて重要です。

逆にこの皮膚部の装具装着条件を評価せずにストーマの良し悪しを語ることはできません。

臨床的ストーマとは

以上より臨床的には,粘膜部(医学的ストーマ)と装具装着部となる皮膚部とを併せた領域が臨床的な意味でのストーマであると捉えなければならないことは明らかです。

臨床の場でストーマといえばこの臨床的ストーマを意味していると認識しなければなりません。日常的にストーマケアに携わっている看護師はこのことを感覚的に認識していますが,ストーマケアの実情を知らない外科医にはこの認識は乏しいようです。

看護師が望むストーマとは粘膜部,皮膚部,粘膜・皮膚接合部の全体が調和の取れた安定した局面を形成して装具装着を容易にするストーマです。外科医がこの認識を共有することがよいストーマ造設をするためにはきわめて重要です。

以上述べたことを実例で説明します。

図3ストーマの観察と管理

ストーマの観察と管理

A:ストーマを粘膜部だけとすれば管理上何の問題もないストーマ

B:周囲皮膚まで含めた領域もストーマとすれば管理困難ストーマ

図3-Aは仰臥位のストーマ像で,おおむね正円形でストーマ縁も整であり,もし粘膜部だけをもってストーマと認識するならばこれはなんの問題もないよいストーマです。

一方図3-Bは同じ患者が座位をとったときのストーマで,ストーマの辺縁に生じた瘢痕組織のためにストーマ周囲皮膚に横行する皺が発現し,不整な局面を形成しています。これは誰がみても装具装着に適したよいストーマとはみなしません。

どこまでをストーマと認識するかという違いによってこのストーマの評価は異なってしまいます。管理に適したストーマに対する看護師と医師の認識のずれは,「どこまでがストーマか」という認識の違いも一因となっている可能性があります。

病室であれ外来であれ,医師はベット上で患者を仰臥位にしてストーマをみることが多いのですが,この例のように,仰臥位はストーマの真のできあがりをマスキングしてしまいます。かなりの管理困難例であっても仰臥位では装具装着部となる皮膚は引き伸ばされて平坦化し,一見なんの問題もないよいストーマにみえます。

一方看護師はストーマをあらゆる体位を取ってケアする態度が身についており,仰臥位でなんの問題もなかったストーマが体位を変えると驚くような変貌を示すことがあることを知っています。

そしてその変貌の主座はストーマ皮膚部です。粘膜部は体位変化によってある程度のサイズの変化はあっても,劇的に状況が変化することは多くありません。

経験の深い看護師ほど周囲皮膚を含めた領域,すなわち臨床的ストーマをストーマと認識してケアにあたっています。

臨床的ストーマの構造と構成

このように医学的ストーマをもってストーマとすると,ケアのさまざまな場面で不都合を生じるので,臨床的ストーマをもってストーマとしてケアにあたらなればなりません。そこで,臨床的なストーマの構造をもう少し詳しく説明します。

図4臨床的ストーマの構成(前額面)

臨床的ストーマの構成(前額面)

図5臨床的ストーマの構成(矢状面,水平面)

臨床的ストーマの構成(矢状面,水平面)
すでに述べたように臨床的ストーマは,正面視すると図4のように,①ストーマ粘膜部,②ストーマ皮膚部,そして両者をつなぐ③粘膜・皮膚接合部の3つの領域から構成されます。

しかしこのような平面的な広がりだけでなく,ストーマを横断ないし縦断面でみると,図5のように,ストーマは解剖学的には腹壁と腹壁を貫く貫通孔から体外まで誘導された腸管によって構成されており,一定の幅と厚みをもった立体的な構造物として理解されます。そしてストーマ粘膜部は腹壁貫通部の厚さに一致した腸管組織が腹壁と接合することによって支えられ,ストーマ皮膚部は同様に腹壁組織(皮下脂肪・筋膜・筋など)で支えられていることがわかります。

これは,支えている組織の挙動がストーマの3構成部の挙動におおいに影響する可能性があることを意味します。

繰り返しになりますが,臨床的には3領域とそれを下支えする組織すべてがストーマです。ストーマは多様な組織で構成され,それぞれが機能も物性も役割も至適環境も異なっています。

図6は各区分のストーマ排泄管理上からみた機能分担です。

図6臨床的ストーマの3構成部分と排泄機能上の役割

臨床的ストーマの3構成部分と排泄機能上の役割

粘膜部は円滑に腸管からの排泄物を装具内に落とし込む役割を担っており,そのためストーマは皮膚から一定の高さを持つことが望ましいといわれています。

ストーマ皮膚部は,すでに述べたように装具支持固定の受け皿部です。

一方,両組織が接する粘膜・皮膚接合部は,皮膚と粘膜部の両者を正しく接合する役割を担っており,この部になんらかの問題があると,整然とした粘膜皮膚境界を形作れなくなり,ケアを困難にします。

表1ストーマ3区分の組織と物性

ストーマ3区分の組織と物性
表1に3区分別の組織構成と物性(ここでは組織の硬さ)を示しますが,ここでとくに留意してほしいのは,皮膚と腸粘膜,あるいは腸管と体壁など柔らかな組織同士が瘢痕組織という硬い組織の仲立ちによって癒合されていることです。

したがって,もしこれらの部に感染などが生じて過度の瘢痕組織増生が誘導されると,柔らかい皮膚および皮下組織は固い瘢痕組織に引き込まれ,ストーマに連結する皺や凹凸不整などを生じて装具装着条件が悪化します。

後述しますが,ストーマの術直後管理ではできるだけ少ない瘢痕で組織癒合を図ることが重要です。余計な瘢痕組織の増生を誘導しないようにしなければなりません。過剰な瘢痕組織増生は炎症(感染)のために発生することが多く,その原因として最も注意すべきはストーマの早期合併症です。

 

次に表2に,3区分の組織が本来置かれるべき環境を示します。

表2ストーマの3区分の至適環境

ストーマの3区分の至適環境

ここで留意すべきは粘膜も皮膚もストーマとしての役割を担わされるために,本来あるべき環境と異なった環境に置かれていることです。

ストーマ粘膜部は本来腹腔内にあって一定の温度・湿潤環境に置かれるべきものが,ストーマとして体外に引き出され,大気環境という腸管粘膜にとって異常環境にさらされています。

またストーマ皮膚部は本来温度・湿潤度ともに大気環境に適応するようになっていますが,ストーマ装具によって恒久的に装具で被覆されるというきわめて異常な環境にさらされています。

 

ストーマは複合組織構造体

以上,臨床の場ではストーマが3つの区分で構成される臨床的ストーマの概念が必要なことを述べました。

言い換えればストーマとは一見単純な構造体のようにみえて,実は本来排泄口とはなんの関係もない多様な組織によって構成された人工物,それも相当に無理して造られた複合組織構造体ということができます

したがってストーマは,基本構造は単純ですが,組織構成は複雑だという厄介な代物で,気難しさもなみなみならぬものがあり,後に述べる不用意な術前準備と,適正でない手術手技や未熟な技術,あるいは不適格な創管理などによって一度問題を生じると,不可逆性の管理困難なストーマになる可能性を秘めています。

管理に適したストーマ

管理に適した,よいストーマにしか対応できない現在のストーマ装具

このように,オストメイトは日常生活を全面的に装具に依存して暮らしているので,ストーマ装具を用いる生活が快適であればあるほど,そのQOLは高くなります。

歴史を紐解くと,排泄物が今より人に身近な存在で,排泄物と人が共存するリサイクル社会の時代がありましたがしかし現在の社会衛生思想のもとでは,糞尿はまさに不潔の象徴,不要物そのものであり,人の糞尿に対するスタンスは,①糞尿を早く遠ざけるか,②糞尿から早く離れるか,③糞尿を何かに閉じ込めるか,のいずれかになります。

たとえストーマという障害を背負ったからといって糞尿を直接身に付着させたり,周辺に撒き散らしたりすることはオストメイト自身が嫌うのはもちろん,世間も許してくれません。

したがってストーマ装具はどんな場合でも確実にストーマに密着密閉させ,一定時間漏れなく安定した装着状態を維持するものでなければなりません。しかし,残念ながら現実には装具から予期しない便漏れが生じたり,それによって臭気を撒き散らしたりすることはまれではありません。

それではこのような装具装着不全が起こる理由は何でしょうか。

最大の原因として挙げられるのは,現在のストーマ装具が基本的に「管理に適したストーマにしか対応できない」ことにあります。言い換えれば,よいストーマとは排泄管理に適したストーマであり,すなわちはストーマ装具の装着条件のよいストーマということができます。

管理困難なストーマ

ストーマ装具は一度装着されると一定時間漏れなく安定した装着が維持されることが期待されます。

それでは現在の標準的なストーマ装具ではどのくらいの時間装着維持されればよいのでしょうか。これについては現在のところ学会などで定められた公式のガイドラインなどはありませんが,いくつかの研究報告などを参考にすると,72時間(3日に1回の交換)が一番多い意見のようです。

すなわち①特別な付加的密着補強処置を行わず標準的装具の単純装着で,②漏れがなく,③72時間の装着が維持できるストーマであれば,おおむね管理良好なストーマ,すなわちよいストーマとみなしてよいのではないでしょうか。

逆に以上の3点のうちどれかが満たされない管理しかできない場合には,ストーマ自体になんらかの問題があると考えなければなりません。このようなストーマを「管理困難ストーマ」と呼ぶべきでしょう。

ストーマが管理困難になる原因はきわめて多様で,そのなかで圧倒的に多いのは,みるからに,安定した装具装着を妨げるだろう不整な局所状況を示すストーマです。それでは,体外装着式粘着袋型装具に対するオストメイト側の要件として,ストーマを一体何が原因となってこのような管理困難状態が生じているのでしょうか。

早期合併症と管理困難

ストーマ手術創とはどんな創か

ストーマ造設手術では通常少なくとも複数の手術創が造られます。開腹創(正中創)とストーマ創(粘膜皮膚縫合創)の2つです。以下,開腹創とストーマ創を併せたものをストーマ手術創と呼びます。

開腹創は多くは正中部に体軸に平行に直線状の皮膚切開がなされ,ストーマ創は左右どちらかの下腹部のストーマサイトマーキングされた部に円形の創として切開されます。2つの創はかなり近接して造られることが多いものの,基本的にその性格を異にしています。

開腹創は清潔操作のもとで造られる基本的に清潔な一次縫合創で,角化重層扁平上皮という同じ上皮同士の縫合創です。

ストーマ創はストーマ口からの便や粘液など汚染物質が常に排泄される汚染環境で造られる一次縫合創で,角化重層扁平上皮と円柱上皮という異なった上皮同士の縫合創です。

したがって,創の癒合は前者では組織学的連続性をもって癒合しますが,一方ストーマ創では2つの上皮組織は瘢痕組織の仲立ちによって接合します。

 

ストーマ手術創はどのように完成するか

このように狭い領域に混み合って存在する,性格の異なる2つの創はどのように治癒するのでしょうか。創傷はどんな傷であれ瘢痕組織を作って治癒しますが,ストーマ手術創における2つの創はどんな瘢痕を作って治癒が完成するでしょうか。

開腹創では腹壁の厚みに一致した深さをもった瘢痕を形成して,ストーマ創ではストーマ粘膜とストーマ皮膚の2つの異なった上皮組織の接合部から腹壁貫通孔を越えて腹膜まで,腸管漿膜と腹壁が瘢痕組織を仲立ちに癒合します。

これを立体的にみると,開腹創は腹壁の厚みに一致した深さを持つ,矢上面に衝立のように立ちふさがる瘢痕組織と,そこからさほど離れてない場所にあるストーマ創ではやはり腹壁の厚さを持った円筒状の瘢痕組織がストーマ手術創の完成図となります。

すなわち,下腹部という狭い領域に,腹壁の厚みに一致した深さと形が異なる2つの瘢痕組織を残すのがストーマ手術創の完成した姿です(図7)。

図7ストーマ創の完成図

ストーマ創の完成図


どんな手術にでもいえることですが,きれいな,望ましい創の治癒とは,瘢痕組織量は必要最小限に過不足なく均一に分布した創であり,そこでは創収縮による創の変形も最小限のものになり,見た目も美しくなります。

このことはストーマ創ではことのほか重要です。

開腹創とストーマ創にできる幅と厚さを持った瘢痕組織が不均一で過量になると,2つの瘢痕組織は互いに柔らかな腹壁組織の軟部組織を引っ張りあいます。そのためストーマ粘膜部は変形するだけでなく,瘢痕が皮膚を引き込んで凹凸や皺を形成し,装具装着困難を招きます(図8)。

そしてこのような事態を引き起こす原因として最も重要なのは,ストーマ早期合併症によってもたらされることが多い,創感染の存在です。

図8ストーマ装具装着困難

ストーマ装具装着困難

開腹創およびストーマ創に感染などが発生すると,過度の瘢痕が誘導されお互いに皮膚を引っ張りあい,皺や凹凸を形成して,ストーマ装具装着を困難にする

ストーマ術直後は創傷管理

以上のようにストーマ手術創という手術創の複雑性を象徴しているのは,なんといっても汚染環境のもとで造られるストーマ創です。

この創の管理自体が解決課題ですが,さらにストーマ口からの便汁が開腹創など他の清潔創に波及して治癒を傷害しないように便汁を封じ込める必要があり,パウチングというドレッシングの技法を用いてストーマ創と他の開腹創を含む清潔創との遮断を図っています。

パウチングにはストーマ装具とストーマ装具装着技術が必要なので,しばしばこの管理を術直後のストーマ排泄管理と誤認する向きがありますが,これは大きな誤りです。パウチングはあくまでストーマ手術創という創の創傷管理と捉えるべきです

また現在ストーマ造設は経腹直筋的に行うことが標準的で,この原則を適用すると開腹創(正中創)とストーマ創との距離が十分にとれなくなり,ひとたびパウチング不良でストーマ創からの汚染物質が漏れて開腹創に及ぶと,開腹創感染を生じます。その結果過度の瘢痕組織が誘導され,先に述べたように開腹創の瘢痕とストーマ創の瘢痕がそれぞれの皮膚を引っ張りあえば,装具装着部皮膚の変形はますます高度となり,ストーマ装具装着困難状態となります。

結局ストーマナースとしてのスキルの高さは,この狭い領域で,もともと管理上問題のあるストーマ創と,清潔創である開腹創の両者をつつがなく治癒させる能力にかかっているといっても過言ではありません。

残念ながら現在この基本的に治りにくいストーマ創の粘膜皮膚縫合部の治癒環境を整えるドレッシング材は開発されておらず,今後の課題として残されています。

 

予想を超える早期合併症の発生

以上のように,近年,管理困難ストーマの発生にストーマ手術創の早期合併症が少なからずかかわりを持っていることが明らかになっています。

ストーマ手術創の早期合併症はどれほどの頻度で発生しているのでしょうか。

現在までのところ,術後のストーマ手術創を克明に観察した研究結果では,どの発表者も予想を超える高い早期合併症の発生状況を報告しています。この問題は,ここで詳しくは触れませんが,兎にも角にもストーマ創は治りにくい創であることは確かです。

いずれにせよ外科として,早期合併症の発生率の高さが一体何に由来するのかを明らかにすることはストーマ医療の今後の大きな課題です。

 

表3に早期合併症の一覧を示します。

表3ストーマ早期合併症

ストーマ早期合併症

いずれも高度になるとその最終像は粘膜皮膚離開,すなわち開放創の発生であり,行き着くところは二次治癒による瘢痕治癒の世界です。

外科手術創からみたストーマ手術創の特徴と管理のあり方については,近年いろいろな場で指摘されています。

おわりに 〜よいストーマの造設に向けて〜

ストーマは一見して単純な構造をしていますが,医療者はこのことにだまされてはいけません。

ストーマは正面視した平面的広がりと同時に,立体的な広がりを持った構造体と理解しなければなりません。

そして何よりストーマが本来なんの関係もない組織が寄り集まった複合構造体であるということ,すなわち,ストーマは相当な無理をして造られた複雑な人工構造物であるとの認識が肝要です。単純な構造ゆえに,一端こじれると収拾が難しく,対処は複雑になります。ストーマは,本当に気難しい,厄介な代物です。

よりよいストーマ造設のためには,「よいストーマはどんなストーマかという認識」を医師と看護師で共有しなければなりません。よいストーマ造設こそ医師・看護師の協働の重要性が改めて問われる課題です。

現在ストーマの排泄管理は全面的にストーマ装具に依存しているので,「よいストーマとは,ストーマ排泄管理に適したストーマ」となり,さらに「排泄管理に適したストーマとは,ストーマ装具の装着条件が整ったストーマ」となります。

そしてよいストーマ造設を妨げるものとして,ストーマ早期合併症が大きな原因の1つになっていることを強調しておきます。

ストーマは外科医のストーマケアに対する理解の程度によって,よくも悪くも,いかようにでもなってしまいます。早期合併症はその中心に存在する事象です。

 

 


[Profile]
穴澤貞夫(あなざわ さだお)
高津看護専門学校 校長
東京慈恵会医科大学 卒業。東京慈恵会医科大学 外科 教授,慈恵第三看護専門学校 校長,東京慈恵会医科大学 医学部看護学科 教授を経て,現在 高津看護専門学校 校長,および総合高津中央病院 顧問。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]WOC Nursing 2014年3月号

p.7~「ストーマは,単純にして複雑な人工構造物」

著作権について

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