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2015年07月17日

ショックの見分け方|循環器ナースのためのフィジカルアセスメント講座

『循環器ナーシング』2014年4月号<まずはここから!循環器ナースのためのフィジカルアセスメント講座>より抜粋。
ショックの見分け方について解説します。

 

Point

  • ショックとは,ただ血圧が低下しているだけではない! さまざまな症状から病態を理解し,早期に離脱しなければならない!
  • ショックは病態によって「循環血液量減少性ショック」「心原性ショック」「心外閉塞・拘束性ショック」「血液分布異常性ショック」の4つに分類される!
  • ショックの5徴候(5P)は,「蒼白(pallor)」「虚脱(prostration)」「冷汗(perspiration)」「脈拍触知不能(pulseless)」「呼吸不全(pulmonary insufficiency)」!

宮﨑聡子
(東海大学医学部付属病院 看護部 集中治療室)

はじめに

ショックとは「末梢組織への有効な血流量が減少することにより臓器・組織の生理機能が障害される状態」と定義される一連の症候群です。

急激な異変や過大侵襲により生体のホメオスタシス(恒常性)が破たんし,種々の異常が同時多発的に全身症状を伴って現れます。

ショックときくと「血圧低下!」と思いますが,症状はそれだけではありません。ショックに至る前に身体は何かしらの代償機能を働かせて血圧を保持しています。治療されなければ通常は致死的です。症状の変化を察知して早期に病態を把握し,適切な処置を行いショックを回避すること,もしくは早期に改善することが大切です。

本コラムではショックの見分け方として,ショックの分類・症状,ショックの5徴候(5P)について概説していきます。

〈目次〉

ショックの分類,症状

ショックは病態によって4つに分類されます(表1)。

表1ショックの分類とその主な原因疾患(文献1より引用)

ショックの分類とその主な原因疾患

循環血液量減少性ショック

何らかが原因の出血や脱水によるショックです。広範囲の熱傷や急性膵炎,イレウスなどもこの分類に入ります。

循環血液量減少性ショックは,体内の循環血液量が直接的に減少することにより起こります。循環血液量の減少に伴い前負荷,心拍出量が減少し血圧が低下しますが,それを代償しようと心拍数増加と末梢血管の収縮が起こります。

循環血液量15~30%の出血で,頻脈,頻呼吸,脈圧の減少,CRT(capillary refill time・MEMO1)の遅延,皮膚の冷感,湿潤がみられます。さらに,いつもと違う意識レベル(不穏,無気力,無反応など)や徐脈の出現は状態の悪化を示しており,止血や大量輸液,輸血など早急な対応が必要です。

MEMO1 CRTとは

部圧迫による末梢血管再充填時間のことをCRT(capillary refill time)といいます。爪床を5秒圧迫し,2秒以内に再充(ぽわっとピンク色に戻る)すれば正常と評価します。3秒以上であれば循環障害の可能性が考えられます。

 

心原性ショック

心筋梗塞や不整脈など,心臓自体のポンプ機能障害によるショックです。

胸痛や動悸,心窩部・頸部・背部などへの放散痛といった症状は要注意です。心原性ショックには重症不整脈,左心不全,右心不全の3病態があります。どれも心拍出量の減少が起こります。

重症不整脈では,心筋障害がなくともポンプ機能が低下しショックとなります。無脈性心室頻拍(ventricular tachycardia;VT・図1),心室細動(ventricular fibrillation;VF・図2),洞不全症候群(図3),完全房室ブロック(図4)は致死性不整脈といわれ,放置すると死亡してしまう危険性の高い不整脈です。またそれ以外でも動悸や失神などの症状を伴う不整脈は,緊急に治療を開始しなければなりません。

『ACLS2010ガイドライン』では,VT,VFはただちに胸骨圧迫によるCPRを行い,AEDや除細動器を使用します。難治性のVT,VFの場合,アミオダロン(アンカロン®)やリドカインを投与します。また洞不全症候群,完全房室ブロックには経皮ペーシングを行い,一時ペーシング留置の準備をします。

図1心室頻拍(文献2より引用)

心室頻拍

 

図2心室細動(文献3より引用)

心室細動

図3洞不全症候群(文献3より引用)

洞不全症候群

図4完全房室ブロック(文献2より引用)

完全房室ブロック

急性左心不全では左心拡張期容量と圧が増大し,肺動脈楔入圧(pulmonary capillary wedge pressure;PCWP,肺動脈カテーテルが挿入されていると測ることができます)が上昇します(MEMO2)。症状として,呼吸困難,息切れなどがあり,喘鳴や湿性ラ音の聴取,ピンク色の泡沫状の痰がみられます。

また,急性右心不全では右室から肺循環に拍出できなくなり,左室流入血液量が減少します。右室拡張期容量と圧が増大し,中心静脈圧(central venous pressure;CVP,中心静脈カテーテルが挿入されていると測ることができます)が上昇します。

治療として,呼吸不全に対しては酸素投与や人工呼吸器装着,また心筋梗塞の疑いがある場合は緊急冠動脈造影ができるよう準備します。

急性左心不全に対してはノルアドレナリン,ドパミンなどカテコラミンの投与,急性右室梗塞などの右心不全に対しては急速輸液が行われます。

MEMO2 心機能測定モニター

近年スワン-ガンツカテーテルは感染の問題などによりあまり使用されなくなりました。スワン-ガンツカテーテルなどの肺動脈カテーテルが挿入されていなくとも,動脈ラインが挿入されていれば心拍出量や心係数,全身末梢血管抵抗(systemic vascular resistance;SVR),混合静脈血酸素飽和度(mixed venous oxygen saturation;SvO2)なども測定できるモニターがあり,敗血症性ショック時などにも利用されています。

心外閉塞・拘束性ショック

急性大動脈解離,肺血栓塞栓症,緊張性気胸や心タンポナーデ(MEMO3)など,心臓のポンプ機能には異常はなく,心・血管系回路の閉塞や周辺からの圧迫により心拍出量が低下して生じるショックです。

心外閉塞・拘束性ショックは,その誘因を除去することにより,比較的速やかに重篤なショック状態から回復できます。

心タンポナーデでは心嚢穿刺あるいは剣状突起下心嚢開窓術を,緊張性気胸では胸腔穿刺によりそれぞれ血液,空気をドレナージし,減圧を図ります。ショックを伴うStanford A型大動脈解離に心タンポナーデを合併している場合は,緊急手術の適応です。

MEMO3 心タンポナーデとは

心嚢内に多量の液体(もしくは気体)が貯留し,心臓の拡張障害から心拍出量低下によるショックと,冠血流低下による突然の心停止を引き起こす緊急度の高い病態です。心嚢内には,通常50mL程度の心嚢液が存在しますが,心嚢内への出血などにより急激に血液が貯留した場合(100mL程度),急性の心タンポナーデが発生します。

原因として,急性心外膜炎,悪性腫瘍,外傷,急性心筋梗塞に続発する心破裂,急性大動脈解離などが挙げられます4)。Beckの三徴(心音減弱・血圧低下・静脈圧上昇)が早期発見に役立ちます。

血液分布異常性ショック

敗血症やアナフィラキシー,神経原性に起こるショックです。

敗血症性ショックは,適切な輸液にもかかわらず敗血症に起因する低血圧が遷延する状態です。詳しい敗血症の診断・治療については『日本版敗血症診療ガイドライン』や『Surviving Sepsis Campaign Guidelines(SSCG)2012』がありますのでご参照ください。38.3℃以上の発熱や36℃以下の中枢温,頻脈,頻呼吸,意識レベルの変調,低酸素,急性乏尿などの症状を呈する患者に対しては,3時間以内に乳酸値の測定,血液培養を採取し抗菌薬の投与を行い,輸液負荷などにより6時間以内に平均血圧を65mmHg以上に維持することなどを目標にして,迅速に対応します。

アナフィラキシーショックでは,アレルゲンとの接触後にじんましん,皮膚紅潮,顔面浮腫,呼吸困難などの症状が現れます。アドレナリンの投与を行い,補助療法としては抗ヒスタミン薬,ステロイドが投与されます。咽頭浮腫による窒息にも注意が必要で,気管挿管も考慮する必要があります。

神経原性ショックは,循環調節にかかわる神経系が障害され副交感神経が優位になることによる徐脈や血管拡張で起こります。

また,上位胸椎より高位の脊髄損傷,高位脊髄麻酔などに起因した「器質的神経原性ショック」があります。これは交感神経が遮断されているので,血圧が低下しても頻脈などの代償機構は働かず,冷感・冷汗などの症状もありません。治療としては細胞外液の補充,ノルアドレナリンなどのカテコラミン投与を行い,徐脈の場合はアトロピン投与を検討します。多くの場合,24~48時間で回復します。

また,疼痛や精神的不安,強い怒責などによる「血管迷走神経反射失神」も神経原性ショックの1つです。失神,徐脈が特徴で,臥位をとり下肢拳上をします。症状が遷延する場合には,アトロピンやドパミンなどの薬剤投与を検討します。

ショックの5徴候

ショック時に急激にみられる共通する症状として,「蒼白(pallor)」「虚脱(prostration)」「冷汗(perspiration)」「脈拍触知不能(pulseless)」「呼吸不全(pulmonary insufficiency)」が挙げられ,英語の頭文字をとって「ショックの5P徴候」といわれています。

血圧を維持するため,ショックの初期には交感神経の緊張が亢進して発汗量が増え,冷汗が出現します。また細動脈平滑筋の収縮が起こり,皮膚の血液量が減少して冷却され蒼白にみえますが,例外として敗血症性ショックの初期では血管は拡張し温かくなっています。

脳血流量が減少し普段と違った意識状態,不穏・不安などがみられ,放置すれば昏睡となります。心拍出量が減少すると血圧が低下し,触知不可能になってきます。呼吸状態は循環不全による低酸素血症を呈し,酸素を必要としない嫌気性アシドーシスとなります。血中のpHを保つため,CO2の排出を増やそうと浅い過呼吸になります。

これらの5P徴候以外に,血圧低下や抗利尿ホルモンによる尿量低下(尿量≧0.5mL/kg/時)もショックの診断基準となります(図5)。

図5ショックの診断基準(文献1より引用)

ショックの診断基準

図6はショック患者に対する初期診断・評価・治療を表しています。また前記したように,ショックの原因によりさまざまな症状があり,治療が異なるので要注意です。

図6ショック患者の初期診断・評価・治療(文献1より引用)

ショック患者の初期診断・評価・治療

おわりに

本コラムではショックの見分け方として,ショックの分類・症状,ショックの5徴候(5P症状)について概説しました。

よくマンガの登場人物が「ガーン」となって顔に立線が入り,冷汗をかいてくらくらしていますが,これは血管迷走神経反射失神のひとつなんだろうなと思います。実際の患者はショック状態のときさまざまな症状を呈します。共通のものもあれば病態により異なるものもあります。「教科書通り」とはいかず,あとから振り返って「あれはこのショックの徴候だったのか…」と反省することもあります。

慌ただしい処置の嵐から抜け出したら,一人ひとりの事例を振り返り検討していくことが次のショックを回避するのに大切であると思っています。

 

 


[引用・参考文献]

 


[Profile]
宮﨑聡子(みやざき さとこ)
東海大学医学部付属病院 看護部 集中治療室
東海大学医学部付属病院高度救命救急センターを経て,2006年より現職。2011年 急性・重症患者看護専門看護師取得。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]循環器ナーシング2014年4月号

循環器ナーシング2014年4月号

P.63~「ショックの見分け方」

著作権について

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