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2015年08月15日

高血圧の治療は?|高血圧患者さんを理解して看護のエキスパートに!

循環器ケアの専門誌『循環器ナーシング』2014年2月号<高血圧患者さんを理解して看護のエキスパートに!>より抜粋。
高血圧の治療について解説します。

 

Point

  • 血圧の治療の目的をしっかり把握する!
  • 高血圧の管理計画を確認して,必要な情報を集める!
  • 降圧目標を決める!
  • 適切な治療法を選択して,その効果を評価する!
  • 患者が降圧治療に参加できるよう,パートナーシップを構築する!

松浦秀夫
(済生会呉病院 院長)

はじめに

高血圧の治療の目的は,高血圧による臓器合併症や心血管イベントの発症を予防すること,また,すでに臓器障害を有する場合には重症化を予防すること,心血管イベントを起こしてしまった患者さんの再発を予防することにあります。

患者さんの状況は個人個人で違うため,その患者さんに適した治療を選択する必要があります。

本コラムでは,患者さんの降圧療法を始めるにあたって必要な基本方針を述べます。この方針に従って,生活習慣の修正や薬物療法を進めていくことになります。

〈目次〉

降圧治療の目的

降圧治療の目的は,高血圧の持続によってもたらされる臓器障害(脳,心,腎,血管)を予防し,心血管病の発症とそれらによる機能障害や死亡を予防すること,すでに心血管病を発症している場合には,その進展・再発を予防することにより患者の生命予後を改善することにあります。また,高血圧患者が健常者と変わらない日常生活を送ることができるように支援することが重要です。

日本では脳卒中心筋梗塞よりも多く発症し,命を取り留めてもその後の日常生活に大きな問題を残します。麻痺を残したり寝たきりになったりして,介護の問題を生じることもよく知られています。こうならないよう予防することが大切です。

降圧治療によってより大きな効果をもたらされる患者は,心血管病発症のリスクがより高い患者ですので,そのリスクの評価を最初に行う必要があります。そして,降圧治療による心血管合併症の抑制は降圧の程度に依存することが知られていますので,しっかりと降圧することが大切です。初診患者への取り組みは次の項で述べます。

初診時の高血圧管理計画

初診時に血圧が高い場合,通常は日を変えて再度,数回の血圧測定を行います。この間に家庭血圧を測定するように患者に指導して,その結果から,白衣高血圧,白衣現象,仮面高血圧の存在を確認します。

さらに,高血圧以外の心血管疾患の危険因子や臓器障害の有無・程度を調べて,患者の全体像を把握します。そのためには問診,診察,検査などを行う必要があります。

心血管病危険因子は,表1のようにさまざまです。

表1高血圧管理計画のためのリスク層別化に用いる予後影響因子(文献1より引用)

高血圧管理計画のためのリスク層別化に用いる予後影響因子

高齢,喫煙,血圧レベル,脂質代謝異常,肥満,メタボリックシンドローム,糖尿病,若年発症の心血管疾患の家族歴などです。臓器障害や心血管病としては脳,心,腎,血管,眼底の動脈硬化性変化や疾患があります。

 

このような危険因子と血圧レベルからリスクの層別化を行い(表2(1),それに基づいて治療戦略が立てられます(図1(1)

表2(診察室)血圧に基づいた脳心血管リスク層別化(文献1より引用)

(診察室)血圧に基づいた脳心血管リスク層別化

図1初診時の高血圧管理計画(文献1より引用)

初診時の高血圧管理計画

まず図1の順に従って,最初に必要な診察や検査の計画を立てます。二次性高血圧の存在は治療抵抗性高血圧の原因にもなりますので,治療を考えるまでにチェックをしておく必要があります。
『高血圧ガイドライン2009(JSH2009)』(1)では,リスクの層別化のための血圧分類に正常高値血圧が入っていて評価が煩雑であることから,2014年に改訂されるガイドライン(JSH2014)では簡素化される予定になっています。

降圧目標

患者の年齢や血圧レベルによって降圧治療の対象が決められ,合併症や臓器障害,心血管病の種類によって降圧目標値が決められます(表3(1)

この値は診察室血圧を用いているので,家庭血圧で評価する場合には収縮期,拡張期とも5mmHgを引いた値を暫定的な目標値とすることになっています。すなわち,若年者・中年者では125/80mmHg未満,高齢者では135/85mmHg未満という値になります。

表3降圧目標(文献1より引用)

降圧目標

表3の降圧目標値は,図1に示された「低リスク群と中等リスク群に生活習慣の修正を行った場合,140/90mmHg以上であれば降圧薬治療を開始する」という基準とは異なるところがあります。

例えばCKD合併高血圧患者の場合,もし生活習慣の修正で血圧が138/87mmHgに低下したとしても,最終降圧目標が130/80mmHg未満に設定されているので,このような患者の場合には,降圧薬を用いて最終降圧目標値を目指す必要があります。

しかし,これらの降圧目標値についても,JSH2014では見直しが行われることになっています。JSH2014が発行された際には,リスクの層別化の表とともに確認してください。

降圧療法の選択

降圧療法の基本は,生活習慣の修正(非薬物療法)と降圧薬を用いる薬物療法の2つです。

生活習慣の修正をおろそかにして,薬物療法のみで血圧をコントロールしようとしても,うまくいかない場合がよく経験され,治療抵抗性高血圧として問題になることがあります。生活習慣の修正や薬物療法について,ここでは概略を示したいと思います。

生活習慣の修正

生活習慣の修正は,いずれの高血圧患者にも指導・実行してもらう必要があります。

食塩の摂り過ぎ,肥満,運動不足といった特定の問題があっても,それだけを修正してもらうのではなく全体を見直してもらい,いずれの項目も指導の対象とする必要があります。問題がない生活習慣については修正というよりも,悪くならないように注意してもらい予防につなげることになります。図1に示したように,リスクの層別化に入る前から,高血圧の患者には生活習慣の修正の内容を指導することが大事です。

したがって,生活習慣の修正は選択の余地がないことになりますので,しっかり指導をお願いしたいと思います。

薬物療法

低リスクの患者では3ヵ月程度,中等リスクの患者では1ヵ月程度にわたり生活習慣の修正を指導し,実行してもらいます。その結果,140/90mmHg以上の血圧であれば薬物療法を始めることになります。

高リスクの患者では生活習慣の修正を始めるとともに,薬物療法を開始することになります。

使用する降圧薬の種類については,表1に示した患者の持っている危険因子や臓器障害/心血管病の有無や程度によって選択が行われます。

生活習慣の修正を守ることで降圧薬の効果を高められるので,その指導と遵守が大切となります。

パートナーシップの確立

患者の治療離れを防ぐために

生活習慣の修正も降圧薬治療も,患者と医療者がともに取り組んでいかなければ,患者が治療から離れてしまう危険性があり,それを防ぐことが良質な降圧治療につながります。

高血圧患者が降圧薬を処方されるときには,「いったん薬を飲み始めたら,一生止められないのではないですか。ですからお薬は飲みたくないのですが,飲まなければなりませんか」という質問がよく出ます。

それに対して治療の必要性や副作用の問題点,QOLの確保などについて,患者と話をして理解をしてもらう必要があります。

コンコーダンスとアドヒアランス

「コンコーダンス」という言葉がありますが,これは「病気について十分な知識をもった患者が,自分の病気の管理にパートナーとして参加して,医療者と患者が合意に達した診療,治療を行うこと」をいいます。

自分に必要な治療を理解して治療を継続していくことを以前は「コンプライアンス」と呼びましたが,現在は「アドヒアランス」と呼びます。コンプライアンスは「法令順守」,すなわち「患者が守らなければならない」という意味合いが強いため変更されました。
このように,患者と医療者のパートナーシップの確立が大切です。表4にパートナーシップの確立に必要な方法を示しますので,参考にしてください。

表4医療者と患者が共通の理解に到達しパートナーとして治療を行う方法(文献1より引用)

医療者と患者が共通の理解に到達しパートナーとして治療を行う方法

 

おわりに

質の高い高血圧治療を継続して実施するためには,患者さんとの十分なパートナーシップの形成が重要で,診療の最初の段階からの取り組みが成否のカギを握っています。医療者と患者さんのパートナーシップの形成はすべての診療に欠かせませんので,しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

なお,本文中にも書きましたが,『高血圧治療ガイドライン』が2014年4月に改訂出版される予定です。内容に変更がありますので是非参照して頂きたいと思います。

 

 


[引用・参考文献]

  • (1)日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会(編):高血圧治療ガイドライン2009.ライフサイエンス出版,2009.

[Profile]
松浦秀夫(まつうら ひでお)
済生会呉病院 院長
1973年 神戸大学医学部卒業。1978年 同大学院修了後,兵庫県立がんセンター,1980年 広島大学医学部第一内科助手,1983年 同附属病院講師,1985~86年 米国ミネソタ州Mayo Clinic留学を経て,2002年より現職。広島県済生会理事,広島大学医学部臨床教授,日本高血圧学会理事,日本高血圧協会理事,日本老年医学会代議員ほか。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]循環器ナーシング2014年2月号

P.33~「高血圧の治療は?」

著作権について

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